「ことば」が育つと、子どもの世界が広がる ~言語聴覚士が見つめる発達支援の現場~

2026年03月12日

2-活動報告

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今回は、東京都港区にある「ことばと声の相談室コトベル」代表であり、言語聴覚士として多くの子どもと保護者の支援に携わってきた渡邊寛幾先生にお話を伺いました。

吃音や構音障害、読み書きの困りごと、発達障害など、ことばやコミュニケーションに関する悩みは多岐にわたります。

現場で見えている課題や支援の考え方について、「発達障害」「ことば」「言語聴覚士」「自己肯定感」という視点からご紹介します。

渡邊先生とのインタビューの模様はyoutubeにて公開しております。

発達障害と「コミュニケーションの困りごと」

発達障害のあるお子さんの相談の中で、特に多いのが「友達とうまくコミュニケーションがとれない」という悩みです。

また、吃音や構音障害などのことばの課題と発達障害が併存しているケースも少なくありません。
そのため、「正しい発音を身につけたい」「流暢に話したい」といった相談の背景に、発達特性が関係している場合もあります。

言語聴覚士は、ことばがどのように理解され、処理され、発せられるのかという「言語処理の仕組み」を専門的に理解しています。

そのため、単に「話すのが苦手」という表面的な問題だけでなく、

・どの段階でつまずいているのか
・認知や注意、概念理解にどのような課題があるのか

といった背景まで見ながら支援を組み立てていきます。

「ことば」と「声」は思いを伝える大切なツール

渡邊先生は、ことばと声を次のように表現します。

「声は高さや速さ、響きなどによって人の印象を形づくるもの。一方、ことばは頭の中で思い描いた内容が表に現れた手段の一つです。」

内容が良くても声が届かなければ伝わらず、声が良くても内容が整っていなければ理解されません。

つまり、ことばと声はどちらも「思いを伝えるための大切なツール」なのです。

実際の支援の中では、ことばが育つことで次のような変化が見られることが多いといいます。

・園や学校での出来事を家族に伝えられるようになる
・気持ちを言葉で説明できるようになる
・周囲とのやり取りがスムーズになる
・癇癪が減る

ことばの発達は、単なる言語能力ではなく、生活全体のコミュニケーションを支える土台と言えるでしょう。

言語聴覚士だからこそ見える支援の視点

言語聴覚士の専門性は、ことばの「仕組み」から課題を分析できる点にあります。

例えば、コミュニケーションの難しさがある場合でも、

・語彙や概念の理解
・音の認識
・発音の仕組み
・言語処理の過程

など、どの段階に課題があるのかを整理しながら支援を進めます。

実際の支援の中では、絵カードを使ったコミュニケーション支援などを通して、「伝えたいことが伝わる」という経験を積み重ねていくことが大切だといいます。

その経験の積み重ねが、子どもにとって大きな成長につながるのです。

「伝わらない経験」が自己肯定感に影響することも

子どもは5歳頃になると、周囲との違いに気づきやすくなります。

発音の誤りや吃音などを指摘されることで、自分のことばに対して不安を感じることもあります。

また、繊細なお子さんの場合、幼い頃から聞き返される経験が続くことで、

「どうせ伝わらない」
「話したくない」

という気持ちが生まれてしまうこともあります。

渡邊先生は、

「伝えたいのに伝わらない経験は、自己肯定感にも影響する」

と感じていると話します。

だからこそ支援では、

・本人の満足度を大切にすること
・伝わる体験を増やすこと
・思いを表現する楽しさを感じてもらうこと

を何より重視しているそうです。

ことばの発達を支える「見えにくい力」

ことばの発達には、発音や語彙だけではなく、さまざまな力が関係しています。

特に重要だと感じているのが、

・概念の広がり
・聞く力
・伝えたいという意欲

だといいます。

興味の幅が広がることで得られる情報が増え、語彙や表現も豊かになります。
また、相手の話を聞く力があってこそコミュニケーションは成り立ちます。

そして何より、「伝えたい」という気持ちが、ことばを使う原動力になるのです。

子ども一人ひとりに寄り添う支援を

現在の制度の中では、「様子を見ましょう」と言われたまま支援につながらないケースや、十分な支援を受けられない家庭も少なくありません。

渡邊先生は、民間の支援機関が果たせる役割について次のように話します。

「公的支援を補完しながら、一人ひとりの状況に応じた継続的で身近な支援や情報提供を行うことが大切だと思います。」

ことばや声の悩みは、子どもから大人まで誰にでも起こり得るものです。

一人ひとりの思いや状況に寄り添いながら支援を続けていくことが、これからの発達支援には欠かせないのではないでしょうか。


今回のお話を通して、
ことばが育つことは、子どもの自己肯定感やコミュニケーションの土台を育てることにつながるという大切な視点を改めて学ぶことができました。

ありがとうございました。

ことばと声の相談室コトベル

ことばと声の相談室コトベル
〒108-0072 東京都港区白金2丁目3-19 アネックス白金503
(オンラインでの相談、訓練にも対応しています)

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