第40回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
3-意見交換会
2026年9月12日に開催されたオンライン意見交換会では、子育て中の保護者の皆様と、教育・療育現場で活躍する専門家の方々が一堂に会し、活発な質疑応答が行われました。本記事では、その中から特に注目度の高かったテーマをピックアップし、当日のやり取りを簡単に要約した形でお届けします。
| 企画名 | 第40回意見交換会|人間力認定協会 |
| 開催日時 | 2026年9月12日 10:30~11:30 |
| 開催場所 | オンライン(ZOOM) |
| 登壇者 | 一般社団法人 人間力認定協会 理事・事務局長 望月宏彰 |
| 司会進行 | 坂本洋子 |
| 参加者数 | 8名 |
「親子療育」とは何か:二つの事業所の実践から
Aさん(児童発達支援事業所スタッフ): 「うちでは就学前のお子さんと保護者さんに一緒に参加してもらって、教育を通じて何か持ち帰ってもらうことをメインにしています。お子さんにはたくさん褒められたり認められたりして達成感を得てもらいつつ、保護者さんとの関係づくりに役立つ内容を意識していますね。幼児期のうちに、保護者さんと一緒にお子さんを理解できる場所になれたらいいなと思ってやっています。せっかく親子でわざわざ時間を作って来てくださるので、楽しめる準備はしっかりして、お子さんが遊んでいる時間には保護者さん向けの勉強会をお出ししたりもしています。グループ療育は子ども5人・保護者5人・スタッフ2〜3人で1時間45分、個別療育は子ども1人・保護者1人・先生1人で1時間です。
印象的だったのは、『嫌だ』『できない』が口癖だったお子さんが、こちらが気持ちを代弁しながら保護者さんと一緒に取り組むうちに、『美味しそうだね』『綺麗だね』って自分から言えるようになって、お友達にも優しくできるようになったことです。あとはトイレがなかなかできなかった年長さんが、スモールステップで取り組んで、できた瞬間を親御さんと一緒に喜べたのも忘れられないエピソードですね」
Bさん(児童発達支援管理責任者): 「私はCDQ認証施設ということで今回の交流会にお声がけいただきました。うちは放課後等デイサービスと児童発達支援の事業所をしていて、私自身は児童発達支援管理責任者と事業所の責任者を兼務しています。実は以前、子育て支援拠点事業という親子の集いの場を運営していた時期がありまして、その頃『お母さんお父さんが笑顔で元気だと、どんな特性があってもお子さんはすごく前向きに育っていくんだな』という場面をたくさん見てきたんです。それもあって、今日は保護者の皆さんの生の声も聞きたいなと思って参加しました。
うちの親子療育は、最大5組までの小グループで1時間のプログラムです。手先を使う微細運動や、ちょっと体を動かす運動を、幼稚園のお遊戯のように順番を追ってやっていく中で、親御さんがお子さんと関わる様子をスタッフが見守っています。親御さんってどうしても『ちゃんとしなさい』『早くしなさい』が出てしまいがちなので、それを肯定的な言葉に言い換えるお手伝いをしながら、親子の信頼関係が深まるようにと考えています。Aさんのお話を伺っていて、本当に同じだなと嬉しくなりました」
保護者にとっての「親子療育」:通ってみて感じたこと
Cさん(保護者): 「私は単純に、親子で一緒に何かをする場なのかなと思っていました。実際にうちの子が通っている就学準備の教室では、親と子は別々の活動をしていて、子どもが手先を使う活動や勉強をしている間、親は別室で勉強会を受けているんです。一緒に何かに取り組むわけではないですが、お話を伺って似たような形なのかなと感じました」
Aさん(保護者): 「私は当時、療育に積極的に通おうと思うきっかけがなくて、情報もあまり入ってこなかったので、自分のできる範囲で一人で子育てをしてきました。もし通える場があるって知っていたら、気持ち的にも楽になっていただろうし、いろんな知見も得られていたんだろうなと思います。本を読んで知識を得ながら、とにかく一緒に遊ぶということを大事にしていましたが、それができたのは専業主婦だったからで、通うには時間的な余裕がないと難しい方もたくさんいらっしゃると思います。それでも、子育てに困難を抱えている方にとって『療育』という存在があるということを、もっと広く知ってもらえたらと思います。私自身は当時、療育に頼るという発想になかなかなれなかったんですが、今になってLD親の会や不登校気味のお子さんが集まる会に参加するようになって、同じように苦しんでいるお母さんがいるんだって知ることがすごく救いになっています。お子さんの支援としてだけでなく、お母さんのメンタルケアとして、こういう場があることはとても大事だと思います」
きょうだい児支援の難しさ:ベテランの視点から
Aさん: 「今担当しているきょうだいのうち、弟くんは部屋を走り回ることが多いんですが、『ダメだよ』と言えばちゃんと聞いてくれるんです。ただ長続きしなくて。お姉ちゃんの方はおとなしい性格なんですが、同じように場が読めない行動が出ることがあって、テキストを読んでもどこまで対処していいのか掴みにくくて、悩んでいます」
Dさん(学校学習支援員): 「これはすぐには変わらない問題なので、皆さん悩まれるんですよ。今の子どもたちは、スマホやインターネットみたいな強い刺激に日常的に触れていて、昔の子どもとは環境が全然違います。いわゆるグレーゾーンのお子さんは本当に十人十色で、ある面ではすごく素晴らしいところがあって、ある面では苦手なところがある。それを個性と見るか障害と見るかは、とても難しい問題なんですよね。低学年のうちはなかなか気づかれないことも多いんですが、成長するにつれて『なんだかみんなの中で自分はおかしい』『なんで友達が離れていくんだろう』という迷いがどんどん出てくる。それが今の時代、いちばん怖いことだと私は思っています。励ましすぎてもダメ、頑張らせすぎてもダメ。だからこそ、ご家庭や学校、支援員がその子の様子をよく相談しながら進めていくことが大事で、できた・できなかったを責めずに自己肯定感を下げないようにすることを、私はいつも大事にしています。
『ダメ』で止まらないなら『歩いてね』ってお願いベースにしてみるとか、周りから怒られすぎているなと感じる子はまず肯定してあげる、逆に甘やかされすぎているなら、ビシッと伝える。その子がどんな空気の中で生活しているかを観察するのが大切だと思います。運動会や行事が終わった後にふっと伸びることもありますし、成長は本当にほんの少しずつ。焦らず長い目で見てあげてほしいですし、その子を一番近くで見極められるのは、やっぱりご家族しかいないと思うんです」
グループ活動が苦手な子どもへの向き合い方
Eさん(保護者): 「うちの子は他のお子さんとのグループ活動そのものが苦手で、学校や行政の方にも相談するんですが、『そうなんですね』と話を聞いてもらうだけで終わってしまうことが多くて。一緒に方法を考えてもらえる相手がなかなかいないんです。人が多い場だと控えめになりすぎて何もできなくて、後から『ああすればよかった』と後悔することが続いた結果、自己肯定感が下がってしまいました。できないわけでもやらないわけでもなくて、環境やタイミングが合わなかっただけなのに、それが『自分はできない』に直結してしまって、中学生になった今は通える施設も限られてきています。学校とも密に連絡を取りながらスモールステップで対応してもらっているところなので、何かアドバイスがあればぜひ取り入れたいです」
Aさん: 「うちも個別療育とグループ療育を分けていて、他の保護者さんと一緒だと緊張してしまうご家庭には個別をお勧めしています。まずは大人と1対1なら大丈夫なのか、同世代のお子さんと1対1なら大丈夫なのか、本人さんに確認しながら試してみるのがいいと思います。お子さん同士の1対1の関係が少しずつ広がっていけば、複数人じゃなくても人との関わり方の幅は増えていくと思うんです」
続けてEさんのお子さんの現在の様子も共有された。
Eさん: 「不登校の状態からは回復して、今は週3日、放課後等デイサービスの午前枠とカウンセリングを組み合わせて登校できるようになりました。通常学級の授業にはまだ参加できておらず学習の遅れはありますが、個別学習なら今後量を増やしても問題ないと言っていただいています。集団行動が求められる環境にいる以上、みんなと同じことをするのが本人にとって今も課題ですが、無理はさせずにできる範囲で進めています」
きょうだい児(定型発達のごきょうだい)へのケア
Fさん(支援ボランティア): 「以前、きょうだい児さんと保護者さんだけで遊びを通して関わる会に携わったことがあるんですが、きょうだい児さんの多くがどこか一歩引いていて、大人の顔色をうかがっているような様子が見られたんです。『楽しかった?』と声をかけても『大丈夫です』『今はいいです』という控えめな反応が多くて、自分の気持ちを抑えているように感じました。どう声をかければその子が安心して心を開いてくれるのか、まだまだ知識も経験も足りないなと感じていて、今日お伺いしたいなと思いました」
Bさん: 「うちの利用者さんにもきょうだい児さんは多くて、親御さんからその関係性について相談を受けることがあります。おすすめしているのは、きょうだい児さんだけに焦点を当てた時間を作ることです。月に1回、1時間くらいでもいいので『この子だけの特別な時間』をご家庭で作ってもらうように呼びかけています。きょうだい児さんは、親御さんが障害のあるお子さんへの対応で苦労している姿をずっと見ているので、知らず知らずのうちに『自分は我慢しなきゃ』と思ってしまう子が多いんです。特別な時間があることがその子のモチベーションになって、関係が良くなったという声もいただいています」
Cさん: 「うちは自閉症の兄が5歳、弟が3歳なんですが、弟はまだお兄ちゃんの特性を意識する年齢ではなくて、診断も軽度なので、今のところ差をつけずに対応できています。ただ今のお話を伺って、いずれ弟のための時間も意識して作ってあげないといけないなと感じました」
司会(協会事務局長)も自身の経験を共有した。
Mさん(協会事務局長): 「私も3人の男の子を育てていて、きょうだいゲンカで『なんであいつだけずるい』とよく言われるんです。特性のあるお子さんをケアしているつもりでも、他のきょうだいから見たら不公平に映ってしまうことがあるんですよね。Bさんがおっしゃった特別な時間を作ることに加えて、理解できる年齢になったら『お兄ちゃんにはこういう特性があるから、こういう対応をしているんだよ』ときちんと説明してあげることも大事だと思います。説明がないまま特別扱いに見えてしまうと、他のお子さんが『自分は大事にされていないのかな』と感じて、自己肯定感が下がってしまうこともありますので」
Eさん: 「うちの子(小学3年生・IQ130くらい)も感情表現がすごく薄いタイプで、運動会などの行事の直後に『楽しかった?』と聞いても何も答えなくて、1週間くらい経ってから聞くと『楽しいかどうかよく分からない』『みんなが楽しいって言うから楽しいと思っているだけかもしれない』と言うんです。『楽しい』の感じ方や、みんなと同じことをするのがいいことだという価値観自体が、周りとズレているお子さんもいるんだなと思って、参考までにお伝えしました」
Aさん: 「今担当しているきょうだいのご家庭では、お母さんが弟くんをすごく可愛がっていて、お姉ちゃんには愛情不足を感じることがあります。同じ障害があっても、こういう差が出てしまうんだなと気づいたのですが、これを親御さんにどうお伝えすればいいのか、皆さんのご意見を伺いたいです」
Dさん: 「日々の様子や学校での様子を見ていて感じた、きょうだい児さんの良いところ、たとえば下の子を迎えに来てくれているとか、レクリエーションを一緒にやってくれているとか、そういうことをその都度お伝えするようにしています。そうすると親御さんはほっとして、お子さんをたくさん褒めてくれるようになるんです。私自身も2人の娘を育てる中で、上の子が入院で家を離れることが多く、下の子は3歳の頃から離れて過ごした時期がありました。その時は、短い時間でも実家に帰って抱きしめたり、絵本を読んだりする時間を大切にしましたし、下の子には『お姉ちゃんのことを頼むね』といつも伝えていました。おかげで成人した今もきょうだい仲は良くて、下の子は子ども発達支援の仕事に就いています。伝え方はすごくデリケートで、捉え方によっては傷つけてしまうこともあるので、支援員がカバーできるところはしっかりフォローしてあげることが大事だと思います」
Aさん: 「上の子に厳しくなってしまうのは、特性の有無にかかわらずよくあることだと思います。外部の支援者が上のお子さんの良いところを親御さんに伝えることは、親御さん自身も気づいていない厳しさに気づくきっかけになります。お母さんに直接伝えづらいときは、お父さんを巻き込むという方法もありますよ。子どもの支援ってどうしてもお母さん中心になりがちですが、お父さんにも療育施設に来ていただいて、お母さんのフィルターを通さずに直接お子さんの様子を見てもらったり、支援員からお父さんにアドバイスしたりすることも、すごく大事だと思います」
事務局長よりメッセージ
今回の意見交換会でも、現場や保護者の皆さんから、たくさんの「生きた知恵」が共有されました。当協会では、以下の4つを大切に活動しています。
- 支援者を増やす
- 支援の質を高める
- 支援を届ける
- 支援をつなぐ
資格を取って終わりではなく、そこがスタートです。これからも皆さんと共に、発達支援のより良い未来を作っていければ幸いです。
一覧に戻る