受験が終わってから何も手につかない。部活を引退したら、急にやる気がなくなった。学校に行く気力がわかない日が続いている。「燃え尽き症候群かもしれない」と思って、診断テストを探している学生や保護者の方が多いと思います。
先に答えをお伝えします。WHO(世界保健機関)が説明している燃え尽き症候群は、仕事の文脈に限って使う言葉です。学生の状態にそのまま当てはめるのは、正確ではありません。
ただし、学業で消耗している状態が存在しないという意味ではありません。研究の場面では、学生向けに作られた尺度が使われています。呼び名よりも、続いている状態と、どこに相談できるかのほうが役に立ちます。
たとえば、
- WHOの説明が仕事の文脈に限られている理由
- 研究で使われている学生版の尺度
- 受験や部活のあとに力が入らないときの考え方
- 学生と保護者が相談できる窓口
といった内容です。
この記事では、WHOの発表と研究で使われている尺度の情報、文部科学省の相談窓口をもとに整理していきます。学生の状態を判定する記事ではありません。
>燃え尽き症候群チェックリスト|厚労省27項目とバーンアウト症状の見方
WHOの説明は仕事の文脈に限られています
WHOは2019年に、燃え尽き症候群(バーンアウト)をICD-11でどう扱うかを発表しました。そこでは、燃え尽きはうまく対処されてこなかった慢性的な職場のストレスから生じる現象とされ、職業の文脈に限って使い、他の生活領域の経験には用いないと書かれています。
学業は仕事ではありませんから、この説明をそのまま学生に当てはめることはできません。「受験燃え尽き症候群」「部活燃え尽き」といった言い方が広く使われていますが、WHOの定義に沿った呼び方ではないということです。
これは「学生は消耗しない」という意味ではありません。長く続いた勉強や練習のあとで力が入らなくなることは実際に起こります。ただ、呼び名を先に決めても、次にすることは決まらないということでもあります。名前を探すより、いつからどんな状態が続いているかを見るほうが手がかりになります。
言葉の使い方で気をつけたいのは、周りが使うときの意味です。「燃え尽きたんだね」と言われると、本人は「もう終わった人」と受け取ってしまうことがあります。区切りのあとに力が抜けている時期は、終わりではなく休みの時期です。呼び名を貼るより、いまは休んでよい時期だと伝えるほうが届きます。
>燃え尽き症候群とは|WHOは病気ではなく仕事の現象としています
研究では学生版の尺度が使われています

一方で、研究の世界では、学生の消耗を測る尺度が作られています。燃え尽きの研究でよく使われるマスラック・バーンアウト尺度(MBI)には、大学生向けの版(MBI-GS(S))があります。出版元のMind Gardenの説明では、大学生を対象に作られたもので、次の3つの面を測るとされています。
- 消耗(Exhaustion):学業によって手いっぱいになり、消耗していると感じること
- シニシズム(Cynicism):学業に対して距離を置いた、無関心な態度
- 専門的効力感(Professional Efficacy):これまでといまの達成に対する満足と、これからも力を発揮できるという見通し
WHOが職場について挙げている3つの側面と、並びがよく似ています。学業での消耗を、仕事の燃え尽きと同じ枠組みで見ようとしてきた研究があるということです。
ただし注意したいのは、この尺度が出版元から購入して使う調査用のもので、無料で受けられる「燃え尽き診断テスト」とは別だという点です。ネット上のテストは自分の状態に気づくきっかけにはなりますが、点数で決まるものではありません。学生向けに作られていないテストも多くあります。
受験や部活のあとに力が入らないとき
目標に向かって長く走ったあと、しばらく何もする気が起きなくなることは珍しくありません。区切りのあとで一時的に力が抜けるのは、次の目標がまだ決まっていない時期の自然な反応とも考えられます。
見ておきたいのは、時間の長さと生活への影響です。数日から数週間で戻ってくるなら、休む時間として受け取ってかまいません。次のような状態が何週間も続いているときは、休息だけでは戻りにくいところに入っている可能性があります。
- 眠れない、朝起き上がれない日が続いている
- 食欲がない、または食べすぎる日が続いている
- 学校や部活に行けない日が増えている
- 好きだったことにも興味がわかない
- 気分の落ち込みが続いている
この一覧は、当てはまった数で何かを決めるためのものではありません。1つでも「いつもの自分と違う状態が続いている」なら、相談してよいという目安として見てください。
部活や受験の直後に限らず、学期の途中でだんだん落ちていくこともあります。周りが気づくのは、遅刻や欠席が増えたときや、提出物が出なくなったときです。本人の中では、その前から「前はできていたことが重く感じる」時期が続いていることがあります。変化が続いているかどうかは、点数ではなく以前の自分と比べて見てください。
もう一つ知っておきたいのは、背景に別のことが隠れている場合があることです。学習のつまずき、友人関係、家庭の事情など、「やる気が出ない」の下に別の理由があることがあります。呼び名を決めるより、何が起きているかを一緒に整理できる相手を見つけるほうが早い場合が多くあります。
学生と保護者が相談できる窓口

相談先を決めるときは、いま話しやすい人からでかまいません。順番を守る必要はなく、学校の外から始めて、必要になったら学校につなぐ形でも大丈夫です。
学校の中には、担任の先生のほかにスクールカウンセラーがいます。大学なら学生相談室が置かれていることが多く、どちらも成績や進級の判断とは別の立場で話を聞く場所です。相談したことで内申や単位が不利になるものではありません。
学校の中では話しにくいときは、学校の外の窓口があります。
- 24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310):いじめやそのほかの子どものSOS全般について、子どもや保護者が夜間・休日を含めて24時間相談できる全国共通のダイヤルです。通話料は無料で、電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります
- こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556):お住まいの都道府県などの公的な相談窓口につながります。曜日や時間は地域によって異なり、通話料がかかります
- 地域の保健所・精神保健福祉センター:受診するかどうか迷う段階から相談できます
保護者の方が先に相談してもかまいません。本人に断ってからでなくても大丈夫です。本人が話したがらないときに、関わり方を一緒に考えてもらう入口として使えます。
>不登校のチェックリスト|保護者と先生では、見ている場所が違う
やる気が落ちていく過程を書いた声を紹介します
当協会のエピソード調査に寄せられた声を紹介します。燃え尽きについて尋ねた調査ではありません。発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てる保護者の方が、学校に通えなくなっていく過程を書いた回答です。
夏休み前から、少しずつ不満を口にしていたので、励ましつつ登校させていました。夏休みに入ってからは、何もかもに意欲が持てなくなり、習い事のサッカークラブもやめ、宿題もほとんど手をつけられませんでした。
別の方は、次のように書いていました。
発達性読み書き障害に気付かれず、学校に疲れてしまうことが増えて、学校を休みがちになりました。
どちらも、気力が落ちる前に「不満を口にする」「学校に疲れる」という時期があったことが書かれています。区切りのあとで急に起きたというより、その前から続いていたことが見えます。
保護者ができるのは休ませる許可を出すことです
お子さんの様子が変わったとき、保護者ができることは多くありません。できるのは、休むことを責めないことと、生活のリズムを一緒に守ることです。
がんばってきた子ほど、休むことに罪悪感を持ちます。「せっかくここまでやったのに」「みんなは続けているのに」と自分を責めているところに、周りが同じ言葉を重ねると、相談する先がなくなります。
起きる時間と食事の時間だけを一緒に守り、あとは求められたときに話を聞く。元に戻すことを目標にせず、いまの生活が続くようにするほうが、結果的に早く動き出せることがあります。
声のかけ方で迷うときは、評価の言葉を減らすのが目安です。「もったいない」「あと少しなのに」は、本人がいちばん言われたくない言葉であることが多くあります。代わりに、「いま何がいちばんしんどい?」と聞いて、答えが返らなければ待つ。それで十分です。
一方で、保護者だけで抱えるものでもありません。眠れない・食べられない・気分の落ち込みが続いているなら、医療機関に相談できます。保護者自身が疲れているときは、保護者の相談先も使ってください。
>不登校の親が疲れたとき|34人の「こうしておけばよかった」
メンタルヘルス支援士について
ここまで、学生に燃え尽き症候群という言葉をそのまま当てはめられない理由、研究で使われる学生版の尺度、相談できる窓口、保護者ができることをご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|学生の燃え尽き症候群に関するよくある質問
Q1:学生も燃え尽き症候群になりますか?
WHOは燃え尽き症候群を職業の文脈に限って使うとしているため、学生の状態にその言葉をそのまま当てはめるのは正確ではありません。ただし、学業での消耗を測る学生向けの尺度が研究では作られており、長く続いた勉強や練習のあとに力が入らなくなること自体は起こります。
Q2:学生向けの燃え尽き診断テストはありますか?
研究ではマスラック・バーンアウト尺度の大学生向けの版(MBI-GS(S))が使われていますが、出版元から購入して使う調査用の尺度です。無料で受けられるネット上のテストとは別のもので、点数で状態が決まるわけではありません。
Q3:受験のあとにやる気が出ないのは普通ですか?
区切りのあとで一時的に力が抜けることは珍しくありません。数日から数週間で戻るなら休む時間として受け取れます。眠れない、朝起き上がれない、学校に行けない日が増えるといった状態が何週間も続く場合は、休息だけでは戻りにくいところに入っている可能性があります。
Q4:学生はどこに相談できますか?
学校のスクールカウンセラー、大学の学生相談室のほか、学校の外では24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310・24時間・通話料無料)があります。心の不調が続いているときは、地域の保健所や精神保健福祉センター、医療機関にも相談できます。
Q5:保護者は何をすればいいですか?
休むことを責めず、起きる時間や食事の時間など生活のリズムを一緒に守ることです。元の状態に戻すことを目標にすると、本人も保護者も苦しくなります。不調が続く場合は医療機関に相談し、保護者自身の相談先も持っておいてください。
まとめ|学生は呼び名より続いている状態と相談先で考える
- WHOの燃え尽き症候群は仕事の文脈に限って使う言葉で、学生にそのまま当てはめるのは正確ではありません
- 研究では学生向けの尺度(MBI-GS(S))が使われていますが、購入して使う調査用のものです
- 区切りのあとに力が抜けるのは自然ですが、何週間も続くときは休息だけでは戻りにくいところです
- 相談先はスクールカウンセラー・学生相談室・24時間子供SOSダイヤルなどがあります
- 保護者ができるのは、休むことを責めず生活のリズムを一緒に守ることです
本記事で紹介している情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 燃え尽き症候群の位置づけと使う範囲 | World Health Organization「Burn-out an occupational phenomenon: International Classification of Diseases」(2019年5月28日) |
| 学生版の尺度 | Mind Garden, Inc.「MBI: General Survey for Students(MBI-GS (S))」 |
| 学生の相談窓口 | 文部科学省「子供のSOSの相談窓口」/こども家庭庁「関連サービスの相談窓口」(24時間子供SOSダイヤルの番号・受付時間・通話料) |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 厚生労働省「まもろうよ こころ」 |
| 紹介した声 | 当協会「子どもの二次障害に関するエピソード調査」(対象は発達障害の診断や特性のあるお子さんを育てる保護者/有効回答63件/2023年1月〜2026年1月) |
| 確認日 | 2026年9月18日 |
【注意事項】
この記事は、WHOの発表と研究で使われている尺度の情報、文部科学省・こども家庭庁・厚生労働省の資料をもとにまとめたものです。学生の状態を判定するものではなく、診断・治療を目的としたものでもありません。電話番号や受付時間は変わることがあるため、利用する前に各公式サイトで確認してください。心身の不調が続いている場合は、医療機関や相談窓口にご相談ください。ご自身や周囲の安全に関わる状況では、ためらわず専門の窓口にご連絡ください。


