毎日同じ職場で顔を合わせる同僚。何度説明しても話がかみ合わない。いつの間にか、こちらの言い方が悪いことにされている。気づけば、出勤前になると気分が重くなっている。
まわりに話しても「いい人だよ」「伝え方の問題じゃない?」と返ってきて、分かってもらえない。疲れているのは自分だけなのかと、ひとりで抱え込んでいる方も多いと思います。
そのしんどさには、「カサンドラ症候群」という呼び名があります。家族との関係で語られることが多い言葉ですが、同じことは職場でも起こります。
カサンドラ症候群に悩む方へ
もうひとりで悩まない
相手を知る学びが、自分を守る力になります。大人の発達障害の特性や心を守る考え方を基礎から学べて、日々のすれ違いを見直すヒントにもなる資格です。公式テキストには「カサンドラ症候群」の節もあります。
カサンドラ症候群は職場でも起こります|分かってもらえない苦しさ
カサンドラ症候群は、自閉スペクトラム症(ASD)の特性がある相手との関係のなかで、そばにいる側の心や体に不調が出た状態を指す言葉です。正式な病名ではありませんが、この苦しさは、次の2つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 話が通じない苦しさ
何度説明しても伝わらない、こちらの意図とずれた受け取り方をされる。相手との間で、気持ちや意図のやりとりがうまくいかないことによる苦しさです。 - 分かってもらえない苦しさ
そのつらさを、まわりの人に理解してもらえない苦しさです。「気にしすぎでは」と言われるたびに、ひとりで抱える重さが増えていきます。
職場では、この2つ目が起こりやすくなります。相手の特性は、会議で少し同席するだけの人や他部署の人には見えません。毎日隣で仕事をしている人が「話が通じない」と言っても、「え、いい人だよ」「伝え方の問題では」と返ってきます。家庭なら当事者はふたりですが、職場では同じ部屋の何人もが違う見え方をしていることがあります。人数が多いぶん、孤立は深くなります。
職場ならではの逃げ場のなさ
職場には、家庭とは違う制約があります。
- 関係を選べない
席替えも担当替えも自分では決められず、避けると業務が回らなくなります。 - 評価が絡む
相手が上司なら、関係の悪化がそのまま評価や配置に跳ね返ることもあります。 - 感情を出せない
家庭なら泣くことも黙ることもできますが、職場では表情を保つことが求められます。 - 相談先が身内にない
同僚に相談すれば噂になりかねません。上司が相手なら、その上司には相談できません。 - 終わりが見えない
異動も退職も、自分の意思だけでは動かせません。
どれも受け止め方の問題ではなく、職場という場所が持つ仕組みです。疲れてしまうのは、弱いからではありません。関係を選べない立場に置かれれば、誰にでも起こりうる負担です。こうした負担は、その相手と毎日関わっていない人からは見えにくいものです。まわりの人が平気そうに見えるのはそのためで、疲れているのは自分だけというわけではありません。
相手を診断しようとしなくて大丈夫です
つらい状態が続くと、相手のことを調べて、特性の一覧に当てはまる項目を数えたくなります。自然な気持ちですが、診断ができるのは医師だけです。当てはまる項目が多くても、その人がASDとは限りません。そして、たとえ診断名が分かっても、こちらの不調が軽くなるわけではありません。
考えたいのは「相手が何者か」ではなく「自分に何が起きているか」です。そちらは、自分で確かめられて、手を打つこともできます。
>カサンドラ症候群チェック|会話が噛み合わずもう限界…状況別診断と対処法
相手が上司か同僚か部下かで打てる手が変わります

職場といっても、相手がどの立場かで使える手が変わります。ここは家庭と大きく違うところです。
同僚が相手のとき
いちばん手が多い形です。相手を変えなくても、仕事の形を変えるという手が使えます。
仕事の形とは、席の位置や担当の分け方、連絡の手段などのことです。席や担当は会社が決めることが多いですが、連絡の手段は自分の側だけで変えられることがあります。たとえば、口で伝えていたことを、メールやチャットに移してみてください。言った言わないが減り、記録も残ります。全員に対して同じようにすれば、相手を特別扱いすることにもなりません。
>ASDの同僚へストレス…発達障害の同僚に疲れる原因と今日からできる5つの対処法
上司が相手のとき
いちばん手が打ちにくい形です。評価する人が相手なので、やり方を変えてほしいという相談そのものが、評価に関わるのではないかと心配になります。
ここでできるのは、相手に直接かけ合うことではなく、第三者を入れることです。第三者とは、評価に関わらない立場で、上司と自分の間に入って話を聞いてくれる人のことです。たとえば職場に産業医がいれば、体調や働き方について面談を受けられます。ストレスチェックを実施している職場なら、高ストレスと判定されたときに、医師の面接を申し出ることもできます。産業医がいるか、ストレスチェックがあるかは、人事や総務で確かめられます。社内に出しにくい場合は、各都道府県の産業保健総合支援センターや、労働局の総合労働相談コーナーでも相談できます。どこでも、相手のことではなく、自分の不調と仕事に出ている支障を話せば大丈夫です。
部下が相手のとき
距離を置くという手が、いちばん使いにくい形です。指導する責任があるため、関わらないという選択は取りにくくなります。
ここで効くのは、指示を文字にすることです。口頭で伝えた指示が通らないとき、同じことを言い直すより、手順を書いて渡したほうが早く済みます。これは相手に診断があるかどうかに関係なく、業務のやり方として説明できます。
取引先やお客様が相手のとき
社外の相手は、毎日同じ席で過ごす同僚とは違い、会う回数や窓口を調整しやすい相手です。ひとりで受け止め続けなくて大丈夫です。
- 担当を一人で抱えない
やりとりの状況を上司や同僚と共有し、打ち合わせに同席してもらいます。ひとりで受け止める場面が減るだけでも、気持ちの負担は軽くなります。 - やりとりを文字に残して共有する
電話や口頭で決まったことは、メールで確認して残します。行き違いが起きたときに、自分だけの責任にされずに済みます。 - 窓口や担当の見直しを相談する
負担が大きいときは、会社として対応を考えてもらえるよう相談します。担当の交代や窓口の一本化は、職場の中の人間関係より調整しやすいこともあります。
どの立場が相手でも、共通して避けたいことが1つあります。相手を発達障害だと決めつけて、まわりに話すことです。診断は医療の領域で、こちらが判断するものではありません。まわりに広まると、相手を傷つけるだけでなく、こちらが責められる立場になってしまうこともあります。
異動や退職を決める前に知っておきたいこと
辞めるか続けるかは、ご自身で決めていいことです。ただ、異動を相談するのと辞めるのとでは、先に準備しておくものが違います。分けて見ていきます。
異動や担当替えを相談したいとき
職場には、席を移す、担当を替える、部署を変えるなど、関係を終わらせなくても距離を作れる段階が、家庭より多く用意されています。ただし異動や担当替えは自分では決められないため、上司や人事に相談して、会社に判断してもらう形になります。
このとき「あの人と合わない」とだけ伝えると、好き嫌いの話と受け取られてしまうことがあります。仕事に支障が出ていることを分かってもらうために、次の2つを残しておくと役に立ちます。
- 自分の不調の記録
眠れなかった日、頭痛があった日などに、カレンダーへ印をつけるだけでかまいません。「いつから、どのくらい続いているか」が伝わると、体調の問題として受け止めてもらいやすくなります。受診するときにも、そのまま使えます。 - 社内で相談した記録
誰に・いつ・何を話したかを1行で残します。すでに相談していて状況が変わっていないことが伝わると、配置の見直しなど次の段階を考えてもらいやすくなります。
退職を考えているとき
辞める前に確かめておきたいのは、会社に在籍しているから使える仕組みです。辞めたあとでは使えなくなるものがあるため、先に知っておくと、辞める以外の選択肢も見えてきます。
- 休職制度
辞めずに一定の期間休んで、体を戻すための制度です。あるかどうか、どのくらいの期間休めるかは会社ごとに違い、就業規則に書かれています。 - 傷病手当金
病気やけがで仕事を休み、給料が出ないときに、勤め先で加入している健康保険から支給されるお金です。休んでいる間の生活の支えになります。
どちらも、在籍中であれば人事や総務に確かめられます。眠れていない状態で決めたことは、あとで変わることがあります。辞めることが悪いわけではありませんが、休んで体を戻してから考えるという順番もあります。
相手は変わらなくても状況は変えられます
相手を変えることも、診断を受けさせることもできません。異動や転職をしても、また似た相手と出会うことはあります。それでも、2つの苦しさのうち「分かってもらえない苦しさ」は、こちら側から変えていくことができます。
理解してくれる人がひとりいるだけで変わります
全員に分かってもらう必要はありません。たとえば、民間資格の1つであるメンタルヘルス支援士を受講した方からは、職場での経験として次のような声が寄せられています。
前任校でASDと思われる同僚がいて、自分がカサンドラ症候群のような症状が出たことがあります。ずっと無視され続けて嫌な思いをしましたが、周りの理解してくれる同僚に助けられました。(30代)
相手との関係が変わらなくても、「あの人とのやりとり、しんどいんだよね」に「そうだよね」と返してくれる人がひとりいれば、ひとりで抱える重さはぐっと軽くなります。
知ることで受け止め方を変えられます
もう一つ、こちら側で変えられるのが、相手の言動の受け止め方です。大人の発達障害の特性を知っていると、「わざと困らせているのではないかもしれない」と受け止め直せる場面が増えます。考え方のくせに気づいて自分の気持ちを整える方法を知っていれば、同じ出来事でも、引きずる時間を短くできます。
相手は変わらなくても、知識があれば、自分の心を守りながら関わり方を選べるようになります。
メンタルヘルス支援士について
当協会が認定するメンタルヘルス支援士は、大人の発達障害や心の不調の基礎、考え方のくせに気づく認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本を、順を追って学べる民間資格です。
この仕事を続けるために|職場の人との関わり方を見直す学び
受講した方からは、職場での人との関わり方を見直すきっかけになったという声が寄せられています。
職場にいる気になる方への対応など関わり方を見直す機会となりました。(40代)
職場では上司に対して、また、初対面の人に対する接し方など、ここで習得したことが少し生かすことができ、なるほどなーと思うことがありました。(30代)
相手を変えることは難しくても、知識があれば、自分の受け止め方や関わり方は少しずつ変えていけます。同じことでまた追い詰められないための学びとして、役立ててもらえる資格です。
自分のペースで学べる|仕事の合間にスマホで
仕事や家のことで予定が読めない人でも、続けやすい形になっています。
- スマホでも学べる
テキストと同じ内容をスマホやパソコン、タブレットでも学べます。休憩時間や通勤の合間に少しずつ進められます。 - 自宅で24時間いつでも受験
試験は自宅からオンラインで受けます。決まった日に会場へ行く必要はありません。 - 受講期限は8か月
受講した方の平均の受講期間は約2か月です。忙しい時期を避けて、動ける時期に進められます。
受講後のアンケートでは、回答した248人のうち247人が「受講してよかった」と答えています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス部門で第2位に選ばれました。
Q&A|職場のカサンドラ症候群に関するよくある質問
Q1:同僚が発達障害かどうか確かめる方法はありますか?
ありません。診断ができるのは医師だけで、本人が受診しない限り分かりません。そして確かめられても、こちらの不調は変わりません。相手の状態ではなく、自分に起きていることを相談先に伝えてください。
Q2:上司に相談したら「伝え方の問題」と言われました。
関係の外にいる人には、その中で起きていることが見えにくいものです。伝え方を変えても解決しないことは実際にあります。上司で止まってしまう場合は、産業医や保健師、社内の相談窓口など、評価の系統から外れた相談先を使ってみてください。
Q3:異動や退職を考えるのは逃げでしょうか?
逃げではありません。距離を置くことは、自分を守るための選択肢の一つです。心の不調が重くなる前に離れるという考え方もあります。辞める前に、休職制度など在籍中に使える仕組みを確かめておくと、選びやすくなります。
まとめ|相手は変えられなくても自分の心は守れる

- カサンドラ症候群は職場でも起こる。とくに「分かってもらえない苦しさ」が深くなりやすい
- 疲れてしまうのは弱いからではなく、関係を選べない職場の仕組みによるもの
- 相手が同僚・上司・部下・取引先のどれかで、打てる手が変わる。連絡を文字にする、第三者を入れる、ひとりで抱えない
- 異動を相談するなら、不調と相談の記録を残しておく。退職を考えるなら、休職制度など在籍中に使える仕組みを先に確かめる
- 相手は変わらなくても、理解してくれる人をひとり見つけ、知識で受け止め方を変えることで、自分の心は守れる
>カサンドラ症候群から抜け出すには|先に変わるのは自分の不調です
【注意事項】
この記事は、当協会の公式テキストと、当協会が集めた受講後アンケート(2025年3月〜2026年8月・回答248件)の声をもとにまとめたものです。カサンドラ症候群は DSM-5-TR・ICD-11 に記載のある疾患名ではありません。


