認知行動療法とは|まず出来事と気持ちの間にある考えに気づきます

落ち込んだときに「認知行動療法がよい」と聞いた。カウンセリングや本で名前を見かけた。けれど、実際に何をするものなのか、考え方を変えるとはどういうことなのかは、説明を読んでもつかみにくいと感じている方が多いと思います。

先に答えをお伝えします。認知行動療法は、ものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけて、気持ちを楽にしていく精神療法(心理療法)の一種です。出発点は、出来事があったときに瞬間的にうかぶ考え、「自動思考」に気づくことにあります。

考え方を無理に変えようとするものではありません。自分がどんなふうに受け取っているかに気づくと、ほかの見方を探す余地が生まれます。

たとえば、

  • 8問のクイズで、認知行動療法の基本を確かめる
  • 自動思考とスキーマ(こころの法則)とは何か
  • 厚生労働省の資料で紹介されている7つの考え方のくせ
  • 医療機関で受けるときの保険診療と、自分で試すときの注意

といった内容です。

この記事では、国立精神・神経医療研究センターと厚生労働省の資料をもとに、認知行動療法とは何かを整理していきます。治療の代わりになるものではありません。

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まず8問で認知行動療法の基本を確かめてみてください

解説を読む前に、今知っていることを確かめてみましょう。答えると正解と解説がすぐに表示され、最後に間違えた分野だけをまとめて見られます。

認知行動療法の基礎知識クイズ(全8問)
国立精神・神経医療研究センターと厚生労働省の資料をもとに、当協会が作成した8問です。答え合わせのあと、間違えたところの解説だけを読めます。
1 / 8 ホームワーク
国立精神・神経医療研究センターは、認知行動療法の効果を上げるために何が不可欠だと説明していますか?
この8問は、国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター、厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」、同省の令和8年度診療報酬改定の資料をもとに、当協会が本記事のために作成したものです。資格試験の問題ではありません。

このクイズは、あなたの考え方を評価したり、心の状態を判定したりするものではありません。仕組みを知るための答え合わせです。気分の落ち込みや不安が続いている場合は、正解の数にかかわらず、医療機関や相談窓口に相談してください。

認知行動療法は考え方に働きかける精神療法です

国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターは、認知療法・認知行動療法を「認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種」と説明しています。ここでいう認知とは、ものの受け取り方や考え方のことです。

同センターの説明では、私たちはストレスを感じると悲観的に考えがちになり、問題を解決できないこころの状態に自分を追い込んでいくとされています。たとえば、仕事で一度注意を受けただけなのに「自分はこの仕事に向いていない」と考え、気持ちが沈み、次の仕事に手がつかなくなる。そうした悪循環です。

認知行動療法では、この悪循環の中で気持ちが大きく動揺したりつらくなったりしたときに頭に浮かんでいた考えに目を向けます。その考えが現実とどのくらい合っているかを確かめながら、問題に対処しやすい考え方や行動を一緒に探していきます。

同センターによると、認知行動療法は欧米で、うつ病、パニック障害・社交不安障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・強迫性障害などの不安障害、不眠症、摂食障害、統合失調症など、多くの精神疾患に効果があることが実証され、広く使われるようになってきました。

もう一つの特徴は、面接の時間だけで完結しないことです。同センターは、効果を上げるためには面接の場面はもちろん、ホームワークを用いて日常生活のなかで行うことが不可欠だと説明しています。話を聞いてもらうだけでなく、日々の出来事と考えを自分で書き出し、確かめていく作業が含まれます。

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出来事と気持ちの間には自動思考があります

出来事と気持ちの間には自動思考があります

厚生労働省の「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」では、自動思考を「何かの出来事があった時に瞬間的にうかぶ考えやイメージ」と説明しています。

たとえば、廊下ですれ違った同僚にあいさつをしたのに、返事がなかったとします。このとき「嫌われたのかもしれない」と思えば、気持ちは沈みます。「急いでいて気づかなかったのだろう」と思えば、それほど気になりません。同じ出来事でも、瞬間的にうかんだ考えによって、気持ちも、そのあとの行動も変わります。

自動思考は、じっくり考えて出した結論ではなく、意識しないうちにうかぶものです。そのため、つらい気持ちになったときに「何を考えていたか」を尋ねられても、すぐには答えにくいことがあります。認知行動療法では、まず気持ちが動いた場面で、どんな考えがうかんでいたかに気づくところから始めます。

自動思考の奥には、その人なりの考え方や行動のパターンがあると考えられています。同じ資料では、これをスキーマと呼び、「こころの法則」という言葉で説明しています。「人に迷惑をかけてはいけない」「完璧でなければ認められない」といった、これまでの経験の中で身についてきた考え方がその例です。

こうした考え方を持っていること自体が悪いわけではありません。ただ、スキーマが強く働きすぎると、出来事を一つの方向からしか受け取れなくなり、同じような自動思考がくり返しうかびやすくなります。

考え方のくせは7つに分けて説明されています

自動思考には、人それぞれのくせが出やすいとされます。厚生労働省の患者向け資料では、これを「認知のかたより」として、次の7つに分けて説明しています。一般には「認知のゆがみ」と呼ばれることもあります。

  • 感情的きめつけ:証拠もないのにネガティブな結論を引き出しやすい
  • 選択的注目(こころの色眼鏡):良いこともたくさん起こっているのに、ささいなネガティブなことに注意が向く
  • 過度の一般化:わずかな出来事から広い範囲のことを結論づけてしまう
  • 拡大解釈と過小評価:都合の悪いことは大きく、よくできていることは小さく考える
  • 自己非難(個人化):本来自分に関係のない出来事まで自分のせいだと考える
  • 0か100か思考:白黒つけないと気がすまず、非効率なほど完璧を求める
  • 自分で実現してしまう予言:否定的な予測をして行動を制限し、その結果失敗する

読みながら「自分にもある」と感じたものがあったかもしれません。けれど、くせがあること自体は珍しいことではありません。多くの人が、疲れているときや追い詰められているときに、いずれかのくせが強く出ます。一つの考えが、2つ以上のくせに当てはまることもよくあります。

大事なのは、くせに名前をつけて自分を責めることではなく、「今、0か100かで考えていたかもしれない」と一歩引いて気づけるようになることです。気づけると、その考えだけが唯一の見方ではないと思える余地が生まれます。

また、7つのどれに当てはまるかを正確に分類できなくても問題はありません。分類は気づくための手がかりであって、正解を当てる作業ではないからです。

気づいたあとは別の見方を探します

自動思考に気づいたあとは、その考えを確かめていきます。厚生労働省の患者向け資料では、行動活性化、コラム法、問題解決、対人関係の改善といった進め方が紹介されています。

コラム法は、つらい気持ちになった場面を表に書き出して整理する方法です。どんな状況で、どんな気分になり、どんな自動思考がうかんだかを書き、その考えを支える事実と、反対の事実を並べていきます。そのうえで、よりバランスのとれた考え方を探し、気分がどう変わったかを確かめます。

ここで目指すのは、無理に前向きに考えることではありません。「嫌われたに違いない」を「絶対に嫌われていない」に置き換えるのではなく、事実を並べたうえで、ほかにどんな可能性があるかを探すことです。

行動活性化は、気分が落ち込んで何もする気が起きないときに、気持ちが少し楽になる活動や、やりがいを感じられる活動を少しずつ増やしていく方法です。考え方から入るのが難しいときは、行動から入ることもあります。

どの方法も、一度で身につくものではありません。専門家と一緒に何度もくり返しながら、日常の場面で使えるようにしていくものです。

医療機関で受けるときは保険が使える場合があります

認知行動療法は、医療機関で一定の条件のもとに行われる場合、保険診療の対象になります。厚生労働省の令和8年度(2026年度)診療報酬改定の資料では、対象が次のように示されています。

  • うつ病などの気分障害
  • 強迫性障害
  • 社交不安障害
  • パニック障害
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 神経性過食症
  • 不眠症(今回の改定で追加)

同じ資料では、保険診療として行えるのは一連の治療につき16回まで(不眠症に対する治療は8回まで)とされています。医師が行う場合のほか、医師と看護師が共同して行う場合、公認心理師による心理支援を伴う場合の区分があります。

ただし、すべての医療機関で認知行動療法を受けられるわけではありません。受けたい場合は、受診の前に、その医療機関で行っているか、保険の対象になるかを問い合わせておくと安心です。また、カウンセリングルームなど医療機関以外で受ける場合は、保険の対象外になります。

気分の落ち込みが続いているときは、認知行動療法を受けるかどうかを自分で決める前に、まず医療機関で今の状態を相談するところから始めてください。

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自分で試すときに気をつけたいこと

自分で試すときに気をつけたいこと

自動思考に気づく練習は、ノートやスマートフォンのメモでも始められます。気持ちが大きく動いた場面で、いつ・どこで・何があったか、どんな気分になったか、どんな考えがうかんだかを短く書き留めておくだけでも、自分の考え方のくせが見えてくることがあります。

ただし、自分で試すときには気をつけたいことがあります。一つは、気分の落ち込みが強いときに、無理に考えを書き出そうとしないことです。つらい出来事をくり返し思い出すことで、かえって気持ちが沈むことがあります。書くのがつらいと感じたら、いったんやめて休んでください。

もう一つは、考え方のくせを見つけて「だから自分はだめなんだ」と結論づけないことです。それ自体が、自己非難や0か100か思考になってしまいます。くせは誰にでもあるもので、気づけたこと自体が一歩です。

眠れない、食欲がない、朝起き上がれない、仕事や家事が手につかないといった状態が続いている場合は、自分で取り組む前に医療機関に相談してください。認知行動療法は、専門家と一緒に行うことで効果が確かめられてきた方法です。自分で試すことは、その代わりではなく、考え方の仕組みを知る入り口として位置づけておくのがよいと思います。

書き出す方法を試した受講者の声を紹介します

最後に、メンタルヘルス支援士の受講を終えた方のアンケートから、考えを書き出す方法について書かれた声を紹介します。

私事ですが、悩んだ時モヤモヤしたときいろんな対策を調べましたが、参考になっていたことが今思えばセルフリフレーミング日記やアサーションでした。いろいろ書き出して自己分析する方法や回避の仕方間違ってなかったとまた、ちゃんとした研究結果があることがわかりおもしろかったです。

40代の方の回答です。自分で工夫していたことに、学んだあとで名前と裏づけがあると分かったことが書かれています。この記事で紹介した方法も、名前を知ることで、自分がしてきた工夫を振り返る手がかりになるかもしれません。

メンタルヘルス支援士について

ここまで、認知行動療法とは何か、自動思考と7つの考え方のくせ、医療機関で受けるときの保険診療をご紹介してきました。

こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。

>メンタルヘルス支援士の詳細について

Q&A|認知行動療法とは何かに関するよくある質問

Q1:認知行動療法とは簡単に言うとどんなものですか?

国立精神・神経医療研究センターは、ものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけて、気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種と説明しています。出来事があったときにうかぶ考えに気づき、ほかの見方や対処のしかたを探していきます。

Q2:自動思考とは何ですか?

厚生労働省の患者向け資料では、何かの出来事があったときに瞬間的にうかぶ考えやイメージと説明されています。同じ出来事でも、どんな自動思考がうかぶかによって、気持ちやその後の行動が変わります。

Q3:認知のゆがみにはどんな種類がありますか?

厚生労働省の患者向け資料では「認知のかたより」として、感情的きめつけ、選択的注目、過度の一般化、拡大解釈と過小評価、自己非難、0か100か思考、自分で実現してしまう予言の7つが紹介されています。くせがあること自体は珍しいことではありません。

Q4:認知行動療法は保険で受けられますか?

医療機関で一定の条件のもとに行われる場合は保険診療の対象です。令和8年度の改定で、うつ病などの気分障害や不安障害に加えて不眠症が対象になりました。すべての医療機関で行っているわけではないため、受診前に問い合わせると安心です。

Q5:認知行動療法は自分ひとりでもできますか?

気持ちが動いた場面と、そのときの考えを書き留める練習は自分でも始められます。ただし、落ち込みが強いときに無理に書き出すと、かえってつらくなることがあります。状態が続いている場合は、自分で取り組む前に医療機関に相談してください。

まとめ|まず出来事と気持ちの間にある考えに気づくことから

  • 認知行動療法は、ものの受け取り方や考え方に働きかけて気持ちを楽にする精神療法の一種です
  • 出発点は、出来事があったときに瞬間的にうかぶ自動思考に気づくことです
  • 厚生労働省の資料では、考え方のくせが7つの認知のかたよりとして紹介されています
  • 目指すのは無理に前向きになることではなく、事実を並べてほかの見方を探すことです
  • 医療機関では条件のもとで保険が使え、令和8年度から不眠症も対象になりました

本記事で紹介している情報について

項目内容
認知行動療法の説明・効果が示された疾患・ホームワーク国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター「認知療法・認知行動療法とは」
自動思考・スキーマ・認知のかたより・進め方厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」(編集:慶應義塾大学認知行動療法研究会)
保険診療の対象と回数厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」資料
情報の性質一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講後アンケート」より抜粋
データ取得者一般社団法人 人間力認定協会
調査期間2025年3月〜2026年8月
有効回答数248件
設問「共有したいエピソードがありましたらお願いします」
分析方法自由記述の回答を原文のまま引用しています
注意点受講を終えた方の任意回答です。受講を途中でやめた方の声は含まれていません
注意点受講者個人の体験です。認知行動療法の効果を示すものではありません
クイズ上記の資料をもとに当協会が本記事のために作成しました。回答は匿名で記録し、今後の記事の参考にします
確認日2026年9月16日

【注意事項】

この記事は、国立精神・神経医療研究センターと厚生労働省の資料をもとにまとめたものです。心の状態を判定するものではなく、診断・治療を目的としたものではありません。気分の落ち込みや不安、不眠などが続いている場合や、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関や相談窓口にご相談ください。ご自身や周囲の安全に関わる状況では、ためらわず専門の窓口にご連絡ください。

参考・相談先

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