子どもの検査や療育で、頭がいっぱいになっている。その話を家でしようとすると、通じない。そして気づく——この人も、同じなのではないか。
この順番でたどり着く方が、実際にいます。子どものことを調べているうちに、パートナーのことにも説明がついてしまった、という形です。
この記事では、子どもと配偶者の両方に特性があるとき、何が起きるのかを、実際の記録から整理します。36件のうち、この組み合わせが17件と最も多くありました。
たとえば、この記事では次のことが分かります。
- 子どもの検査が、きっかけになっているという記録
- 2人ぶん抱えると、何が起きるか
- 子ども自身との関係で消耗している場合(配偶者は関係ない形)
- 窓口を、ご自身のぶんと子どものぶんで分ける方法
>カサンドラ症候群と夫|「悪気はない」と分かっても、楽にならない理由
子どもの検査がきっかけになっています
この状態に気づいた経路として、同じ形の記録が複数ありました。
子供の発達障害が判明し勉強するうちそれまで悩んでいた主人とのコミニュケーションの取りづらさも発達障害が原因ではないかと思い始めた。カサンドラ症候群の方のコラムなどを読み自分と当てはまることが多かった。
配偶者と子どもの両方に特性がある方の回答です。順番が、子ども → 配偶者 → 自分、になっています。子どものために勉強したことが、結果として自分の状況の説明にもなった、という形です。
子供の発達障害の検査をきっかけに、夫が私も同じような症状だと言う理由で検査をした方が良いと夫に勧められました。診断ではADHDの可能性が高いと診断されました。出来ないことを責められ、その割に夫は何もやらず孤立して行く自分がいて自分ばかりを責める責められる生活が続いて、自分自身も情緒不安定になっていました。
こちらも配偶者と子どもの両方に特性がある方の回答です。この方はご自身も検査を受けて、診断がついています。そのうえで「自分ばかりを責める責められる生活」と書かれています。
ここから、大事な点が1つ見えます。自分に診断がついたからといって、消耗の説明がつくわけではありません。この方の場合も、診断がついたあとに残ったのは「夫は何もやらず孤立していく」という状況のほうでした。
この経路から言えることを整理します。
- 子どもの支援につながった人のほうが、早く気づいています(学ぶ機会が先にあるため)
- ただし、気づいた時点ですでに何年も経っていることが多くあります
- 自分に診断がついても、消耗そのものは残ります
体験談は、個人が特定されないよう一部の表現をぼかしています。内容は変えていません。
2人ぶん抱えると片方が必ず後回しになります

36件のうち、相手に配偶者と子どもの両方を挙げた回答が17件と最も多く、配偶者だけを挙げた回答(12件)を上回っていました。
この状態では、やることが2系統に増えます。
| 子どものぶん | 配偶者のぶん |
|---|---|
| 検査・療育・通院の予約と送迎 | 家庭内の決め事を、毎回こちらが調整する |
| 学校・園との連絡、行事への対応 | 相手の機嫌や状態を読んで、動き方を変える |
| 特性に合わせた関わり方の工夫 | 同じ工夫を、大人相手にもう一度 |
| きょうだいへの目配り | 周囲への説明(「うちの夫は……」) |
3行目——「特性に合わせた関わり方の工夫」の行を見てください。子どもに対して学んだ工夫を、大人にも使うことになります。記録のなかでも、文字で伝える・視覚的に示すという、もともと療育で使われている方法が、配偶者に対して使われていました。
子供の発達障害の相談を市町村で相談しているのに、旦那は理解ができず「いずれ治る」と言う始末。さらには子供達に「こうしてね」と先生からのアドバイスも無視し、してはいけない事をして、子供達にストレスを与え発狂させていたが、自分は悪くない。と非を認めず
配偶者と子どもの両方に特性がある方の回答です。支援の方針が、家庭の中で一致していません。こちらが専門機関から受けた助言が、家では通らない。この状態だと、子どもの支援そのものが進みません。
そして、後回しになるのは決まっています。
- 自分の受診・休息が、いちばん後ろに回ります
- 子どもの予定が優先されるため、自分の通院は続きにくくなります
- 「自分のことは後回しになり、通院できなかった」と書かれた記録があります
>カサンドラは何科に行けばいい?|婦人科から始まった人がいます
2系統を1人で回さないための公的な仕組み
配偶者の協力が得られない状態で、やることだけが2系統ある。この場合に現実的なのは、家庭の外に手を分けることです。使える仕組みがいくつかあります。
①障害児通所支援。未就学のお子さんは児童発達支援、就学後は放課後等デイサービスが、通所の形で支援を行います。お子さんへの支援が主目的ですが、その時間帯、保護者の手が空きます。これは副次的な効果ではなく、制度として想定されている点でもあります。
②短期入所(ショートステイ)・日中一時支援。お子さんを一定時間あるいは数日預かる仕組みで、家族の休息を理由に利用できる場合があります。名称や対象、利用の条件は自治体によって異なります。市区町村の障害福祉担当窓口でご確認ください。
③相談支援専門員。障害福祉サービスの利用計画を一緒に作る立場の人です。「どの制度が使えるか」を家庭ごとに整理してくれるため、調べる作業そのものを1人で背負わずに済みます。これも市区町村の窓口が入り口になります。
④ペアレント・トレーニング。お子さんへの関わり方を、保護者が講座形式で学ぶ取り組みです。自治体や発達障害者支援センターが実施しています。試行錯誤を1人で続けるより、消耗が少なくなります。
このどれも、配偶者の同意や参加を前提にしていません。ここが大事なところです。家庭の中で合意を取りつけてから動こうとすると、それだけで何か月も過ぎます。
子ども自身との関係で消耗している場合もあります
ここまでは、配偶者と子どもの両方という形でした。配偶者は関係なく、お子さんとの関係だけで消耗している方もいます。
ママ!と呼ばれるとドキッとする。側に来たり触れらるとストレスを感じる。子供がキレないように自分の言動に注意しなければいけないこと。大声を出されたり暴れ出すと、自分がキレないか抑えるのに必死。
お子さんとの関係についての回答です。「ママ!と呼ばれるとドキッとする」——この一文を書くまでに、どれだけの時間がかかったかと思います。
お子さん相手だと、配偶者のときより苦しくなる面があります。
- 距離を置くという選択が取りにくい(別居も、関わりを減らすことも難しい)
- こう感じること自体に、強い罪悪感がともないます
- 周囲に言えません。「わが子なのに」と言われることが予想できるためです
ここで1つだけお伝えします。この感じ方は、愛情がないという意味ではありません。常に緊張を強いられる関係が続けば、体はそう反応します。呼ばれるたびに身構えてしまうのは、次に何が起きるか分からない時間が長く続いているからで、相手が誰であるかとは別のことです。
日々の生活に加え、学校への行き渋り、毎日の癇癪対応、療育、病院への送迎などで疲れ、診断が出た時には必要以上の焦りや不安感を感じていたため。
こちらもお子さんとの関係についての回答です。並んでいるのは、すべてやるべきこととして書かれています。行き渋りへの対応、癇癪への対応、療育、送迎。そのうえで診断が出て、焦りと不安が来ています。
窓口は自分のぶんと子どものぶんで分けます
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい実務です。1つの窓口で全部を相談しようとすると、必ずお子さんの話が優先されます。
相談する側としても、そうなります。限られた時間で話すなら、先にお子さんのことを話すからです。結果として、自分の不調は毎回持ち帰ることになります。
| 用事 | 持っていく先 |
|---|---|
| お子さんの特性・療育・学校 | 発達障害者支援センター/園・学校/放課後等デイサービス |
| 自分の不調(眠れない・痛み) | 心療内科・精神科。または、かかりつけ内科からの紹介 |
| 家族としての悩み全般 | 精神保健福祉センター・保健所(無料・家族からの相談も可) |
| 働き方への影響 | 産業医・こころの耳 |
2行目の「自分の不調」を、必ず別で持ってください。お子さんの受診に付き添ったついでに相談するのではなく、自分のための受診として時間を取る、ということです。
同じ立場の方へのアドバイスとして、こう書かれた記録があります。
1人で抱えると自分を責めてしまうので、医療、療育、幼稚園、保育園、学校など、小さなことでも、素直に今の現状の困りごとを相談して、繋がることが大切だとおもいます。縦の繋がりと同じ境遇の保護者との横の繋がりも、共感したり、色々な考えに触れられるので、良いかと思います。
お子さんとの関係についての回答です。「縦の繋がり」と「横の繋がり」を分けて書いています。専門機関につながることと、同じ立場の保護者とつながること。どちらか一方では足りない、という書き方です。
横のつながりを探すときは、自治体のペアレント・メンターという仕組みが使えます。発達障害のあるお子さんを育てた経験のある親が、同じ立場で相談に応じる制度で、自治体や発達障害者支援センターが実施しています。
メンタルヘルス支援士について
ここまで、子どもの検査がきっかけになる経路と、窓口を分ける方法をご説明してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|子どもと配偶者の両方に特性があるとき
Q1:子どもにも遺伝したということでしょうか。
発達障害には生まれつきの脳の特性が関係していると考えられていますが、「親が原因で子どもがそうなった」と言えるものではありません。しつけや育て方が原因で生じるものでもありません。ここを自分の責任として引き受けると、消耗がさらに大きくなります。原因探しは、支援には結びつきません。
Q2:夫が子どもの特性を認めてくれません。
記録のなかにも、専門機関の助言が家庭で通らなかったという記述がありました。説得を重ねるより、支援機関の側から説明してもらう場を作るほうが早いことがあります。園・学校の面談や、発達障害者支援センターの相談に、可能であれば一緒に行ってみてください。難しい場合は、こちらだけで支援を進めてかまいません。お子さんの支援に、両親の合意は必須条件ではありません。
Q3:わが子に対してつらいと感じる自分が嫌になります。
その感じ方は、愛情の量とは関係ありません。常に緊張を強いられる関係が続けば、体はそう反応します。記録のなかにも「ママ!と呼ばれるとドキッとする」という記述がありました。言葉にできた時点で、扱える問題になっています。ご自身を責める材料にせず、相談先に持っていってください。
Q4:自分の受診まで手が回りません。
記録のなかに「自分のことは後回しになり、通院できなかった」と書かれたものがありました。同じことが起きやすい状況です。おすすめは、お子さんの予定と同じカレンダーに、自分の受診を1枠だけ先に入れてしまうことです。空いた時間に行こうとすると、その時間は生まれません。まずは公的な相談窓口への電話1本でもかまいません。お子さんの通所支援を利用している日があれば、その時間帯を自分の受診にあてる方法もあります。付き添いのない時間を、先に自分の予定で埋めてしまうということです。
Q5:どこに相談すればよいか分かりません。
お子さんのことは、お住まいの地域の発達障害者支援センターが本人・家族の両方から相談を受け付けています。ご自身の不調は、精神保健福祉センターか医療機関へ。子育て全般の悩みは、こども家庭庁がまとめている相談窓口の一覧から地域の窓口を探せます。制度の使い方や手続きについては、市区町村の障害福祉担当窓口が入り口になります。いずれもこの記事の最後にリンクを掲載しています。どこから連絡しても、必要な窓口につないでもらえます。最初の1本を、正しい場所にかけようとしなくて大丈夫です。
まとめ|自分のぶんの窓口を1つ持ってください

- 36件のうち配偶者と子どもの両方という組み合わせが17件と最多で、配偶者だけ(12件)を上回っていました
- 子どもの検査や勉強が、きっかけになっています。子ども → 配偶者 → 自分、という順番です
- 子どもに使う工夫を大人相手にもう一度使うことになり、やることが2系統に増えます
- 配偶者は関係なく、お子さんとの関係だけで消耗している方もいます。その感じ方は愛情の量とは関係ありません
- 窓口は、自分のぶんと子どものぶんで分けてください。1つにまとめると、必ず自分のほうが後回しになります
本記事で紹介している一次情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「カサンドラ症候群に関するエピソード調査」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 調査期間 | 2022年11月〜2026年 |
| 有効回答数 | 36件 |
| 設問 | 「どなたが発達障害ですか?」「ご自身がカサンドラ症候群だと気づいたきっかけは?」「あなたは相手に対しどのような点で強くストレスを感じていますか?」「同じ立場の方にアドバイスするとしたら、何を伝えたいですか?」ほか |
| 分析方法 | 相手との関係は複数回答のため、「配偶者を含むか/子どもを含むか」で排他的に分類しました |
| 注意点 | ※回答者は、当協会が認定する「児童発達支援士」の受講者に限られます。メンタルヘルス支援士の受講者を対象にしたものではありません |
| 注意点 | お子さんの診断の有無は、回答者の記載にもとづくものです。当協会が確認したものではありません |
| 注意点 | 体験談は、個人が特定されないよう一部の表現をぼかしています。内容は変えていません |
| 注意点 | 本記事は診断・治療を目的としたものではありません。お子さんやご家族の特性を判断するものでもありません |
【注意事項】
この記事は、公的機関が公開している資料と、当協会が収集した体験談を整理したものです。特定の個人について発達障害の有無を判断するものではなく、ご家庭の対応の適否を決めるものでもありません。発達障害は、しつけや育て方が原因で生じるものではありません。お子さんに手が出てしまう、眠れない日が続いているなど、ご自身やお子さんの安全に関わる状況では、ためらわず専門の窓口にご連絡ください。


