発達障害を「障害」としない社会へ。私たちが大切にする「障害の社会モデル」とは
2-活動報告
一般社団法人人間力認定協会は、「発達障害を“障害”としない社会へ」という理念を掲げ、発達障害への理解を広める活動を行っています。
この理念の根底にあるのが、「障害の社会モデル」という考え方です。
発達障害のある方が感じる生きづらさは、本当に本人の特性だけが原因なのでしょうか。
今回は、障害の捉え方と、私たちが目指す社会についてお伝えします。
障害の「医学モデル」と「社会モデル」の違い
障害の捉え方には、大きく分けて「医学モデル」と「社会モデル」という2つの視点があります。
・医学モデル
障害によって生じる困難を、主に本人の心身の機能や特性に着目して捉える考え方
・社会モデル
本人の特性だけでなく、社会の仕組みや環境との関係によって困難が生じていると考える
例えば、車いすを利用する方が、階段しかない建物に入れないとします。
医学モデルでは、階段を上ることが難しい本人の身体機能に目を向けます。
社会モデルでは、「スロープやエレベーターがないことが、社会参加を妨げる障壁になっている」と考えます。
つまり、本人の特性を変えなくても、社会の側が変わることで解消できる困難があるということです。
この社会モデルの考え方は、国連の障害者権利条約や、日本の障害者差別解消法にも反映されています。
「普通」は社会の多数派によってつくられている
少し想像してみてください。
もし、世の中のほとんどの人が車いすで生活していたら、社会はどうなるでしょうか。
建物の入り口、キッチン、洗面台、商品棚など、あらゆる設備が車いすを使う方に合わせて設計されるはずです。
そのような社会では、立って生活する人にとって、さまざまな設備が低すぎて使いにくくなるかもしれません。
現在の社会では不便なく生活できている人が、環境が変わった途端に、多くの困難に直面する可能性があるのです。
これは、社会モデルを理解するための一つの例えです。
私たちが「普通」だと思っていることは、必ずしもすべての人にとっての普通ではありません。
社会がどのような人を基準につくられているかによって、誰が生活上の困難を感じるのかも変わるのです。
発達障害のある子どもたちの「生きづらさ」を考える
この考え方は、発達障害のある子どもたちへの支援にも当てはまります。
例えば、次のようなケースです。
- 集団行動が苦手な子ども:
一律に同じ行動を求めるのではなく、個別に活動できる時間や環境を設ける - 聴覚過敏のある子ども:
騒がしい場所に慣れることだけを求めず、静かなスペースや防音具を活用する - 言葉による説明が苦手な子ども:
説明を繰り返すだけでなく、絵や写真を使って理解しやすくする - 予定変更が苦手な子ども:
柔軟に対応することだけを求めず、事前に予定や変更内容を伝える
こうした支援は、子どもの特性を無理に変えようとするものではありません。
周囲の大人が理解を深め、環境や関わり方を工夫することで、子どもが持っている力を発揮しやすくするものです。
もちろん、本人が必要なスキルを身につけるための療育や、医学的な支援も重要です。
社会モデルは、それらを否定する考え方ではありません。
大切なのは、子ども自身への支援と、子どもを取り巻く環境への働きかけを、両方の視点から考えることです。
「理解は支援の第一歩」——私たちが大切にしていること
人間力認定協会では、「理解は支援の第一歩」をスローガンに活動しています。
発達障害は、外見だけでは分かりにくいことが多く、本人の行動や言動が周囲から誤解されることがあります。
例えば、集中することが難しい子どもを「やる気がない」、気持ちをうまく伝えられない子どもを「わがまま」と捉えてしまうこともあるでしょう。
しかし、その背景にある発達特性を理解すれば、見方や関わり方は変わります。
理解が広がることで、不必要な叱責や誤解を減らし、子どもたちが安心して過ごせる環境をつくることができます。
また、周囲の理解は、発達障害のある方だけでなく、そのご家族の孤立を防ぐことにもつながります。
私たちが資格講座を通じた知識の普及、会員との意見交換、研究機関や関連団体との連携、政策提言などに取り組むのも、こうした社会の変化を後押しするためです。
さらに、学歴やIQなどの認知能力だけでなく、非認知能力(人間力)にも目を向け、一人ひとりの個性や強みが正当に評価される社会を目指しています。
発達障害を「障害」としない社会の実現に向けて
私たちが掲げる「発達障害を“障害”としない社会へ」という理念は、発達障害という診断や、本人が感じている困難の存在を否定するものではありません。
発達特性があるという理由だけで、不当に不利益を受けたり、社会から排除されたりしない社会を実現したい。
そのような願いを込めています。
発達障害のある方が社会に適応するための支援は、もちろん大切です。
しかし、社会の側が多様な特性を理解し、受け入れるための努力も、それと同じくらい重要だと考えています。
一人ひとりの違いを認め、それぞれの特性に合った環境や支援を整えること。
そして、障害の有無にかかわらず、誰もが自分らしく生き、公平に活躍できる社会をつくること。
人間力認定協会は、これからも「理解は支援の第一歩」という言葉を大切にしながら、発達障害のある方とそのご家族が孤立することのない社会を目指して活動してまいります。
参考資料
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