担任の先生と、うまくいっていない。伝えても伝わらない。子どもは行きたがらなくなっている。
この状況で、いちばん重いのは「先生のせいにしてしまっていいのか」という迷いだと思います。相手は子どもを毎日見てくれている人で、来年には替わるかもしれません。
当協会が集めた保護者63人の回答のうち、34人が「思い当たること」として先生との関係を挙げていました。ただし、この記事でお伝えしたいのはその34人のうち、先生だけを挙げた人は6人しかいなかったということのほうです。
34人が、先生との関係を挙げていました
当協会は、発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に「二次障害の原因として思い当たる事柄」を尋ねています(有効回答63件・複数回答)。
「学校関係(先生)」は34人(54.0%)で、「学校関係(友人)」と並んで最も多く挙がりました。
この34人に、どんな状態があらわれたかを数えたのが次の表です。
| あらわれた状態 | 34人のうち | 割合 | (参考)63人全体 |
|---|---|---|---|
| 不登校 | 24人 | 70.6% | 61.9% |
| 不安障害 | 15人 | 44.1% | 39.7% |
| 暴力 | 14人 | 41.2% | 30.2% |
| 対人恐怖 | 12人 | 35.3% | 28.6% |
| 暴言 | 10人 | 29.4% | 31.7% |
| 引きこもり | 10人 | 29.4% | 28.6% |
出典:一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)。複数回答。10人未満の項目は割合が不安定になるため、表には出していません。
不登校が70.6%で、63人全体(61.9%)より高くなっています。そして暴力が41.2%で、全体の30.2%を上回りました。
行きたがらなくなる形と、荒れる形の両方が出やすい。それがこの34人の特徴です。「学校では大丈夫と言われるのに、家では荒れる」という状態は、この34人の中に実際にあります。
小学校に上がる前から起きています
この34人のお子さんの年齢は、4歳から12歳以上までにわたっていました。最も多いのは12歳以上の9人ですが、7歳が6人、6歳が5人と、就学の前後に集まっている層もあります。
実際、この34件のなかには幼稚園の年少で始まったと書かれている回答があります。「担任の先生」という言い方から小学校以降を思い浮かべがちですが、園の段階から同じことが起きています。
もう1つ、内訳を出しておきます。34人のうち内にこもる形だけだったのは15人、外に出る形だけが5人、両方あったのが14人でした。ここでも、きれいには分かれていません。
診断名では、自閉スペクトラム症が24人、ADHDが12人、学習障害が8人(複数回答)。診断のない「グレーゾーン」と答えた方も5人います。診断がついているかどうかで、先生との関係の難しさが決まるわけではありません。
二次障害という言葉そのものの位置づけは、別の記事で整理しています。
>子どもの二次障害とは|内にこもる子と荒れる子に、分かれません
ただし、先生だけを挙げた人は6人でした

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
先生との関係を挙げた34人が、ほかに何を挙げていたかを数えました。
| 同時に挙げられた事柄 | 人数 | 34人に対する割合 |
|---|---|---|
| 学校関係(友人) | 20人 | 58.8% |
| 学校関係(学習) | 16人 | 47.1% |
| 家族関係 | 10人 | 29.4% |
| 先生だけを挙げた | 6人 | 17.6% |
出典:同調査(有効回答63件)。複数回答。「先生だけを挙げた」は、10の選択肢のうち「学校関係(先生)」だけを選んだ人の実数です。
34人のうち28人は、先生以外のことも同時に挙げています。友人関係が20人、学習が16人。つまり多くの場合、先生との関係だけが単独で起きているのではなく、その子にとって学校という場所そのものが難しくなっています。
これは2つのことを意味します。
- 「先生のせいにしてしまっていいのか」と迷う必要はありません。34人の保護者は、先生を挙げつつ、ほかのことも同時に挙げています。1つに決めなくていいということです
- 担任が替われば解決する、とも限りません。友人関係や学習の負荷が同時にあるなら、そちらも一緒に見ることになります
実際に何が起きていたのか
ここからは、34人が書いた記述からの引用です。原文のまま掲載しています。
7歳の男児(自閉スペクトラム症・ADHD)の保護者の回答です。
小学校に進学し、最初の3ヶ月は馴染もうと頑張っていました。担任の先生の指導に合わせることができず、夏休み明けから登校が難しくなりました。具体的には給食で苦手な物も必ず口にしなくては、昼休みがない、授業の待ち時間の長さ、細かい文字指導などでした。
挙がっているのは、叱責ではなく「指導の細かさ」です。給食・昼休み・待ち時間・文字指導。どれも、その学級では全員に同じように適用されていたはずのものです。ここが難しいところで、誰かが悪意でやっていることではなくても、特性のある子にとっては重なると耐えられなくなります。
4歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者は、こう書いています。
幼稚園の年少時、本人の特性を理解されず、ダメな行動&嫌がる事をする&何度言っても繰り返す、と思われていってしまったようです。発達障害の事は何となく知っていても、どう関わるのかというのがわからない先生も多く、結果叱責される事が増え、先生にも気持ちのモヤモヤをぶつけるようになりました。
「どう関わるのかというのがわからない先生も多く」——この保護者は、先生を責める書き方をしていません。知識はあっても、関わり方の具体が共有されていない。それが叱責の増加につながり、子どもの側からも先生にぶつけるようになった、という順番で書かれています。
9歳の女児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答です。
日課表通りに授業が行われない事で、毎日何をするが分からず不安感が増幅。パニックになる。周囲から天才だと思われているため、授業中に質問出来ないから学校に行かなくなった。
「周囲から天才だと思われているため、授業中に質問出来ない」——できる子だと思われていることが、助けを求めにくくしています。困っているように見えない子ほど、気づかれるのが遅くなります。
子どもが本音を言えた相手は、先生でも親でもないことがあります
7歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答に、こういう場面が出てきます。
先生から立て続けに怒られたと報告があり、その後朝にどうしても行きたくない!と言って学校に行きませんでした。仕方がないので信頼しているデイサービスに1日預かってもらったのですが、その時にデイの先生に「担任の先生が嫌なんだ」と気持ちを伝えたそうです。
子どもが理由を言葉にできたのは、学校でも家でもなく、3つ目の場所でした。
これは、あなたに話してくれないという話ではありません。学校と家は、どちらも「行く/行かない」の判断が発生する場所です。その判断から離れた場所のほうが、理由は出てきやすくなります。
放課後等デイサービス、習い事の先生、祖父母、スクールカウンセラー。「3つ目の大人」がいるかどうかは、いま確かめられることの1つです。
学校に伝えるときに、そろえておくもの

伝えるべきかどうかは、この記事では決めません。伝えると決めたときに、手元にあると話が早くなるものだけ書きます。
| そろえるもの | 書き方の例 |
|---|---|
| いつから変わったか | 「夏休み明けから」「4月の担任交代のあと」など、時期だけ |
| 家で見えていること | 「朝起きられない」「宿題に手がつかない」——解釈ではなく、見たまま |
| 子どもが言った言葉 | 「学校行かない。楽しくない」——要約せず、言ったとおりに |
| いま困っている場面 | 「給食」「待ち時間」など、場面を特定して1〜2つ |
| お願いしたいこと | 「様子を見てほしい」でも構いません。対応まで決めていく必要はありません |
解釈ではなく事実を並べるほうが、伝わります。「先生の指導が厳しすぎる」より「給食で苦手なものを必ず口にする決まりが続いていて、朝に腹痛を訴えるようになった」のほうが、動いてもらいやすくなります。
相手は担任だけではありません
文部科学省は、発達障害のある子どもの保護者に向けて、こう案内しています。
学校では、困難さのある子供たちへの支援を用意しています。「困難さを改善していきたい」「通級による指導に興味がある」「お子さんに合う支援について知りたい」といった場合は、ぜひ学校の教員や教育委員会にご相談ください。
文部科学省「発達障害のある児童生徒の皆さんや保護者の皆様へ大臣メッセージを含む動画を発信」より
「学校の教員や教育委員会に」と書かれています。担任と話が進まないとき、次に相談できる先が制度として用意されている、ということです。
実際、34人のなかには教頭に相談したものの学校側が非を認めなかったと書いている保護者もいます。1か所で止まったら終わり、ではありません。
保護者と先生では、そもそも見ているものが違います。その差は別の記事で整理しています。
>不登校のチェックリスト|保護者と先生では、見ている場所が違う
メンタルヘルス支援士について
ここまで、先生との関係を挙げた34人のデータと、実際に書かれていた場面をご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や教育・福祉の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを体系的に学べる民間資格です。この記事で扱った二次障害の考え方は、公式テキストの第2章で解説しています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、取れば診断ができるようになるわけでもありません。日々お子さんと関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|先生との関係で悩んでいるときによくある質問
Q1:先生のせいにしてしまってよいのでしょうか?
「思い当たること」を挙げるのは、犯人を決めることではありません。34人の保護者のうち28人は、先生と同時に友人関係や学習のことも挙げています。1つに絞らなくていい、というのが実際の答え方でした。
Q2:担任が替われば解決しますか?
この調査では、先生だけを挙げた方は6人(17.6%)でした。残る28人は、ほかの要因も同時に挙げています。担任の交代で楽になる場合もありますが、友人関係や学習の負荷が残っていれば、そちらは残ります。
Q3:学校では「問題ありません」と言われます
この34人では、暴力が41.2%で、63人全体の30.2%より高くなっています。家で出ている状態が、学校で見えているとは限りません。学校で見えていないことは、あなたの見間違いを意味しません。見えている場所が違うだけです。
Q4:担任と話が進まないときは、どこに言えばよいですか?
文部科学省は保護者向けの案内で「学校の教員や教育委員会にご相談ください」と書いています。学校の中ではスクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター・管理職、学校の外では教育委員会や教育センターが相談先になります。窓口の名称や体制は自治体ごとに異なります。
Q5:子どもが理由を話してくれません
この調査には、放課後等デイサービスの先生に「担任の先生が嫌なんだ」と伝えたという記述があります。学校と家は、どちらも登校の判断が発生する場所です。その判断から離れた第三の場所のほうが、理由は出てきやすくなります。
まとめ|1つに決めなくて大丈夫です
- 63人中34人(54.0%)が、先生との関係を挙げていました。友人関係と並んで最多です
- ただし、先生だけを挙げた人は6人(17.6%)。28人は友人関係や学習も同時に挙げています
- この34人は不登校70.6%・暴力41.2%で、いずれも63人全体より高いです
- 書かれていたのは叱責だけではありません。給食・待ち時間・文字指導など、全員に同じように適用されるものが重なっていました
- 担任と話が進まないときの相談先は、制度として用意されています(文部科学省は教育委員会も挙げています)
先生を責めるかどうかを決めてから動く必要はありません。いつから、家で何が見えているか。その2つだけで、相談は始められます。原因を1つに特定してから伝える必要も、ありません。
そのやり取りで保護者自身が消耗しているときは、別の記事で扱っています。
>不登校の親が疲れたとき|34人の「こうしておけばよかった」
本記事で紹介している情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 34人のデータ | 当協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)のうち、「二次障害の原因として思い当たる事柄」で「学校関係(先生)」を選んだ34人。件数・割合はすべて当協会が算出しました。回答は原文のままです |
| 学校への相談先 | 文部科学省「発達障害のある児童生徒の皆さんや保護者の皆様へ大臣メッセージを含む動画を発信」および「5.発達障害について」より |
| 伝えるときにそろえるもの | 公的な様式ではありません。34件の記述に共通して出てきた要素をもとに、当協会が整理したものです |
⚠ この34人は発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られ、学校や先生の全体を代表するものではありません。また「思い当たること」を選んでもらったもので、原因を特定した調査ではありません。
この記事は、特定の学校や教員を評価するものではありません。個別の対応について判断が必要な場合は、学校・教育委員会・公的な相談窓口にご相談ください。


