子どもの二次障害はどのくらい続くのか|63件の記述から見える経過

いつまで続くのか。

子どもの様子が変わってから、いちばん知りたいのはここだと思います。見通しがあれば、今日をやり過ごせるからです。

当協会が集めた保護者63人の回答にも、同じ言葉がありました。11歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答です。

いつまで続くのか、、こちらも知りたいです。。
小5から児童精神科に通い、心理療法やデイに通い治療中です。

この記事では、63件の記述を読んで「終わったと書いているか」で分けました。先にお伝えすると、期間を平均する形にはなりませんでした。代わりに見えたのは、終わった人が何を書いていたかのほうです。

メンタルヘルス支援士 公式サイト

61人のうち25人が、まだ続いていると書いていました

続いている25件・落ち着いた19件・波がある17件の内訳

当協会は63人の保護者に「二次障害はどのくらいの期間続きましたか」を自由記述でうかがいました。その回答を当協会が読んで、「まだ続いている」「落ち着いた・終わった」「波がある」の3つに分けたのが次の表です。死別に触れている2件は、分類にも引用にも使っていません。母数は残る61件です。

回答の書き方件数割合
まだ続いていると書いていた25件41.0%
落ち着いた・終わったと書いていた19件31.1%
波がある・部分的に落ち着いたと書いていた17件27.9%

出典:一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件。死別に触れた2件を除く61件が母数)。分類は当協会が回答を読んで判定したもので、選択肢から選んでもらったものではありません。1件ずつの判定は一次情報集計に記録しています。

「まだ続いている」が41.0%で最も多くなりました。ただしこれは調査に答えた時点での状態です。回答した保護者の多くは、いま渦中にいる人です。そういう時期だから、書こうと思ったとも読めます。

この41.0%を「4割は終わらない」と読まないでください。終わった人ほど回答しにくい、という偏りが入っている可能性があります。この調査から言えるのは「終わっていない時期がそれなりに長い」ということまでです。

二次障害という言葉そのものの位置づけは、別の記事で整理しています。

子どもの二次障害とは|内にこもる子と荒れる子に、分かれません

なぜ「平均◯か月」と書けないのか

「それで、平均するとどのくらいなのか」と思われたかもしれません。この記事では平均を出していません。理由をお伝えします。

当協会は「二次障害はどのくらいの期間続きましたか」を尋ねていますが、これは選択肢から選ぶ設問ではなく、自由記述です。実際の回答は「継続中」の3文字から、数百字にわたるものまで幅があります。

期間が数字で書かれていたのは、61件中28件でした。残りは「継続中」「現在も続いています」のように、長さではなく状態で書かれています。平均を出すと、数字を書いた28人だけの平均になります。そのためこの記事では平均を出しません。

代わりに使ったのが、上の表の3分類です。判定の基準はこうしています。

  • 続いていると書いていた……回答の時点で終わりを書いていないもの
  • 落ち着いた・終わったと書いていた……終息を書いているもの
  • 波がある・部分的に落ち着いたと書いていた……その両方を書いているもの

終わった人が書いていたのは、時間ではなく転換点でした

転換点。環境が変わった7件・支援につながった5件・周囲の理解が変わった4件

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

「落ち着いた・終わった」と書いた19人の記述を読むと、19人中13人が、終わった理由にあたることを書いていました。そして、それは「時間が経ったから」ではありませんでした。

書かれていた転換点件数記述に出てきた言葉
環境が変わった7件「環境を変えて」「学年が上がり」「学校ではない居場所で」「卒業と同時に」
支援や配慮につながった5件「テストにしてもらうことで」「2週間毎に話を聞いてくれることになり」
周囲の理解が変わった4件「こちらが理解してから」「寄り添うようにして」「先生達も少し理解をしてくださいました」
転換点の記述がなかった6件「1年半くらい」「7年位」など、期間だけを書いたもの

出典:同調査。母数19件のため割合は出していません。1つの回答に複数の転換点がある場合はそれぞれに数えているため、合計は19を超えます(延べ16件+記述なし6件)。分類は当協会が回答を読んで判定しました。

いちばん多かったのは「環境が変わった」です。学年が上がる、居場所が変わる、学校から離れる。本人が変わったからではなく、まわりが変わったときに落ち着いた、という書き方をしています。

12歳以上の女児(自閉スペクトラム症・学習障害)の保護者は、こう書いています。

約1年近く続き、彼女の苦しみをこちらが理解してから会話できるようになった。本人は自分自身何かがおかしいと気づいていて、ディスレクシアと診断されてから落ち込むことはなくなり、前向きに自分ができる範囲で学習しようと頑張っています。

「こちらが理解してから」——変わったのは、まず親の側です。そして診断がついたことが、本人にとって落ち込みの終わりになっています。診断がつくことは負担になると考えられがちですが、この回答では逆に働いています。

4歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答です。

1番ひどく現れた期間は3ヶ月間です。完治というかはわかりませんが、他害は一切なくなりました。(中略)また、先生から叱られる事も減り、良き行動が増えてくると、自然とお友達とも仲良く遊べる時間が増えました。

「先生から叱られる事も減り」——ここが転換点です。この保護者は3か月という長さも書いていますが、終わりを説明しているのは日数ではなく、叱られる回数が減ったことのほうです。

一直線には終わりません

3つ目の分類、「波がある・部分的に落ち着いた」が17件ありました。

7歳の男児(診断無し・グレーゾーン)の保護者の回答です。

半年ほどはひどかった。9歳になり、だいぶ落ち着いたが、疲れているとき、他の人とトラブルになった後がスムーズに終わらせられなかったとき、など、たまに荒れることはあるが、入学直後ほどではない。

「入学直後ほどではない」という比べ方をしています。ゼロになったかどうかではなく、いちばんひどかったときと比べてどうか。この見方だと、途中経過にも変化が見えます。

7歳の男児(自閉スペクトラム症・ADHD)の保護者の回答です。

担任の先生とリモートでやり取りし、少しずつ行けるようになりましたが、長期休みの後や、ちょっとした不満が積もると辛かった記憶を思いだし、2年生の現在も行ったり行かなかったりを繰り返しています。

「長期休みの後」に戻ることが書かれています。17件のなかには、疲れているとき・環境が変わったとき・思い出したときに一時的に戻る、という記述が複数ありました。

戻ったことは、それまでが無駄だったという意味ではありません。戻る幅が小さくなっているかどうかが、この17人の見ている変化です。

そして、この17件を「まだ終わっていない」と数えるか「落ち着いてきた」と数えるかで、集計の見え方は変わります。この記事では、どちらにも寄せずに独立した分類として出しました。実際の経過が、そのどちらでもない形をしているためです。

「完治」という言葉が、いちばん使いにくい

61件を通して読むと、終わりの線を引くこと自体が難しいという書き方が目立ちます。

「完治というかはわかりませんが」「完治かは分かりません」「いつまでが二次障害なのかはわからない」——落ち着いたと書いている人でさえ、完治という言葉は避けています。

これには理由があります。二次障害は病名ではないため、「治った」と判定する基準がありません。当協会の公式テキストも、二次障害を発達障害に関連して起こる「二次的な問題」の総称と位置づけています。

ですから「まだ完治していない」と感じることは、経過が悪いことを意味しません。そもそも完治という判定が存在しないためです。

見るとよいのは、ゼロかどうかではありません

61件の記述で、実際に変化として書かれていたものを整理しました。

見るところ記述に出てきた書き方
戻る幅「入学直後ほどではない」「頻度は減り弱まってきました」
戻るきっかけ「長期休みの後」「疲れているとき」——予想がつくようになったか
行ける場所が増えたか「週に1、2回休み時間に」「フリースクールにも週一で」
言葉にできる範囲「以前より口で説明出来るようになってきた」

出典:同調査の記述から当協会が整理したものです。公的な評価尺度ではありません。

「いつまで」を聞ける相手を1つ決めておく

61件を読んで、もう1つ気づくことがあります。期間の見通しを、誰かに聞けている人と、聞けていない人がいます。

「いつまで続くのか、、こちらも知りたいです」と書いた保護者は、児童精神科に通い、心理療法やデイにもつながっていました。つながっていてなお、見通しは示されていません。

これは、その医療機関が不親切だからではありません。二次障害は病名ではなく、経過を予測する研究の対象にもなっていないため、専門家であっても「あと何か月です」とは言えないという事情があります。

そのうえで実際的なことを書くと、見通しではなく「次に何を試すか」を相談できる相手を1つ持っているかどうかが、19人の記述との違いになっていました。学校の外なら発達障害者支援センターや保健所、学校の中ならスクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターです。

きっかけが先生との関係にある場合は、別の記事で扱っています。

担任の先生と合わないとき|二次障害のきっかけは1つではありません

保護者自身が消耗しているときは、別の記事で扱っています。

不登校の親が疲れたとき|34人の「こうしておけばよかった」

メンタルヘルス支援士について

ここまで、61件の記述を「終わったと書いているか」で分けた結果と、終わった人が書いていた転換点をご紹介してきました。

こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や教育・福祉の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを体系的に学べる民間資格です。この記事で扱った二次障害の考え方は、公式テキストの第2章で解説しています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、取れば診断ができるようになるわけでもありません。日々お子さんと関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。

メンタルヘルス支援士の詳細について

Q&A|二次障害の期間についてよくある質問

Q1:平均するとどのくらいですか?

この調査では平均を出していません。期間が数字で書かれていたのは61件中28件で、残りは「継続中」のように状態で書かれています。平均を出すと、数字を書いた28人だけの平均になってしまいます。

Q2:4割が終わらないということですか?

そうは読めません。「まだ続いている」41.0%は、調査に答えた時点の状態です。渦中にいる人ほど回答しやすいという偏りが入っている可能性があります。この調査で追跡は行っていません。

Q3:時間が経てば落ち着きますか?

「落ち着いた」と書いた19人のうち13人は、環境が変わった・支援につながった・周囲の理解が変わったのいずれかを書いていました。時間そのものを理由に挙げた回答は見当たりませんでした。

Q4:一度落ち着いたのに、また戻りました

この調査では17件が「波がある・部分的に落ち着いた」でした。長期休みの後、疲れているとき、思い出したときに戻る、という記述が複数あります。戻ることは、それまでが無駄だったことを意味しません。

Q5:完治するのでしょうか?

二次障害は病名ではないため、完治という判定そのものがありません。診断がつくのは、そこに現れた個別の状態(不安症やうつ病など)のほうです。落ち着いたと書いた保護者でさえ「完治というかはわかりませんが」と書いています。

まとめ|見通しは、時間ではなく転換点にあります

  • 61件中、まだ続いていると書いたのが25件(41.0%)、落ち着いたが19件(31.1%)、波があるが17件(27.9%)
  • 期間が数字で書かれていたのは28件だけ。そのため平均は出していません
  • 落ち着いた19人のうち13人が、転換点を書いていました。環境が変わった7件・支援につながった5件・周囲の理解が変わった4件
  • 時間そのものを理由に挙げた回答は、見当たりませんでした
  • 「完治」という判定は、そもそも存在しません。二次障害は病名ではないためです

いつまで続くのかは、この調査からは答えられません。ただ、終わった人が書いていたのは「待っていたら終わった」ではなく「何かが変わった」でした。変えられるものを1つ探すほうが、期間を数えるより実際的かもしれません。

本記事で紹介している情報について

項目内容
分類の方法当協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」の設問「二次障害はどのくらいの期間続きましたか」は自由記述です。有効回答63件のうち死別に触れた2件を除く61件を、当協会が読んで3つに分けました。選択肢から選んでもらったものではありません。1件ずつの判定は一次情報集計に記録しています
転換点の分類「落ち着いた・終わった」19件の記述から、当協会が読み取ったものです。母数が19件のため割合は出していません。1つの回答に複数ある場合はそれぞれに数えています
見るところの整理公的な評価尺度ではありません。61件の記述に出てきた書き方を当協会が整理したものです

⚠ この61人は発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られます。また追跡調査ではなく、回答時点の状態を尋ねたものです。回答者の中には、支援職の立場から書いている方や、成人したお子さんについて書いている方も含まれます。

この記事は診断も治療も行いません。経過について判断が必要な場合は、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください。

参考・相談先

メンタルヘルス支援士バナー