傾聴とは?「聞く」との違いと三原則|職場や家庭ですぐ使える言い換え例文

後輩から相談されて、最後までちゃんと聞いたつもりだった。それなのに相手は途中で黙ってしまい、「もう大丈夫です」と話を切り上げられた。家でも子どもの話を聞いているうちに、気づけばお説教になっている。

力になりたいと思って聞いていたからこそ、もどかしさが残りますよね。話を聴くことが大事だとは、よく言われます。けれど、ただ黙って聞いていることと何が違うのか分からないまま、傾聴という言葉を調べた方も多いと思います。

実は、相手が話すのをやめてしまうのは、聞く側の思いやりが足りないからではありません。多くの場合は、相手を思って返した助言や励ましが、相手の気持ちより先に届いてしまうことが原因です。傾聴は心理学のカウンセリングから生まれた聴き方の技術なので、やり方を知れば今日の会話から変えられます。

この記事では、厚生労働省の「こころの耳」と看護学の学会の説明をもとに傾聴の意味と三原則を整理し、「聞く」との違いや職場・家庭ですぐ使える言い換えの例を紹介します。

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傾聴とは相手の気持ちを理解しようとして聴くこと

傾聴(けいちょう)とは、相手の話を良い悪いで評価せずに、相手がいま何を感じているのかを理解しようとして聴くことです。文字どおり耳を傾けて聴くことですが、ただ黙って聞いていることとは違います。

看護の学会(日本看護科学学会)の用語集では、傾聴を「相手に関心をもって、相手の話に注意深く耳を傾けること」と説明しています。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」も用語解説で「相手の話に関心を持ち、感情を受け止め、共感的かつ真摯な態度で聴くこと」としています。

2つの説明に共通しているのは、聴く側の関心が「話の中身が正しいかどうか」ではなく、「話している相手そのもの」に向いていることです。

心理学ではロジャーズの来談者中心療法から生まれた考え方

傾聴とあわせて「積極的傾聴(Active Listening)」という言葉もよく使われます。こころの耳によると、積極的傾聴は米国の心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズが提唱したものです。

ロジャーズは、答えを与えるのは聴く側ではなく、話す本人だと考えた心理学者です。相談に来た人が自分の気持ちに気づき、自分で答えを見つけていく力を信じて支える方法は「来談者中心療法(クライエント中心療法)」と呼ばれ、いまのカウンセリングの土台になっています。傾聴は、その中心にある聴き方です。

日本では、職場のメンタルヘルス、とくに管理職の研修で広く使われてきました。看護の分野でも、傾聴は相手に共感し受容するための最初のステップであり、信頼関係を築くための大切な行為とされています。傾聴だけで相手の悩みが解決したり、病気が治ったりするわけではありません。相手が安心して話せる関係の入り口をつくる聴き方、と考えると実際に近くなります。

心理学をもう少し体系的に学べる資格を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

>心理学資格一覧【2026最新】大学に行かずに仕事や生活に活きる資格の選び方

傾聴の三原則とは?聴く側に大切な3つの態度

傾聴の三原則 共感的理解・無条件の肯定的関心・自己一致の図

ロジャーズは、自分がカウンセリングを行った多くの事例を分析し、うまくいった事例に共通していた聴く側の要素を3つ挙げました。こころの耳はこれを「ロジャーズの3原則」として紹介しています。一般に「傾聴の三原則」と呼ばれているのも、この3つです。

1. 共感的理解|相手の立場から気持ちを理解しようとする

1つ目は共感的理解です。こころの耳は「相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする」態度と説明しています。

ここでいう共感は、相手と同じ気持ちになることとは少し違います。共感は同情とは違い、自分を入れ込みすぎないものとされています。相手の悲しみに一緒に飲み込まれるのではなく、「この人はいま、こう感じているのだな」と理解しようとする位置に立つのが共感です。

2. 無条件の肯定的関心|善悪や好き嫌いの評価を入れずに聴く

2つ目は無条件の肯定的関心です。こころの耳は、相手の話を善悪や好き嫌いで評価せずに聴き、なぜそう考えるようになったのかという背景に関心を持つことだと説明しています。そうすることで、話し手は安心して話ができます。

評価をはさまずに受け止めることは、相手の考えや行動のすべてに賛成することとは別です。「そう感じているんだね」と受け止めることと、「その通りだね」と同意することは分けて考えます。

3. 自己一致|分からないことは分からないと確かめる

3つ目は自己一致です。こころの耳は、話が分かりにくいときはそのことを伝えて真意を確かめることだとし、分からないことをそのままにしておくのは自己一致に反すると書いています。

相づちを打って最後まで聞くことだけが傾聴だと考えると、分かったふりをしてしまいがちです。「いまのところ、もう少し聞かせてもらってもいい?」と確かめることも、傾聴の大切な一部です。

3つをまとめると「相手の立場から気持ちを理解する」「評価をはさまずに聴く」「分からないところは確かめる」ということになります。

「聞く」と「聴く」は何が違う?ついやってしまう3つの返し方

「聞く」と「聴く」はどちらも「きく」ですが、傾聴では「聴く」の字が使われます。こころの耳の用語解説には、傾聴は「十四の心と耳を使う」と例えられることもある、という一文があります。耳だけでなく心も使って聴くことを表した例えです。

日常の「聞く」は、話を受け取ってすぐに答えや意見を返すところまでが一続きになっていることが多いものです。傾聴の「聴く」は、その返す部分をいったん脇に置きます。相手を思うからこそ、ついやってしまう返し方を3つ紹介します。

1. すぐに助言してしまう

「それならこうしたらいいよ」と、答えを先に渡してしまう返し方です。こころの耳が紹介している傾聴の練習では、意見を求められてもアドバイスや意見をしないことが聴き手の条件になっています。アドバイスを始めると、聴き手と話し手の立場が逆転してしまうからです。

2. 正しいかどうかを評価してしまう

「それはそっちも悪いよ」「考えすぎだよ」と、話の中身に良い悪いをつける返し方です。積極的傾聴は相手を指導したり評価したりする聞き方ではなく、言葉の中身に反応するより先に相手の感情に応える聴き方です。

3. 話題を自分の話にすり替えてしまう

「わかる、私のときもね」と、いつの間にか自分の経験の話になっている返し方です。こころの耳の練習では、別の話題に誘導しないことと、質問ばかり繰り返さないことも聴き手の条件に挙げられています。相手が話したいことより、聴く側が話したいことや知りたいことが前に出てしまうからです。

傾聴で大切なことを1つに絞るなら、相手が話したいことを話しきれるまで、聴く側が自分の評価や助言をいったん待つことです。

ほかにも、相談を受けたときによかれと思ってやりがちな関わり方を、こちらの記事で紹介しています。

>カウンセラーがやってはいけないこととは?善意の関わりが逆効果になる7つの理由

今日から使える傾聴のやり方5つのコツ

傾聴のやり方 今日から使える5つのコツの図

では、実際の会話ではどう聴けばよいのでしょうか。カウンセリングの基本として学ぶ聴き方から、日常の会話にそのまま取り入れやすいものを5つ紹介します。

1. 体と視線を相手に向ける

スマホやパソコンの手を止めて、体ごと相手のほうを向きます。正面から見つめ続けると緊張させることもあるので、少し斜めに座ったり、ときどき視線を外したりするくらいがちょうどよい距離です。

2. うなずきと相づちで相手のペースに合わせる

「うん」「そうなんだ」と、相手の話す速さに合わせてうなずきます。相づちは、話の続きを促す合図です。急いで次の質問をするより、少し間をおいて相手が言葉を探す時間を待つほうが、話は深まりやすくなります。

3. 相手の言葉をそのまま繰り返す

相手が「もう疲れちゃって」と言ったら、「疲れちゃったんだね」と、相手の言葉をそのまま返します。自分の言葉に置き換えずに返すことで、ちゃんと受け取ったことが相手に伝わります。

4. 気持ちを言葉にして返す

話の中身だけでなく、その奥にある気持ちを短く言葉にして返します。「同じミスが続いて、気持ちが休まらないんだね」のように返すと、相手は自分の気持ちを整理しやすくなります。外れていたら、相手が言い直してくれます。それも自己一致の確かめ合いです。

5. 答えが1つに決まらない質問をする

「それでどうしたの?」「どんなところで迷ってる?」のように、はい・いいえで終わらない質問をすると、相手は自分の言葉で話を続けられます。ただし、質問は1つずつにして、答えるかどうかは相手に任せます。「どうして?」と理由を問う言い方は、責めているように聞こえることがあるので注意が必要です。

職場や家庭で使える傾聴の言い換え例文

いちばん取り入れやすいのは、相手の言葉への返し方を変えることです。つい返しがちな言葉と、聴く側に回る返し方を場面ごとに並べました。例文はいずれも当協会が作成したもので、決まった正解の型ではなく、言い方を考えるときの手がかりとして使ってください。

職場で相談を受けるとき

相手の言葉つい返しがちな言葉聴く側に回る返し方
また同じミスをしてしまって次から気をつければ大丈夫だよ続くと気持ちが休まらないよね。何があったか聞かせて
この仕事、向いてないのかもしれませんそんなことないよ、頑張ってるじゃない向いてないのかもって思うくらい、しんどいんだね

職場では、相談を受ける側が評価する立場にいることも少なくありません。こころの耳は、上司が聴き上手になれば部下は相談しやすくなり、早めの対応につながることを積極的傾聴の研修の目的に挙げています。立場が上だからこそ、評価をはさまずに聴く姿勢が相手の話しやすさを左右します。

>ラインケアとは|上司がやることと、やらなくていいこと

家族や子どもの話を聞くとき

相手の言葉つい返しがちな言葉聴く側に回る返し方
もう仕事に行きたくないみんな我慢してるんだから行きたくないと思うくらい、しんどいんだね
学校に行きたくないどうして?理由を言ってごらんそう思ってるんだね。話してくれてありがとう

家族の話ほど、心配が先に立って答えを急ぎがちです。学校で子どもの支援に関わりながら学んだ方からは、わが子との関わりについてこんな声が届いています。

(前略)我が子にも通じることで、なぜそうなってしまうのか、何に困り感をもっているのか、一緒に考えて気持ちを聞けるようになったのは、すごく大きいことだと感じています。(後略)(40代)

理由を問いただすのではなく、何に困っているのかを一緒に考えながら気持ちを聞く。表の子どもの例で、「どうして?」と問う代わりに気持ちを受け止めて返したのと同じ向きの関わり方です。

看護や介護の場面で

相手の言葉つい返しがちな言葉聴く側に回る返し方
昔は何でも自分でできたのに今でも十分できていますよ何でも自分でできていたころのこと、聞かせてもらえますか

看護の分野でも、患者との信頼関係をつくるうえで積極的傾聴の態度がもっとも大切だとされています。「今でもできていますよ」と打ち消す前に、その人が話したいことに耳を傾けると、相手が話の続きを自分で選べるようになります。

傾聴がうまくいかないときや聴く側が疲れたとき

うまくいかないときは1回の会話で1つだけ試す

傾聴は、読んで分かることと、会話の中で実際にできることの間に差が出やすい聴き方です。こころの耳が紹介している研修でも、4〜6人のグループで話し手と聴き手に分かれ、実際の話を約15分聴く練習をくり返して身につけていきます。

グループで練習する機会がなくても、日常の会話で1つずつ試すことはできます。今日は「すぐに助言しない」、明日は「話題を変えない」というように1回の会話で1つだけ意識してみると、自分が普段どこで口をはさんでいるのかが見えてきます。

聴く側が疲れたら自分の話も聴いてもらう

人の話を聴き続けることは、聴く側にも負担がかかります。共感が同情と違って自分を過度に投入しないことを含むのは、聴き続けるための距離でもあります。聴く側が疲れないために、次のことを意識してみてください。

  • 聴く時間と場所を決める(「今日は30分、ここで聴くね」など)
  • 自分にできるのは聴くことまで、と線を引く。病気の診断や治療は医師の仕事です
  • 受け止めきれないと感じたら、そのことを正直に伝える(自己一致)
  • 自分の気持ちも、誰かに聴いてもらう

相手の落ち込みが長く続いていたり、眠れない・食べられない様子があったりするときは、聴くことだけで支えようとせず医療機関への相談を勧めてください。働く人の悩みは、こころの耳の相談窓口で電話・SNS・メールで相談できます。聴いている側が相談してもかまいません。

傾聴をきちんと学ぶなら

傾聴は、心理カウンセラーの講座の多くで最初に学ぶ基本の姿勢です。独学でもコツはつかめます。ただ、なぜその聴き方が相手を楽にするのかを心理学や心の不調の知識と合わせて学ぶと、相手や場面が変わっても応用がききます。

カウンセリングの考え方では、傾聴と並んで、出来事と気持ちの間にある考え方のくせに気づく認知行動療法もよく使われます。

>認知行動療法とは|まず出来事と気持ちの間にある考えに気づきます

心理カウンセラーの資格を目的別に比べたい方や、傾聴を名前にした資格を知りたい方は、こちらの記事が参考になります。

>心理カウンセラー資格一覧【2026年版】どれがいい?目的別に民間資格を比較

>【2026最新版】傾聴の資格10選を紹介!あなたに合うおすすめ資格を目的と費用で紹介

メンタルヘルス支援士について

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢に加えて心の不調の基礎や大人の発達障害、認知行動療法を順を追って学べる民間資格です。テキストと同じ内容をスマホでも学べ、試験も自宅から受けられます。

受講後のアンケートでは、回答した248人のうち247人が「受講してよかった」と答えています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス部門で第2位に選ばれました。

>メンタルヘルス支援士の詳細について

傾聴に関するよくある質問(Q&A)

Q1:傾聴とは簡単に言うと何ですか?

相手の話を評価せずに、相手がいま何を感じているのかを理解しようとして聴くことです。ただ黙って聞くことではなく、分からないところを確かめることも含みます。心理学者カール・ロジャーズが提唱した積極的傾聴がもとになっています。

Q2:傾聴の三原則とは何ですか?

ロジャーズが挙げた、聴く側の3つの態度のことです。相手の立場から気持ちを理解しようとする共感的理解、善悪や好き嫌いの評価を入れずに聴く無条件の肯定的関心、分からないところを確かめる自己一致の3つです。

Q3:傾聴の練習は1人でもできますか?

研修ではグループで話し手と聴き手に分かれて練習するのが基本ですが、日常の会話でも試せます。「すぐに助言しない」「話題を変えない」「質問ばかり重ねない」の3つを、1回の会話で1つずつ意識してみると、自分の聴き方のくせが見えてきます。

まとめ

  • 傾聴とは、相手の話を評価せずに、相手が何を感じているのかを理解しようとして聴くこと
  • 心理学者ロジャーズの来談者中心療法から生まれ、いまのカウンセリングの土台になっている
  • 三原則は、共感的理解・無条件の肯定的関心・自己一致
  • 「聞く」との違いは、助言・評価・自分の話へのすり替えをいったん脇に置けるかどうか
  • やり方は、体を向ける・うなずく・繰り返す・気持ちを言葉にする・答えが1つに決まらない質問をする、の5つ
  • 聴く側が疲れたら、自分の話も聴いてもらう

返す言葉を1つ変えるだけでも、相手の話し方は変わっていきます。次に誰かに相談されたら、答えを渡す前に「そう感じているんだね」と受け止めるところから始めてみてください。

【注意事項】

この記事で紹介している受講者の声は、当協会が実施したメンタルヘルス支援士の受講後アンケート(2025年3月〜2026年8月・248件)によるものです。傾聴の説明は、厚生労働省「こころの耳」と公益社団法人日本看護科学学会「JANSpedia」の内容を2026年10月22日に確認してまとめています。本記事は診断・治療を目的としたものではありません。傾聴は話を聴く姿勢であり、病気を治す方法ではありません。気になる症状がある場合は、医師や専門機関にご相談ください。

参考・相談先

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