第37回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
3-意見交換会
2026年3月21日に開催されたオンライン意見交換会では、子育て中の保護者の皆様と、教育・療育現場で活躍する専門家の方々が一堂に会し、活発な質疑応答が行われました。本記事では、その中から特に注目度の高かったテーマをピックアップし、当日のやり取りを簡単に要約した形でお届けします。
1. 学校や先生との連携における工夫について
司会の坂本より、学校の先生とのやり取りや連携における工夫について、YさんとSさんに質問が投げかけられました。
Yさんの発言:
長女(現在中学1年生)については、幼稚園の頃から特性の指摘があり、長い期間向き合ってきました。しかし『グレーゾーン』という判定は非常に曖昧で、知識がないと先生方にどうしてほしいのか、どんな特徴があるのかを上手く言葉にできませんでした。
そこで、小児科の先生に相談し、思春期外来を紹介してもらいました。2年ほどかけて娘を診てもらい、検査を受けた結果『LD(学習障害)の書字障害』であるとはっきり分かったことが、全てのスタートでした。
『学習障害があります』と伝えた際、学校側からは『何の障害ですか?』と聞かれます。『書くことが苦手です』と伝えても、『どこまで書けないのか』という具体的な理解を得るのが難しかったのです。
幸い、小学5年生の時の担任が元々教育センターに勤めていた方で、特性に精通しておられました。その先生は『漢字テストなどで書けないことは、本人に自信を失わせるだけだ』と理解してくださり、別室で別の課題を行うといった柔軟な対応をしてくださいました。
中学校に上がってからは支援級(情緒学級)に入りましたが、小学校とはやり方が異なります。娘はASD(自閉スペクトラム症)もありコミュニケーションが苦手なので、自分から声をかけることができません。そのため、私の方から支援級の先生や交流級の担任の先生に対し、しつこいくらいにアプローチしています。『こういうことならできます』『こうさせてください』と具体的に発信し、受け入れられる部分を拾ってもらうようにしています。親として『うるさい親』と思われるかもしれませんが、理解していただくために細かく発信し続けることが大切だと考えています。
Sさんの発言:
まずは担任の先生と密に連絡を取り合うことが一番大事だと思っています。先生方も多くの生徒を抱えて大変な状況ですし、私たち親も悩みを抱えて辛い。お互いに『大変ですよね』という気持ちを共有しながら、どうしていくのが最善策なのかを話し合っています。
具体的な合理的配慮としては、息子に『キッズケータイ』を学校に持たせる許可をいただきました。お友達とトラブルがあったり、辛いことがあったりした時に、その場ですぐにママに電話していいよ、というルールを先生と相談して決めたのです。電話で話をすることで、息子の気持ちを落ち着かせることができています。
また、教頭先生や相談員の方との連携も非常に重要だと感じています。教頭先生は教育委員会や上の方との繋がりがあり、環境整備などの調整をしてくださる立場です。相談員の方は、元校長先生など経験豊富な方が多く、社会との繋がりも広いです。担任の先生だけでなく、教頭先生や相談員の方々とも密に関わることで、学校全体の環境を息子にとって、そして他の悩んでいるお子さんたちにとっても、より過ごしやすいものに変えていけるのではないかと考えています。
新年度に向けたアドバイス(Sさん):
新年度で担任が変わる際は、まず『現在の学習状況』を正確に伝えます。息子の場合、学校から出される宿題には今はついていけないので、『宿題はできません』とはっきりお伝えしました。その上で、本人ができる範囲のことを少しずつ進めていきたいという方針を共有し、理解を得るようにしています。
2. 診断を受けた際の心境と周囲との関わり
幼稚園に勤務するTさんより、「我が子の特性に気づき、診断を受けるに至った経緯やその時の心境、周囲からの言葉で嬉しかったこと・嫌だったこと」について質問がありました。
Iさんの発言:
上の子が生まれた時から、ミルクをあまり飲まない、寝てばかりいる、と思えば成長すると寝るまでずっと動き続ける、離乳食を食べない……といったことがずっと気になっていました。当時はまだ発達障害という言葉が今ほど浸透していませんでしたが、『なぜだろう』という疑問が常にありました。
数年経ち、ようやく発達障害という概念が認知され始め、市の方で機会を作ってもらって病院を受診しました。診断を受けた時は、ショックというよりも『ああ、やっぱりそうだったんだ。やっと原因が分かってよかった』と安心する気持ちの方が大きかったです。長年の悩みの種がようやく判明した、という感覚でした。
Rさんの発言:
現在アメリカのシアトルに住んでいますが、息子が1歳8ヶ月の頃に『他の子と少し違うな』と気づきました。家族に言っても理解してもらえず、ずっと苦しい思いをしてきました。日本にいた時に療育センターなどで診てもらいましたが、『いや、大丈夫ですよ』と言われてしまい、ずっとモヤモヤしていたんです。
アメリカに来て、環境の変化や言葉の壁もあり困りごとが増えたため、改めて詳しく検査をしてもらった結果、軽度のASDという診断を受けました。その時、ふと心が軽くなって『私の直感は間違っていなかったんだ』と感じました。そこからは『じゃあ、どうサポートしようか』と前向きに切り替えることができ、今は週1回のセラピーや学校でのソーシャルスキルトレーニングに取り組んでいます。周囲に同じ境遇の人がいなくて孤独を感じることもありますが、こうした意見交換会で勉強できることが支えになっています。
Oさんの発言:
診断のきっかけは、保育園での集団生活が上手くいかなかったことでした。3歳児検診で区の方に引っかかり、月に一度のフォローを受けていました。当初は診断をつけるまでには至りませんでしたが、小学校入学前に一度はっきりさせようと病院へ行きました。
実際に診断名がついた時はかなり落ち込みましたが、同時に納得する部分もあり、息子の生きづらさは特性から来るものだったんだなと理解できました。『もっと早く気づいてあげていれば、もっと違う手が打てたかもしれない』と後悔する気持ちもありましたが、入学前に特性を知ることができたので、校長先生や担任の先生と事前に面談を重ねることができました。
知識がない頃は、周囲の冷たい視線を感じて孤立してしまうことがあり、本当に辛かったです。自分自身が子供を支えながら、ギリギリのところで生活している中で、誰かに話を聞いてほしい、分かってほしいという思いが強かったです。スクールカウンセラーの先生は、本来は子供のためのものですが、私は『自分を維持するため』に毎月面談をしてもらい、精神的な支えにしていました。
3. 教育現場の視点とアドバイス
Dさんの発言:
33年間の教員生活の中で、小学校と特別支援学校の両方を経験してきました。今日、親御さんたちの生の声を伺い、当時の気持ちを改めて思い出しています。
支援級か普通級か、あるいは支援学校か……と悩まれるお母様方の気持ちは本当によく分かります。ただ一つ言えるのは、『子供は一人ひとり違うので、こうすればこうなるという方程式はない』ということです。色々と試してみて、良かったらそれを続ける、という姿勢が一番大事だと思います。
小学校の段階でも、希望すれば特別支援学校への訪問や見学ができるはずです。支援学校でどのような教育が行われているのかを実際に見てみるのも、一つの選択肢として参考になるでしょう。
また、アメリカで相談相手がいなくて苦しまれているお話もありましたが、どうか一人で抱え込まず、お子さんとゆっくり関わっていただきたいです。親が知識を持ち、先生に説明し、発信していく。その積み重ねが、お子さんの未来を作っていくのだと感じました。
4. 事務局長望月による総括
今日は教育現場と保護者の双方の視点から、非常に熱のこもったお話を伺うことができました。私たち人間力認定協会は、発達支援において4つの軸を考えています。
1.支援者を増やすこと
2.支援の質を高めること
3.支援を届けること
4.支援を繋いでいくこと
この5年ほどで『発達障害』という言葉は広まり、当協会の資格取得者も延べ5万人を超えました。しかし、今日のお話にもあった通り、先生や学校、地域、あるいは療育施設によって『支援の質』にバラツキがあるのが現状です。
これからは、ただ資格を認定するだけでなく、質の良い支援をパッケージ化し、悩んでいる保護者や子供たちに適切に届けていくことが課題だと感じています。発達支援の未来を作っていく団体として、新しいことにもチャレンジしていきます。
今日、土曜日という貴重な時間に集まってくださった皆さんの熱意があれば、社会は必ず前に進んでいけるはずです。本当にありがとうございました。