ペアレントトレーニングとSSTは違う?共通点は?意識すべき点をわかりやすく解説

「ペアレントトレーニングとSSTは、同じものですか?」

「家庭でSSTをすることを、ペアレントトレーニングと呼ぶのでしょうか?」

「子どもの困りごとには、どちらを選べばよいですか?」

子どもの発達や行動について調べていると、「ペアレントトレーニング」と「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」という言葉を目にすることがあります。

どちらも、子どもの生活を支えるために用いられることがあり、行動を具体的に見る、できていることに注目する、家庭での実践を大切にするといった共通点があります。そのため、同じもののように感じるかもしれません。

しかし、主に誰が学ぶのか、何を練習するのかという点には違いがあります。

この記事では、公的機関が公開している資料をもとに、

  • ペアレントトレーニングとは何か
  • SSTとは何か
  • 二つの違いと共通点
  • 同じ困りごとに、それぞれがどう関わるか
  • 利用を考える時に確認したいこと

を整理します。

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ペアレントトレーニングとは

ペアレントトレーニングは、保護者や養育者が、子どもの行動を理解し、その子に合ったかかわり方を学ぶ支援プログラムです。

国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターは、ペアレントトレーニングについて、保護者が子どもの行動を観察して特徴を理解し、発達障害の特性を踏まえたほめ方やしかり方などを学ぶものと説明しています。

実際のプログラムでは、例えば次のような内容が扱われます。

  • 子どもの行動を具体的に観察する
  • 行動が起きる前後の状況を整理する
  • 好ましい行動に注目し、具体的に認める
  • 子どもに伝わりやすい指示の出し方を考える
  • 課題を小さな段階に分ける
  • 家庭で試したことを振り返る
  • 保護者自身の負担やストレスについて考える

講義を聞くだけではなく、グループでの話し合い、ロールプレイ、家庭での実践などを組み合わせるプログラムもあります。

ただし、「ペアレントトレーニング」という名称で行われているプログラムが、全国で一つの内容に統一されているわけではありません。対象となる子どもの年齢、保護者のニーズ、実施機関によって、回数や内容は異なります。

また、ペアレントトレーニングは、保護者を責めたり、「正しい親」になるよう求めたりするためのものではありません。子どもの行動を理解する見方と、家庭で試せるかかわり方を増やし、保護者だけで抱え込まないための支援でもあります。

SSTとは

ソーシャルスキルトレーニング(Social Skills Training:SST)は、人が社会生活を送るうえで必要となるスキルを、具体的な練習を通して学ぶ方法です。

国立障害者リハビリテーションセンターが公開している資料では、SSTの基本的な流れが、

  1. 教示
  2. モデリング
  3. リハーサル
  4. フィードバック
  5. 般化

と整理されています。

子どもへのSSTでは、例えば、

  • 自分の気持ちや希望を伝える
  • 相手の話を聞く
  • 会話を交代しながら続ける
  • 人に頼む、断る、謝る
  • 困った時に助けを求める
  • 場面に応じた声の大きさを考える

といった内容を、手本やロールプレイを使って練習することがあります。

SSTも、「正しい振る舞いを一方的に覚えさせること」が目的ではありません。本人が実際に困っている場面を確認し、その生活で役立つ伝え方や選択肢を一緒に増やしていくことが大切です。

詳しい流れは、ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?子ども向けの目的とやり方で解説しています。

ペアレントトレーニングとSSTの違い

二つの違いを大まかに整理すると、次のようになります。

比較する点ペアレントトレーニングSST
主に参加する人保護者・養育者子ども本人を含む参加者
主に学ぶこと子どもの行動の見方、大人のかかわり方、環境の整え方社会生活や対人関係で使う具体的なスキル
よく使われる方法講義、行動観察、話し合い、ロールプレイ、家庭での実践説明、手本、実演、フィードバック、日常場面での実践
振り返る対象子どもの行動と大人の対応、その前後の状況練習したスキル、必要だった手助け、日常での使いやすさ
目指すこと保護者が子どもを理解し、取り入れられるかかわり方を増やす本人が生活で使える伝え方や行動の選択肢を増やす

表にすると違いが明確に見えますが、実際の支援では、完全に切り離されているわけではありません。

保護者がSSTの練習を手伝うこともあります。ペアレントトレーニングの中で、子どもに分かりやすく手本を示す方法や、生活スキルの教え方を扱う場合もあります。

大切なのは、家庭で行う活動だからペアレントトレーニング、子どもが参加するからすべてSST、と場所や参加者だけで決めないことです。それぞれのプログラムが、誰を対象に何を学ぶものとして設計されているかを確認します。

二つに共通する考え方

行動を具体的な場面で見る

「言うことを聞かない」

「コミュニケーションが苦手」

という評価だけでは、必要な手助けを考えにくいものです。

そこで、

  • いつ、どこで起きたか
  • 直前に何があったか
  • 子どもは実際に何をしたか
  • 大人はどのように応じたか
  • その後どうなったか

と具体的に見ていきます。

見たことと、「やりたくなかったのだろう」「甘えているのだろう」といった大人の解釈を分けることも重要です。

できている行動にも注目する

困った場面だけを見ていると、子どもがすでに使っている方法を見落とすことがあります。

例えば、言葉で「手伝って」と言えなくても、大人の近くへ道具を持って行けるかもしれません。家では言えなくても、慣れた先生には伝えられることもあります。

できている場面を探すと、その時の相手、環境、手助けを次の支援に生かせます。

一度に多くを求めない

大きな目標を小さな段階に分け、今できるところから始める点も共通しています。

できなかった時に、注意や練習量を増やすだけではなく、言葉が伝わっていたか、難易度が合っていたか、環境に負担がなかったかを見直します。

同じ困りごとを二つの方法で考えると

「工作中に必要な物がなくても、大人に伝えられず活動が止まる」という場面を例にします。

ペアレントトレーニングの視点

保護者は、どのような時に活動が止まるかを観察します。

「のりがない」

「大人は少し離れた場所にいる」

「子どもは紙を持ったまま待っている」

「大人が近づくと紙を見せる」

と整理できれば、「助けを求める気持ちがない」と決めつけず、相手との距離や伝え方が難しい可能性を考えられます。

そのうえで、相談する相手を先に示す、伝えようとした行動に気づいて応じる、短い言葉を提示する、といった大人側の工夫を試します。

SSTの視点

子どもと一緒に、「必要な物がない時、どのように知らせるか」を練習します。

大人が、

「のりがありません」

「貸してください」

と手本を示し、役割を決めて実際に試します。

言葉で伝えることが難しければ、カードを見せる、必要な物を指さす、相手の近くへ行くなど、本人が使える方法を考えます。

このように、ペアレントトレーニングでは大人の観察とかかわり方を中心にし、SSTでは本人が使う具体的なスキルを中心にします。両方の視点を組み合わせると、子どもだけに変化を求めず、環境や大人の手助けも一緒に見直せます。

どちらを選べばよい?

どちらが優れているかを比べるものではありません。今、誰が何に困っているかによって、検討する支援は変わります。

ペアレントトレーニングを検討しやすい例

  • 子どもの行動をどう理解すればよいか迷っている
  • 注意や叱責が増え、かかわり方を一緒に見直したい
  • 家庭で試せる具体的な工夫を、継続して学びたい
  • 同じ立場の保護者や専門職と振り返る機会がほしい

SSTを検討しやすい例

  • 本人が特定の対人場面で困っている
  • 頼み方、断り方、相談の仕方などを具体的に練習したい
  • 言葉だけの説明では分かりにくく、手本やロールプレイが役立ちそう
  • 練習したことを日常生活へつなげたい

実際には、ペアレントトレーニングとSSTに加え、環境調整、学校や園との連携、医療・福祉サービスなどを組み合わせることもあります。

子どもの強い不安、睡眠や食事の問題、自傷・他害、家族だけでは安全を保ちにくい状態などがある場合は、家庭での練習だけで解決しようとせず、医療機関や地域の相談窓口を含む専門機関へ相談してください。

プログラムを選ぶ前に確認したいこと

同じ名称でも内容や実施方法は異なります。申し込む前に、次の点を確認すると安心です。

  • 対象となる子どもの年齢や状態
  • 主な参加者は保護者か、子ども本人か
  • 個別かグループか
  • 回数、期間、費用
  • 実施者の職種や研修歴
  • 家庭で行う課題の量
  • 子どもが参加を嫌がった時の対応
  • 個人情報やグループ内の話を守るルール
  • 現在利用している支援機関との連携方法

「必ず改善する」「短期間で問題行動がなくなる」といった断定的な説明だけで判断せず、目的や限界も説明しているかを確認しましょう。

SSTスペシャリストで扱う範囲について

一般社団法人 人間力認定協会の「SSTスペシャリスト」は、SSTの基礎知識、実践時の考え方、環境設定、30種類のSST実践ワークと動画教材を通して、SSTを学ぶ資格講座です。

ペアレントトレーニングの実施者を養成する講座ではなく、ペアレントトレーニングのカリキュラムや認定を提供するものではありません。

ペアレントトレーニングへの参加を希望する場合は、お住まいの自治体、発達障害者支援センター、医療機関、児童発達支援センターなどへ、地域で利用できるプログラムを確認してください。

SSTそのものを体系的に学び、子どもの困りごとに合わせた練習を考えたい方は、SSTスペシャリストの講座内容も参考にしていただければと思います。

→ SSTスペシャリストの講座内容を詳しく見る

まとめ|対象と目的を確認して選ぶ

ペアレントトレーニングとSSTには、行動を具体的に見る、できていることを認める、小さな段階で取り組むという共通点があります。

一方で、中心となる対象と学ぶ内容は異なります。

  • ペアレントトレーニング:保護者が、子どもの行動の理解とかかわり方を学ぶ
  • SST:本人が、生活や対人関係で使う具体的なスキルを練習する

家庭でSSTを行うことが、そのままペアレントトレーニングになるわけではありません。また、どちらか一方だけで、すべての困りごとに対応できるものでもありません。

名称だけで選ばず、誰が何を学ぶプログラムなのか、本人と家族が今必要としている支援は何かを確認しながら検討していきましょう。

参考資料

一般社団法人 人間力認定協会 代表理事 井上智之

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 代表理事
井上 智之

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 代表理事の井上 智之。30年にわたる教室運営を通して、多くの子ども・保護者・教育関係者と向き合う。比較や不安、教育現場の課題を目の当たりにし、一般社団法人 人間力認定協会を設立。現在は発達障害の療育・支援法の研究開発と情報発信に取り組み、「理解は支援の第一歩」を理念に、一人ひとりに合った支援と社会理解の普及を目指している。また、当協会では発達支援や心理に関する知識を体系的に学べる「児童発達支援士」「メンタルヘルス支援士」などの資格講座を提供しており、これまでに延べ5万名以上の方が受講している。

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