メンタルヘルスの資格は仕事に活かせる?「仕事だけ」は146人中17人

メンタルヘルスの資格を調べていて、「仕事に活かせるのだろうか」と考えている方は多いと思います。受講料と時間を使う以上、業務のどこかに戻ってくるものであってほしい。当然の疑問です。

当協会の受講前アンケート146件では、受講動機として「現在の仕事に活かせると思ったから」を選んだ方が85名(58.2%)いらっしゃいました。8つの選択肢のなかで2番目に多い動機です。

ただ、この85名の回答をもう一段細かく見ていくと、少し違う姿が見えてきます。

  • 85名のうち43名(50.6%)は、同時に「身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から」も選んでいた
  • 「現在の仕事」だけを選んだ方は17名。146名全体では11.6%にとどまる
  • 85名の職種は、76.5%(65名)が医療・福祉業または教育業・学習支援業

つまり、「仕事のために取る」という動機は、単独ではあまり存在していないということです。この記事では、85名のデータをもとに、メンタルヘルスの資格が仕事のどこに接続しているのかを整理します。

メンタルヘルス資格のおすすめは?職種・目的別に選ぶ方法と受講者146人のデータ

メンタルヘルス支援士 公式サイト

本記事で紹介している一次情報について

項目内容
情報の性質一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」および「受講後アンケート」より抜粋
データ取得者一般社団法人 人間力認定協会
調査期間受講前 2025年2月〜2026年8月/受講後 2025年3月〜2026年8月
有効回答数受講前146件/受講後248件(うちエピソード29件)
設問「受講した動機(複数回答)」「職種(複数回答)」「年代」/「共有したいエピソード」
分析方法「現在の仕事に活かせると思ったから」を選んだ85名について、同時に選ばれた動機・動機の選択個数・職種を集計
注意点職種欄は業種10分類の選択式で、役職や職名を尋ねる設問はありません。「管理職」「人事」といった立場の集計はできません
注意点受講前アンケートと受講後アンケートは別々の調査です。動機と受講後の評価を個人単位で結びつけることはできません

「現在の仕事に活かせる」は146人中85人が選んでいる

まず全体像です。受講前アンケートでは、受講動機を8つの選択肢から複数選べる形で聞いています。

「現在の仕事に活かせる」を選んだ85人が同時に選んだ動機
受講した動機(複数回答)人数割合
身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から8658.9%
現在の仕事に活かせると思ったから8558.2%
子育てに活かせると思ったから4933.6%
自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から4530.8%
就転職時に活かしたいと思ったから3826.0%
なんとなく興味があるから2416.4%
独立、起業時に活かしたいと思ったから138.9%
資格取得が趣味だから106.8%

1位の「身近に精神疾患または症状がある方がいる」86名とは、わずか1名差です。仕事のためと、身近な人のため。この2つがほぼ同じ高さで並んでいます。

合計すると350件の回答がありました。146名で割ると、1人あたり平均2.40個の動機を選んでいる計算になります。受講を決めるとき、理由は1つではないということです。

85人が同時に選んでいた動機

ここが本記事の中心です。「現在の仕事に活かせると思ったから」を選んだ85名が、ほかに何を選んでいたかを集計しました。

同時に選ばれた動機人数85人に占める割合
身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から4350.6%
子育てに活かせると思ったから2731.8%
自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から2023.5%
就転職時に活かしたいと思ったから1416.5%
なんとなく興味があるから910.6%
資格取得が趣味だから78.2%
独立、起業時に活かしたいと思ったから67.1%
「現在の仕事」だけを選んだ1720.0%

半数を超える43名(50.6%)が、仕事の動機と並べて「身近に精神疾患または症状がある方がいる」を選んでいました。次いで「子育てに活かせる」27名(31.8%)、「自身に精神疾患または症状がある」20名(23.5%)と続きます。

職場のことだけを考えて学び始めた方は、85名のうち17名(20.0%)。残りの8割は、仕事と私生活の両方をまたいだ動機を持っていました。受講後アンケートの自由記述にも、その重なりがそのまま表れています。

仕事だけでなく、娘への理解にも繋がり、大変勉強になりました。(50代・総合評価は「満足」)

短い一文ですが、この記事の主題をそのまま言い表しています。仕事のために学んだ知識が、家庭の側に先に効いた、という順序です。

これは偶然ではありません。職場で気になる同僚に向ける視点と、家族に向ける視点は、そもそも同じ材料でできています。精神疾患の基礎知識も、発達障害の特性も、傾聴の姿勢も、相手が誰かによって内容が変わるものではないからです。仕事に活かすつもりで学んだ人が、家庭でも使えたと書くのは、自然な結果と言えます。

「仕事だけ」で受講する人は、146人中17人だった

動機を1つだけ選んだ方は、146名中34名でした。この34名が何を選んだかを見ると、最も多いのが「現在の仕事に活かせると思ったから」で17名(50.0%)。動機を1つに絞る人の半数が、仕事を理由に挙げています。

  • 動機を1個だけ選んだ 34名(うち「現在の仕事」17名)
  • 2個選んだ 50名
  • 3個選んだ 38名
  • 4個選んだ 20名
  • 5個以上選んだ 4名

85名の平均選択個数は2.48個で、146名全体の平均2.40個をわずかに上回りました。仕事を動機に挙げる方は、他の動機も一緒に持っている傾向がややあります。

この数字は、資格を検討している方にとって実用的な意味を持ちます。「仕事に使えるかどうか」だけを基準に選ぼうとすると、判断が難しくなるということです。実際に受講している方の8割は、仕事以外にも使える見込みを持ったうえで申し込んでいます。言い換えれば、その資格が仕事だけにしか使えないなら、多くの人にとっては選ぶ理由が足りていません。

85人の職種|76.5%が医療・福祉と教育の現場

「現在の仕事に活かせる」を選んだ85名の職種を見ると、偏りがはっきりしています。

  • 医療・福祉業 44名(51.8%)
  • 教育業・学習支援業 24名(28.2%)
  • サービス業 8名(9.4%)/その他 7名(8.2%)/製造・建築業 6名(7.1%)
  • 卸売・小売業・専業主婦(主夫) 各2名/運送業・金融保険業 各1名

医療・福祉業または教育業・学習支援業に該当する方は65名(76.5%)でした。一方、この動機を選ばなかった61名では同じ2業種は15名(24.6%)です。「仕事に活かせる」と考えて学び始めるのは、人と直接向き合う仕事の方に集中しているということになります。

職種ごとの選択率の詳細は別の記事で扱っていますので、そちらもあわせてご覧ください。

メンタルの資格を自分のために取る|6割近くが自分で検索していた

仕事のどこで使われているか|受講者のエピソード

「活かせる」と答えた方が、実際に現場で何をしているのか。受講後アンケートに寄せられたエピソードから、3件を原文のまま紹介します。

小学校の支援クラスで生活介助のパートをしています。先日、ADHDの1年生が音楽室の前の廊下で「わーっ」と叫んでいました。(中略)廊下に寝そべって「わーっ、わーっ」と叫んでいるので、「どうしたの?」と聞くと、「オレは落ち着かないんだ、わーっ」と答えました。最初は、静かにさせることに気がいって「今、他のクラスが勉強中やから静かにできる?」と言っても聞いてもらえなかったのですが、「落ち着かない」と言っていたのを思い出してとっさに「じゃあ、どうやったら落ち着けるの?」と聞いたところ、「オレはいま、ぞうきんがけをしたら落ち着くんだ」と言ったので、「じゃあ、担任の先生に聞いて雑巾がけしにいこうか?」と言うと、急に立ち上がって素直に支援の教室へ一緒に戻ってくれました。(中略)成功と言えるかわかりませんが、本人から話を聞くことが大大切だと感じた出来事です。(50代・総合評価は「大満足」)

「静かにさせる」から「どうやったら落ち着けるのか本人に聞く」への切り替えが、この場面の分かれ目になっています。知識が形を変えて出てくるのは、こうした一言の選び方のところです。

教室に入れない子供がいました。集団行動が苦手で毎日、校内を走り回って過ごしていました。近づくと暴れる、唾を顔にかけるなど他者への攻撃もあり関わり方を関係者で相談しました。(中略)そこで、入れ代わり立ち代わり付いていたのを担当者を一人に絞り観察していると、どこに隠れてしまうかどんな時かなど色々と見えてきました。信頼関係もでき、二人でよく学校内の地図がある場所で、困った時はどこに集合するか。どこまでなら一人で走り回っても大丈夫など話合いが出来るようになり(中略)その都度、担任や療育関係者と相談しながらスモールステップで取り組んだ結果、進級するころには普通にみんなと一緒に教室で学習が出来るようになりました。(50代・総合評価は「満足」)

「良かったね!やったね!」の声かけを意識しています。先日年少のA君が私の顔を見るなり「良かったねー!」と言ってくれました。思わず笑ってしまいましたが、最高のご褒美でした。(50代・総合評価は「大満足」)

3件に共通しているのは、新しい業務が増えたのではなく、いま行っている業務のなかでの反応の仕方が変わっていることです。担当者を一人に絞る、声かけの言葉を選ぶ、本人に聞いてから動く。どれも既存の仕事の内側で起きています。

逆に言えば、資格そのものが新しい業務や役職を連れてくるわけではありません。メンタルヘルス系の民間資格に業務独占はなく、それだけで担当が変わることは基本的にありません。何が学べて何が学べないのかは、別の記事で整理しています。

メンタルヘルス支援士の内容|学べること・学べないことを受講者248人のデータで

「仕事に活かす」の整理

データが示していること検討している方への意味
85名のうち43名(50.6%)が「身近に精神疾患のある人がいる」も選んでいた職場のためだけに学ぶ人は少数。私生活の側にも使い道があるかを一緒に考えておくと、判断が早くなる
「現在の仕事」だけを選んだのは17名(146名中11.6%)仕事だけを基準に選ぶと、費用と時間に見合うかの判断が難しくなりやすい
85名の76.5%が医療・福祉業または教育業・学習支援業人と直接向き合う仕事ほど、学んだことが戻ってくる場面が多い
エピソードはいずれも既存業務の内側の変化新しい役割ではなく、いまの仕事での反応の仕方が変わる。すぐに使える一方、肩書きは変わらない
民間資格に業務独占はない資格の有無で担当できる業務が増えるわけではない。期待の置きどころを間違えないこと
「仕事に活かす」の整理

メンタルヘルス支援士について

ここまで、「仕事に活かせる」と考えて受講した85名のデータについてご紹介してきました。

こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。

メンタルヘルス支援士の詳細について

Q&A|メンタルヘルスの資格を仕事に活かすことに関するよくある質問

Q1:メンタルヘルスの資格は、仕事に活かせますか?

受講前アンケート146件のうち85名(58.2%)が「現在の仕事に活かせると思ったから」を動機に挙げています。ただし活かし方は、新しい業務が増える形ではなく、いまの業務のなかでの反応の仕方が変わる形でした。受講後のエピソードでも、担当者の決め方や声かけの言葉の選び方といった、既存の仕事の内側での変化が語られています。

Q2:事務職や営業職でも役に立ちますか?

「現在の仕事に活かせる」を選んだ85名のうち、医療・福祉業と教育業・学習支援業以外は20名(23.5%)でした。サービス業8名、製造・建築業6名などが含まれます。人数としては少数ですが、ゼロではありません。人と話す場面がある仕事なら、使える場面はあります。ただし、人と直接向き合う時間が長い職種のほうが、学んだことを戻せる機会が多いのは確かです。

Q3:資格を取れば、職場での担当や役割が変わりますか?

基本的には変わりません。メンタルヘルス系の民間資格に業務独占はなく、資格があることで法的にできるようになる業務はありません。職場の制度として資格手当や配置の基準がある場合を除き、肩書きが変わることは期待しないほうが現実的です。変わるのは、日々の関わり方の精度のほうです。

Q4:仕事のためだけに取るのは、もったいないのでしょうか?

もったいないということはありません。実際、動機を1つだけ選んだ34名のうち17名(50.0%)は「現在の仕事」だけを挙げています。ただし、その17名は146名全体では11.6%にあたる少数派です。多くの方は仕事と私生活の両方を見て申し込んでいます。費用と時間に見合うかを考えるときは、職場以外の場面も一緒に思い浮かべてみてください。

Q5:仕事に活かしたい場合、どの資格を選べばよいですか?

職種によって答えが変わります。心理職として働くことを目指すなら公認心理師や臨床心理士のように大学・大学院での履修が前提の資格になりますし、いまの仕事のなかで関わり方を良くしたいなら受験制限のない民間資格から始める選択肢があります。「仕事に活かす」の中身が、職業を変えることなのか、いまの業務の質を上げることなのかで、見るべき資格が分かれます。

まとめ|「仕事のため」は、単独では存在しなかった

  • 「現在の仕事に活かせると思ったから」は146名中85名(58.2%)。1位の「身近に精神疾患のある人がいる」86名とほぼ並ぶ
  • 85名のうち43名(50.6%)が、その「身近に精神疾患のある人がいる」も同時に選んでいた
  • 「現在の仕事」だけを選んだのは17名。146名全体では11.6%
  • 85名の平均選択個数は2.48個(全体平均2.40個)。理由は1つではない
  • 85名の職種は76.5%が医療・福祉業または教育業・学習支援業。選ばなかった61名では24.6%
  • エピソードで語られていたのは、新しい業務ではなく既存業務のなかでの反応の変化
  • 民間資格に業務独占はなく、資格の有無で担当業務が増えるわけではない

「仕事に活かせますか」という問いに、データは少しずれた形で答えていました。活かせるかどうかより、仕事の外にも使い道があるかどうかが、受講を決めた方々の実際の判断基準だったということです。検討している方も、職場の場面と家庭や身近な人の場面を、両方あわせて考えてみてください。

【注意事項】

この記事で紹介している内容は、当協会が収集したアンケート・体験談の一部をもとにまとめています。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。また、本記事は診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や不安がある場合は、早めに医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。

参考・相談先

メンタルヘルス支援士バナー