統合失調症の家族に疲れた…見捨てても抱え込んでも苦しむ家族のその後

実家に帰るたびに「誰かに見張られている」と同じ話をくり返される。少し落ち着いたと思ったら薬をやめてしまい、また入院になる。電話口では年をとった母が「もう私ひとりでは無理」とこぼす。

家族なのだから支えなければと思う。それでも心のどこかで「もう関わりたくない」「いっそ見捨ててしまいたい」と考えてしまい、そんな自分にまた落ち込む。そうして誰にも言えない気持ちを抱えている方も多いと思います。

統合失調症は長く付き合っていくことが多い病気です。支える家族の生活も何年も、ときには何十年も病気とともに続いていきます。

そして見捨てても抱え込んでも、家族の苦しさは消えないまま続いていくことがあります。

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統合失調症とはどんな病気?

統合失調症は心や考えがまとまりにくくなる病気です。そのため気分や行動、人との関わりに影響が出てきます。100人に1人くらいがかかるといわれていて、それほど珍しい病気ではありません。10代半ばから30歳ごろまでに始まることが多いとされています。

症状は大きく分けて2つの種類があります。

  • 陽性症状(なかったものが現れる)
    実際にはない声が聞こえる幻聴や、「誰かに見張られている」「悪口を言われている」と思い込む妄想などです。考えがまとまらず、話があちこちに飛ぶこともあります。
  • 陰性症状(あったものが減る)
    やる気が出ない・表情や感情の表現が少なくなる・人と関わるのを避けて閉じこもるといった状態です。周りからは「怠けている」と見えやすい症状です。
統合失調症の2つの症状|陽性症状と陰性症状

治療は薬を使うことが基本で、デイケアでのリハビリなどを組み合わせて進めます。症状が軽くなったからと自分の判断で薬をやめると、再発の危険が高まるとされています。

統合失調症は回復が見込める病気で、長い目で見ると半分以上の人が回復するといわれています。ただその道のりは長く、よくなったり悪くなったりをくり返しながら、家族も一緒に何年も向き合っていくことが少なくありません。

統合失調症の家族に疲れたと感じるよくある5つの場面

統合失調症の家族を支える疲れは外からはなかなか見えません。たとえばこんな場面に心当たりはないでしょうか。

  • 話がかみ合わない
    「隣の人に悪口を言われている」と真剣に訴えられる。否定すれば怒り出し、うなずけば話が大きくなるので、どう返せばいいのか分かりません。
  • 疑いや怒りが自分に向く
    いちばん近くにいる家族が「お前もグルだろう」と疑われる。心配して声をかけただけなのに責められると、こちらの心も削られていきます。
  • 薬をやめたと聞いて身構える
    「もう治ったから」と薬を飲まなくなる。前に悪くなったときのことがよみがえり、気が休まりません。
  • 入退院のたびに振り回される
    入院の手続きや面会、退院後の生活の準備。そのたびに仕事を休んだり予定を変えたりすることになります。
  • 「後はお願いね」と頼られる
    高齢になった親から、これからのことを任されそうになる。自分の家庭や仕事もあるのに、断れずに抱えてしまいます。

こうしたことが何年も続くと、心配する気持ちよりも疲れや怒りのほうが大きくなり、「見捨てたい」という言葉が頭に浮かぶようになります。

「見捨てたい」と思うほど追い詰められても誰にも言えない

Q&Aサイトや掲示板でも「統合失調症の家族を見捨てた人はいますか」「自分の家なのに気をつかってばかりで、自分を押し殺すのも限界」という声を多く目にします。

それでも家族のことは友人にはなかなか話せません。病名を出したらどう思われるかが気になって、親戚にも打ち明けられない。夫に話しても、どこか他人事のように聞こえてしまう。

「もう関わりたくない」という気持ちと「家族なのに」という罪悪感。そのあいだで揺れながら、誰にも言えない気持ちだけが少しずつ積み重なっていきます。

統合失調症の家族を支え続けると家族の側が先に限界を迎えることも

「病気なのだから家族が支えるのは当たり前」と思ってきた方も多いと思います。ですが支える家族の負担は、時間がたつほど重くなっていきます。

支えてきた親も年をとり続けられなくなっていく

若いころは父や母が一手に引き受けていた世話も、親が年をとるにつれて手が回らなくなっていきます。電話の向こうの母の声が前より弱々しく聞こえる。病院の付き添いのたびに、親の足取りが重くなっているのに気づく。

精神疾患のある人の家族の全国調査でも、支えているのは85%が親で、その平均年齢は69歳を超えていました。いつまでも親が支え続けられるわけではないのです。

悪くなるたびに家族の生活まで止まってしまう

夜中に大声を出す。食べない・眠らない日が続く。部屋から出てこなくなる。そのたびに仕事を休み、予定を取り消し、家族みんなが振り回されます。

同じ調査では、本人の病状が悪くなる経験をした家族が93%にのぼりました。ほとんどの家族が一度ならずこうした日々をくぐり抜けているのです。

気づけば支える側の心が先にすり減っている

朝起きた瞬間から今日は何が起きるかと身構える。家の中にいても心が休まらない。そんな毎日を何年も続けていれば、支える側の心がすり減っていくのは自然なことです。

同じ調査では、家族の73.3%が日常的にストレスを感じている状態でした。

親がいなくなったあとのことを考えると眠れなくなる

親がいなくなったら、この先どうなるのか。夜中に何かあったとき、駆けつけるのは自分なのか。そんな心配が頭から離れず、眠れない夜を過ごす家族も多いはずです。

同じ調査で、支える家族がいなくなったときの心配をたずねると、8割近く(79.6%)が「緊急時の対応」を挙げていました。

統合失調症の家族を支える人に起こっていること

※この章の数字は、全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)の全国調査(2017年)によるものです。

見捨てても抱え込んでも苦しむ…同じ立場の家族がたどる3つの道

では、限界を感じた家族はその後どうしているのでしょうか。たどる道は大きく3つに分かれます。

一人で抱え続けた家族は自分の生活と心をすり減らしていく

「家族なのだから」と自分ひとりで支え続ける道です。仕事を減らし、自分の予定を後回しにし、本人の機嫌に合わせて暮らす。そのうちに支える側のほうが眠れない日が増えていきます。

抱え込むほど本人との距離も近くなりすぎて、お互いに気持ちがぶつかりやすくなります。支える側が倒れてしまえば、本人を支える人もいなくなってしまいます。

離れた家族にも罪悪感と心配は残り続ける

家を出る。連絡を絶つ。思い切って距離を置く道を選ぶ家族もいます。一時的には気持ちが楽になっても、「見捨ててしまった」という罪悪感や「今ごろどうしているだろう」という心配は、何年たっても消えないことがあります。

親が支えているあいだは離れていられても、親が倒れたときに急に呼び戻されることもあります。離れることがそのまま苦しさの終わりになるとは限らないのです。

支援を使いながら無理のない距離を取る家族もいます

3つ目は家族だけで抱えず、地域の支援を使いながら距離を取る道です。見捨てるのでも抱え込むのでもなく、支える役目の一部を家族以外に任せていく考え方です。

  • 暮らしの場を家族以外にも持つ
    グループホーム(共同生活援助)では、夜間を中心に住まいでの相談や食事などの生活の手助けを受けられます。一人暮らしの人を定期的に訪ねて相談に乗る自立生活援助という仕組みもあります。
  • 家に来てもらう支援を使う
    精神科の訪問看護では、看護師などが家を訪ねて体調や服薬の様子を見てくれます。家族だけで様子を見守る負担を分けることができます。
  • 家族も相談できる場所を持つ
    保健所や精神保健福祉センターでは、本人が一緒でなくても家族からの相談を受け付けています。同じ立場の家族が集まる家族会もあります。

ただこの道を選ぶにも、病気の特徴や本人との関わり方を知っておく必要があります。仕組みを使いながらも、本人と顔を合わせる時間はなくならないからです。

統合失調症の家族がたどる3つの道

無理のない距離で支えるために今日からできる3つのこと

とはいえ本人の病気をすぐによくすることはできません。そこでここでは、家族の側が少しずつ負担を軽くしていくためにできることを紹介します。

家族だけで抱えない仕組みを今のうちに調べておく

親が元気なうちに、住んでいる地域の保健所や相談支援事業所に一度相談しておくことをおすすめします。どんな支援が使えるのかを知っておくだけでも、「全部を自分が背負う」という思い込みから少し離れられます。

受診をこばんでいる場合の進め方は、次の記事にまとめています。

>【統合失調症の受診拒否】無理やり連れて行くのはNG!家族で進める回復ルート

妄想や疑いの言葉は否定も肯定もせずに受け止める

「見張られている」という話を頭から否定すると、本人は分かってもらえないと感じて身構えてしまいます。かといって話を合わせすぎると、思い込みが強まってしまうこともあります。

そんなときは、話の中身ではなく気持ちに目を向けてみてください。「それは怖いね」「不安だったんだね」と、感じている気持ちだけを受け止めます。それだけで言い争いになる場面を減らせることがあります。

再発のサインを家族で共有しておく

眠れない日が続く。独り言が増える。部屋にこもりがちになる。悪くなる前には小さな変化が出ることがあります。どんな変化が前ぶれだったのかを家族で書き出しておくと、早めに主治医へ相談しやすくなります。家族が外から気づける変化は、次の記事にまとめています。

>統合失調症のチェックリスト|家族が外から気づけるのは6項目だけ

海外の研究をまとめた報告では、家族が病気や関わり方を学ぶ家族向けの支援によって、再発や入院が減る可能性があるとされています。家族が知識を持つことは、本人のためにも、支える自分を守るためにも意味があるのです。

学ぶ方法は一つではありません。家族会の勉強会・自治体の家族教室・心理やメンタルヘルスの講座など、自分の生活に合う形を選べます。

家族を支えながら関わり方を学べるメンタルヘルス支援士

講座で学ぶ形を考えている方に向けて、当協会が認定している資格を紹介します。「メンタルヘルス支援士」は心の不調について順を追って学べる民間資格です。統合失調症などの精神疾患の基礎から、本人との関わり方と支える側の心の守り方までを一緒に学べます。

統合失調症の症状と再発のサインを知ることができる

テキストでは、統合失調症の主な症状や経過、再発を防ぐために家族が気をつけたいことを扱っています。病気の仕組みを知ると、本人の言葉や行動を「わがまま」ではなく症状として受け止めやすくなります。

受講した方からは、身近な人の不調を思い浮かべながら学んだという声も届いています。

周りに関わった大人身内の精神疾患の症状など思い出しながら勉強しました。(40代)

否定も肯定もしない聞き方を練習できる

傾聴を学ぶと妄想や疑いの言葉を向けられたときの構えが変わってきます。話の中身に振り回されずに気持ちを受け止める聞き方は、言い争いを減らす助けになります。

別冊のワークでは、相手を責めずに自分の気持ちを伝えるアサーションも練習できます。「今日はここまでにさせてね」と、無理のない線を引いて伝える助けになります。

罪悪感で自分を追い込む考え方の癖に気づける

認知行動療法では、「見捨てたいと思う私はひどい人間だ」と自分を追い込む考え方の癖に気づき、受け止め方を少しずつ変えていく方法を学べます。

家事や仕事の合間にスマホで学べる

テキストの内容はスマホでも学べるので、通勤の時間や家事の合間に少しずつ進められます。試験もスマホから24時間受けられ、終わるとその場で合否が分かります。平均の受講期間は約2か月です。

受講後のアンケートでは、回答した248人のうち247人が「受講してよかった」と答えています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス部門で第2位に選ばれました。

見捨てるのでも抱え込むのでもなく、無理のない距離で家族と向き合っていきたい。そんな方の学びの一つとして、検討していただけたらうれしいです。

>メンタルヘルス支援士の詳細について

統合失調症の家族に疲れたときによくある質問

Q1:統合失調症の家族を見捨てるのはいけないことですか?

距離を取ることは悪いことではありません。支える側が倒れてしまえば、本人を支えることもできなくなります。ただ急に連絡を絶つと、本人の生活や緊急時の対応が誰にも分からなくなることがあります。距離を取る前に保健所や相談支援事業所に相談して、家族以外の支え手をつくっておくと安心です。

Q2:親が亡くなったあと統合失調症のきょうだいはどうなりますか?

グループホームや訪問看護、自立生活援助など、家族以外が暮らしを支える仕組みがあります。親が元気なうちに、本人も交えて地域の相談支援事業所や保健所に相談し、使える支援を一緒に確かめておくことが大切です。お金の管理や成年後見などの手続きも早めに調べておくと慌てずにすみます。

Q3:家族だけで相談できる場所はありますか?

あります。保健所や精神保健福祉センターでは、本人が一緒でなくても家族からの相談を受け付けています。同じ立場の家族が集まる家族会もあります。うつ病など統合失調症以外の病気の家族を支えている方は、次の記事も参考になります。

>うつ病の家族に疲れた…病気のことを調べても楽にならない本当の理由

まとめ:統合失調症の家族に疲れたときに知っておきたいこと

  • 「見捨てたい」と思うほど追い詰められても、家族のことは誰にも言えずに抱え込みやすい
  • 支えてきた親も年をとり、悪くなるたびに家族の生活が止まり、親がいなくなったあとの心配も消えない
  • 一人で抱え続けても離れても、苦しさが消えないことがある
  • 支援を使いながら無理のない距離を取る道もある
  • 妄想には否定も肯定もせず気持ちを受け止め、再発のサインを家族で共有しておく

家族の病気と長いあいだ向き合ってきた毎日は、本当に大変だったと思います。この記事が見捨てるのでも抱え込むのでもない距離を考えるきっかけになれば幸いです。

【注意事項】

この記事は、厚生労働省「こころもメンテしよう」(統合失調症)、厚生労働省「こころの耳」用語集、全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)の全国調査(2017年・厚生労働省の検討会資料)、厚生労働省「障害福祉サービスの内容」、Pharoah ほか「Family intervention for schizophrenia」(コクラン・レビュー 2010年)、メンタルヘルス支援士の受講後アンケート(有効回答248件・2025年3月〜2026年8月)の一部をもとにまとめています。みんなねっとの調査は家族会の会員を対象にしたもので、回答者の多くは親の立場です。家族向けの支援の効果は、研究の質に限りがあり大きく見積もられている可能性があるとされています。Q&Aサイトや掲示板の声は、内容を変えずに言い換えて紹介しています。

参考・相談先

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