― 現場で効果があった6つの支援 ―
発達障害のある子どもが癇癪(かんしゃく)を起こしたとき、
「どう対応すればいいのかわからない」
「今の対応は間違っていないだろうか」
と悩む保護者や支援者の方は少なくありません。
癇癪は突然起こるように見えますが、実際には子どもなりの理由や背景があります。
本記事では、児童発達支援士資格の受講者5万人の現場経験と、支援者アンケートの結果をもとに、癇癪やパニック時に効果があった6つの対応方法を、具体例を交えて解説します。
子どもの癇癪は「わがまま」ではありません
癇癪というと、「感情のコントロールができていない」「しつけの問題」と捉えられがちですが、発達障害のある子どもの場合、癇癪は困った行動ではなく、困っているサインであることが多くあります。
言葉で気持ちを整理したり、状況を説明したりすることが難しいため、強い不安や混乱、悔しさが一気に表に出てしまうのです。
大人がその背景を理解せず、叱責や説得を繰り返してしまうと、癇癪が長期化したり、自己否定感が強まるなど、二次的な困りごとにつながる可能性もあります。
癇癪が起こりやすいよくある場面
ケース① スーパーでお菓子を欲しがる
買い物中にお菓子が目に入り、「欲しい」「買って」と要求し、断られることで癇癪を起こすケースです。
周囲の目もあり、保護者にとっては強いプレッシャーを感じやすい場面でもあります。

ケース② いつもの服が着られずパニックになる
お気に入りの服が乾いていない、見当たらないなど、こだわりが満たされない状況で癇癪が起こるケースです。
特に自閉スペクトラム症のある子どもに多く見られますが、障害の有無にかかわらず起こることもあります。

癇癪時に効果があった【6つの対応方法】
ここからは、支援者66名へのアンケート結果をもとに、実際に効果があった対応方法を紹介します。本調査結果は、児童発達支援士資格の受講者コミュニティから得られた実践知を集約したものであり、現場での再現性を重視しています。
本調査について(アンケート概要)
本記事で紹介している「癇癪・パニック時の対応方法」は、当協会が実施したアンケート調査結果(一次情報)をもとにまとめています。
【調査概要】
・調査名:発達障害の特性に応じた支援方策調査
・調査対象:児童発達支援士の受講かつ、発達障害のある子どもを支援する保護者・支援者
・有効回答数:66名
・調査方法:Webアンケート
・調査実施日:2022 年7 月21 日~ 2025 年9 月2 日
・調査主体:一般社団法人 人間力認定協会
・調査報告書URL:https://ninkyou.jp/library/
① 環境調整・安全確保(実施率47%)
癇癪時の最優先事項は、安全を確保し、刺激を減らすことです。
人や物から距離を取る
静かな別室や落ち着ける場所へ移動する
危険がない限り、無理に止めようとしない
具体例
人が多い場所でパニックになった際、まずは抱えて静かな場所へ移動し、落ち着くまで背中をさすりながら待ちました。
② 感情受容・共感(実施率39.4%)
癇癪の背景には、強い感情があります。
その感情を否定せず、言葉にして受け止めることが大切です。
気持ちを代弁する(「やりたかったんだね」)
否定せず肯定する
「お話ししたかったんだよね」とフォローする
具体例
怒りの根っこにある「悔しい」「悲しい」という感情を汲み取り、「悔しかったね」と声をかけました。
③ 具体的な指導(実施率34.8%)
落ち着いてから、行動を振り返り、次につながる関わりを行います。
「どうしてそうなったのか」を一緒に振り返る
物を投げてはいけない理由を説明する
言葉での伝え方や代替行動を教える
具体例
本人が落ち着いてから、「次はこうしよう」と具体的な代わりの行動を約束しました。
④ 冷静対応・静観(実施率25.8%)
感情的に反応せず、状況が悪化しないよう待つ対応です。
状況変化がないか静観する
反応すると逆効果な場合はあえて無視する
一度リセットする提案をする
具体例
大声を出しても要求が通らないことを示すため、危険がない限り静かになるまで待ちました。
⑤ スキンシップ(実施率18.2%)
安心感を与え、生理的な興奮を鎮める方法です。
※触られることを嫌がる子には無理に行いません。
好きなクッションを抱きしめる
毛布にくるまる
優しく手を握る
具体例
「ごめんね、大丈夫だよ」と声をかけながら抱きしめると、徐々に力が抜けていきました。
⑥ 予防的対応(実施率18.2%)
癇癪が起きてからではなく、起きにくい環境を整える視点です。
クールダウン用の場所を用意する
クッションなどをすぐ出せるようにする
事前に見通しを伝える
具体例
頭打ちが始まりそうな時、止めるのではなく、事前に用意したクッションを差し出し、衝撃を和らげました。
癇癪対応に役立つ「ABC分析」の考え方

試行錯誤の中で役立つのが、ABC分析という考え方です。
A(Antecedent):行動のきっかけ
B(Behavior):実際の行動
C(Consequence):行動の結果
問題行動そのものではなく、前後の環境や関わりを調整することで、行動を減らしていく方法です。
大切なのは「正解を探さないこと」
同じ発達障害であっても、子ども一人ひとり特性は異なります。
王道の対応が合う子もいれば、合わない子もいます。
大切なのは、「うまくいかなかった=失敗」ではなく、次に活かすための経験と捉えることです。
まとめ
癇癪は「困った行動」ではなく「困っているサイン」
まずは安全確保と環境調整
気持ちを受け止めてから関わる
予防と振り返りが長期的な支援につながる
忙しい中でも、子どものために向き合おうとする姿勢そのものが、すでに大きな支援です。
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