心理の専門職を目指したいと思って調べると、臨床心理士と公認心理師という2つの名前が出てきます。どちらも心の相談に関わる資格のようなのに、何が違うのか、どちらを目指せばいいのか、大学院に行かなくても取れるのか。そこで立ち止まっている方が多いと思います。
この記事ではそれらを解決できるよう、法律と公式に公表されている情報をもとに、2つの資格の違いと、進路を決めるための材料を整理します。
たとえば、
- 公認心理師と臨床心理士の位置づけ・受験資格・更新の違い
- 公認心理師を大学院に行かずに目指す道と、その条件
- 名前の使い方について法律が決めていること
- 講座で取る民間資格が代わりにならない理由と、上手な位置づけ方
といった内容です。
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公認心理師は国家資格で臨床心理士は大学院を出て取る資格です
公認心理師は法律で定められた国家資格で、臨床心理士は指定された大学院を修了してから審査を受ける、公益財団法人が認定する資格です。どちらも、大学や大学院で心理学を学ぶことが前提になっています。
では、大学院に進まない人には道がないのか。そして、通信講座などで数か月学んで取る民間のカウンセラー資格は、この2つの代わりになるのか。その答えは、後半の節で確かめます。
まず、2つの資格の基本を並べます。いちばん大きな違いは、資格の根拠です。公認心理師は国の法律にもとづく資格で、臨床心理士は公益財団法人が認定する資格です。
| 項目 | 公認心理師 | 臨床心理士 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 国家資格(公認心理師法・平成29年9月15日全面施行) | 公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格 |
| 受験・審査の資格 | 大学と大学院で指定科目を修める、または大学で指定科目を修めて指定の施設で2年以上の実務経験を積む、など | 心理学を専攻する指定された大学院の修士課程を修了 |
| 試験・審査 | 年1回の国家試験(第10回は2027年3月7日・東京都と大阪府) | 年1回の資格審査(筆記試験と口述試験) |
| 合格の基準 | 総得点の60%程度以上を基準に、問題の難易度で補正 | 公式サイトで確認 |
| 合格したあと | 登録を受けて名乗る(登録手数料7,200円+登録免許税15,000円) | 5年ごとに資格更新審査があり、研修や研究が義務づけられている |
※公認心理師は公認心理師法(e-Gov法令検索)、厚生労働省、一般財団法人 公認心理師試験研修センター、臨床心理士は一般社団法人 日本臨床心理士会の公式サイトで、2026年9月16日に確認した内容です。
公認心理師法では、公認心理師の仕事を4つに分けて定めています。支援を必要とする人の心理状態を観察して分析すること、本人の相談に応じて助言や指導などの援助をすること、家族など関係者の相談に応じて援助をすること、心の健康についての知識を広めるための教育や情報提供をすることです。保健医療、福祉、教育などの分野で、心理学の専門的な知識と技術を使ってこれらを行う人と位置づけられています。
臨床心理士は、公認心理師法ができる前から続いている資格です。日本臨床心理士会の案内では、指定された大学院の修士課程を修了したあと、年1回の筆記と口述の資格審査に合格して資格を得ること、取得後も5年ごとに資格更新審査があることが説明されています。取ってからも研修や研究を続けることが条件になっているのが、臨床心理士の特徴です。
2つを並べると、どちらかが上というより、根拠と続け方が違う資格だと分かります。どちらを先に目指すかは、学ぶ大学や大学院の課程が、どちらの受験資格に対応しているかによって決まることが多くなります。
公認心理師には大学院に行かない道もありますが条件があります

「公認心理師 大学院 行かない」と検索される方は、大学院の2年間と費用をかけずに国家資格を目指せないかを知りたいのだと思います。答えは、道はあります。ただし大学で指定科目を修めることと、指定の施設での2年以上の実務経験が必要です。
公認心理師法の第7条は、受験資格を大きく3つに分けています。
- 大学で必要な科目を修めて卒業し、大学院で必要な科目を修めて課程を修了した人
- 大学で必要な科目を修めて卒業し、省令で定める施設で、省令で定める期間以上、心理の支援の業務に従事した人(期間は施行規則で2年)
- 上の2つと同等以上の知識と技能があると、文部科学大臣と厚生労働大臣が認定した人
2つ目が、大学院に行かない道です。ただし「実務経験」は、どこで働いてもよいわけではありません。施行規則で定められた施設で、定められた業務に2年以上従事する必要があり、その施設の最新の情報は厚生労働省のページで確認するよう案内されています。大学で指定科目を修めていることが前提なので、社会人になってから心理学を学び始める場合は、まず大学で必要な科目を修めるところから考えることになります。
厚生労働省のページでは、受験のルートは7つあると案内されています。公認心理師試験研修センターが公表している第9回試験(2026年3月1日実施)の区分別の結果を見ると、大学と大学院のルート(区分A)は受験者1,937人のうち1,311人が合格し、合格率は67.7%でした。大学と実務経験のルート(区分B)は受験者29人のうち20人が合格し、合格率は69.0%です。
区分Bの合格率は区分Aと同じくらいですが、受験者の数は29人と、区分Aの約70分の1です。大学院に行かない道は開かれていても、実際にこの道を通って受験している人はまだ少ないということが、この数字から読み取れます。指定の施設で働く機会を得られるかどうかも含めて、計画を立てる必要があります。
試験全体では、第9回の受験者は2,400人、合格者は1,441人で、合格率は60.0%でした。次の第10回は2027年3月7日に東京都と大阪府で行われ、受験の申し込みは2026年12月1日から25日まで、受験手数料は28,700円と案内されています。
>心理カウンセラー資格一覧【協会監修】どれがいい?目的別に民間資格を比較
名前の使い方は法律で決められています
公認心理師法には、名前の使い方についての決まりもあります。第44条は、公認心理師でない人が「公認心理師」という名称を使ってはならないこと、そして名称の中に「心理師」という文字を使ってはならないことを定めています。
一方で、法律で確認できるのは名称の使用の制限で、心理の相談そのものを公認心理師だけに限る決まりは確認できません。つまり、相談を受ける仕事は資格がなくてもできますが、「公認心理師」「◯◯心理師」と名乗れるのは国家資格を持つ人だけということです。
もう一つ、公認心理師法には、支援を受ける人に主治の医師がいるときは、その指示を受けなければならないという定めもあります(第42条第2項)。医療や他の職種と連携しながら支援を行うことが、法律の段階で前提になっている資格です。
名前の決まりを知っておくと、資格を調べるときの見分けにも役立ちます。「心理師」と名乗る資格は公認心理師だけです。似た響きの名前の資格を見かけたら、どの団体が認定しているか、受験資格に大学や大学院が含まれているかを確かめると、国家資格かどうかを取り違えずに済みます。
講座で取る民間資格は代わりになりません
心理職を目指す途中で、通信講座などで数か月学んで取れるカウンセラー資格が目に入ることがあります。費用も期間も、大学や大学院に比べればずっと小さく見えます。けれど、こうした民間資格を取っても、公認心理師や臨床心理士の受験資格にはなりません。受験資格は、どちらも大学や大学院で指定された内容を修めることが前提だからです。
当協会もメンタルヘルス支援士という民間資格を認定していますが、この点は変わりません。メンタルヘルス支援士は当協会が認定する資格で、公認心理師や臨床心理士の代わりになるものではありません。ここは資格を認定する側から、はっきりお伝えしておきたいところです。
心理職として働いている人の実態も、厚生労働省の職業情報サイト「job tag」で確かめられます。医療福祉分野のカウンセラーについて、関連資格として挙げられているのは臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士です。働いている人の学歴は修士課程卒が55.8%、大卒が40.4%と示されています(区分ごとの割合の合計は100%を超えています)。
では、講座で取る民間資格には意味がないのかというと、そうではありません。役割が違うのです。民間資格は、心理学やメンタルヘルスの全体像をつかむ入口として、あるいは家族や職場など身近な場面で知識を使うための学びとして役立ちます。受講を終えた方のアンケートにも、そうした入口としての手応えを書いた声がありました。
発達障害支援の為に本格的に勉強を始めようとしていたところに見つけた資格ということで勉強して良かったです。大まかな概要や、種類などを知ることができました。
30代の方の回答です。「本格的に勉強を始めようとしていたところ」で、「大まかな概要や種類」を知ることができた、という書き方に、民間資格の役割がよく表れています。全体像をつかむ入口であって、専門職の資格の代わりではない。この位置づけを分かったうえで使えば、民間資格は次の学びへの足場になります。
民間資格から始めるなら順番を決めておきます

心理職を本職にしたい気持ちがはっきりしているなら、最初に考えるのは大学や大学院の課程です。一方で、「本当に心理職を目指したいのか、まだ確信が持てない」「仕事を続けながら、まず学んでみたい」という段階の人もいます。その場合は、民間資格を入口にして、次の順番を決めておくと遠回りになりません。
- 入口:講座で取る民間資格で、精神疾患やカウンセリングの全体像をつかむ
- 確認:学んだ結果、心理職を本職にしたいかどうかを自分に問う
- 進路:本職にしたいなら、公認心理師の受験資格に対応した大学・大学院の課程を調べる。臨床心理士も目指すなら、指定された大学院かどうかも確かめる
- 別の道:本職ではなく、今の仕事や家族との関わりに生かしたいなら、民間資格の学びをそのまま深める
ここで大事なのは、民間資格を重ねれば国家資格に近づく、とは考えないことです。民間資格をいくつ取っても、公認心理師の受験資格には加算されません。入口として使う民間資格は1つで十分で、その先は大学や大学院の課程を調べる時間に使ったほうが、目指す資格に確実に近づきます。
反対に、心理職を本職にするつもりはなく、学びを身近な場面に生かしたい人にとっては、公認心理師や臨床心理士の道は目的に対して大きすぎることもあります。そういう人は、学ぶ範囲や費用、受け方で民間資格どうしを比べて選ぶのが現実的です。
どちらの道を選ぶにしても、今の自分がどの段階にいるかを先に言葉にしておくことが、資格選びで迷わないいちばんの方法です。心理の学びは、どの入口から始めても、目の前の人を理解しようとする姿勢につながっていきます。
メンタルヘルス支援士について
ここまで、公認心理師と臨床心理士の違い、大学院に行かない道の条件、民間資格の位置づけをご紹介してきました。
専門職を目指す道と合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|臨床心理士と公認心理師の違いに関するよくある質問
Q1:臨床心理士と公認心理師はどちらが上ですか?
上下ではなく、根拠と続け方が違う資格です。公認心理師は公認心理師法にもとづく国家資格で、臨床心理士は公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定し、5年ごとの資格更新審査がある資格です。どちらも大学や大学院で心理学を学ぶことが前提になっています。
Q2:公認心理師は大学院に行かなくても取れますか?
大学で指定科目を修めて卒業し、省令で定める施設で2年以上の実務経験を積むルートがあります。ただし第9回試験でこのルート(区分B)で受験した人は29人で、大学と大学院のルート(区分A)の1,937人と比べてかなり少ない状況です。指定の施設で働く機会を得られるかも含めて計画する必要があります。
Q3:臨床心理士になるにはどうすればいいですか?
日本臨床心理士会の案内では、心理学を専攻する指定された大学院の修士課程を修了したあと、年1回の筆記試験と口述試験による資格審査に合格して資格を得ると説明されています。取得後も5年ごとに資格更新審査があり、研修や研究が義務づけられています。
Q4:通信講座のカウンセラー資格で代わりになりますか?
代わりにはなりません。公認心理師と臨床心理士の受験資格は、大学や大学院で指定された内容を修めることが前提で、講座で取る民間資格は受験資格に加算されません。当協会が認定するメンタルヘルス支援士も同じです。民間資格は、全体像をつかむ入口や身近な場面で知識を使うための学びとして位置づけるのが適切です。
Q5:公認心理師の試験の費用と時期を教えてください
第10回試験は2027年3月7日に東京都と大阪府で行われ、申し込みは2026年12月1日から25日まで、受験手数料は28,700円です。合格後の登録には、登録手数料7,200円と登録免許税15,000円がかかります。最新の情報は公認心理師試験研修センターの公式サイトで確認してください。
まとめ|心理職を本職にするなら2つの資格の道を先に確かめる
- 公認心理師は国家資格で、臨床心理士は指定大学院の修了後に審査を受ける、公益財団法人が認定する資格です
- 公認心理師には大学+指定施設での2年以上の実務経験という大学院に行かない道もありますが、受験者はまだ少数です
- 「公認心理師」「心理師」と名乗れるのは、国家資格を持つ人だけと法律で決められています
- 講座で取る民間資格は、2つの資格の代わりにも受験資格にもなりません
- 自分がどの段階にいるかを先に決めて入口を選べば、どの学びも目の前の人を理解する力につながります
本記事で紹介している一次情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報の性質 | 一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講後アンケート」より抜粋 |
| データ取得者 | 一般社団法人 人間力認定協会 |
| 調査期間 | 2025年3月〜2026年8月 |
| 有効回答数 | 248件 |
| 設問 | 「自由にメッセージをお願いします」 |
| 分析方法 | 自由記述の回答を原文のまま引用しています |
| 注意点 | 受講を終えた方の任意回答です。受講を途中でやめた方の声は含まれていません |
| 資格の情報 | 公認心理師は公認心理師法(e-Gov法令検索)・厚生労働省・一般財団法人 公認心理師試験研修センター、臨床心理士は一般社団法人 日本臨床心理士会、心理職の実態は厚生労働省 job tag で、2026年9月16日に確認した内容です |
【注意事項】
この記事は、法律と公的機関・資格の認定団体が公開している情報、当協会が収集したアンケートをもとにまとめたものです。受験資格や試験の日程・費用は変更されることがあるため、進路を決める前に必ず各公式サイトで最新の情報をご確認ください。大学・大学院の課程が受験資格に対応しているかは、各大学に直接お問い合わせください。


