第38回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
3-意見交換会
2026年5月16日に開催されたオンライン意見交換会では、子育て中の保護者の皆様と、教育・療育現場で活躍する専門家の方々が一堂に会し、活発な質疑応答が行われました。本記事では、その中から特に注目度の高かったテーマをピックアップし、当日のやり取りを簡単に要約した形でお届けします。
1. 園から保護者への「気づき」の伝え方について
K氏(社会福祉士): 「不登校の子の支援をしていますが、小学校に上がってから発達の特性がわかるケースが多いです。未就学の段階で、園の先生方は保護者にどのように伝えているのでしょうか?」
これに対し、保護者側と園側の双方が現状を語りました。
N氏(保護者): プレ幼稚園の際、他児とのコミュニケーションのズレ(視線が合わない、一人遊びが多い等)があり、園側から「加配をつけられないので、専門の支援センターで大人と信頼関係を築く方が、今のこの子には適切ではないか」と、事実上、入園を断られる形で伝えられました。当時はショックでしたが、結果として早い段階で支援に繋がれました。
Y氏(保護者): 1歳半健診で言葉の遅れを指摘されましたが、当時はアクションを起こしませんでした。3歳児健診で改めて指摘を受け、心理士の方と相談して療育を始めました。
H氏(保育教諭): 園側から「発達検査を受けてください」と直接的に伝えることは、実はなかなかできません。健診の後に「昨日はどうでしたか?」と伺ったり、保護者の方から「実は……」と相談があったりして初めて、専門機関を「お勧めする」という形をとるのが現状です。
S氏(保育教諭): 面談の場で「集団の中で少しこういう困り感があります」という事実を伝え、保護者がそれを実感したタイミングで相談機関を紹介します。3歳児健診の前などに、園から保健センターへ「こういう子がいくので丁寧に見てほしい」と情報共有することもあります。
T氏(保育教諭): 保護者の方の意識が変わらないと、なかなか先には進めないもどかしさがあります。保護者に寄り添いながら、子どもにとって一番良い環境を模索しています。
2. 現場で「成功した」アプローチや教具について
P氏(英会話講師): 「発達特性のある子に対して『これは上手くいった!』という指導法やエプローチ、成功エピソードがあれば教えてください」
H氏(保護者・ボランティア): 1年生でクラス崩壊が起きそうな時、ソワソワしている子を観察しました。その子に「消しゴム」を持たせてポケットに入れさせ、「これは先生とあなただけの秘密の約束だよ。これを持っていれば大丈夫」という信頼関係を築きました。「消しゴムがあれば自分は静かにしていられる」という成功体験が、自己肯定感に繋がりました。これを「スモールステップの積み重ね」として大切にしています。
M氏(事務局長): 「ふみおくん」という、椅子の足につけるゴムのような商品があります。じっと座っていられない子に対して、適度に足を動かして「動きたい欲求」を消費させるハード面の工夫も有効です。
3. 早期療育を受けなかった場合の経過と接し方
N氏(保護者)からI氏(保護者)への質問: 「お子さんが大人になってから発達障害がわかったとのことですが、学生時代に困っていたことや、今の接し方で気をつけていることはありますか?」
I氏(保護者): 今思えば、小学校時代に先生の言葉を理解するのが遅かったり、聞き取り力が弱かったりする「小さな違和感の芽」はありました。当時は「聞き方教室」に通う程度で、普通学級で過ごしました。今は娘たちに対して「曖昧な表現をしない」ことを徹底しています。「夕方くらいに来て」ではなく「5時に来て」と数字で伝えます。特性として「他人の真似をして自分がおかしくないように隠す」ことをしていたため、友達とのトラブルはありませんでしたが、高校時代は自分を閉ざして孤立しがちでした。感情の爆発がなかった分、気づくのが遅れたと反省しています。
4. 民間の習い事教室での対応
P氏(英会話講師): 「行政のバックアップがない民間の教室で、グレーゾーンと思われる子の保護者にどこまで伝えてよいのか。どのような声掛けが望ましいのでしょうか?」
Y氏(保護者): 娘がスイミングや体操をやめたのは、集団の指示が通らず周りに迷惑をかけていると感じたからです。今は「音楽療法」のピアノ教室に通っていますが、先生に特性を理解してもらい、相談に乗ってもらえるだけで親の気持ちはすごく軽くなります。「あ、これでいいんだ」と思える場所があることが救いです。
5. 集団内での他児との関係性
H氏(保育教諭): 「他児への噛みつきや引っかきがある子に対して、周りの子がその子を避けるようになってしまう。どうアプローチすればよいでしょうか?」
S氏(保育教諭): トラブルがあった時は、職員が一人つき、一度その場を離れて落ち着かせる環境を作ります。どちらの子も大事なので、状況に応じた個別対応を徹底しています。
T氏(保育教諭): 手が出るのには「悔しい」「玩具を取られた」などの理由が必ずあります。担任がその子の「良いところ」を他児に伝えていくことが大切です。「噛んじゃうこともあるけど、こういうところは凄く良いところだよね」と発信し続けることで、子どもたちの認識も少しずつ変わっていきます。
6. 事務局長からの総括:未来へ繋がる「自己理解」
M氏(事務局長):先日、高校の特別支援コーディネーターの先生と対談した際、「発達障害のある高校生の中で、トラブルが少ない子と多い子の違いは何か」と尋ねました。
先生の答えは明確でした。「幼少期から適切な支援を受けてきた子は、高校生になってもトラブルが少ない」。
その理由は、支援を受けてきたことで「自分にはこういう特性がある」「こういう時はこうすればいい」という自己理解が進んでいるからです。また、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を通じて他者との関わり方の経験値があるため、トラブルを未然に防げるようになります。
「今、皆さんが悩みながら行っている支援は、必ず子どもの未来に繋がっています。日々の小さな積み重ねが、子どもたちが大人になった時の助けになる。自己理解を助け、他者との関わり方を身につけさせてあげることは、非常に重要な支援です」
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