朝、起きてこない。声をかけるかどうかを、毎日ゼロから考える。行かせようとすれば揉め、休ませれば「これでいいのか」と思う。子どもが学校に行かなくなってから、いちばん消耗しているのは判断のほうです。
この記事には、励ましも解決策も出てきません。代わりに、同じ道を通った保護者が「二次障害になる前に、こうしておけばよかった」と書いた言葉を置きます。当協会が集めた63人の回答のうち、不登校に触れていた40人ぶんです。
先に、いちばん伝えたいことを書きます。後悔の中身は「もっとやればよかった」だけではありませんでした。「あれをしなければよかった」という形の後悔が、同じくらいありました。そして「防ぎようがなかった」と書いた方もいます。
あなたが迷っていることを、34人が先に通っています

設問は「二次障害になる前に『こうしておけばよかった』と感じていることを教えてください」。63人のうち、回答に不登校・登校しぶりが出てきたのは41人でした。そこから死別・自殺・自傷に触れていた7人の回答を除いた34人を分類しています(除外の理由は記事末の出典表に書いています)。
| 後悔の中身 | 件数 |
|---|---|
| もっと早く気づく・相談すればよかった | 16件 |
| あれをしなければよかった(無理に登校させた・叱った・急かした) | 9件 |
| 学校・先生とのやり取りを、もっとすればよかった | 8件 |
| もっと話を聴けばよかった | 6件 |
| 防ぎようがなかった/後悔はない | 3件 |
出典:一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件)。分類は当協会が行いました。
1つの回答に複数の内容が書かれている場合は、それぞれに数えています。そのため合計は34を超えます。分類は当協会が回答を読んで行ったもので、選択肢から選んでもらったものではありません。
ここで注目していただきたいのは、2番目の9件です。最多の16件が「気づけなかった」「相談が遅れた」という過ぎた時間についての後悔であるのに対して、2番目だけは形が違います。「〇〇しなければよかった」——やってしまったことへの後悔です。
いま休ませているなら、最も悔やまれたことは避けています
9件を読むと、書かれていることはほとんど同じでした。無理に登校させたこと。そして叱ったこと・急かしたことです。
無理矢理登校させなければ良かった。
12歳以上の女児(診断なし・グレーゾーン)の保護者の回答です。設問への答えが、この一文だけでした。他に書きようがなかったのだと思います。
登校しぶりの時期に無理矢理学校に行かせず、休ませれば良かった。精神論、正論て責め立てることをしなければ良かった。
12歳以上の女児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答です。「精神論、正論て責め立てる」——このとき親の側にあったのは、悪意ではありません。正しいことを言っているつもりだった、という後悔です。
この2件を、いま疲れている方の側から読み直すとどうなるか。「行かせられない」「休ませてしまっている」と感じている状態は、この9人が最も悔やんだことを、すでに避けている状態です。
もちろん、休ませることが常に正解だという意味ではありません。ただ、いま何もできていないと感じている手前で、実際には1つ、選んでいるものがあるということです。
「防ぎようがなかった」と書いた人がいる
「防ぎようがなかった/後悔はない」に分類した3人は、後悔を書いていません。うち2人は書けなかったのではなく、やることをやったうえで防げなかったと書いています。
学校側には担任決定時に面談をし、配慮を受けられるよう説明をしてきたにも関わらず二次障害を防ぐことができませんでした。
いろんな機関に相談していましたが
周りから見たら普通の子かわらないので防ぎようがなかったのかと今となっては思います
10歳の男児(ADHD・学習障害)の保護者の回答です。担任が決まるたびに面談し、複数の機関に相談していた方です。それでも防げなかった、と書かれています。
この回答を載せる理由は1つです。「親が正しく動けば防げた」という前提そのものが、いつも成り立つわけではないからです。努力の量と結果が比例しなかった人が、この34人の中に確かにいます。
いま「自分の対応が悪かったのではないか」と繰り返し考えている方に、その問いには答えが出ないことがあるとだけお伝えしておきます。
悔やまれていたのは、対応の中身ではありませんでした
最も多かった16件は、気づきと相談の遅れについてでした。
不登校になってからスクールカウンセラーに相談するようになりましたが、体調が悪くなった初めの頃に、もっと早く相談すればよかったと思いました。
8歳の男児(ADHD)の保護者の回答です。相談を始めた時期が「不登校になってから」だったという書き方に、この後悔の形が出ています。
もっと普段から本人と向き合う時間をつくればよかった、困り感に敏感になっていればよかった。
11歳の男児(自閉スペクトラム症)の保護者の回答です。「困り感に敏感になっていればよかった」——これは、いま敏感になりすぎて疲れている方には、あまり効かない言葉かもしれません。逆に読むこともできます。いま子どもの様子が気になって消耗しているのは、この後悔をしていない状態だということです。
そしてもう1つ。この16件のうち多くが「相談すればよかった」と書いていて、「解決すればよかった」とは書いていません。求められていたのは答えではなく、一緒に考える相手だったと読めます。
学校とのやり取りは、あなた一人で背負う形になっていません
8件は、学校とのやり取りについてでした。そしてその多くが「伝えたが、伝わらなかった」という内容です。
「学校に特性の理解をしてもらえるよう働きかけたが、理解には至らず」「もう少し担任へ理解する事を求めておけば良かった」——書かれているのは、家庭の中だけで完結しない作業です。
ここは、疲れている方にとっていちばん気が重い項目だと思います。ただ、この8件が示しているのは親が学校をどうにかすべきだったということではなく、この問題は親一人が抱えて解決する形になっていないということです。
学校が唯一の相談先でもありません。学校の外側にも入口があります。どこに何を持っていけるかは、このあとの表に整理しました。
先生と見えているものが違うだけかもしれない、という整理は別の記事にあります。
>不登校のチェックリスト|保護者と先生では、見ている場所が違う
疲れているのは、判断を続けているからです
34件を通して読むと、保護者が引き受けていた仕事の量が見えてきます。
| 回答に出てきた作業 | 誰の仕事か |
|---|---|
| 今日は行かせるか、休ませるかを決める | 保護者 |
| 子どもの変化が特性によるものか、体調か、別のことかを見分ける | 本来は専門家の領域 |
| 学校に特性を説明し、配慮を求める | 保護者(窓口は学校) |
| 相談先を探し、予約し、経緯を毎回はじめから説明する | 保護者 |
| きょうだいや家族の生活を回す | 保護者 |
この一覧の2行目に注目してください。子どもの状態がどこから来ているのかを見分ける作業は、本来、保護者が担うものではありません。それでも、多くの家庭で保護者が最初にやっています。相談先につながるまでのあいだ、他に判断する人がいないからです。
疲れの正体は、時間でも体力でもなくこの判断の連続であることが多い。だとすれば、休息としていちばん効くのは判断の一部を誰かに預けることです。相談が「もっと早く」と悔やまれていたのは、答えが得られるからではなく、判断を一人で背負う期間が短くなるからだと考えられます。
その判断は、どこに預けられるか

預ける先は、大きく2つに分かれます。お子さんを見てもらう先と、あなたが話す先です。混ざりやすいのですが、必要なタイミングも、行き先も違います。
| 相談できる先 | 預けられる判断 | 子ども本人の同行 |
|---|---|---|
| スクールカウンセラー(学校) | 学校での様子と、家庭での様子のすり合わせ | 不要。保護者だけで相談できます |
| 教育支援センター(適応指導教室)・自治体の教育相談 | 学校に行く以外の選択肢、いまの過ごし方 | 不要。保護者だけの相談から始められます |
| こども家庭センター(市区町村) | 家庭全体の生活、きょうだいのこと、経済的なこと | 不要 |
| 発達障害者支援センター | いまの状態が特性によるものかどうかの見立て | 相談内容によります |
| かかりつけ医・児童精神科 | 体調・睡眠・食事の変化 | 必要。診断は本人を診た医師にしかできません |
| 精神保健福祉センター・保健所 | 保護者自身の消耗 | 不要。あなた自身の相談として使えます |
出典:文部科学省の不登校児童生徒への支援に関する資料、およびこども家庭庁の相談窓口の案内にもとづき、当協会が整理しました。名称・対象・予約の要否は自治体によって異なります。お住まいの自治体の窓口でご確認ください。当協会は引用者であり、これらの機関の監修・認定・推奨を受けたものではありません。
2行目を見てください。教育支援センターと自治体の教育相談は、学校を通さずに利用できます。「担任に言うと大ごとになる」「もう学校とは話したくない」という段階でも、ここは使えます。34人のうち8人が学校とのやり取りについて書いていた——その多くが「伝えたが、伝わらなかった」だったことを思い出してください。窓口を増やすことは、学校と対立することではありません。
そして最後の行です。保護者自身の相談先を持っている方は、多くありません。精神保健福祉センターと保健所は、お子さんのことではなくあなた自身が消耗していることを相談してよい窓口です。「子どもの話ではないのに行っていいのか」と迷う必要はありません。支える側が倒れることは、支えられる側にとっても困ることだからです。
全部を一度に使う必要はありません。いちばん重い判断を1つだけ選んで、それを渡せる先はどこかを見てください。「今日行かせるかどうか」を毎朝一人で決めているなら、それは教育相談で扱える話です。「この状態が特性から来ているのか分からない」なら、見立ては専門機関の仕事です。
予約が数週間先になることもあります。それでも、予約を取った時点で「一人で決め続ける期間の終わり」が決まります。34人が「もっと早く相談すればよかった」と書いていたのは、おそらくこの部分です。
子どものことだけを抱えている人は、多くありません
当協会の資格に申し込んだ146人のうち、「子育てに活かせると思ったから」を選んだ方は49人(33.6%)でした(受講前アンケート・複数回答)。
この49人の職種を見ると、医療・福祉業が17人、教育業・学習支援業が12人。両方を選んだ方が2人いるため、実数は27人(55.1%)です。子育てのために学びに来た方の半数以上が、仕事でも人を支える側に立っています。家に帰っても支える側であることが終わらない、という重なり方です(構成割合は当協会が算出)。
出典:一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」(N=146/2025年2月〜2026年7月)。複数回答。
子どもの側に起きていることを整理したい場合は、別の記事にまとめています。
なお、本人を連れて行かなくても家族だけで相談できる、という仕組みは子どもに限りません。大人の家族について同じ状況にある場合は、別の記事で扱っています。
>統合失調症の受診拒否|連れて行く前に、家族だけで相談できる
メンタルヘルス支援士について
ここまで、34人の保護者が書いた「こうしておけばよかった」と、その読み直し方をご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や学校の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。この記事で紹介した二次障害については、公式テキストの第2章で、特性そのものと「そのあとに起きること」を分けて解説しています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、資格を取れば診断ができるようになるわけでもありません。日々お子さんと関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|不登校で疲れているときによくある質問
Q1:休ませ続けていて、本当にいいのでしょうか。
この記事では「休ませ続けてよい」とも「行かせるべき」とも申し上げません。お子さんの状態も、学校の状況も、家庭の事情も一人ひとり違うためです。ただ、34人の回答で最も具体的に悔やまれていたのが「無理に登校させたこと」だった、という事実はお伝えできます。判断に迷う段階であれば、その迷いをそのまま相談先に持っていくことが現実的です。学校のスクールカウンセラー、自治体の教育相談、教育支援センターは、結論が出ていない状態でも相談できます。
Q2:私の対応が悪かったから、こうなったのでしょうか。
34人のうち2人は、担任との面談も複数機関への相談も行ったうえで「防ぎようがなかった」と書いています。親の対応と結果が比例しなかった例が、この人数の中に実際にあります。原因を一つに決めようとすること自体が、いま消耗の一部になっているかもしれません。この問いを一人で抱え続けている場合は、その状態こそ相談してよい内容です。
Q3:学校に相談しても分かってもらえません。
34人のうち8人が学校とのやり取りについて書いており、その多くが「伝えたが理解には至らなかった」という内容でした。珍しい状況ではありません。学校が唯一の窓口でもありません。教育支援センター(適応指導教室)や自治体の教育相談は学校を通さずに利用でき、お住まいの地域の子ども家庭センターも相談を受け付けています。窓口を増やすことは、学校と対立することではありません。
Q4:親である自分がしんどいのですが、相談してよいのでしょうか。
相談して構いません。お子さんを連れて行く必要もありません。自治体の精神保健福祉センターや保健所は、本人だけでなくご家族・関係者からの相談を受け付けています。当協会の受講前アンケートでも、146人のうち45人(30.8%)が「自身に精神疾患または症状がある」を選んでおり、支える側が同時にしんどくなることは例外ではありません。記事末に窓口の一覧を置いています。
Q5:この34人のデータは、うちの子にも当てはまりますか。
そのまま当てはめることはできません。この34人は、発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られており、人数も限られています。統計として一般化できる規模ではありません。この記事は同じ場所を通った人が何を悔やんだかを知るためのもので、お子さんの状態を判定したり、対応の正解を示したりするものではありません。
まとめ|34人が残したもの
- 63人の回答のうち、不登校に触れていた41人から死別・自殺・自傷に触れていた7人を除く34人の「こうしておけばよかった」を分類した
- 最多は「もっと早く気づく・相談すればよかった」16件。次が「あれをしなければよかった」9件
- 9件の中身はほぼ1つ。無理に登校させたこと、叱ったこと、急かしたこと。裏返すと、いま「休ませてしまっている」と感じている状態は、最も具体的に悔やまれたことを避けている状態でもある
- 2人は「防ぎようがなかった」と書いている。担任との面談も複数機関への相談も行ったうえで。親の対応と結果は、いつも比例するわけではない
- 相談は「解決すればよかった」ではなく「相談すればよかった」と書かれていた。求められていたのは答えではなく、判断を一人で背負う期間を短くすること
- いちばん重い判断を1つだけ選んで、渡せる先を見てください。教育支援センターと自治体の教育相談は学校を通さずに使え、精神保健福祉センター・保健所はあなた自身の消耗を相談できる
本記事で紹介している情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一次情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 有効回答数 | 63件 |
| 設問 | 「子どもの年齢」「性別」「発達障害診断名」「二次障害の原因として思い当たる事柄」「具体的なエピソード」「どのような二次障害があらわれたか」「二次障害はどのくらいの期間続いたか」「二次障害になる前にこうしておけばよかったと感じていること」 |
| この記事で使った設問 | 「二次障害になる前にこうしておけばよかったと感じていること」 |
| 分析方法 | 63件のうち、回答に不登校・登校しぶりが出てきた41件を抽出。そのうち死別・自殺・自傷に触れていた7件を除外し、残る34件を当協会が読んで5分類に整理。選択肢から選んでもらったものではありません。1つの回答に複数の内容がある場合はそれぞれに数えているため、合計は34を超えます。なお、二次障害の選択肢一覧に未選択(○)として印字されているだけのものは「触れていた」に数えていません |
| 除外の理由 | 読者の負担を考慮し、死別・自殺・自傷に触れた回答は分類にも引用にも使用していません |
| もう一つの一次情報 | 同協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」/有効回答146件/調査期間 2025年2月27日〜2026年7月25日/受講した動機(複数回答)の単純集計 |
| 注意点 | この34人は、発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られます。不登校の保護者全体を代表するものではなく、統計として一般化できる規模でもありません |
| 引用の扱い | 原文のまま掲載しています。改行のみ変換し、省略した部分は(前略)(中略)(後略)と記しています |
| 注意点 | 本記事は診断・治療を目的としたものではありません。受診の要否についても断定していません |
【注意事項】
この記事は、当協会が実施したエピソード調査の回答を整理したものです。不登校への対応の正解を示すものでも、お子さんやご家庭の状態を判定するものでもありません。掲載している分類は当協会が回答を読んで行ったもので、公的な分類ではありません。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。本記事は診断・治療を目的としたものではなく、受診の要否を判断するものでもありません。気になる状態が続く場合は、学校のスクールカウンセラー、自治体の教育相談、医師・専門機関、お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。当協会は医師による監修を受けていません。


