医療・福祉の現場で働く人がメンタルヘルスを学ぶ理由|受講者53人のデータ

看護、介護、障害福祉、精神科の訪問看護。人の心の状態と毎日向き合う仕事をしていると、専門の教育を受けていない領域にぶつかる場面が出てきます。「この対応で合っているのか」と考えたときに、資格という形での学び直しが選択肢に入ってきます。

当協会の受講前アンケート146件のうち、職種を「医療・福祉業」と答えた方は53名(36.3%)で、10分類のなかで最も多いグループです。この53名のデータには、他の職種とはっきり違う特徴が3つありました。

  • 「現在の仕事に活かせると思ったから」が44名(83.0%)。全職種のなかで最も高い
  • そのうち29名(54.7%)は「身近に精神疾患または症状がある方がいる」も同時に選んでいる
  • 他団体のメンタル・心理資格を申し込んだ経験がある方が14名(26.4%)。146名全体の19.9%より高い

3つ目が特に目を引きます。医療・福祉の現場で働く方は、他の資格も見比べたうえで選んでいる割合が高い。この記事では、53名のデータと受講後のエピソードから、この分野の方がメンタルヘルスを学ぶ理由と、現場での使われ方を整理します。

メンタルヘルス資格のおすすめは?職種・目的別に選ぶ方法と受講者146人のデータ

メンタルヘルス支援士 公式サイト

本記事で紹介している一次情報について

項目内容
情報の性質一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」および「受講後アンケート」より抜粋
データ取得者一般社団法人 人間力認定協会
調査期間受講前 2025年2月〜2026年8月/受講後 2025年3月〜2026年8月
有効回答数受講前146件(うち医療・福祉業53件)/受講後248件(うちエピソード29件)
設問「職種(複数回答)」「受講した動機(複数回答)」「申込のきっかけ」「申込の決め手は」「他の団体が認定するメンタル・心理資格を申込したことはあるか」「当協会の資格を申込したことはあるか」/「共有したいエピソード」
分析方法職種で「医療・福祉業」を選んだ53名について、動機・きっかけ・決め手・他資格の経験・年代・性別を集計し、146名全体と比較
注意点職種欄は業種10分類の選択式です。看護師・介護福祉士・相談支援専門員といった職名や、役職を尋ねる設問はありません
注意点受講前アンケートと受講後アンケートは別々の調査です。動機とエピソードを個人単位で結びつけることはできません
医療・福祉業53人の受講動機

医療・福祉業53人が挙げた受講動機

受講動機は8つの選択肢から複数選べる形式です。53名の回答を、146名全体と並べます。

受講した動機(複数回答)医療・福祉業53人割合146人全体
現在の仕事に活かせると思ったから4483.0%58.2%
身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から2954.7%58.9%
子育てに活かせると思ったから1732.1%33.6%
自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から1732.1%30.8%
就転職時に活かしたいと思ったから1120.8%26.0%
なんとなく興味があるから59.4%16.4%
独立、起業時に活かしたいと思ったから47.5%8.9%
資格取得が趣味だから35.7%6.8%

「現在の仕事に活かせる」83.0%は、全体の58.2%を25ポイント近く上回ります。職種10分類のなかでも最も高い数字です。すでに人と向き合う仕事をしている方にとって、メンタルヘルスの知識は業務と直結しているということが、はっきり出ています。

一方で「なんとなく興味があるから」は9.4%(5名)で、全体の16.4%を下回りました。目的がはっきりしている集団だと言えます。

もうひとつ、「就転職時に活かしたい」が20.8%(11名)で全体の26.0%を下回っている点も、この分野の位置づけを表しています。すでにこの仕事に就いている方が、いまの職場で使うために学びに来ている。転職の武器として資格を集めているのではなく、目の前の業務のために足りない知識を足しに来ている、という形です。医療・福祉の求人で、この種の民間資格が応募条件になることはまずありません。それを分かったうえで受講している方が多い、と読むのが自然でしょう。

「仕事のため」の中身|半数以上が身近な人のことも挙げている

53名の平均選択個数は2.45個で、146名全体の2.40個とほぼ同じでした。動機を1つだけ選んだ方は12名です。つまり41名(77.4%)は、仕事以外の理由も一緒に持っていることになります。

内訳を見ると、「身近に精神疾患または症状がある方がいる」が29名(54.7%)、「子育てに活かせる」と「自身に精神疾患または症状がある」がそれぞれ17名(32.1%)。職場で支援する側にいる方が、家庭でも同じ立場に置かれているという構図が読み取れます。

受講後のエピソードにも、その重なりが表れています。

これから精神科訪問看護での作業療法を行う上で、精神科関係の復習と、私は大人の発達障害起因の気分症、妻も精神疾患があり、公私共々、良き学びの時間となりました。これからもその都度見返しつつ、引き続き学んでいきます。ありがとうございました。

40代の方の回答です。総合評価は「大満足」でした。「公私共々」という一語が、53名の動機の重なりをそのまま言い表しています。専門職として学ぶことと、自分と家族のために学ぶことが、この方のなかでは分かれていません。

障害福祉サービスの仕事に従事しています。利用者様の個別特性に即して、就労継続を支援出来る事は大きな成功体験でしたが、就労となると社会や作業のルールマナーを守ってもらえない事が支援者としての大きなストレスとなり、葛藤の毎日です。自身のメンタルヘルスに大変役立つ学びでした。

50代の方の回答です。総合評価は「大満足」でした。こちらは、支援する相手のためではなく、支援する自分のために効いたという書き方です。対人援助の仕事は、相手の状態が自分の消耗に直結します。この分野の方が学ぶ理由には、業務の質を上げること以外に、自分の消耗を扱えるようになることも含まれているようです。

他の団体の資格も検討した人が26.4%|全体より高い

ここが53名の最も特徴的な点です。申込前に他の資格を見比べていたかどうかを、2つの設問から確認できます。

項目医療・福祉業53人146人全体
他団体のメンタル・心理資格を申し込んだ経験がある14名(26.4%)29名(19.9%)
当協会の他の資格を申し込んだ経験がある35名(66.0%)88名(60.3%)
申込のきっかけ「ネット検索」22名(41.5%)57名(39.0%)
申込のきっかけ「協会からの案内」22名(41.5%)65名(44.5%)
申込の決め手「内容が魅力的だと感じたから」22名(41.5%)56名(38.4%)
申込の決め手「児童発達支援士と同じ認定団体だったから」20名(37.7%)52名(35.6%)

他団体の資格を申し込んだ経験がある方は26.4%。146名全体の19.9%を6.5ポイント上回りました。この分野の方は、メンタル・心理の資格を1つで終わりにせず、複数を渡り歩いている割合が高いということです。

きっかけは「ネット検索」と「協会からの案内」が22名ずつで同数でした。146名全体では協会からの案内が44.5%と多いので、53名のほうがやや検索から入ってきている形です。決め手も「内容が魅力的だと感じたから」が41.5%で最多。案内を受けて流れで申し込むより、自分で探して中身を見て決めている方が多いという読み方ができます。

検討している方にとっては、これはそのまま行動の指針になります。この分野で働いているなら、他の資格と見比べてから決めている人が周りにも多い、ということです。1つ目の候補で決めず、目次と受講条件を2〜3個並べてから選んでも遅くありません。

メンタルヘルスの資格の選び方|受講者146人が実際に決め手にしたこと

53人の年代と性別

年代は40代が26名(49.1%)で、ちょうど半数を占めます。次いで50代13名、20代と30代が各5名、60代4名。146名全体では40代が38.4%なので、この分野はさらに40代に集中しています。

性別は女性44名・男性9名。男性の割合は17.0%で、146名全体の13.0%をやや上回りました。人数としては少数ですが、男性の受講者が最も多い職種グループがここです。

40代への集中は、この分野の働き方と重なって見えます。現場に十分な年数がいて、後輩や利用者への対応を任される立場になり、同時に自分の家族のことも抱え始める時期です。動機で「子育てに活かせる」と「自身に精神疾患または症状がある」がそれぞれ17名(32.1%)並んでいるのも、この年代の事情と無関係ではないはずです。学ぶ理由が一つに絞れなくなる時期に、まとめて扱える知識を探しに来ていると考えると、53名の回答の形は納得がいきます。

愛着障害によって生じている担当幼児の行動に対して、適切な支援をしたかったのですが、関係者から納得のいくアドバイスを得ることができず悩みました。職員間でも、共通理解が難しい現実があります。

60代以上の方の回答です。困っているのは相手のことではなく、支援の方針が職員のあいだでそろわないことのほうだと書かれています。医療・福祉の仕事は一人で完結しません。知識は相手を理解するためだけでなく、同僚と共通の言葉を持つためにも要る——53名が「現在の仕事に活かせる」を選んだ背景には、こうした場面もあるはずです。

児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーター、SSTスペシャリストの資格を取り児童放課後デイサービスで働いていましたが、両親の介護が始まり一旦離職して時間の自由が利く高齢者デイサービスで働いています 介護が落ち着き、復帰できた時のために広く知識を得たいと思い今回メンタルヘルス支援士を受講しました(後略)

50代の方の回答です。総合評価は「満足」でした。医療・福祉の分野は、働く場が変わっても知識が持ち運べます。児童から高齢者へ、常勤から時間の自由が利く働き方へ。資格が特定の職場に紐づいていないことが、この分野では利点として働いているように見えます。

医療・福祉の現場で学ぶことの整理

医療・福祉の現場で学ぶことの整理
53人のデータが示していること検討している方への意味
「現在の仕事に活かせる」83.0%は全職種で最高この分野では、学んだことが業務に戻る場面が実際に多い
54.7%が「身近に精神疾患のある人がいる」も選んでいる職場と家庭の両方に使い道があるかを一緒に考えると、判断しやすくなる
他団体の資格の申込経験が26.4%(全体19.9%)周りも見比べてから決めている。1つ目の候補で即決しなくてよい
きっかけは「ネット検索」と「協会からの案内」が同数案内で知るより、自分で探して選ぶ方が半数近い
エピソードでは「自身のメンタルヘルスに役立った」という書き方も相手を理解するためだけでなく、自分の消耗を扱うためにも使われている

メンタルヘルス支援士について

ここまで、医療・福祉の現場で働く53名のデータについてご紹介してきました。

こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。

メンタルヘルス支援士の詳細について

Q&A|医療・福祉の仕事とメンタルヘルスの資格

Q1:看護師や介護福祉士が、さらにメンタルヘルスの資格を取る意味はありますか?

当協会の受講前アンケートでは、医療・福祉業の53名のうち44名(83.0%)が「現在の仕事に活かせると思ったから」を選んでいます。全職種のなかで最も高い数字です。ただし、資格そのものが業務範囲を広げるわけではありません。民間資格に業務独占はなく、変わるのは日々の関わり方の精度のほうです。

Q2:職名(看護師・介護福祉士・相談支援専門員など)別のデータはありますか?

ありません。当協会の受講前アンケートの職種欄は業種10分類の選択式で、職名や役職を尋ねる設問がないためです。「医療・福祉業」53名のなかに、看護・介護・障害福祉・保育などが混在しています。エピソード欄の記述からは、精神科訪問看護、障害福祉サービス、児童放課後デイサービス、高齢者デイサービスといった具体的な現場が確認できます。

Q3:他の資格と迷っています。この分野の人はどう選んでいますか?

他団体のメンタル・心理資格を申し込んだ経験がある方が26.4%(14名)で、146名全体の19.9%より高い水準でした。申込の決め手も「内容が魅力的だと感じたから」が41.5%で最多です。この分野の方ほど、見比べてから決めています。候補を2〜3個並べて、目次と受講条件を確認してから決めることをおすすめします。

Q4:自分自身が消耗しています。学ぶことで楽になりますか?

受講後のエピソードには「自身のメンタルヘルスに大変役立つ学びでした」という記述があります。ただし、学ぶことは休むことの代わりにはなりません。強い消耗が続いているときは、まず産業医や地域の相談窓口につないでください。記事末尾に厚生労働省「こころの耳」の支援者向けページを載せています。

Q5:働きながらでも取れますか?

53名の年代は40代が26名(49.1%)で、現場の中核にいる世代が中心です。受講後アンケートには「受講期間が長くスキマ時間に勉強でき、また繰り返し学習することが出来た」という記述もありました。受講期限と受験のタイミングを自分で決められるかを、申込前に確認してください。

診断のついていない相手にどう関わるかは、学校の現場でも同じ問いとして現れます。

学校の「気になる子」への対応|8.8%の7割は支援の対象外だった

まとめ|この分野は「仕事のため」が最も強く出る

  • 医療・福祉業は146名中53名(36.3%)で、職種10分類のなかで最多
  • 「現在の仕事に活かせる」83.0%は全職種で最高(全体58.2%)
  • そのうち54.7%が「身近に精神疾患のある人がいる」も選択。職場と家庭が地続き
  • 他団体資格の申込経験が26.4%(全体19.9%)。見比べてから決めている人が多い
  • きっかけは「ネット検索」22名と「協会からの案内」22名で同数
  • 年代は40代が26名(49.1%)。男性は9名で、職種グループのなかでは最も多い
  • エピソードには「自身のメンタルヘルスに役立った」「公私共々」という書き方が現れる

この分野で働いていると、支援する側でありながら消耗する側でもある、という位置に立たされます。53名のデータは、そのどちらの理由でも学びに来ていることを示していました。「仕事のために取るべきか」だけで判断せず、自分自身のためにも使えるかを一緒に見てみてください。

【注意事項】

この記事で紹介している内容は、当協会が収集したアンケート・体験談の一部をもとにまとめています。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。また、本記事は診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や不安がある場合は、早めに医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。

参考・相談先

メンタルヘルス支援士バナー