眠れない。頭が痛い。胃が痛い。病院で検査を受けても、はっきりした原因が見つからない。けれど、相手が家にいる日といない日で、はっきり違う——。
パートナーや家族との関係で消耗しているとき、最初に反応するのは気持ちではなく、体のほうであることが少なくありません。
この記事では、実際に寄せられた36件の記録をもとに、どんな症状がどのくらいの割合で出ていたのかを整理します。結論から言うと、件数が多かった上位3つはすべて体の症状でした。
たとえば、この記事では次のことが分かります。
- 体に出た症状と、心に出た症状の内訳(それぞれ上位10項目・上位9項目)
- この状態に特有の「孤立感」が、どのくらいの割合で出ているか
- なぜ、心よりも先に体に出るのか
- どこまでいったら受診を考えたほうがよいのか
>カサンドラ症候群とは|病名ではありません。相手に診断がない人が6割
いちばん多かったのは不眠、次が体の痛みでした

まず、体に出た症状です。36件の自由記述を分類したものが次の表です。1人が複数の症状を挙げているため、割合の合計は100%を超えます。
| 体に出た症状 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 不眠・寝つけない | 21件 | 58.3% |
| 肩こり・体の痛み | 18件 | 50.0% |
| 頭痛・偏頭痛 | 17件 | 47.2% |
| 胃腸の不調(胃痛・吐き気など) | 10件 | 27.8% |
| 動悸・過呼吸 | 9件 | 25.0% |
| 体重・食欲の変化 | 7件 | 19.4% |
| 皮膚(湿疹・蕁麻疹・帯状疱疹) | 5件 | 13.9% |
| 倦怠感 | 3件 | 8.3% |
| めまい・耳鳴り | 2件 | 5.6% |
| 血圧・循環器 | 2件 | 5.6% |
不眠・体の痛み・頭痛の3つが、半数前後を占めています。いずれも「忙しいから」「年齢のせいだろう」と片づけられやすいものばかりです。
夫がいると息苦しくなる。吐き気。不眠、帯状疱疹、胃の多発ポリープ・胃潰瘍・出血。顔から足先まで湿疹が出たことも。
配偶者との関係についての回答です。「夫がいると息苦しくなる」という一文が、症状の並びの先頭に置かれています。体の不調が、相手の在・不在と結びついて記憶されていることが分かります。
部下と仕事した日は、帰宅後、私の飲酒量が増え、寝ている時に寝言で叫び声をあげるようになった。また、会話をしていると、話が通じないためこめかみあたりが痛むようになり、最終的に、怒りを感じると、顔が左右に揺れるようになりました。
こちらは職場の部下との関係で書かれた回答です。「部下と仕事した日は」と、日によって差が出ることが記録されています。家庭だけの話ではありません。
この2件に共通しているのは、次の点です。
- 症状が、特定の相手と一緒にいる時間に連動している
- 1つではなく、複数の症状が同時に出ている
- 皮膚・消化器など、精神科以外の科にかかるような症状が並んでいる
3つめは、受診先を選ぶときに効いてきます。この点は記事の後半で改めて触れます。
心に出た症状は、イライラから始まっています
次に、心に出た症状です。同じ36件の記述を分類しました。
| 心に出た症状 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| イライラ・情緒不安定 | 16件 | 44.4% |
| 不安 | 15件 | 41.7% |
| 抑うつ・落ち込み | 14件 | 38.9% |
| 孤立感・孤独感 | 11件 | 30.6% |
| 自己評価・自己肯定感の低下 | 9件 | 25.0% |
| パニック | 8件 | 22.2% |
| 無気力・無関心 | 6件 | 16.7% |
| 涙が出る | 3件 | 8.3% |
注目していただきたいのは、4番目の「孤立感・孤独感」が11件(30.6%)あることです。一人暮らしをしているわけではなく、むしろ家族と同じ家にいる方が大半です。それでも孤立感が3割に出ています。
抑うつ状態、不安感、孤立感、家族以外のコミュニティで自分がどうコミュニケーションしていいか分からない戸惑い。
配偶者と子どもの両方に特性がある方の回答です。孤立感が、家の外での振る舞いにまで及んでいます。家庭で会話が成り立たない状態が続くと、家の外でも自分の話し方が分からなくなる——という順番が記録されています。
セルフイメージになり、全て自信がなくなりコミュニケーション障害から生まれ孤独感や精神ストレスになる。
こちらは職場の同僚との関係で書かれた回答です。「全て自信がなくなり」と書かれているとおり、影響が相手との関係だけにとどまっていません。
体の症状の表と並べると、もう一つ見えてくることがあります。
- 最も多い体の症状(21件)は、最も多い心の症状(16件)より件数が多い
- 上位3つはいずれも体の症状で、半数前後に出ている
- 「気持ちの問題」として扱っているうちは、いちばん多く出ているものを見落とす
体験談は、個人が特定されないよう一部の表現をぼかしています。内容は変えていません。
なぜ、心より先に体に出るのか
ストレスへの反応は、心の面だけに現れるものではありません。厚生労働省「こころの耳」は、ストレス反応を「心理面」「身体面」「行動面」の3つに分けて説明しています。眠れない・食欲が落ちる・頭痛や肩こりが増えるといった変化は、身体面のストレス反応にあたります。
そして、身体面の変化は本人が自覚しやすく、周囲からも見えやすいという特徴があります。「落ち込んでいるかどうか」は自分でも判断が難しいのに対して、「先週から眠れていない」は事実として数えられます。
この状態に置かれた方には、もう一つ事情があります。相手の言動を説明しても信じてもらえない、という経験を重ねているため、「つらい」と言葉にすること自体をやめてしまっていることが少なくありません。心の変化を口に出さない期間が長くなるほど、体のほうが先に限界を知らせます。
症状が出る日と、出ない日があります
もう一つ、この状態に特有の現れ方があります。症状が、相手と一緒にいる時間に連動することです。
旦那さんのいる外出の日に起きれないことが続いた。
配偶者との関係についての、短い回答です。「起きれない」が、相手と出かける日に限って起きています。1日単位で差が出ているため、本人にも分かりやすい形になっています。
この連動は、受診のときに意味を持ちます。体調不良の原因を探すとき、医療機関はふつう「いつから」「どのくらいの頻度で」を聞きます。そこに「相手が在宅の日に出る」という情報が加わると、経過の説明として成立します。逆に言えば、この情報を持たずに行くと「原因不明の不調」で止まりやすくなります。
ただし、連動しないこともあります。消耗が長く続いた状態では、相手がいてもいなくても症状が出るようになります。連動がないことは、この状態ではないという根拠にはなりません。
>カサンドラ症候群と夫|「悪気はない」と分かっても、楽にならない理由
受診を考える目安は、期間と生活への影響です
「この程度で病院に行ってよいのか」と迷う方が多いところです。判断の材料になるのは、症状の重さそのものよりも、どのくらい続いているかと、生活に支障が出ているかの2つです。
| 見るところ | 相談を考えたい状態 |
|---|---|
| 期間 | 同じ不調が2週間以上続いている |
| 睡眠 | 寝つけない・途中で目が覚める状態が続き、日中に影響が出ている |
| 食事 | 食欲が落ちた、または増えた状態が続いている。体重が短期間で変わった |
| 生活 | 仕事・家事・育児のうち、これまでできていたことができなくなった |
| 連動 | 相手といる日といない日で、症状の出方がはっきり違う |
いちばん下の行は、この状態に特有のものです。相手の在・不在で症状が変わることは、医療機関に伝える価値のある情報です。「カサンドラ症候群だと思う」と伝える必要はありません。いつから、どんな症状が、どういうときに出るか——その3つを伝えれば十分です。
>カサンドラは何科に行けばいい?|婦人科から始まった人がいます
2週間ぶん書き出すと、伝えられるようになります
診察室で「どうされましたか」と聞かれて、うまく説明できないまま終わってしまった——という話をよく伺います。体調の話をしようとすると相手のことから説明が始まり、話が長くなってしまうためです。
相手の説明は要りません。持っていくのは、次の4つだけで足ります。
- 日付|9月1日(月)
- 睡眠|就寝0時/寝つくまで2時間/3時に覚醒
- 体の症状|朝から頭痛、夕方に胃の痛み
- その日の状況|相手が在宅/不在、出張中 など
スマートフォンのメモでも、手帳の隅でもかまいません。2週間続けると、「相手が在宅の日に症状が出ている」かどうかが、自分の目で確かめられます。先に紹介した回答のように、体の不調が相手の在・不在と連動しているなら、それは記録に出ます。
この記録には、3つの効き方があります。
- 診察時間が短くても、事実だけを渡せる(医師は経過と頻度を必要としています)
- 「気のせいではないか」という自分への疑いに、材料で答えられる
- 記録があると、休息や距離の取り方を決めるときの判断材料になる
逆に、やめておいたほうがよいこともあります。相手の言動を細かく書き留めることは、ここでは目的にしません。書けば書くほど、その時間ぶんだけ相手のことを考え続けることになるためです。記録するのは、自分の体に起きたことに絞ってください。
メンタルヘルス支援士について
ここまで、体と心に出る症状の内訳と、受診を考える目安をご説明してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|カサンドラ症候群の症状に関するよくある質問
Q1:体の症状ばかりで、気分は落ち込んでいません。当てはまりますか?
当てはまらないとは言えません。36件の記録では、件数の多かった上位3つがいずれも体の症状(不眠58.3%・体の痛み50.0%・頭痛47.2%)で、心の症状の最多(イライラ44.4%)を上回っていました。落ち込みがないことは、消耗していないことの根拠にはなりません。眠れているか、痛みが増えていないかを見てください。
Q2:内科で検査をしても異常なしと言われました。
検査で異常が出ないことと、症状がないことは別です。ストレス反応としての身体症状は、画像や血液検査に表れないことがあります。そのうえで、「いつから」「どんなときに強くなるか」を医師に伝えてください。36件の記録には、内科・婦人科・人間ドックが入り口になり、そこから心療内科や精神科につながった例が複数あります。
Q3:家族と暮らしているのに、孤独を感じるのはおかしいですか?
おかしくありません。36件のうち11件(30.6%)に孤立感・孤独感が出ています。同居しているかどうかではなく、情緒的なやりとりが成り立っているかが関係します。話しても通じない状態が続くと、同じ家の中にいても孤立します。
Q4:イライラして家族に当たってしまいます。
イライラ・情緒不安定は、この記録のなかで心の症状として最も多いもの(16件・44.4%)です。性格の問題としてご自分を責める前に、消耗のサインとして扱ってください。ただし、お子さんなど周囲に影響が出ている場合は、ご自身の休息を確保することが先になります。地域の精神保健福祉センターや保健所では、家族からの相談を受け付けています。
Q5:どこに相談すればよいか分かりません。
働いている方であれば、厚生労働省「こころの耳」に働く人向けの電話・SNS相談の窓口がまとまっています。それ以外の方は「まもろうよ こころ」に、都道府県・政令指定都市の相談窓口の一覧があります。いずれもこの記事の最後にリンクを掲載しています。お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所でも、家族からの相談を受け付けています。
まとめ|症状は体から数える

- 36件の記録で多かったのは不眠58.3%・肩こりや体の痛み50.0%・頭痛47.2%。上位3つはすべて体の症状でした
- 心の症状はイライラ44.4%・不安41.7%・抑うつ38.9%と続き、孤立感・孤独感が30.6%にのぼります
- 症状が相手といる日といない日で違うなら、それは医療機関に伝える価値のある情報です
- 受診の目安は、症状の重さより「2週間以上続いているか」「生活に支障が出ているか」
- 体の症状は、自分で数えられます。気持ちを言葉にできないときほど、数えられるものから手をつけてください
本記事で紹介している一次情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「カサンドラ症候群に関するエピソード調査」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 調査期間 | 2022年11月〜2026年 |
| 有効回答数 | 36件 |
| 設問 | 「身体的症状は現れましたか?それはどのような症状でしたか?」「精神的症状は現れましたか?それはどのような症状でしたか?」ほか |
| 分析方法 | 自由記述を当協会が症状ごとに分類して集計しました。1人が複数の症状を挙げているため、割合の合計は100%を超えます |
| 注意点 | ※回答者は、当協会が認定する「児童発達支援士」の受講者に限られます。メンタルヘルス支援士の受講者を対象にしたものではありません |
| 注意点 | 回答者が自分の言葉で書いた症状名であり、医師による診断とは異なります |
| 注意点 | 体験談は、個人が特定されないよう一部の表現をぼかしています。内容は変えていません |
| 注意点 | 本記事は診断・治療を目的としたものではありません。受診の要否についても断定していません |
【注意事項】
この記事は、公的機関が公開している資料と、当協会が収集した体験談を整理したものです。個別の症状について診断や判断を行うものではありません。ここに挙げた症状は、別の疾患によるものである可能性もあります。症状が続いている場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。ご自身や周囲の安全に関わる状況では、ためらわず専門の窓口にご連絡ください。


