独り言が増えた。人と話さなくなった。部屋から出てこない日が続いている。
家族の様子が以前と変わったとき、何が起きているのかは外からは見えません。本人に聞いても、はっきりした答えが返ってこないこともあります。
この記事では、当協会が作成した統合失調症の簡易チェックリストをご紹介します。ただしこれは、家族に診断名を当てはめるためのものではありません。むしろお伝えしたいのは、14項目のうち、家族が外から気づけるのは6項目しかないということのほうです。
受診につながらない段階でお困りの場合は、先にこちらをご覧ください。
>統合失調症の受診拒否|連れて行く前に、家族だけで相談できる
統合失調症の簡易チェックリスト
- 自分を責めたり命令したりしてくる、正体不明の声が聞こえる
- 誰かから監視されたり、盗聴されたり、狙われていると感じる
- みんなが自分の悪口をいったり、嫌がらせをしたりすると感じる
- 自分は誰かに操られていると感じる
- 独り笑いをしたり、独り言をいうようになった
- 自分の考えていることが、周りにもれていると感じる
- 「楽しい」「嬉しい」「心地よい」などと感じなくなった
- 何をするのも億劫で、意欲や気力がなくなった
- 頭の中が騒がしくて眠れなくなった、または眠りすぎるほど眠るようになった
- 人と話すのが苦痛になり、誰とも話さなくなった
- 部屋に引きこもり、1日中ぼんやり過ごすようになった
- ささいなことに過敏になり、注意をそがれたり、興奮したりするようになった
- 1つのことに集中したり、とっさの判断ができなくなったりした
- 極度の不安や緊張を感じるようになった
これは当協会が作成し、資格教材に掲載している14項目です。読みやすさのために表現を記事向けに整えていますが、見る内容は教材と同じです。DSM-5-TR・ICD-11 をもとに当協会が作成した簡易版で、診断基準ではありません。出典は『公式マスターブック メンタルヘルス支援士』第1章。調査の詳細は記事末の「本記事で紹介している情報について」に記載しています。
このうち、家族が外から気づけるのは6項目だけです

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。14項目を、外から見えるかどうかで分けてみます。
| 家族が外から気づけること(6) | 本人にしか分からないこと(8) |
|---|---|
| 独り笑いをしたり、独り言をいう | 正体不明の声が聞こえる |
| 何をするのも億劫で、意欲や気力がない | 監視・盗聴されている、狙われていると感じる |
| 眠れない、または眠りすぎる | みんなが悪口や嫌がらせをしていると感じる |
| 人と話すのが苦痛で、誰とも話さない | 誰かに操られていると感じる |
| 部屋に引きこもり、1日中ぼんやり過ごす | 考えていることが周りにもれていると感じる |
| ささいなことに過敏になり、興奮する | 「楽しい」と感じない/集中・判断ができない/極度の不安や緊張 |
右側は、本人が言葉にしてくれない限り、外からは分かりません。幻聴や妄想は、本人にとっては現実として体験されています。だから「そんな声は聞こえないよ」と否定されると、話す気持ちがなくなります。
つまり、家族が観察できるのは、あったものが失われていく側(陰性症状)のほう——意欲が落ちた、話さなくなった、引きこもるようになった、という「以前と変わった」という形です。左側の6項目は、どれも「◯◯になった」「◯◯するようになった」という書き方をしています。
この構造は、うつ病のチェックリストでも同じでした。周囲から見えるのは、症状そのものではなく変化のほうです。
>うつ病のチェックリスト|職場で気づけるのは外から見える変化だけ
「何個で該当」という基準はありません
このリストには、該当と非該当を分ける区切りがありません。「◯個以上で統合失調症の可能性」という線を、この記事では引きません。診断は医師が行うものだからです。
代わりに見ていただきたいのは、「以前と比べて変わったか」です。もともと口数が少ない方が静かにしていることと、よく話していた方が誰とも話さなくなったことは、まったく違う出来事です。比べる相手は、他人ではなく過去のご本人になります。
いちばん大事なのは、再発の予兆に気づくことです
統合失調症は、適切な治療を行うことで回復可能な精神疾患です。長いスパンで見ると過半数は回復するといわれています。ここは最初にお伝えしておきます。
そのうえで、再発しやすいという特徴があります。スウェーデン国立患者レジストリと処方薬レジストリのデータを用い、2006年〜2015年に初めて登録された患者の再発を調べた研究は、次のように結論づけています。
再発は疾患の進行を加速させる傾向を示し、再発回数が多くなると、より短い期間で再発する。
だからこそ、当協会は再発予防のために2つのことを挙げています。
- 再発を予見させるような症状に気づくこと/上の6項目は、そのまま予兆の観察点になります
- 適量の薬物療法を継続すること/治療の基本は抗精神病薬です
⚠ 一時的に症状が軽くなったからといって、勝手に服用を中断することは厳禁です。再発の危険性が高まります。薬の量の調整や期間の相談は、必ず医師にしてください。家族が「もう良くなったから」と減薬をすすめないこと。ここは、家族ができる支援のなかで最も大きいところです。
薬物療法のほかにも、運動療法や作業療法、社会生活技能訓練(SST)を行うことで、社会生活や対人スキルを訓練していくことも重要とされています。スキルが身につけば自信につながり、社会復帰しやすくなります。
予兆の出方は、人によって違います
ここで注意していただきたいことがあります。「この項目が出たら再発」という共通の順番はありません。眠れなくなることから始まる方もいれば、口数が減ることから始まる方もいます。同じ人でも、前回と次回で出方が変わることがあります。
そのため、家族にできるのは「その人の場合はどうだったか」を覚えておくことのほうです。前に調子を崩したとき、その1〜2週間前に何が起きていたか。夜起きている時間が増えていたのか、食事や入浴の間隔が空いていたのか、外出が減っていたのか。思い出せるうちに、日付と一緒に書き留めておくと、次に迷ったときの基準になります。受診の際にも、この記録がそのまま医師への情報になります。
⚠ ただし、これは観察を強めてくださいという意味ではありません。見張られていると感じさせることは、本人にとって負担になります。記録するのは、家族が自分の記憶のためにしておくことであって、本人に見せたり突きつけたりするものではありません。
ご家族に精神疾患のある方が学びに来られることもあります。
自身がasdでパートナーも統合失調症ですが、お互いの関わることについて、役に立たせて頂いた講座でした。自身がasdなので、支援者が自分にどんなことを伝えたいのか、助言したいのか、ということについて、学ばせて頂いてなるほどと思いました。
30代の方の回答です。支える側と支えられる側が、同じ家の中で入れ替わることがあります。「支える人/支えられる人」という線は、実際にはそれほどはっきりしていません。
気づいたときに、どうするか
以前との違いに気づいたとき、家族の側でできることを整理します。
- 印の数を本人に伝えない/「あなたは8個当てはまる」と告げることに、意味も権限もありません
- 気づいた変化を1つだけ、事実として伝える/「最近眠れていないみたいだけど、大丈夫?」で十分です。病名は出しません
- 幻聴や妄想を、否定も肯定もしない/「そんなことはない」と否定すると話してもらえなくなり、「そうだね」と肯定すると体験が強まることがあります。「つらいね」と、感じている苦痛のほうに応じます
- 主治医がいるなら、家族から連絡してよい/通院中であれば、家庭での様子を医療機関に伝えることができます
- 家族だけで相談できる窓口を使う/保健所・精神保健福祉センターは、本人が受診していなくても家族からの相談を受け付けています
支える側も消耗します
ここを飛ばすと、この記事は「もっとよく見ていなさい」という要求になってしまいます。実際には、支える側にも限界があります。
家族と自分のセルフケアの為に受講しました。(中略)発達障害が家族にいる場合、第三者が職業として支援するのとは、格段に違う辛さがあると感じます。
60代以上の方の回答で、総合評価は「普通」でした。「第三者が職業として支援するのとは、格段に違う辛さ」——家族は、仕事のように終業時刻で区切ることができません。
学ぶことにも限界があります。それをはっきり書いてくださった方がいました。
ボーダーラインパーソナリティ症、鬱、自閉スペクトラム症を患う子供と、その対応に振り回される妻を少しでもフォローできるスキルを身に付けたかったのですが、二重の関係性でのカウンセリングは難しいと4章で知ってから、少し意欲が削がれてしまいました。(後略)
50代の方の回答で、総合評価は「やや不満」でした。家族が家族をカウンセリングすることには、構造的な難しさがあります。これは学びが足りないからではありません。家族の役割は、治療者になることではなく、変化に気づいて医療につなぐことのほうです。
統合失調症とは、どういう状態か
統合失調症は、DSM-5-TR では「統合失調スペクトラム症及び他の精神症群」に分類されます。症状は3つの種類に分けて整理されます。
| 分類 | どういうものか |
|---|---|
| 陽性症状 | 健康なときにはなかったものが現れる。幻覚や妄想がこれにあたります |
| 陰性症状 | あったものが失われる。意欲の低下、感情を表に出すことの減少がこれにあたります |
| 認知機能障害 | 記憶力・注意力・集中力の低下 |
先ほど、家族が外から気づけるのは6項目だけだとお伝えしました。その6項目が、どれも「あったものが失われる」側に寄っていたのは、このためです。
生涯有病率は、国内でおよそ1%といわれています。喘息の患者数と同じくらいで、珍しい精神疾患ではありません。最新の統計では、2019年に日本を含む12カ国で実施された大規模オンライン調査に参加した日本人3万人超のデータを解析した結果、日本の生涯有病率は0.59%と推定されています。
「なりやすい特徴」を当てはめないでください
これは「当てはまる人が発症する」という意味ではありません。明確な原因は現在でも解明されていません。家族を見て「内向的だから」と結びつけることに、意味はありません。
その代わりに知っておいていただきたいのは、早期に診断と治療をすることで症状が重くなりにくいと言われている、という点のほうです。
同じ立場の人は、どれだけいるのか|146人のデータ
ここからは、当協会の一次情報をご紹介します。資格に申し込んだ146人が、何を理由に学びに来ているかのデータです。
- 身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から……86人(58.9%)
- 現在の仕事に活かせると思ったから……85人(58.2%)
- 子育てに活かせると思ったから……49人(33.6%)
- 自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から……45人(30.8%)
最も多いのは「身近に精神疾患または症状がある方がいる」86人(58.9%)です。学びに来る理由の第1位が、自分のためではなく特定の誰かのためだということになります。
職種では医療・福祉業53人(36.3%)、教育業・学習支援業30人(20.5%)で、この2つで半数を超えます(両方を選んだ方が3人いるため、実数は80人・54.8%です)。
障害福祉サービスの仕事に従事しています。利用者様の個別特性に即して、就労継続を支援出来る事は大きな成功体験でしたが、就労となると社会や作業のルールマナーを守ってもらえない事が支援者としての大きなストレスとなり、葛藤の毎日です。自身のメンタルヘルスに大変役立つ学びでした。
50代の方の回答です。「葛藤の毎日」——職業として支援している方にも、消耗はあります。家族の場合はそこに、終業時刻がありません。
⚠ この146人に統合失調症の有無を尋ねた設問はありません。お見せしているのは「どんな立場の人が学びに来ているか」であって、統合失調症の割合ではありません。
メンタルヘルス支援士について
ここまで、統合失調症の簡易チェックリストと、支える側146人のデータをご紹介しました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを体系的に学べる民間資格です。この記事で紹介したチェックリストも、公式テキストの第1章に掲載しています。社会生活技能訓練(SST)の進め方や、支援する側の関わり方は、教材でさらに詳しく解説しています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、取れば診断ができるようになるわけでもありません。身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。何が学べて何が学べないのかは別の記事で整理しています。
Q&A|統合失調症のチェックリストに関するよくある質問
Q1:何項目当てはまったら受診の目安ですか?
個数の目安はありません。このチェックリストは診断のためのものではなく、特徴を詳しく知るためのものです。見ていただきたいのは、以前と比べて変わったかどうかと、その状態が続いているかどうかです。1項目でも、これまでになかった変化が続いているなら相談の理由になります。
Q2:本人に「統合失調症かもしれない」と伝えるべきですか?
伝えないでください。診断ができるのは医師だけです。チェックの個数を本人に告げることにも、意味も権限もありません。伝えるなら、病名ではなく気づいた変化を1つだけにしてください。「最近眠れていないみたいだね」のほうが、本人は受け取れます。
Q3:「声が聞こえる」と言われたら、どう答えればよいですか?
否定も肯定もしないでください。「そんな声は聞こえない」と否定すると、以後は話してもらえなくなります。逆に話を合わせると、体験が強まることがあります。応じるのは、内容ではなく苦痛のほうです。「それはつらいね」「いつからそうなの」と、本人が困っていることに向けて返します。
Q4:本人が「もう治った」と薬をやめようとしています。
自己判断での中断は、再発の危険性を高めます。家族の側から減薬や中断をすすめないでください。やめたいという気持ちそのものは、主治医に伝えてよい内容です。「先生に相談してみよう」と、判断を医療機関に戻す形にしてください。副作用がつらいなら、それも医師に伝える理由になります。
Q5:本人が受診を嫌がります。家族だけで相談できますか?
できます。保健所と精神保健福祉センターは、本人が受診していなくても家族からの相談を受け付けています。「本人を連れて行けないと相談できない」と考えて動けなくなる方が多いのですが、そうではありません。窓口は記事の最後に掲載しています。
まとめ|比べる相手は、他人ではなく過去のご本人です

| 論点 | この記事で確認したこと |
|---|---|
| 症状の種類 | 陽性症状(現れる)/陰性症状(失われる)/認知機能障害の3つ |
| 家族に見えるもの | 14項目のうち6項目だけ。主に陰性症状で、いずれも「◯◯になった」という変化の形をしている |
| 判断の軸 | 「◯個以上で該当」という線は引かない。見るのは以前と比べて変わったか |
| 幻聴・妄想への応じ方 | 否定も肯定もしない。内容ではなく、感じている苦痛のほうに応じる |
| 再発について | 再発は疾患の進行を加速させ、回数が増えるとより短い期間で再発する。予兆に気づくことと、服薬を続けることが要 |
| 回復について | 適切な治療で回復可能。長いスパンで見ると過半数は回復するといわれている |
| 一次情報 | 受講動機の1位は「身近に精神疾患または症状がある方がいる」86人(58.9%) |
チェックリストは、家族に病名を当てはめるためのものではありません。「いつもと違う」に気づくための観察点です。そして気づいた先にあるのは、家族が治療者になることではなく、医療につなぐことのほうです。
本記事で紹介している情報について
この記事で使っている情報の出どころを、まとめて記載します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| このチェックリストについて | 当協会が DSM-5-TR・ICD-11 の診断基準をもとに作成した簡易版です。『公式マスターブック メンタルヘルス支援士』(一般社団法人 人間力認定協会・2025年3月1日 初版第一刷)第1章「統合失調症の基礎知識と支援方法」に掲載しています。読みやすさのために表現を記事向けに整えていますが、見る内容は教材と同じです |
| 作成の目的 | 公式テキストにこう明記されています。「その目的は精神疾患に関する特徴を詳しく知るためであり、セルフ診断を行っていただくためではありません」 |
| 解説部分 | DSM-5-TR・ICD-11 にもとづき当協会がまとめた解説です。受診の要否については判断していません |
| 受講者のデータ | メンタルヘルス支援士 受講前アンケート(有効回答146件・2025年2月27日〜2026年7月25日) |
| 受講者の声 | メンタルヘルス支援士 受講後アンケート(有効回答248件・2025年3月8日〜2026年8月20日)。自由記述欄・体験談欄からそのまま転載しています |
| 回答者について | 回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます。統合失調症の有無を尋ねた設問はありません |
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、当協会の公式テキストおよび当協会が収集したアンケート・体験談の一部をもとにまとめています。本記事は診断・治療を目的としたものではなく、掲載しているチェックリストは診断基準ではありません。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。気になる症状や不安がある場合は、早めに医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。ご本人やご家族に「消えてしまいたい」という言葉が出たときは、様子を見ずに、すぐ下記の窓口か医療機関にご連絡ください。


