自分が経験したことを、きちんと言葉で理解したい。あるいは、同じことで困っている人の役に立ちたい。そういう理由でメンタルヘルスの資格を調べ始める方がいます。
当協会の受講前アンケート146件で、「自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から」を選んだ方は45名(30.8%)。3人に1人近くです。この45名のデータには、他の動機を選んだ方とはっきり違う3つの特徴がありました。
- 申込のきっかけが「ネット検索」26名(57.8%)で、「協会からの案内」13名(28.9%)を大きく上回る。146名全体とは順位が逆
- 「就転職時に活かしたい」が19名(42.2%)。全体の26.0%を16ポイント上回る
- 年代が若い。30代14名・20代7名・10代2名で、40代以下が40名(88.9%)
要するに、この45名の多くは自分で検索してたどり着き、しかも次の仕事のことも考えているということです。
先にお伝えしておきます。資格を取ることは、治療の代わりにはなりません。この記事は、症状を良くする方法を書いたものではなく、45名がどういう理由で学びに来たかを整理したものです。いま症状で困っている場合は、まず医療機関や相談窓口につないでください。記事末尾に窓口を載せています。
>メンタルヘルスの資格はどんな人が取る?受講者146人の年代・職種・動機データ
本記事で紹介している一次情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」および「受講後アンケート」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 調査期間 | 受講前 2025年2月〜2026年8月/受講後 2025年3月〜2026年8月 |
| 有効回答数 | 受講前146件(うち該当45件)/受講後248件(自由記述65件・エピソード29件) |
| 設問 | 「受講した動機(複数回答)」「申込のきっかけ」「申込の決め手は」「他団体資格の申込経験」「当協会資格の申込経験」「年代」「性別」/「自由にメッセージをお願いします」「共有したいエピソード」 |
| 分析方法 | 「自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から」を選んだ45名について、動機の選択個数・同時に選ばれた動機・きっかけ・決め手・年代・性別を集計し、146名全体と比較 |
| 注意点 | 診断の有無や病名を尋ねる設問はありません。「精神疾患または症状がある(過去にあった)」という自己申告であり、医師の診断を確認したものではありません |
| 注意点 | 回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます。症状の経過や回復についてのデータではありません |
| 注意点 | 受講前アンケートと受講後アンケートは別々の調査です。動機と記述を個人単位で結びつけることはできません |
6割近くが、自分で検索してたどり着いている
最も違いが出たのが、申込のきっかけです。
| 申込のきっかけ | 45人 | 割合 | 146人全体 |
|---|---|---|---|
| ネット検索 | 26 | 57.8% | 39.0% |
| 協会からの案内 | 13 | 28.9% | 44.5% |
| 知人からの紹介、口コミ | 3 | 6.7% | 4.1% |
| テレビやラジオ(芸能人からの発信) | 1 | 2.2% | 2.1% |
146名全体では「協会からの案内」44.5%が1位ですが、この45名では順位が逆転します。ネット検索57.8%が、案内28.9%の2倍近い。
裏づけになるのが、当協会の他の資格を申し込んだ経験です。45名のうち経験がある方は20名(44.4%)で、146名全体の60.3%を大きく下回りました。一方、他団体のメンタル・心理資格の申込経験がある方は11名(24.4%)で、全体の19.9%を上回っています。
つまりこの45名の多くは、当協会を知らない状態から自分で探して来ています。そして他団体の資格も含めて比べている割合が高い。誰かに紹介されて申し込むのではなく、自分の状況を出発点に、自分で調べて決めているということです。
申込の決め手にも、その姿勢が出ています。「内容が魅力的だと感じたから」16名(35.6%)が1位で、「短期間で取得できる資格だから」8名(17.8%)が全体の10.3%を上回りました。中身を見て決めつつ、期間の短さも判断材料にしているという形です。

4割が「就転職に活かしたい」も選んでいる
45名が同時に選んでいた動機を見ると、もうひとつの特徴が出ます。
| 同時に選ばれた動機 | 45人 | 割合 | 146人全体 |
|---|---|---|---|
| 身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から | 26 | 57.8% | 58.9% |
| 現在の仕事に活かせると思ったから | 20 | 44.4% | 58.2% |
| 就転職時に活かしたいと思ったから | 19 | 42.2% | 26.0% |
| 子育てに活かせると思ったから | 13 | 28.9% | 33.6% |
| なんとなく興味があるから | 7 | 15.6% | 16.4% |
| 独立、起業時に活かしたいと思ったから | 5 | 11.1% | 8.9% |
| 資格取得が趣味だから | 3 | 6.7% | 6.8% |
| 「自身に精神疾患」だけを選んだ | 4 | 8.9% | ― |
「就転職時に活かしたい」42.2%は、146名全体の26.0%を16.2ポイント上回りました。8つの動機のなかで、最も差が開いた項目です。
平均選択個数は3.07個で、全体の2.40個を大きく上回ります。動機を1つだけ選んだ方は4名(8.9%)にとどまりました。自分のことだけを理由に学びに来ている方は、少数派です。
年代も特徴的でした。30代14名・40代17名・20代7名・50代5名・10代2名。40代以下が40名(88.9%)を占め、146名全体(40代以下は98名・67.1%)より若い構成です。性別は女性34名・男性11名で、男性の割合24.4%は全体の13.0%の約2倍でした。
これらを重ねると、ひとつの像が浮かびます。自分の経験を出発点に、若いうちに、次の仕事も視野に入れて、自分で探して学び始める。そういう方が45名のなかに一定数いるということです。
ただし、就転職について当協会が言えることは限られています。受講後の就職・転職を追跡した調査を行っていないため、「有利になる」と言えるデータはありません。民間資格に業務独占はなく、応募できる求人が法的に増えることもありません。
>メンタルヘルスの資格一覧|結局どれ?目的別に選ぶ(146人調査)
学んだ人は、自分の経験をどう扱っていたか
受講後の記述から4件を紹介します。いずれも原文のままです。
私自身がメンタル疾患で人生のどん底気分を経験したことがあります。家族をはじめ、周囲の人や環境に恵まれて回復し、今度は自分が誰かを支えたいと思ったことがきっかけで受講しました。自分の状況と照らし合わせながら学習をして、自身を見つめ直すことも出来たと思います。学んだことを活かして、社会全体を明るくしていきたいです。(30代・総合評価は「大満足」)
「自分の状況と照らし合わせながら学習をして」という部分が、この立場ならではの学び方です。経験があるぶん、教材の記述が自分の記憶と結びつきます。それが理解を深めることもあれば、当時のことを思い出して苦しくなることもあります。後者になったときは、無理に読み進めないでください。
何かと自分には精神疾患や障害もあると思っていましたが、うつの診断をされた経験はあっても、知能検査で問題はありませんでした。今回勉強をしていて、ボーダーラインパーソナリティ症を知り、小さい頃の親の言動が大人になった今でも性格を引っ張っている可能性があると感じました。自分にも子供がおり、家族関係、友人関係、事件など色んな経験があったので、今回の勉強を参考に、ゆくゆく苦しまないようにサポートしてあげたいとおもいました。(40代・総合評価は「大満足」)
ここは丁寧に読む必要があります。教材で知った病名を、自分に当てはめて考えている記述です。「可能性があると感じました」という書き方には慎重さがありますが、学ぶ過程で自己診断に傾くことは実際に起こります。
当協会として、はっきり書いておきます。診断は医師が行うものです。テキストを読んで思い当たることがあっても、それは診断ではありません。気になったときは、自分で結論を出す前に医療機関で相談してください。知識は、受診の入口として使うのが最も安全です。
私事ですが、悩んだ時モヤモヤしたときいろんな対策を調べましたが、参考になっていたことが今思えばセルフリフレーミング日記やアサーションでした。いろいろ書き出して自己分析する方法や回避の仕方間違ってなかったとまた、ちゃんとした研究結果があることがわかりおもしろかったです。機会あれば友人などにも伝えたいと感じました(40代・総合評価は「大満足」)
こちらは逆の方向です。自己流で続けていた対処に、名前と裏づけがあると分かったという記述。「間違ってなかった」という一語に、それまでの不安が表れています。当事者としての経験を、否定でも肯定でもなく、位置づけられた形です。
自身がasdなので、支援者が自分にどんなことを伝えたいのか、助言したいのか、ということについて、学ばせて頂いてなるほどと思いました。(30代・総合評価は「大満足」)
支援される側にいた方が、支援する側の考え方を知るという使い方です。これは当事者にしかできない学び方かもしれません。自分が受けてきた関わりに、どういう意図があったのかが分かる。
学ぶ前に確認しておきたい3つのこと
ひとつ。学ぶことは、治療の代わりにはなりません。受診中の方は、学習を理由に通院や服薬を止めないでください。教材に書かれているのは一般的な知識で、あなたの状態に合わせた判断ではありません。
ふたつ。読んでいて苦しくなったら、止めてください。精神疾患の基礎知識を扱う教材には、自分の経験と重なる記述が出てきます。受講期限に余裕のある講座を選んでおくと、体調に合わせて進められます。当協会の受講後アンケートにも「受講期間が長くスキマ時間に勉強でき」という声があります。
みっつ。自己診断に使わないでください。病名を知ることと、自分がそうだと判断することは別です。思い当たることがあったら、そこで結論を出さずに医療機関へ持っていってください。
自分のために学ぶことの整理
| 45人のデータが示していること | 検討している方への意味 |
|---|---|
| きっかけは「ネット検索」57.8%が1位(全体は「協会からの案内」44.5%が1位) | 周りに勧められて学ぶ人は少数。自分で調べて決めているのが普通の入り方 |
| 「就転職に活かしたい」42.2%(全体26.0%)で8動機のなかで最大の差 | 次の仕事を視野に入れている人が4割。ただし有利になるというデータは当協会にはない |
| 「自身に精神疾患」だけを選んだのは4名(8.9%)。平均3.07個 | 自分のことだけが理由の人は少数。他の理由と並べて考えてよい |
| 40代以下が40名(88.9%)。男性24.4%(全体13.0%) | 比較的若い層と男性が多い。年齢や性別で浮くことを心配しなくてよい |
| 受講者の記述は、経験を「否定でも肯定でもなく位置づける」方向で語られている | 治すためではなく、自分に起きたことを理解するための道具として使われている |

メンタルヘルス支援士について
ここまで、自身に精神疾患または症状がある45名のデータについてご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|自分のために学ぶこと
Q1:治療中でも、資格の勉強をして大丈夫ですか?
体調によります。まず、学習を理由に通院や服薬を止めないでください。そのうえで、読んでいて苦しくなる場面が出てきたら、そこで止めて構いません。受講期限に余裕のある講座を選んでおくと、体調に合わせて進められます。判断に迷う場合は、主治医に「こういう内容の勉強を始めたい」と相談してみてください。
Q2:勉強すると、自分の症状は良くなりますか?
良くなるとは言えません。当協会は受講後の症状の経過を調査しておらず、そのようなデータを持っていません。教材に書かれているのは一般的な知識で、個々の状態に合わせた判断ではありません。治療は医療機関の役割で、資格の学習がその代わりになることはありません。
Q3:教材を読んで、自分に当てはまる病名が見つかりました。
そこで結論を出さないでください。診断は医師が行うものです。受講者の記述にも「ボーダーラインパーソナリティ症を知り、小さい頃の親の言動が大人になった今でも性格を引っ張っている可能性があると感じました」という書き方がありました。「可能性があると感じた」までは学びですが、そこから先は医療機関の領域です。気になったことは、自己判断せずに受診時に持っていってください。
Q4:当事者であることは、学ぶうえで有利ですか?
有利・不利で測れるものではありません。ただ、受講者の記述には「自身がasdなので、支援者が自分にどんなことを伝えたいのか、助言したいのか、ということについて、学ばせて頂いてなるほどと思いました」という一文があります。支援される側にいた経験から、支援する側の意図を理解する。これは当事者にしかできない読み方かもしれません。一方で、自分の経験と重なって苦しくなる場面も出てきます。
Q5:自分の経験を仕事にしたいのですが、可能でしょうか?
45名のうち19名(42.2%)が「就転職時に活かしたい」も選んでおり、146名全体の26.0%を大きく上回っています。ただし当協会には受講後の就職・転職を追跡したデータがなく、有利になるとは言えません。民間資格に業務独占はありません。心理職として働くことを目指す場合は、公認心理師や臨床心理士のように大学・大学院での履修が前提になります。「経験があること」と「職業にできること」は、別に考えてください。
>メンタルヘルスの資格は仕事に活かせる?「仕事だけ」は146人中17人
まとめ|自分で調べて、自分で決めている人たち
- 「自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から」は146名中45名(30.8%)
- きっかけは「ネット検索」26名(57.8%)が1位で、「協会からの案内」13名(28.9%)を上回る。146名全体とは順位が逆
- 当協会の他資格の申込経験は20名(44.4%・全体60.3%)。他団体の申込経験は11名(24.4%・全体19.9%)
- 「就転職に活かしたい」42.2%は全体26.0%を16.2ポイント上回り、8動機で最大の差
- 平均選択個数3.07個(全体2.40個)。「自身に精神疾患」だけを選んだのは4名(8.9%)
- 40代以下が40名(88.9%)。男性は11名(24.4%・全体13.0%)
- 学ぶことは治療の代わりにならず、自己診断にも使えない
45名は、誰かに勧められたのではなく、自分の状況から出発して自分で探しています。それは同時に、止めどきも自分で決めなければならないということでもあります。読んで苦しくなったら止める。思い当たることは医療機関へ持っていく。この2つだけ守っていただければと思います。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、当協会が収集したアンケート・体験談の一部をもとにまとめています。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。また、本記事は診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や不安がある場合は、早めに医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。


