子どもが癇癪を起こしたときの対応6ステップ|安全確保から振り返りまで

子どもが激しく泣く、叫ぶ、物を投げる――その場では大人も焦ります。しかし、癇癪の最中に長く説明したり、正しさを言い聞かせたりすると、刺激が増えて落ち着きにくくなる場合があります。

対応の優先順位は、安全を確保し、刺激を減らし、落ち着きを待つことです。ここでは家庭や支援現場で使える6つの手順を紹介します。癇癪が起こる背景と予防は、発達障害の子どもの癇癪・パニックはなぜ起こる?で詳しく解説しています。

※本記事は一般的な支援情報です。個別の診断・治療や緊急対応の代わりにはなりません。

癇癪が起きたときの対応6ステップ

1.本人と周囲の安全を確保する

投げると危険な物、割れ物、刃物などを遠ざけます。道路や階段など危険な場所では、安全な場所へ移動できるよう支援します。身体を押さえつける対応は、かえって興奮やけがにつながることがあります。差し迫った危険がある場合は、現場の安全手順や専門家の指示に従ってください。

2.人・音・光などの刺激を減らす

周囲の人が一斉に話しかけないようにし、テレビや音楽を止め、可能なら静かな場所へ移ります。本人が普段から落ち着ける場所や道具がある場合は活用します。

3.言葉を短く、具体的にする

「どうしてそんなことをするの」「いい加減にしなさい」と問い詰めず、「ここで待つよ」「安全だよ」「落ち着いたら話そう」など短い言葉にします。言葉自体が負担になっている様子なら、無理に返事を求めず見守ります。

4.その場で説得や反省を求めない

強く興奮しているときは、説明を理解したり自分の気持ちを整理したりする余裕がありません。その場で約束、謝罪、原因説明を求めるのは避け、まず落ち着きを取り戻す時間を確保します。

5.本人なりの落ち着き方を待つ

座る、横になる、同じ動きをする、好きな物を見るなど、危険のない自己調整は妨げずに見守ります。抱きしめる、触れる、声をかけ続けることが安心につながる子もいれば、刺激になる子もいます。普段から本人の希望や合図を確認しておきましょう。

6.十分に落ち着いてから短く振り返る

落ち着いた後に、責めるのではなく「音が大きくてつらかったね」「次は休憩カードを出そう」など、気持ちと次の方法を確認します。振り返りが負担になる子には、その日は休み、別の機会に行ってもかまいません。

避けたい対応

  • 大声で叱る、脅す、恥をかかせる
  • 大勢で囲み、次々に質問する
  • 興奮中に長い説明や説教をする
  • 「わがまま」「親のしつけの問題」と決めつける
  • 本人や周囲に危険があるのに放置する
  • 一度うまくいった方法を、すべての子・場面に当てはめる

落ち着いた後に確認したいこと

対応が終わったら、次の予防につなげるため、直前の出来事と効果のあった対応を簡単に記録します。

  • 予定変更や待ち時間はあったか
  • 音、光、におい、人混みなどの刺激は強くなかったか
  • 空腹、疲労、睡眠不足、痛みはなかったか
  • 要求や指示は本人に理解できる量・表現だったか
  • 何をした後に落ち着き始めたか

普段から作っておきたい「落ち着きプラン」

落ち着いているときに、本人、家族、学校や支援者で次の内容を共有しておくと、対応がぶれにくくなります。

  1. 苦手になりやすい刺激や状況
  2. 早めに気づくためのサイン
  3. 本人が使える「休みたい」「助けて」の伝え方
  4. 落ち着ける場所と道具
  5. 危険がある場合の連絡先と役割分担

実際に寄せられた対応事例(原文)

以下は、当協会の匿名アンケートに寄せられた回答です。個別の体験であり、すべての子どもに同じ方法を勧めるものではありません。

癇癪を起こして暴れると、それを落ち着かせようと保護者や先生が過剰に声をかけてしまいさらに状態が悪化した。

本人や他者の安全を確保出来る場所に移動し、少し離れた場所から見守る。癇癪が落ち着くまでは声かけを控え、本人からの「落ち着いた」を声かけの目安にした。

保護者や先生の様子が気になりチラチラ様子をみる感じがあったが、本人のタイミングで「落ち着いた」を伝えられるようになり、伝えられたことを褒められると満足そうな表情が見られた。

「困ったを乗り越えた成功エピソード」匿名回答(原文。設問区切りと改行のみ調整)

保育室から出て、環境を変える。泣いていてもあえて声はかけず見守る。落ち着いてきたら本人に今話しかけて良いか聞く。本人がまだと答えたらまた待つを繰り返し、話しかけて良いと答えたら、何が嫌だったのかなど聞き、気持ちを受け止めつつ、正しい方法を伝えると、その場は納得することが出来た。

「困ったを乗り越えた成功エピソード」匿名回答(原文。句読点のみ調整)

近くにある投げられそうな物は床に投げつける、奇声を発して泣いていた。落ち着くまで、危険を回避しながら待つ。好きな物でも目に入らなかった。パニックが収まれば、原因やきっかけをゆっくり話す事ができた。

「困ったを乗り越えた成功エピソード」匿名回答(原文)

家で兄弟がテレビを観ていて、自分の好きなテレビが観られず癇癪を起こした。(これが終わったら、という説明では理解ができない)

テレビのない部屋、本人の寝室へと移動。寝る時と同じようにカーテンも閉めた静かな環境でそっとしておいた。親も側にいたが特に叱ったりはせず、黙って近くにいた。

大泣きしながら壁に体を打ちつけたり、と暴れた状態でのスタートだったが、いつも使っている布団の上に座らせると泣きながら横になり、わりと早く動きが静まった。

「困ったを乗り越えた成功エピソード」匿名回答(原文から抜粋。設問区切りと改行のみ調整)

専門機関へ相談する目安

自傷・他害・飛び出しなどの危険がある、癇癪の頻度や強さが増えている、家庭や学校での生活が続けにくい、急に行動が変化した場合は、医療機関、自治体の発達相談、学校、児童発達支援事業所などに相談してください。急な変化には痛みや病気が隠れている場合もあります。

まとめ

癇癪の最中は「教える時間」ではなく、まず安全と落ち着きを取り戻す時間です。刺激と言葉を減らし、本人に合う方法で回復を待ちます。その後で前後の状況を振り返り、次に起こりにくくする環境を整えていきましょう。

参考資料

情報確認日:2026年9月30日

一般社団法人 人間力認定協会 代表理事 井上智之

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 代表理事
井上 智之

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 代表理事の井上 智之。30年にわたる教室運営を通して、多くの子ども・保護者・教育関係者と向き合う。比較や不安、教育現場の課題を目の当たりにし、一般社団法人 人間力認定協会を設立。現在は発達障害の療育・支援法の研究開発と情報発信に取り組み、「理解は支援の第一歩」を理念に、一人ひとりに合った支援と社会理解の普及を目指している。また、当協会では発達支援や心理に関する知識を体系的に学べる「児童発達支援士」「メンタルヘルス支援士」などの資格講座を提供しており、これまでに延べ5万名以上の方が受講している。

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