結論
宿題を始められない原因は「怠け」ではなく、脳の特性による“開始の困難さ”であることがほとんどです。
支援のポイントは、
叱って行動を変えさせようとすること
ではなく、「始めやすい環境」と「最初の一歩を小さくする工夫」を用意だといえるでしょう。
なぜ発達障害の子どもは宿題を始められないのか?
① 実行機能の弱さ
発達障害(ASD・ADHDなど)のある子どもは、
何から始めるか決める
行動を切り替える
見通しを立てる
といった実行機能が弱い傾向があります。「宿題をやりなさい」と言われても、どこから?どれくらい?いつ終わる? が分からず、脳がフリーズしてしまうのです。
実行機能とは、目標達成のために考えたり、動いたり、感情を調整したり抑えたりする機能のことです。発達支援の世界でワーキングメモリというキーワードをよく耳にしますが、ワーキングメモリも実行機能のひとつだといえます。
② 課題の“重さ”を実際以上に感じている
大人が思う「プリント1枚」と、子どもが感じる「宿題1枚」は同じではありません。
量が多く感じる
終わりが見えない
失敗体験がよみがえる
これらが重なり、手を付ける前から疲れてしまうことも少なくありません。
失敗体験を繰り返している子ほど、「宿題=大変なこと」という意識が強くなっていくため、早い段階で適切な支援をすることが望ましいのです。
③ 感覚過敏・注意の向きやすさの問題
周囲の音が気になる
椅子の感触が不快
目に入るものすべてが気になる
など、環境刺激の多さが「始められない」原因になることもあります。
感覚過敏ではない人からすると、感覚過敏の人の気持ちは非常に理解しづらいかもしれません。そのため「え?このくらい全然うるさくないよ。言い訳してないで早くやりなさい」という気持ちや言葉が出てきてしまうかもしれません。
宿題を始められない時の具体的な支援方法
支援①:「宿題」ではなく「最初の一手」を提示する
×「早く宿題やりなさい」
〇「この1問だけ一緒に読もう」
“やる”ではなく“ここをする”まで具体化することが重要です。
支援②:スモールステップでタスクを小さく分ける
発達支援の大切な考え方である「スモールステップ」を意識しましょう。
プリント1枚 → ①名前を書く → ②1問目だけ
ドリル2ページ → 1ページの半分だけ
「できた!」「もう終わった!」を多く経験させることが、次の行動につながります。
支援③:始める時間を決め、終わりも見せる
タイマーを5分だけセット
「5分やったら休憩」と明確に伝える
長時間やらせる必要はありません。
始められた成功体験の方がはるかに価値があります。
「あと何分」と言われてもイメージができない子もいます。そのような場合は「残り時間が視覚的にわかるタイマー」を選ぶと良いでしょう。

支援④:環境を整える
テレビ・タブレットは視界に入れない
宿題に必要なものだけ机に出す
場所を固定する(毎回同じ席)
意志の力に頼らず、環境で行動を支えるのがコツです。もし可能であれば「勉強はこの部屋(この場所)」と決められるとよりよいでしょう。環境調整をすることで、勉強のスイッチが入りやすくなります。
支援⑤:できた事実だけをフィードバックする
×「もっと早くできたでしょ」
〇「今、自分から座れたね」
評価ではなく事実を伝えることで、行動は安定していきます。
やってはいけないNG対応
他の子と比べる
「やる気がない」と決めつける
できない理由を問い詰める
感情的に叱る
- 柔軟さがなく常に強制する
これらは、宿題そのものへの拒否感を強めるだけです。マイナスのイメージを付けさせればつけさせるほど、宿題をスムーズに実行することが難しくなります。保護者や支援者の方も、一時的な感情に負けず、適切なアプローチを心がける必要があります。
それでも難しい場合は?
家庭での工夫だけでは難しい場合、
学校との調整(量・提出方法)
通級指導教室
専門家によるアセスメント
など、環境側を変える支援も重要です。「家で何とかする」必要はありません。実際に普通級から通級または特別支援学級に移動した結果、学習がスムーズになったという保護者からの声を聴いたことがあります。個人差はありますし、重大な決断でもありますので、一つの参考になれば幸いです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 声かけをしないと、いつまでたっても宿題を始めません。大丈夫でしょうか?
A. 多くの発達障害のある子どもにとって、最初のうちは「声かけ=支援」です。自立を急ぐよりも、「始められた経験」「できた経験」を積み重ねることが大切です。環境や手順が安定すると、徐々に声かけは減らせます。
Q2. 宿題をやらせないもしくは減らすという選択はアリですか?
A. 一時的に量や内容を調整することは、決して逃げではありません。宿題が強いストレスになっている場合、学習意欲や自己肯定感を守る視点も重要です。学校と相談し、柔軟な対応を検討しましょう。ただし見極めは非常に重要ですので、子どもの一時の言葉や感情だけを判断材料にしないように注意しましょう。
Q3. 毎回付き添わないとできません。甘やかしになりますか?
A. なりません。支援とは「できない部分を補うこと」です。付き添いは、将来的な自立に向けた“足場かけ”と考えるとよいでしょう。その中で、自立に向けたアプローチを次の段階として考えていきましょう。
Q4. 宿題中に癇癪やパニックになる場合はどうすればいいですか?
A. 癇癪は「やりたくない」ではなく「限界」のサインであることが多いです。無理に続けさせず、一度中断し、課題量や環境を見直すことが必要です。何に対して「癇癪」が起こっているかを冷静に見極めましょう。
Q5. 支援級や通級を利用していても、家庭での対応は必要ですか?
A. はい。学校での支援と家庭での関わりがつながることで、子どもは安心して取り組めます。家庭では「できた体験」を重視する役割を担うとよいでしょう。
まとめ
発達障害の子どもが宿題を始められないのは、努力不足でも、甘えでもありません。
始めやすくする
小さく区切る
環境で支える
この3点を意識することで、「宿題=苦痛」から「やれた経験」へと変えていくことができます。やれた経験が「自己肯定感の向上」に繋がり、自信をもって日々を明るく過ごすことができるようになります。プラスのサイクルに乗せてあげられるよう、様々な工夫を施していきましょう。
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