子どもが物を投げる、きょうだいを叩く、こちらの言うことにいちいち反発する。毎日それが続くと、この子は何に怒っているのだろうと考えると思います。
当協会には、発達障害のあるお子さんを育てた保護者63人のエピソードがあり、そのうち39人が暴言・反抗・暴力・自傷といった、外に出る形を挙げていました。その39人が書いたことを読むと、怒りの話はあまり出てきません。お伝えしたいのは、書かれていたのは攻撃ではなく、守り方だったということのほうです。
たとえば、この記事では次のことが分かります。
- 外に出る形が現れたのは男児の62.8%、女児の60.0%で、ほとんど差がなかったこと
- 39人のうち28人には、内にこもる形も同時に起きていたこと
- きっかけの上位は先生19人・友人19人・学習16人で、いずれも学校のなかだったこと
- 保護者が「武器」「自分を守るため」という言葉で書いていること
63人のうち39人に、外に出る形が現れていました

当協会は、発達障害のあるお子さんを育てた保護者に「どのような二次障害があらわれましたか」を複数回答で尋ねています。選択肢は内在化障害(内にこもる形)と外在化障害(外に出る形)の2群に分かれていて、有効回答63件のうち、外に出る形を1つ以上挙げた方が39人でした。
| 外に出る形 | 人数 | 39人のうち |
|---|---|---|
| 暴言 | 20人 | 51.3% |
| 反抗 | 19人 | 48.7% |
| 暴力 | 19人 | 48.7% |
| 自傷 | 14人 | 35.9% |
| その他 | 10人 | 25.6% |
出典:一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(有効回答63件・複数回答)のうち、外に出る形を挙げた39人。集計は当協会が行いました。10人に満たなかった項目は載せていません。
まず気づいていただきたいのは、自傷が同じ列に入っていることです。原本の選択肢では、暴言も暴力も自傷も、すべて「外在化障害」に分類されています。向かう先が他人か自分かの違いで、起きていることの性質は同じ枠に置かれているということです。
⚠ この39人は、発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てた保護者に限られます。発達障害のある子ども全体を代表するものではありません。また、医師が判定したものではなく、保護者が「あらわれた」と受け取ったものです。
>子どもの二次障害とは|内にこもる子と荒れる子に、分かれません
荒れているのは、男の子だけではありませんでした
「うちは男の子だから」「女の子なのに荒れるのはおかしいのでは」という言い方を、よく耳にします。63人を性別で割ってみました。
| 性別 | 回答された人数 | 外に出る形があった | 割合 |
|---|---|---|---|
| 男児 | 43人 | 27人 | 62.8% |
| 女児 | 20人 | 12人 | 60.0% |
出典:同じ63人。集計は当協会が行いました。
62.8%と60.0%です。差は2.8ポイントしかありません。この記録のなかでは、外に出る形が現れるかどうかは、性別でほとんど変わっていませんでした。
ここには実際的な意味があります。女の子の場合、荒れていても「そういう性格」として扱われ、二次障害として見てもらいにくいことがあるからです。人数そのものは男児のほうが多いのですが、それは回答された保護者のお子さんが男児43人・女児20人と偏っているためで、起きる割合はほぼ同じでした。
⚠ ただし、女児は20人と少なく、項目ごと(暴言・暴力など)に分けると各項目が10人に満たなくなります。ですから「どの形で出やすいか」の男女差は、この記録では確かめられません。言えるのは、外に出る形が現れるかどうかの割合だけです。
39人のうち28人は、内にこもる形も同時に起きています
外に出る形を挙げた39人が、それだけで終わっているかを見ます。
39人のうち28人(71.8%)は、不登校・不安障害・引きこもり・うつ・対人恐怖といった、内にこもる形も同時に挙げていました。外に出る形だけだった子は11人です。
つまり、荒れている子の多くは、同じ時期に内側でも消耗しています。家では物を投げ、学校には行けず、夜は眠れない。この3つが同じ子に同時に起きている、というのがこの調査で最も多い形です。
これは、対応を考えるときの前提が変わる話だと考えています。荒れているところだけを止めようとすると、内側で起きていることに手が届きません。逆に、内側が少し楽になると、外に出る形も落ち着いたという記述が、この調査には複数あります。
きっかけの上位は、すべて学校のなかでした

同じ39人に「二次障害の原因として思い当たる事柄」を複数回答で尋ねています。
| 思い当たるきっかけ | 人数 | 39人のうち |
|---|---|---|
| 学校関係(先生) | 19人 | 48.7% |
| 学校関係(友人) | 19人 | 48.7% |
| 学校関係(学習) | 16人 | 41.0% |
| 家族関係 | 15人 | 38.5% |
出典:同じ39人の回答(複数回答)。集計は当協会が行いました。10人に満たなかった項目は載せていません。
荒れているのは家のなかなのに、思い当たるきっかけの上位3つは学校のなかにあります。家で出ているものが、家で起きたことだけを映しているとは限らない、ということです。
家族関係を挙げた方も15人(38.5%)いらっしゃいます。ご自身の関わり方を悔やんでおられる記述も、この調査には多く含まれています。それでも、上位3つの順番は動きませんでした。
保護者が書いていたのは、攻撃ではなく守り方でした
数字より先に読んでいただきたいのは、記述のほうです。
学校で叱られ家庭でも叱られ療育の現場でも叱られ、心が休まる場所もなく抵抗することを覚え反論攻防、クレーマー的オバサン風に反論する。怒鳴り散らかす事で自分を守るために身に着けた武器なのかも知れませんね。
9歳の女の子の保護者の記述です。「自分を守るために身に着けた武器」という言い方をされています。3つの場所で叱られ続けたあとに、反論することを覚えた。順番がはっきり書かれています。
この見方に立つと、「叱って直す」という対応が効かない理由も見えてきます。叱られたことが入口だったのだとすれば、叱る量を増やしても出口にはなりません。
入学後、叱責を受け続け、常に怒られる環境にあり、脅えや拒絶が強くなり、他者への暴言暴行や常に怒られるのでわないかと不安を抱えていた。学校に事実を確認し発覚した。学校側は把握しておらず、担任独断の判断と対応。状況的には児童虐待にあたる状態であった。
7歳の男の子の保護者の記述です。原文どおりに載せています。暴言や暴行の前に、叱責を受け続けた期間があったと書かれています。そしてその期間、学校側は把握していませんでした。
本人にも、理由が分かっていないことがあります
自分の想いをうまく説明できない、わかってもらえないストレスで、癇癪が頻繁に起きました。主に奇声をあげたり、泣き喚いたり、あとは先生に突進したりしてました。ひどい時は噛み癖も出ました。その時期は、心が尖っていて、少しの事でも苛立っていました。園生活を楽しく過ごすことよりも、おさまらない気持ちをどうしたらよいのか、本人も訳がわからないし、先生も困り果ててました。(後略)
4歳の男の子の保護者の記述です。「本人も訳がわからない」と書かれています。理由を聞いても答えが返ってこないのは、隠しているからではなく、本人にも分かっていないことがある、ということです。
向かう先は、外だけとは限りません
我慢しなければならない局面でそれができず、自分自身にも腹を立てているようでしたが、死ね、クズなどの暴言、思い通りにならないと物を投げるなどがありました。
12歳以上の男の子の保護者の記述です。「自分自身にも腹を立てているようでした」——これは、外に出る形のなかに自傷が同じ列で並んでいることと、つながって読めます。向かう先が外か自分かは、そのときの状況で入れ替わります。
4つの記述に共通しているのは、子どもが誰かを傷つけたくてそうしている、という書き方が1つもないことです。もちろん、やられている側にとってはつらい行為です。それでも、止め方を考えるときの出発点は「なぜ怒っているのか」ではなく、「何から守ろうとしているのか」のほうが、この記録には合っています。
メンタルヘルス支援士について
ここまで、外に出る形を挙げた39人の保護者が書いたことをご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や学校の先生、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|子どもの暴言・暴力・反抗についてよくある質問
Q1:これは反抗期ではないのですか?
見分ける基準は、この調査からは出せません。ただし、この39人のうち28人には内にこもる形も同時に起きています。不登校、不安、眠れない、体の不調——荒れていることのほかに何かが同時に起きているなら、反抗期という説明だけでは足りない可能性があります。まず、いくつのことが同時に起きているかを書き出してみてください。
Q2:女の子でも起きますか?
起きています。外に出る形が現れたのは男児の62.8%、女児の60.0%で、差は2.8ポイントでした。人数そのものは男児のほうが多いのですが、それは回答された保護者のお子さんが男児43人・女児20人と偏っているためです。女の子だから性格の問題、と扱われてしまうことのほうが、この記録からは心配です。ただし女児は20人と少ないため、どの形で出やすいかまでは確かめられません。
Q3:家でだけ荒れるのは、家庭に原因があるということですか?
そうとは限りません。この39人が挙げたきっかけの上位3つは、先生19人・友人19人・学習16人で、すべて学校のなかの出来事でした。家族関係は15人で4位です。外で溜めたものが、安全な場所で出ているという形が、この記録では多く見られます。家で出ているという事実だけからは、原因の場所は決まりません。
Q4:叱ってやめさせるのは間違いですか?
この調査は対応方法の効果を測ったものではないので、正解はお示しできません。ただし、記述のなかには「学校で叱られ家庭でも叱られ療育の現場でも叱られ」たあとに反論を覚えた、という順番が書かれています。叱責が入口になっていた例が実際にあった、ということです。危険な行為はその場で止める必要がありますが、止めることと、なくすことは別の作業だと考えています。
Q5:きょうだいに手が出るとき、どうすればよいですか?
この調査には、きょうだいへの他害の記述が複数あります。対応の効果は測っていないため方法はお示しできませんが、この記録から言えるのは、まず「やられている側の安全を確保すること」と「なぜ起きているかを考えること」を分けて進めたほうがよいということです。同時にやろうとすると、どちらも中途半端になります。安全の確保は、理由が分からなくても先に取れる手です。学校のスクールカウンセラーや児童精神科など、第三者に一度入ってもらうことも検討してください。
まとめ|止めるより先に、何から守っているかを見ます
- 63人のうち39人に外に出る形が現れていました。暴言20人(51.3%)、反抗19人(48.7%)、暴力19人(48.7%)、自傷14人(35.9%)
- 自傷も同じ列に入っています。向かう先が他人か自分かの違いで、同じ枠に置かれています
- 外に出る形が現れたのは男児62.8%、女児60.0%。差は2.8ポイントでした
- 39人のうち28人(71.8%)には、内にこもる形も同時に起きています。荒れている子の多くは、同じ時期に内側でも消耗しています
- きっかけの上位3つは先生19人・友人19人・学習16人で、すべて学校のなかでした。家族関係は15人で4位です
- 保護者が書いていたのは「自分を守るために身に着けた武器」「本人も訳がわからない」「自分自身にも腹を立てている」——攻撃ではなく、守り方でした
>不登校の親が疲れたとき|34人の「こうしておけばよかった」
本記事で紹介している情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」。発達障害の診断または特性のあるお子さんを育てた保護者の回答で、有効回答は63件。本記事はそのうち外在化障害を1つ以上挙げた39人を対象にしています |
| 選択肢の区分 | 原本の設問は「内在化障害」「外在化障害」の2群に分かれています。外在化障害に含まれるのは、暴言・反抗・暴力・自傷・家出・非行・その他です。本文の「外に出る形」「内にこもる形」は、当協会が読みやすさのために言い換えたものです |
| 設問 | 「どのような二次障害があらわれましたか」「二次障害の原因として思い当たる事柄は?」(いずれも複数回答)、子どもの年齢、性別 |
| 分析方法 | 外在化障害を挙げた39人を抽出し、項目と原因を数え、39人を母数として割合を算出しました。性別の割合は、回答された男児43人・女児20人をそれぞれの母数としています。該当が10人に満たなかった項目は掲載していません(家出6人・非行2人など) |
| 注意点 | 二次障害の有無を医師が判定したものではなく、保護者が「あらわれた」と受け取ったものです。また、特性のないお子さんとの比較になっていないため、発達障害と荒れやすさを比べることはできません。対応方法の効果も測っていません |
| 一般情報の出典 | 発達障害ナビポータル、国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター。2026年9月9日に閲覧して確認 |
引用している文章は、自由記述欄からそのまま転載しています。誤字も原文のままです。改行記号の変換と、長い記述の末尾に(後略)を付けた以外の編集は行っていません。
【注意事項】
この記事で紹介している内容は、当協会が収集したエピソードの一部をもとにまとめています。回答者は当協会の受講者およびアンケートに協力いただいた保護者に限られ、発達障害のあるお子さん全体を代表するものではありません。二次障害という言葉に公的な診断基準はなく、本記事の分類は原本の選択肢にもとづいて整理したものです。本記事は対応方法の効果を検証したものではありません。お子さんの状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。また、本記事は診断・治療を目的としたものではありません。ご家族やお子さん自身の安全が脅かされている場合は、我慢せず、学校・児童相談所・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。気になる様子がある場合も、早めに学校のスクールカウンセラー、児童精神科などの医療機関にご相談ください。


