学校に行きたがらなくなった。ものに当たるようになった。朝、起きてこない日が増えた。
調べていくうちに「二次障害」という言葉に行き当たった方が多いと思います。ところが調べても、それが何を指す言葉なのかが、はっきり書かれていません。
この記事では、当協会が集めた保護者63人のエピソードを数えて、実際に何が起きていたのかをご紹介します。お伝えしたいのは、1人の子に起きていたのは平均3.76個で、1つでは終わっていなかったということのほうです。
「二次障害」という診断名は、ありません
発達障害そのものが問題というよりも、発達障害を起因とする二次障害が問題だといわれています。この二次障害という表現は、医学的な専門用語ではないため、DSMやICDなどに記載されるような病名ではありません。あくまでも、発達障害に関連して起こる「二次的な問題」の総称になります。
ですから「二次障害と診断される」ということはありません。診断がつくのは、そこに現れた個別の状態のほう——不安症やうつ病など——です。
調べても定義が出てこないのには、理由があります。国が運営する発達障害の情報サイトにも、この言葉の解説ページは置かれていません。厚生労働省・文部科学省などが共同で運営する「発達障害ナビポータル」でサイト内検索をしても、用語の解説は見つかりません(2026年9月9日 実測)。
公的な定義がない言葉を、あなたが探しあぐねていたのは当然です。この記事では、公的な研究機関がどう整理しているかと、63人の保護者が実際に書いたことの2つで組み立てます。
63人の保護者の子に実際に起きていたこと
当協会は、発達障害のあるお子さんを育てた保護者に「どのような二次障害があらわれましたか」を尋ねています。有効回答は63件、複数回答です。
| あらわれた状態 | 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 不登校 | 内にこもる形 | 39人 | 61.9% |
| 不安障害 | 内にこもる形 | 25人 | 39.7% |
| 暴言 | 外に出る形 | 20人 | 31.7% |
| 反抗 | 外に出る形 | 19人 | 30.2% |
| 暴力 | 外に出る形 | 19人 | 30.2% |
| 対人恐怖 | 内にこもる形 | 18人 | 28.6% |
| 引きこもり | 内にこもる形 | 18人 | 28.6% |
| うつ病、抑うつ | 内にこもる形 | 15人 | 23.8% |
| 自傷 | 外に出る形 | 14人 | 22.2% |
| 心身症 | 内にこもる形 | 11人 | 17.5% |
| 強迫性障害 | 内にこもる形 | 10人 | 15.9% |
| 依存症/家出/非行/その他 | — | 29人 | — |
出典:一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)。複数回答。区分の名称は当協会が読みやすさのために付けたもので、原本の選択肢は「内在化障害」「外在化障害」です。
延べ237件を63人で割ると、1人あたり3.76個です。1つの状態だけで終わった子は少数で、いくつかが同時に、あるいは順番に起きています。
この「1つでは終わらない」ことが、いま見ているものを分かりにくくします。お腹が痛いと言い出したことと、弟に当たるようになったことが、別々の出来事に見えてしまうからです。
⚠ この63人は、発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られます。発達障害のある子ども全体を代表するものではありません。また、二次障害の有無を医師が判定したものでもなく、保護者が「あらわれた」と受け取ったものです。
>子どもの二次障害チェック|同じ悩みを持つ保護者の体験と対比
内にこもる子と荒れる子に、分かれていません

この記事でいちばんお伝えしたいのは、ここです。
不登校や不安のように内にこもる形と、暴言や暴力のように外に出る形は、別のタイプの子に起きることのように語られがちです。63人を数えると、そうなっていませんでした。
- 内にこもる形だけだった子……24人
- 外に出る形だけだった子……11人
- 両方あった子……28人(44.4%)
いちばん多いのは「両方あった子」です。内にこもる形があった子は52人(82.5%)、外に出る形があった子は39人(61.9%)で、その大半が重なっています。
6歳の女児(診断無し・グレーゾーン)の保護者は、こう書いています。
学校に一人で行けなくなり私と一緒に行って一緒に帰っていたがどうしても教室が嫌だと言うので支援学級にいるようになった。家にいても弟に当たるようになり怪我をさせることもあった。
「学校に行けない」と「弟に当たる」が、1人の子の中で同時に起きています。この保護者は、きっかけとして担任の先生との関係を挙げていました。
気づく手がかりは、その子の「以前」との違いです
7歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者は、変化のはじまりをこう書いています。
学校に行きたくない!と登校拒否するようになりました。前は早起きして楽しく登校していましたが、今はまったく起きようとせず「学校行かない。楽しくない。」と言って行こうとしません。
「前は早起きして楽しく登校していました」——比べているのは、他の子ではなくその子の以前です。二次障害が見えるのは、たいていこの形です。
体の症状が、先に出ていることがあります
9歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答です。
小3後半から心がモヤモヤし何度トイレに行っても尿意が消えずバスや登校が難しくなってきました4年になり気持ちで頑張っていましたが心が思うように理解できず癇癪と気の落ち込みで不登校になりました児童精神科が知能検査と診察を受けてASDと軽度知的障害による二次障害と3回目で診断されました
順番は、体の症状 → 登校の困難 → 受診でした。心身症を挙げた保護者は11人います。気持ちの問題として現れる前に、体のほうに出ていることがあります。
どのくらい続くのかは、別の記事で63件の記述から整理しています。
>子どもの二次障害はどのくらい続くのか|63件の記述から見える経過
きっかけの上位3つは、すべて学校でした

同じ63人に「二次障害の原因として思い当たる事柄」を尋ねています(複数回答)。
| 思い当たる事柄 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 学校関係(先生) | 34人 | 54.0% |
| 学校関係(友人) | 34人 | 54.0% |
| 学校関係(学習) | 28人 | 44.4% |
| 家族関係 | 20人 | 31.7% |
| その他 | 11人 | 17.5% |
| 進路/仕事関係/習い事/施設関係/恋愛関係 | 各7人以下 | — |
出典:同調査(有効回答63件)。複数回答。延べ150件で、1人あたり2.38個を挙げています。
上位3つがすべて学校です。先生・友人・学習の3つで延べ96件、家庭に関わるものは20人でした。
これは、保護者の関わり方が原因ではないという意味ではありません。尋ねているのは「思い当たること」で、原因を特定した調査ではありません。それでも、1日の大半を過ごす場所で起きたことが、いちばん多く挙がったという事実は残ります。
5歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者は、始まりをこう書いています。
幼稚園の時、友達からの嫌がらせが原因で、
先生との信頼関係がなくなり、幼稚園は安心できない場所になり、家族以外の人と会話をしなくなった。
「安心できない場所になり」——出来事そのものより、その場所がどう変わったかのほうが、あとに残っています。就学前から始まっている例も、63件のなかにあります。
診断名によって現れ方が変わるのかは、別の記事で比べています。
>子どもの二次障害は診断名で違うのか|ASD・ADHD・LDを比べる
いま、どこに相談できるか
国立特別支援教育総合研究所は、発達障害の二次障害を「環境との相互作用から生じるもの」とし、予防として「安心できる人的環境と居場所となる生活環境を保障すること」、そして「学校関係者と保護者が共通理解し、共に考えていく姿勢」を挙げています。ただ、いま消耗している状態で、これを家庭だけで担うのは重すぎます。
本人を連れて行かなくても、保護者だけで相談できる窓口があります。
| 窓口 | 運営 | できること |
|---|---|---|
| 発達障害者支援センター | 都道府県・指定都市 | 発達障害の相談窓口。家族からの相談を受けます |
| こどもの心の診療機関マップ | 国立成育医療研究センター | 都道府県ごとに、こどもの心を診る医療機関を探せます |
| 保健所・保健センター | 市区町村ほか | 受診の前段階の相談。医療機関の紹介も受けられます |
| スクールカウンセラー | 学校 | 学校との間に入ってもらう相談。保護者だけでも利用できます |
⚠ 窓口の名称・対象・予約の要否は自治体ごとに異なります。また「こどもの心の診療機関マップ」は、掲載許可を得られた施設の一覧で、掲載=推薦ではないとサイト上に明記されています。
学校とのやり取りで消耗している場合は、保護者側の負担のほうを扱った記事があります。
>担任の先生と合わないとき|二次障害のきっかけは1つではありません
メンタルヘルス支援士について
ここまで、二次障害という言葉の位置づけと、保護者63人が書いた実際の経過をご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や教育・福祉の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを体系的に学べる民間資格です。この記事で紹介した二次障害の考え方も、公式テキストの第2章で扱っています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、取れば診断ができるようになるわけでもありません。日々お子さんと関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|子どもの二次障害についてよくある質問
Q1:二次障害は、診断してもらえますか?
「二次障害」という病名はありません。DSMやICDにも記載がなく、診断がつくのは不安症やうつ病など、そこに現れた個別の状態のほうです。ただし受診が無駄になるという意味ではありません。63人のなかにも、受診して個別の診断がつき、そこから支援につながった例があります。
Q2:荒れているだけで、二次障害ではないのでは?
暴言や暴力は、二次障害の「行動面」に現れる形です。63人の実測でも、暴言20人・暴力19人・反抗19人でした。そして、外に出る形だけだった子は11人で、28人は内にこもる形と両方が起きています。「荒れているだけ」と「つらいだけ」は、分かれていません。
Q3:診断がついていない子でも、起きますか?
63人のうち10人は「診断無し(グレーゾーン)」と回答しています。この10人にも不登校・対人恐怖・引きこもりなどが挙がっていました。診断の有無が、起きるかどうかを分けてはいません。
Q4:親の関わり方が原因なのでしょうか?
この調査で最も多く挙がったのは、学校関係の3つ(先生34人・友人34人・学習28人)でした。家族関係は20人です。ただし、これは原因を特定した調査ではなく「思い当たること」を選んでもらったものです。順位から因果を読まないでください。
Q5:いま何から始めればよいですか?
本人を連れて行かなくても、保護者だけで相談できます。発達障害者支援センター・保健所・スクールカウンセラーは、いずれも家族からの相談を受けています。受診が必要かどうかを含めて、そこで相談できます。先に決めてから行く必要はありません。
まとめ|1つの出来事として見なくて大丈夫です
- 「二次障害」は病名ではありません。発達障害に関連して起こる二次的な問題の総称です
- 63人の子に起きていたのは、1人あたり平均3.76個。1つでは終わっていません
- 内にこもる形と外に出る形は、分かれていません。両方あった子が28人(44.4%)で最多です
- 思い当たるきっかけの上位3つは、すべて学校でした(先生34人・友人34人・学習28人)
- 保護者だけで相談できる窓口があります。本人を連れて行くことが最初の仕事ではありません
お腹が痛いと言い出したことと、弟に当たるようになったことは、別々の出来事ではないかもしれません。ばらばらに見えているものを1つの経過として話せると、相談は進みやすくなります。
本記事で紹介している情報について
この記事は、性質の異なる2つの情報で構成しています。混ざらないように整理しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 二次障害の位置づけ・防ぎ方 | 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター「発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究──二次障害の予防的対応を考えるために」。例の一部は『公式マスターブック メンタルヘルス支援士』(一般社団法人 人間力認定協会・2025年3月1日 初版第一刷)第2章「発達障害と精神疾患・依存症の関係性」より引用。引用は原文のままです |
| 63人のデータ | 当協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)。件数・割合・平均はすべて当協会が算出しました。回答は原文のまま掲載し、改行のみ変換しています |
| 公的な定義がないこと | 「発達障害ナビポータル」(厚生労働省・国立障害者リハビリテーションセンター・文部科学省・国立特別支援教育総合研究所)でのサイト内検索。2026年9月9日に当協会が実測 |
| 相談窓口 | 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)/こどもの心の診療ネットワーク事業(国立成育医療研究センター)/こども家庭庁「相談窓口」 |
この記事は診断も治療も行いません。お子さんの状態について判断が必要な場合は、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください。


