「メンタルヘルス 資格」で検索すると、国家資格から通信講座で取れるものまで、性質のまったく違う資格が同じ一覧に並びます。しかも比較軸が「難易度」や「人気」になっていることが多く、自分にとってどれが必要なのかは分からないままということが起こりがちです。
この記事では、順位を付けません。代わりに次の3つを行います。
- 主な資格を国家資格・公的検定・民間資格の3つに分けて、費用・要件・合格率を一覧にする(すべて公式サイトで確認した2026年8月時点の値)
- 法律上、この分野の資格に何ができて何ができないのかを整理する(心理・メンタルヘルス分野に「業務独占」の資格は存在しません)
- 当協会の資格に申し込んだ146人が、実際に何のために学び始めたのかというデータを公開する
最初に、いちばん誤解の多い点をお伝えしておきます。公認心理師も精神保健福祉士も「名称独占」の資格であり、カウンセリングという行為そのものを独占する資格ではありません。民間資格の人が相談にのること自体が法律で禁じられているわけではない、ということです。この構造を知っておくと、一覧表の読み方が変わります。
>メンタルヘルスの資格はどんな人が取る?受講者146人の年代・職種・動機データ
本記事で紹介している情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般情報の出典 | 各資格の実施団体・認定団体の公式サイト、および厚生労働省の公表資料。2026年8月27日にすべて実際に閲覧して確認 |
| 一般情報の注意点 | 受験手数料・講座費用・合格率は改定されます。申込前に必ず公式サイトで最新の値をご確認ください |
| データの性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 調査期間 | 2025年2月〜2026年7月 |
| 有効回答数 | 146件 |
| 設問 | 「受講した動機(複数回答)」「年代」「職種(複数回答)」 |
| 分析方法 | 動機8分類の全体集計、および年代別・職種別のクロス集計 |
| 注意点 | 回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます。他の資格を選んだ人のデータは含まれていません |
受講者の声として引用している文章は、受講後アンケート(有効回答248件・2025年3月〜2026年8月)の自由記述欄および体験談欄からそのまま転載しています。誤字の修正以外の編集は行っていません。
国家資格|公認心理師と精神保健福祉士
この分野の国家資格は、実質的にこの2つです。どちらも名称独占で、大学・大学院や養成施設での履修が前提になります。
| 項目 | 公認心理師 | 精神保健福祉士 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 公認心理師法(平成27年法律第68号) | 精神保健福祉士法(平成9年法律第131号) |
| 資格の性質 | 名称独占 | 名称独占 |
| 試験実施団体 | 一般財団法人 公認心理師試験研修センター(厚生労働大臣指定試験機関) | 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター |
| 主なルート | 4年制大学で指定科目を履修し、大学院で指定科目を履修(区分A)。ほかに実務経験ルートなどの区分あり | 4年制大学で指定科目を履修/短大等+相談援助業務/短期養成施設(6か月以上)/一般養成施設(1年以上)の4ルート |
| 受験手数料 | 28,700円(第9回) | 24,140円(第28回)/28,910円(第29回) |
| 直近の合格率 | 60.0%(第9回・2026年3月) | 78.2%(第28回・2026年3月発表) |
| 特記 | 名称中に「心理師」の文字を用いることも禁止(法第44条)。要支援者に主治医がいる場合はその指示を受ける義務(法第42条2項) | 受験手数料は第29回から改定。合格率は第25〜27回が70%台前半で推移 |
注意したいのが、公認心理師の名称規制です。法第44条により、資格を持たない人は「公認心理師」を名乗れないだけでなく、名称の中に「心理師」の文字を使うこと自体が禁じられています(違反は法第49条で30万円以下の罰金)。「心理士」(士)と「心理師」(師)で扱いが違い、一字の差が法的な意味を持ちます。また公認心理師には、要支援者に主治医がいる場合はその指示を受けなければならないという法定の義務もあります(法第42条2項)。
いずれも、働きながら短期間で取得できる性質のものではありません。「いまの仕事や家庭の中で使える知識がほしい」という目的とは、そもそも設計が違います。
公的検定・主要な民間資格の一覧
ここからは、学歴要件のない選択肢です。費用と期間の幅が非常に大きいことが分かります。
| 資格・検定 | 実施・認定団体 | 主な条件 | 費用(税込) | 直近の合格率 |
|---|---|---|---|---|
| メンタルヘルス・マネジメント検定 I種 | 大阪商工会議所 | 受験制限なし(学歴・年齢・国籍不問)。選択問題+論述 | 11,550円 | 19.4%(第39回) |
| 同 II種(ラインケアコース) | 大阪商工会議所 | 受験制限なし。管理監督者向け | 7,480円 | 78.0%(第40回) |
| 同 III種(セルフケアコース) | 大阪商工会議所 | 受験制限なし。一般社員向け | 5,280円 | 69.7%(第40回) |
| 産業カウンセラー | 一般社団法人 日本産業カウンセラー協会 | 養成講座(179時間・6か月または10か月)の修了など | 講座352,000円+受験料44,000円 | 48.1%(2025年度・総合) |
| 認定心理士 | 公益社団法人 日本心理学会 | 4年制大学卒業+心理学関連科目36単位以上(2014基準)。試験はなく書類審査 | 審査料11,000円+認定料33,000円 | -(試験なし) |
| 臨床心理士 | 公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 | 指定された大学院修士課程の修了、諸外国で同等の教育を受けた場合、または医師免許取得者。5年ごとに資格更新審査があり、研修や研究が義務づけられている | 公式サイトに記載を確認できず | 同左 |
| メンタルケア心理士 | メンタルケア学術学会(試験は「こころ検定2級」/日本こころ財団主催・CBT会場受験) | 指定講座の修了+こころ検定2級の合格 | 検定7,700円+認定登録費6,100円+講座費用 | 非公表 |
| ケアストレスカウンセラー | 一般財団法人 職業技能振興会(内閣府認可) | 18歳以上。講座受講は不要。在宅受験・随時 | 12,000円 | 非公表(合格基準は正答率70%以上) |
| メンタル心理カウンセラー | 日本能力開発推進協会(JADP) | 協会指定の認定教育機関のカリキュラム修了。在宅受験・随時 | 受験料5,600円+講座費用 | 非公表(合格基準は得点率70%以上) |
| メンタルヘルス支援士 | 一般社団法人 人間力認定協会(当協会) | 受験制限なし。受講期限8カ月・学習の目安20〜40時間。オンライン受験 | 受講料35,200円+試験料5,060円 | 80%前後 |
この表から読み取れることを3つ挙げます。
- 費用は5,280円から352,000円まで、約67倍の開きがあります。「メンタルヘルスの資格」という同じ言葉でくくられていても、投じる資源がまったく違います
- 合格率を1つの数字で語るのは危険です。メンタルヘルス・マネジメント検定II種は、第39回47.8%から第40回78.0%へ1回で30ポイント動いています。I種は19.4%〜20.9%と一貫して低い水準です
- 民間資格は「認定団体は誰か」と「試験の実体は何か」が別のことがあります。たとえばメンタルケア心理士は、認定するのが学術学会、試験の実体は別団体が主催する「こころ検定」です。また臨床心理士や産業カウンセラーのように更新制のものもあり、取得後にも研修などの負担が続きます
もう1点、見落とされがちな注意点があります。通信講座のなかには、この資格を取得しても心理カウンセラーの業務を行うことはできないという趣旨の但し書きを公式のFAQに明記しているものがあります。知りたいのは「取れるか」ではなく「取ったあと何ができるか」ですから、こうした注記の有無は比較軸として有効です。

法律上、この分野の資格で何ができるのか
ここが、資格選びで最も誤解の多いところです。厚生労働省の資料では、資格の性質が次のように整理されています。
- 国家資格=国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明されるもの
- 業務独占資格=有資格者以外が携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格
- 名称独占資格=有資格者以外はその名称を用いて業務を行うことが認められていない資格
- 設置義務資格=特定の事業を行う際に、法律で設置が義務づけられている資格
このうち、心理・メンタルヘルスの分野に「業務独占」の資格はありません。公認心理師も精神保健福祉士も名称独占です。医師や弁護士のように、有資格者以外がその行為をすると違法になる——という構造にはなっていません。
ここから、2つのことが同時に言えます。
- 民間資格しか持っていない人が、話を聴いたり相談にのったりすること自体は、法律で禁じられていません
- 同時に、どの資格も「これを持っていれば大丈夫」という保証にはなりません。資格が業務を守っていない以上、実際に何ができるかは、学んだ中身と経験にしかよらないからです
2つ目は、資格を売る側にとって都合のよい話ではありません。それでも、ここを曖昧にしたまま選ぶと後で困るのはご本人です。
職場のメンタルヘルスには、法律で決まった役割がある
企業で働く方に関係するのは、資格よりもむしろ法定の役割です。労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者がいる事業場には産業医と衛生管理者の選任が義務づけられています(10人以上50人未満の事業場には安全衛生推進者または衛生推進者)。厚生労働省「こころの耳」の資格・検定ページも、関連する資格を①事業場内産業保健スタッフ ②こころの健康問題の治療従事者等 ③労働法・労務管理の相談対応者 ④こころの相談対応者──の4つに分類しています。会社の中で役割を担いたい方は、資格の一覧より先にこの分類を見たほうが早いことがあります。
146人は、何のために学び始めたのか

ここからは当協会の一次情報です。制度の話とは別に、実際に資格を取ろうとした人が何を目的にしていたかを見ていきます。当協会の「メンタルヘルス支援士」に申し込んだ146人に、受講の動機を複数回答でうかがいました。
| 受講した動機(複数回答) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から | 86 | 58.9% |
| 現在の仕事に活かせると思ったから | 85 | 58.2% |
| 子育てに活かせると思ったから | 49 | 33.6% |
| 自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から | 45 | 30.8% |
| 就転職時に活かしたいと思ったから | 38 | 26.0% |
| なんとなく興味があるから | 24 | 16.4% |
| 独立、起業時に活かしたいと思ったから | 13 | 8.9% |
| 資格取得が趣味だから | 10 | 6.8% |
1位は「身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から」で86人(58.9%)でした。就転職のためは26.0%、独立・起業のためは8.9%。キャリアのために資格を取る人が主流だという前提とは、実態がかなり違います。
この構図は年代でさらに変わります。「自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から」は、20代58%(12人中7人)、30代50%(28人中14人)、40代30%(56人中17人)、50代12%(41人中5人)と下がる一方、「身近に精神疾患または症状がある方がいる」は20代50%、40代62%、50代66%と上がります。
若い層は自分のために学び、年齢が上がるほど誰かのために学ぶようになる。同じ資格が、年代によってまったく違う意味を持って選ばれている、ということです。
実際の回答にも、その両方が見られました。
私自身がメンタル疾患で人生のどん底気分を経験したことがあります。家族をはじめ、周囲の人や環境に恵まれて回復し、今度は自分が誰かを支えたいと思ったことがきっかけで受講しました。自分の状況と照らし合わせながら学習をして、自身を見つめ直すことも出来たと思います。学んだことを活かして、社会全体を明るくしていきたいです。
30代の方の回答です。「自分のため」と「誰かのため」は、実際には順番につながっていることが分かります。
浅く広く学習が出来て良かったです。自分のペースで出来るのも魅力的でした。認知行動療法を深堀したくてアンガーマネジメント協会の資格も取得しました。おかげで、就活で防衛省に臨時職員ですが入ることが出来ました。大人も子供も困り感は同じなので、これからは大人の発達障害の学びもしていきたいと思っています。
50代の方の回答です。1つの資格で完結させず、目的に応じて足していくという使い方をされています。「浅く広く」という表現も率直で、民間資格の位置づけをよく表しています。
協会の資格はすべて取得しており、認定支援士も登録済みです。(中略)この協会で取得できる資格はあくまでも基礎的な範囲になりますが、短すぎず正しい知識が学べる良い講座になっていると感じます。資格を取得したら後はひたすら実践をくり返すことで適切な知識が技術に結び付くと思っています。(後略)
20代の方の回答です。この方は資格取得後、通信制大学に進み、現在は特別支援教育に従事されているとのことでした。「あくまでも基礎的な範囲」という一文をそのまま載せているのは、それが事実だからです。民間資格は入口であって、到達点ではありません。
目的から逆算する、3つの入口
ここまでの制度とデータをふまえて、目的別に整理します。順位ではなく、目的が違えば行き先も違うという考え方です。
入口A|いまの生活や仕事の中で使いたい
家族や同僚のことで困っている、子どもとの関わりに活かしたい、自分の不調を理解したい——今回のデータではこれが多数派でした(身近な人58.9%、子育て33.6%、自分自身30.8%)。この目的には学歴要件のない検定・民間資格が現実的な選択肢になります。メンタルヘルス・マネジメント検定III種(5,280円)のように受験だけで完結するものから、テキストで体系的に学ぶ通信型まで幅があります。判断の軸は難易度ではなく、自分が知りたいテーマが目次にあるかです。
発達障害の子どもを抱え、日々悩む事が多い中、少しでも知識を増やし、子どものメンタルヘルスを安定させたいと思い受講させて頂きました。内容が知らない事ばかりで覚えるのに大変苦労しましたが、役に立つ内容ばかりだったので、受講して本当に良かったです。職場の保育園でも学んだことを生かしていきたいと考えております。
40代の方の回答です。家庭のことがきっかけで学び、職場でも使う——という流れは、今回のデータで動機の1位と2位(身近な人58.9%/現在の仕事58.2%)がほぼ並んでいることとも重なります。
入口B|職場でメンタルヘルスの役割を担いたい
企業の人事・労務や管理職の立場で取り組みたい場合は、資格の一覧を眺めるより先に自社に何が求められているかを確認するのが早道です。常時50人以上の事業場には産業医と衛生管理者の選任義務があり、こうした役割は資格ではなく法令で決まっています。
そのうえで、管理監督者向けならメンタルヘルス・マネジメント検定II種(7,480円)、社内全体の対策を推進する立場ならI種(11,550円)が対応します。ただしI種は合格率19.4%(第39回)と低く、論述試験もあります。相談対応そのものを学ぶなら産業カウンセラー(養成講座352,000円+受験料44,000円・179時間)ですが、費用と時間の負担は大きくなります。
入口C|職業として支援に携わりたい
心理職・福祉職として働くことを目指す場合は、国家資格のルートに入ることになります。公認心理師は4年制大学+大学院が基本ルート、精神保健福祉士は指定科目の履修または養成施設(6か月〜1年以上)です。いずれも数年単位の計画が必要で、民間資格の延長線上にはありません。
ただし、民間資格が無駄になるという意味ではありません。先ほど引用した20代の方は、当協会の資格をきっかけに通信制大学へ進み、現在は特別支援教育に従事されています。入口Aから入って入口Cへ移る人はいます。最初から正解のルートを選ばなければならない、と考える必要はありません。
>メンタルヘルス資格のおすすめは?職種・目的別に選ぶ方法と受講者146人のデータ
メンタルヘルス支援士について
ここまで、メンタルヘルス関連の資格の全体像と、146人の受講動機をご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。上の分類でいえば入口Aにあたります。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
まとめ|資格一覧の読み方
- この分野の国家資格は公認心理師と精神保健福祉士の2つ。どちらも名称独占で、業務独占の資格はこの分野に存在しない
- 公認心理師は名称中に「心理師」の文字を使うことも禁じられている(法第44条)。「心理士」と「心理師」は別物
- 学歴要件のない選択肢は費用が5,280円〜352,000円と約67倍の開き。投じる資源がまったく違う
- 合格率は回ごとの振れが大きい(検定II種は第39回47.8%→第40回78.0%)。単年の数字で難易度を断定しない
- 民間資格は「認定団体」と「試験の実体」が別のことがある。講座の但し書きの有無も比較軸になる
- 146人の動機1位は「身近に精神疾患または症状がある方がいる」58.9%。就転職26.0%、独立起業8.9%。キャリアのためだけの資格ではない。年代が上がるほど「自分のため」から「誰かのため」へ移る(自身の症状:20代58%→50代12%)
一覧表を上から順に検討するより、まず自分がA・B・Cのどの入口にいるかを決めてください。そこから先に残る候補は、たいてい2つか3つです。
【注意事項】
本記事に掲載した他団体の資格の費用・要件・合格率は、2026年8月27日に各実施団体・認定団体の公式サイトで確認した値です。制度改定や料金改定により変わりますので、申込前に必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。受講者アンケートの数値は、当協会が収集したデータの一部をもとにまとめており、回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。また、本記事は診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や不安がある場合は、早めに医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。


