「大学に行かずに心理カウンセラーになれるか」。この問いには、はっきりした答えと、あまり知られていない答えの2つがあります。
はっきりしているほうから書きます。職業としてカウンセラーを名乗って働くことを目指すなら、大学・大学院のルートが実質的に必要です。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、カウンセラー(医療福祉分野)について「この仕事に従事している者はいずれかの資格(臨床心理士・公認心理師)を保有している場合がほとんどである」「大卒・大学院卒の割合が高く、専攻は心理学系学部、学科の卒業者が多い」と記載しています。
もうひとつの答えは、当協会のデータの中にあります。受講前アンケート146人のうち、30代以上が132人(90.4%)。この分野を学び始めている人の9割は、進路を選ぶ時期をとうに過ぎた、社会に出たあとの人でした。学歴の話ではなく、いまの立場から始める話になっているということです。
たとえば、この記事では次のことが分かります。
- 「大学に行かないと関われない」という思い込みのうち、どこが本当でどこが違うのか
- 146人の年代分布(40代56人・50代41人に対し、20代以下は14人)
- その20代以下14人のうち9人が「自身に精神疾患または症状がある」を動機に選んでいたこと
- 学歴の代わりに、何が入り口になっているのか
>メンタルヘルスの資格はどんな人が取る?受講者146人の年代・職種・動機データ
本記事で紹介している一次情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 調査期間 | 2025年2月〜2026年7月 |
| 有効回答数 | 146件 |
| 設問 | 「年代」「職種(複数回答)」「受講した動機(複数回答)」 |
| 分析方法 | 年代を集計したうえで、10〜20代の14人を抽出し、受講動機と職種を146人全体と比較 |
| 注意点 | 10〜20代は14人と母数が小さいため、本文では割合ではなく実数(14人中◯人)で示しています。回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます |
| 一般情報の出典 | 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)、厚生労働省 こころの耳。2026年9月1日に閲覧して確認 |

受講者の声として引用している文章は、受講後アンケート(有効回答248件・2025年3月〜2026年8月)の自由記述欄および体験談欄からそのまま転載しています。誤字の修正と改行記号の削除以外の編集は行っていません。
「大学に行かないと」の、どこが本当か
この分野には、大学に関する思い込みがいくつか流通しています。事実と照らして整理します。
| よく言われること | 実際 |
|---|---|
| 大学に行かないと、心理職では働けない | おおむねそのとおりです。臨床心理士は指定された大学院修士課程の修了が受験資格、公認心理師も4年制大学+大学院が基本ルートです |
| 大学に行かないと、資格は何も取れない | 違います。産業カウンセラー(養成講座の修了)とキャリアコンサルタント(実務経験3年以上または養成講習)は学歴を問いません。受験の条件がない民間資格もあります |
| 資格がないと、人の話を聴いてはいけない | 違います。この分野に業務独占の資格はありません。公認心理師も精神保健福祉士も名称独占です |
| 民間資格を積み上げれば、国家資格に近づく | 違います。民間資格が公認心理師・臨床心理士の受験資格に算入されることはありません |
1行目だけが本当で、残りの3つは違う——というのが正確なところです。職業として名乗る道は学歴で絞られますが、関わり方を変える道は学歴で閉じられていません。この2つを混ぜて考えていると、「大学に行っていないから無理だ」と、必要のないところまで諦めてしまいます。
>心理カウンセラーの資格一覧|他の資格と比べた人は、何で決めた?
146人は、いつ学び始めているのか
当協会の受講前アンケート146人の年代を見ると、最も多いのは40代で56人(38.4%)、次いで50代41人(28.1%)、30代28人(19.2%)です。20代は12人(8.2%)、10代は2人(1.4%)、60代は7人(4.8%)でした。
30代以上を合わせると132人、全体の90.4%になります。この分野を学び始めている人の9割は、学校を出て働き始めたあとの人です。「大学に行かずに」と検索している方が想定しているであろう進路選択の場面とは、そもそも入り口が違うということになります。
では、少数派である10〜20代の14人は、何を動機に学び始めたのか。146人全体と比べます。
| 受講した動機(複数回答) | 10〜20代 14人中 | 146人全体 |
|---|---|---|
| 自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から | 9人 | 45人(30.8%) |
| 身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から | 8人 | 86人(58.9%) |
| 現在の仕事に活かせると思ったから | 8人 | 85人(58.2%) |
| 就転職時に活かしたいと思ったから | 5人 | 38人(26.0%) |
| 子育てに活かせると思ったから | 1人 | 49人(33.6%) |
いちばん若い層は「自分自身のこと」から入っている
146人全体では動機の1位は「身近に精神疾患のある方がいる」で、「自身に精神疾患または症状がある」は45人(30.8%)の3番手です。ところが10〜20代の14人では、「自身に…」を選んだ方が9人と最も多くなります。2番目に多い「身近に…」「現在の仕事に…」の8人を上回りました。
母数が14人と小さいため断定はできませんが、若い年代ほど、自分自身の経験が出発点になっているという傾向は読み取れます。「子育てに活かせる」が1人にとどまるのも、年代を考えれば自然な結果です。
職種を見ると、この14人は医療・福祉業5人、学生・フリーター3人、製造・建築業3人と分かれました。心理や福祉を専攻した人だけが集まっているわけではありません。
もともと心理の勉強をしており、着手しやすい内容でした。自身や身の回りの方のメンタルヘルスに対してサポートできるようになれたらと思っています。
20代の方の回答です。「自身や身の回りの方の」と書かれているとおり、支える対象に自分自身が含まれています。心理を学んだ経験がある方にとっては、体系的に一巡し直す入口としても使われています。
精神疾患を持っている人に対する関わり方が難しいと感じる。
こちらも20代の方の記述です。短い一文ですが、資格や学歴の話ではなく、目の前の関わり方で困っているという状態がそのまま出ています。この困りごとに、大学に行っているかどうかは関係がありません。
学歴の代わりに、何が入り口になっているのか
大学ルートを取らない場合、進み方は大きく2つに分かれます。ひとつはいまの立場のまま、関わり方を変えていく道。もうひとつは働きながら学び直し、あとから学歴の側に回り込む道です。後者の例が、当協会の受講者の中にあります。
協会の資格はすべて取得しており、認定支援士も登録済みです。(中略)思い返せば3年前にこの協会の資格を受講したことから始まり、支援の知識を深めるために通信制大学に入学し、子ども心理学士も取得することができました。現在は特別支援教育に従事し、東京都で研修会の講師を依頼されるまでになりました。この協会で取得できる資格はあくまでも基礎的な範囲になりますが、短すぎず正しい知識が学べる良い講座になっていると感じます。
20代の方の体験談です。民間資格から始めて、3年かけて通信制大学に入り、学士まで取得されています。順番が「大学が先」ではなく「関心が先」になっているのが特徴です。この方がご自身で「あくまでも基礎的な範囲」と位置づけている点も、そのまま受け取ってください。民間資格が受験資格につながったわけではなく、進む方向を決める材料になった、という話です。
貴社の資格取得をきっかけに、悩んでいた療育の世界に飛び込みました。先に取得したテキストを復習に使い、日々学びの気持ちで支援を行っています。こちらの資格も現場で役立たせる事ができる様、意識していきたいと思っています。
50代の方の回答です。資格取得をきっかけに、現場そのものを変えたという例です。学歴が入り口になっていないという点では、先ほどの20代の方と同じ構図になっています。
この2つの例に共通しているのは、資格が到達点ではなく、次の一歩を決める材料として使われていることです。大学に行かない場合、入り口になるのは学歴ではなく、いまいる場所と、関わっている相手だということになります。
>メンタルヘルスの資格一覧|結局どれ?目的別に選ぶ(146人調査)
大学に行かない場合の進み方の整理
| 確かめること | データと制度から言えること |
|---|---|
| 職業として名乗りたいのか | 名乗って働くなら大学・大学院のルートが実質的に必要です。ここだけは学歴で絞られます |
| 学歴を問わない資格はあるか | あります。産業カウンセラー(養成講座の修了)、キャリアコンサルタント(実務経験3年以上または養成講習)、受験の条件がない民間資格 |
| いま何歳から始める人が多いのか | 146人のうち30代以上が132人(90.4%)。学び直しとして始める人が大多数です |
| 何を入り口にすればよいか | 10〜20代の14人では9人が「自身に精神疾患または症状がある」を選んでいます。自分の経験や、関わっている相手が入り口になります |

>心理カウンセラーの資格|大学院に行かない道は、どこまで開かれている?
メンタルヘルス支援士について
ここまで、大学に行かない場合に何が開かれていて何が閉じているのか、そして146人がどこから学び始めたのかをご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。受験に学歴や実務経験の条件はありません。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。学べる範囲は基礎にあたりますので、進学を含めて次の一歩を決める材料としてお使いいただくのが現実的です。
Q&A|大学に行かずに心理カウンセラーを目指すことについて
Q1:大学に行かずに、心理カウンセラーになれますか?
職業として名乗って働くことを目指すなら、大学・大学院のルートが実質的に必要です。厚労省のjob tagは、カウンセラー(医療福祉分野)の従事者はほとんどが臨床心理士か公認心理師を持ち、「大卒・大学院卒の割合が高い」と記載しています。ただし、この分野に業務独占の資格はありません。いまの職場や家庭で関わり方を変えることが目的なら、学歴は条件になりません。この2つを分けて考えるところから始めてください。
Q2:学歴を問わない資格には、どんなものがありますか?
3種類あります。①産業カウンセラー(民間資格・179時間の養成講座の修了など。学歴不問)、②キャリアコンサルタント(国家資格・実務経験3年以上または養成講習の修了。学歴不問。ただし対象は職業選択やキャリア形成の相談で、心の不調そのものへの支援とは領域が異なります)、③受験の条件がない講座認定型の民間資格。①②は費用と時間の負担が小さくないため、③で分野との相性を確かめてから進む方もいらっしゃいます。
Q3:民間資格から大学に進むことはできますか?
できます。ただし民間資格が入学や受験資格の要件になるわけではありません。記事中の20代の方は、民間資格をきっかけに通信制大学へ入学し、3年かけて学士を取得されています。この場合も受験資格は大学の履修によって得たもので、民間資格が算入されたわけではありません。つながるのは、用語や概念に一度触れておくことで、あとの学習が初見でなくなるという意味での土台です。
Q4:10代・20代で学び始めるのは早すぎますか?
早すぎるということはありません。ただし当協会の146人では10〜20代は14人と少数派で、30代以上が132人(90.4%)です。若い年代の方は、まわりに同世代が少ないと感じるかもしれません。一方でその14人のうち9人が「自身に精神疾患または症状がある」を動機に選んでおり、自分の経験を出発点にしている方が多いのが特徴です。進路を決める前に分野との相性を確かめる、という使い方に向いています。
Q5:自分がしんどい状態で学び始めても大丈夫でしょうか?
学ぶこと自体は止めませんが、いま治療や支援が必要な状態であれば、そちらが先です。学習は、症状への対処の代わりにはなりません。当協会の受講者にも自身に症状がある方は多くいらっしゃいますが、通院や相談と並行されている方がほとんどです。気になる症状がある場合は、記事末の相談窓口や、かかりつけの医療機関にご相談ください。そのうえで学ぶなら、自分の経験は理解の助けになります。
まとめ|閉じているのは1本の道だけ
- 職業として名乗って働くなら、大学・大学院のルートが実質的に必要です。job tag も「大卒・大学院卒の割合が高い」と記載しています
- 一方で、学歴を問わない資格はあります(産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、受験の条件がない民間資格)。この分野に業務独占の資格はありません
- 民間資格を積み上げても、国家資格の受験資格には算入されません。ここは誤解が多いところです
- 当協会の146人では30代以上が132人(90.4%)。学び始めているのは、進路選択の時期を過ぎた人が大多数です
- 10〜20代の14人では、9人が「自身に精神疾患または症状がある」を動機に選んでいました。若い層ほど自分自身の経験が出発点になっています
- 閉じているのは「職業として名乗る」という1本の道だけです。いまいる場所と、関わっている相手があるなら、そこから始められます
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、当協会が収集したアンケートの一部をもとにまとめています。10〜20代は14人と母数が小さいため、傾向として参考程度にお読みください。回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます。他資格の受験資格に関する記述は2026年9月1日に厚生労働省の公式サイトで確認した内容で、制度改定により変わりますので、申込前に必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。また、本記事は診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状や不安がある場合は、早めに医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。


