子どもの二次障害は診断名で違うのか|ASD・ADHD・LDを比べる

「ASDだから不登校になりやすい」「ADHDだと荒れやすい」。調べていると、そういう説明に行き当たります。

診断名がついたばかりの時期は、この先どうなるのかを診断名から予測したくなります。その理由の1つとして先の見通しがほしいからというものがあるかと思います。

当協会が集めた保護者回答を、診断名ごとに分けて数えました。結果からお伝えすると、現れ方はほとんど変わりませんでした。はっきり違っていたのは、そこに至るきっかけのほうです。

メンタルヘルス支援士 公式サイト

現れ方は、診断名でほとんど変わりませんでした

ASD・ADHD・学習障害の3つで、内にこもる形と外に出る形の割合がほぼ同じ

診断名ごとに、あらわれた状態を数えたものです。

診断名人数不登校内にこもる形外に出る形
自閉スペクトラム症41人63.4%87.8%63.4%
ADHD23人56.5%87.0%65.2%
学習障害15人66.7%86.7%66.7%

出典:一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)。複数回答。割合は当協会が算出。「内にこもる形」は不登校・不安障害・引きこもり・うつ・心身症・強迫性障害・対人恐怖・依存症、「外に出る形」は暴言・反抗・暴力・自傷・家出・非行を1つ以上挙げた人の割合です。

内にこもる形は 87.8% / 87.0% / 86.7%。外に出る形は 63.4% / 65.2% / 66.7%。

3つの診断名で、ほとんど差がありません。1人あたりの個数も、自閉スペクトラム症3.83個・ADHD 4.13個・学習障害4.07個で、大きくは変わりませんでした。

「ADHDだから荒れやすい」という関係は、この63人からは読み取れません。外に出る形があった割合は、3つともおよそ3人に2人です。

なぜ「診断名で決まる」と感じるのか

差がないのに、差があるように感じられるのには理由があります。

診断名ごとの説明は、特性の説明としては正確だからです。「ADHDは衝動性がある」「ASDはこだわりが強い」——ここまでは特性の話で、当協会の公式テキストもそう整理しています。問題は、その先を続けて読んでしまうことです。

衝動性があることと、暴言が出ることは、直接つながっていません。間に「理解されないまま叱責が積み重なった」という時間が入ります。この記事の集計で3つの診断名の数字がそろったのは、その時間のほうが、特性の違いより大きく効いているからだと考えられます。

国立特別支援教育総合研究所も、発達障害の二次障害は「環境との相互作用から生じるもの」だとし、予防として「安心できる人的環境と居場所となる生活環境を保障すること」を挙げています。診断名ごとの対処法が並ぶわけではありません。

診断無し(グレーゾーン)10人と、その他の発達障害10人については、内訳の人数が10人未満になるため表に出していません。母数が小さいと割合が大きく振れるためです。またこの63人は母数が小さく、診断名ごとの一般的な傾向として読むことはできません。「差が出なかった」という結果も、母数を増やせば変わる可能性があります。

内にこもる形と外に出る形が同じ子に重なることは、別の記事で扱っています。

子どもの二次障害とは|内にこもる子と荒れる子に、分かれません

変わっていたのは、きっかけのほうでした

診断名別のきっかけ1位。ASDとADHDは先生、学習障害は学習

同じ63人に、「二次障害の原因として思い当たる事柄」も尋ねています。ここには、はっきりした差が出ました。

診断名1位2位3位
自閉スペクトラム症(41人)先生 24人友人 22人学習 18人
ADHD(23人)先生 12人友人 12人学習 11人
学習障害(15人)学習 10人

出典:同調査(有効回答63件)。複数回答。10人未満の項目は「—」としています。

学習障害では、1位が「学習」でした。自閉スペクトラム症とADHDでは、どちらも「先生」と「友人」が上位で、学習は3番目です。

つまり、診断名で変わるのは「出方」ではなく「入口」のほうです。

10歳の男児(自閉スペクトラム症・ADHD・学習障害)の保護者は、入口をこう書いています。

学校の授業についていけず、勉強すること事態が嫌になってしまいました。また、勉強の仕方もわからない。習ったことを直ぐに忘れてしまう。

一方、12歳以上の男児(自閉スペクトラム症)の保護者は、こう書いています。

自閉症で人とのコミュニケーションがうまくとれないので、おとなしく見られ、いじめの対象になりました。

入口は「勉強」と「対人」で違いますが、そこから先に起きたことは、どちらも不登校でした。

この違いは、見るべき場所が診断名によって違うということを意味します。学習障害のあるお子さんなら、まず授業の中で何が起きているか。自閉スペクトラム症なら、先生や友人との場面。診断名から結果を予測するより、入口を探すほうが実際的です。

よくある3つの入口も、行き着く先は同じでした

当協会の教材には、二次障害に至るまでの経過を追った例が3つ載っています。そのうち限局性学習症(学習障害)の例が、こちらです。

小学5年生のCさんは限局性学習症です。特に数字や計算が苦手でいくらやっても理解ができません。単純な足し算も指を使わないとできず、同級生の子どもたちと比べても時間がかかってしまいます。算数のテストで非常に低い点数を取ってしまうため、いつも同級生の笑われ者になっていました。ある日、我慢の限界を迎え、Cさんは学校に行けなくなってしまいました。

『公式マスターブック メンタルヘルス支援士』第2章「限局性学習症の二次障害発症までの一例」より

入口は算数で、行き着いた先は不登校です。63人の集計と同じ形になっています。

自閉スペクトラム症の例では、入口が感覚過敏(給食室の匂い)でした。そして注意欠如多動症の例だけは、子どもではありません。

社会人のBさんは注意欠如多動症です。Bさんは営業職として働いていますが、日ごろから忘れ物や業務に関する連絡を忘れて、上司から注意を受けていました。

同章「注意欠如多動症の二次障害発症までの一例」より(冒頭部分)

忘れ物と叱責という組み合わせは、学齢期でも同じ形で起きます。この例が大人になっているのは、気づかれないまま続くと、そのまま職場で再現されるということでもあります。

大人になってから同じことが起きる場合は、別の記事で扱っています。

発達障害の二次障害|叱責の積み重ねが、大人の不調をつくる

診断名がつく前から、同じことが起きています

63人のうち10人は「診断無し(グレーゾーン)」と答えています。

内訳の人数が10人未満になるため割合は出しませんが、この10人にも不登校・対人恐怖・引きこもり・暴力などが挙がっていました。

12歳以上の女児(診断無し・グレーゾーン)の保護者の回答です。

昨年1月末から登校しぶりが始まり、2月は強制的に学校に行かせていましたが、トイレでもお風呂でも泣き、腹痛頭痛も訴え出し、ある日泣き叫びました。3月はテストだけ何とか受けさせましたがそこから完全不登校引きこもりになり一年が経ちました。

診断がついていないから軽い、ということにはなっていません。診断は、支援を受けるための入口の1つであって、起きていることの重さを決めるものではありません。

どのくらいの期間続くのかは、別の記事で63件の記述から整理しています。

子どもの二次障害はどのくらい続くのか|63件の記述から見える経過

診断名より先に、確かめられること

ここまでの集計をふまえると、いま手元でできるのは「診断名から先を読む」ことではなく「入口を1つ特定する」ことになります。

63件の記述で、入口として実際に書かれていたものを整理しました。これは公的な様式ではなく、当協会が記述から取り出したものです。

見る場所確かめ方記述に出てきた例
授業の中どの教科・どの活動で止まるか「授業についていけず」「算数のテストで低い点」「細かい文字指導」
人との場面誰との、どの時間帯か「いじめの対象になりました」「同性の友達との話が合わない」
感覚の負担音・匂い・明るさ・食感「給食室の匂い」「大きい音や特定の音が辛い」
見通しの有無予定が変わる場面があるか「日課表通りに授業が行われない事で、毎日何をするが分からず」
体に出ているもの朝の時間帯に何が起きるか「腹痛頭痛」「咳ちっく」「起きられない」

出典:当協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」の記述から、当協会が整理したものです。公的な分類ではありません。

5つ全部を確かめる必要はありません。診断名が学習障害なら1行目から、自閉スペクトラム症なら2行目と3行目から見ると、この63人の傾向とは合います。

そして入口が分かると、学校に伝える言葉が変わります。「学校に行きたがらない」ではなく「算数の時間に教室を出ている」のほうが、相談は進みます。診断名を伝えることより、場面を1つ伝えることのほうが効くことがあります。

子どもの二次障害チェック|同じ悩みを持つ保護者の体験と対比

メンタルヘルス支援士について

ここまで、診断名ごとの集計と、3つの例をご紹介してきました。

こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や教育・福祉の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを体系的に学べる民間資格です。この記事で引用した3つの例も、公式テキストの第2章に掲載しています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、取れば診断ができるようになるわけでもありません。日々お子さんと関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。

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Q&A|診断名と二次障害についてよくある質問

Q1:ASDのほうが不登校になりやすいのですか?

この63人では、不登校の割合は自閉スペクトラム症63.4%・ADHD 56.5%・学習障害66.7%でした。いちばん高いのは学習障害です。「ASDだから不登校になりやすい」という関係は読み取れません。

Q2:ADHDだと暴言や暴力が出やすいのでしょうか?

外に出る形(暴言・反抗・暴力など)を1つ以上挙げた割合は、自閉スペクトラム症63.4%・ADHD 65.2%・学習障害66.7%3つともおよそ3人に2人で、ほとんど差がありません。

Q3:診断名が複数あると、重くなりますか?

この63人では、診断名が1つの方(36人)で1人あたり3.67個、2つ以上の方(27人)で3.89個でした。差はわずかです。ただし母数が小さく、この調査からは「診断名の数で重さが決まる」とは言えません。

Q4:診断名から、この先を予測できますか?

この集計を見るかぎり、現れ方の予測には使いにくいという結果でした。一方できっかけには差があります(学習障害では「学習」が1位)。診断名は、先を占うより「どこを見ればよいか」を絞るのに使えます。

Q5:診断がまだついていません

63人のうち10人は「診断無し(グレーゾーン)」で、この10人にも不登校・対人恐怖・引きこもりなどが挙がっていました。診断を待ってから相談する必要はありません。発達障害者支援センターや保健所は、診断の有無にかかわらず相談を受けています。

まとめ|診断名は、先を占うものではありません

  • 診断名を2つ以上挙げた方が27人(42.9%)。「ASDの子は」という言い方は、4割以上に当てはまりません
  • 内にこもる形は 87.8% / 87.0% / 86.7%、外に出る形は 63.4% / 65.2% / 66.7%。3つの診断名でほとんど差がありません
  • 差が出たのは、きっかけのほうでした。学習障害では「学習」が1位、自閉スペクトラム症とADHDでは「先生」「友人」が上位
  • 3つの例も入口が違い、行き着いた先は同じでした(給食室の匂い/算数/職場の忘れ物)
  • 診断がついていない10人にも、同じことが起きていました

診断名を手がかりにするなら、「この先どうなるか」ではなく「どこで詰まっているか」を探すほうに使えます。

本記事で紹介している情報について

項目内容
診断名別の集計当協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)。診断名は複数回答のため、複数ある子はそれぞれの欄に重複して数えています。割合はすべて当協会が算出しました
3つの例『公式マスターブック メンタルヘルス支援士』(一般社団法人 人間力認定協会・2025年3月1日 初版第一刷)第2章より引用。引用は原文のままです
記事に出していない内訳診断無し(グレーゾーン)10人・その他の発達障害10人は、内訳の人数が10人未満になるため割合を出していません。母数が小さいと割合が大きく振れるためです

⚠ この63人は発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られ、診断名ごとの一般的な傾向を示すものではありません。また医師が二次障害と判定したものではなく、保護者が「あらわれた」と受け取ったものです。

この記事は診断も治療も行いません。診断名や支援について判断が必要な場合は、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください。

参考・相談先

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