SSTを嫌がる・続かないときは?難易度と声かけの見直し方

「教材を見ながらSSTをやってみたけれど、思っていたように進まない」

「子どもが途中で嫌がってしまう」

「最初は参加していたのに、だんだん続かなくなってきた」

ソーシャルスキルトレーニング(SST)を実践していると、このような場面に出会うことがあります。

教材や動画ではスムーズに進んでいる活動でも、実際の子どもたちを前にすると、その通りにならないことは珍しくありません。

そのときに、

「もっと繰り返し練習させなければ」

「最後まで参加できるようにしなければ」

と考えるだけではなく、活動そのものが現在の子どもに合っているかを見直すことが大切です。

SSTは、決められたプログラムを最後までこなすこと自体が目的ではありません。

この記事では、私たち一般社団法人人間力認定協会のSSTスペシャリスト受講者から寄せられた声や公式教材の内容も踏まえながら、

  • SSTを嫌がるときに確認したいこと
  • SSTが続かないときの考え方
  • 難易度の調整方法
  • 声かけを見直すポイント
  • 一度休む・短くするという選択

について解説します。

SSTスペシャリスト公式サイトはこちら

「教材どおりにいかない」という声は実際にある

私たちが実施しているSSTスペシャリストの受講後アンケートには、実践について次のような声が寄せられています。

「実践がなかなか難しい実習の場が欲しい」

また、別の回答者からは、教材の実践動画について、

「DVDの実践編通りに子供が上手く行くケースはほぼないと言うことを受講者の方がイメージ出来ていればいいなと思いました。」

という意見も寄せられました。

後者の「ほぼない」という表現は、この回答者個人の意見であり、実際の成功率・失敗率を調査した結果ではありません。

また、これらのアンケートは「子どもがSSTを嫌がる理由」を直接調査したものでもありません。

ただ、教材で方法を理解することと、実際の子どもに合わせて支援することは同じではないという、現場での難しさを考えるうえでは重要な声だと思います。

教材や動画はあくまでも実践の見本です。

実際には、子どもの理解度やその日の状態、参加する人数、環境などによって進め方を変える必要があります。

>ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?子ども向けの目的とやり方

SSTを嫌がる・続かないときに確認したい5つのポイント

SSTが予定どおり進まないときは、「本人のやる気」の問題だけにせず、いくつかの視点から確認してみましょう。

確認したいこと見直すポイント調整の例
難易度難しすぎる・簡単すぎる可能性はないか手順や選択肢を減らす/一段階進める
指摘の量間違いをその都度直しすぎていないかまずできた点を伝える
活動時間長すぎて負担になっていないか1活動だけにする/時間を短くする
本人の納得感なぜ行うのか本人に分かっているか日常の困りごとと結びつけて説明する
その日の状態疲れ・体調・環境等の影響はないか別日にする/休む/環境を変える

一つの原因だけで説明しようとせず、どこを変えると参加しやすくなるのかを探していくことが大切です。

①まず「難しすぎないか」を確認する

SSTを嫌がるときに、最初に確認したいことの一つが難易度です。

例えば、会話の練習をするときに、

「相手の話を聞いて、内容を理解して、質問を考えて、その質問を適切な言葉で伝える」

というところまで一度に求めると、子どもによっては負担が大きくなります。

その場合は、

「まずは話す人と聞く人を交代する」

というところだけを練習してもよいでしょう。

できるようになってから、

「相手の話について一つ質問してみる」

という段階へ進みます。

活動を細かく分けることで、

「できない活動」から「取り組める活動」へ変えられることがあります。

②反対に「簡単すぎないか」も確認する

難しすぎる活動だけが問題とは限りません。

すでに十分できることを何度も繰り返している場合、

「またこれ?」

と感じて参加しにくくなることも考えられます。

私たちのSSTスペシャリスト公式教材でも、活動の難易度については、難しすぎる場合だけでなく、簡単すぎる場合についても見直すことを紹介しています。

例えば、自己紹介で名前や好きな食べ物を伝えることに慣れているのであれば、

  • 最近興味があることを加える
  • 相手に一つ質問する
  • 話す内容を自分で選ぶ

など、少しだけ難易度を上げる方法もあります。

「できないから簡単にする」だけではなく、

簡単すぎれば少し広げる、難しければ一段階戻る

という調整が必要です。

>SST教材の選び方|子どもの困りごとに合う活動を選ぶポイント

③間違いを指摘しすぎていないか

支援者として一生懸命になるほど、

「そこは違うよ」
「今はこう言おう」
「相手の顔を見て」
「もう少し大きな声で」

など、たくさんのことを伝えてしまうことがあります。

しかし、一回の活動の中で何度も修正されると、子どもにとってSSTが「間違いを指摘される時間」になってしまう可能性があります。

例えば自己紹介で、

  • 名前を言えた
  • 最後まで話せた
  • カードを確認しながら参加できた

のであれば、まずその部分を確認します。

改善したいことが複数あったとしても、一度にすべてを伝える必要はありません。

「今回は何を練習するのか」を絞ることも重要です。

私たちの公式教材でも、フィードバックでは叱責するのではなく、必要であれば再び見本へ戻るという考え方を扱っています。

④「なぜこれをやるのか」が本人に伝わっているか

支援者には活動の目的が分かっていても、子ども本人には分かっていないことがあります。

例えば支援者が、

「友だちとのコミュニケーションのために、会話のキャッチボールを練習しよう」

と考えていても、本人は現在それを困りごとだと感じていないかもしれません。

そのような場合に、

「必要だからやりなさい」

と続けても、本人が参加する意味を感じにくいことがあります。

活動の目的を伝えるときは、

「友だちと話すときに、話す順番が分からなくなることがあるよね。今日は交代で話す練習をしてみようか」

など、本人が経験している具体的な場面と結びつける方法があります。

ただし、支援者が「困っているはずだ」と決めつけることにも注意が必要です。

本人がどう感じているのかも確認しながら進めます。

発達障害者支援法でも、支援は個々の特性や生活の実態に応じ、意思決定への支援にも配慮して行うことが示されています。

⑤「今日はできない」という日もある

前回できた活動を、今日は嫌がる。

このようなこともあります。

その理由をすべてSSTの内容だけに求める必要はありません。

例えば、

  • 疲れている
  • 眠い
  • 体調がよくない
  • 学校で嫌なことがあった
  • 周囲が騒がしい
  • いつもと予定が違う

など、その日の状態や環境が影響している可能性もあります。

一度うまくいかなかったからといって、

「この子にはこのSSTができない」

と判断する必要もありません。

反対に、

「前回できたから今日もできるはず」

と考える必要もありません。

その日の状態を見ることも、個別に支援するうえで大切な情報です。

「最後までやる」にこだわらなくてもよい

活動を始めると、

「せっかく始めたのだから最後までやろう」

と思うことがあります。

しかし、子どもの負担が大きくなっているのであれば、途中で終えることも選択肢です。

例えば、予定では3つの活動をするつもりだったとしても、

「今日は1つできたから、ここまでにしよう」

としても構いません。

あるいは、

「今日は5分だけ」

と短くすることもできます。

活動時間を短くすることは、SSTを諦めることではありません。

むしろ、無理なく参加できる条件を探すための調整と考えることができます。

一度休むという選択もある

SSTを続けていると、

「休んだら元に戻ってしまうのではないか」

「継続しないと意味がないのではないか」

と心配になることもあるかもしれません。

しかし、本人が強く嫌がっている場合や、活動自体が大きな負担になっている場合には、一度休むことも検討できます。

私たちの公式教材でも、本人にとって活動の必要性が変わった場合には、本人と話し合いながら頻度や進め方を再検討する考え方を紹介しています。

大切なのは、

「予定していたから続ける」のではなく、「現在もこの活動が本人にとって必要なのか」を確認することです。

短期的な結果を急がず、改めて活動を選び直すこともあります。

「嫌がる=SSTが嫌い」とは限らない

SSTの途中で子どもが席を離れたり、

「やりたくない」

と言ったりした場合、

「この子はSSTが嫌いなんだ」

と考えてしまうことがあります。

しかし、その一回の行動だけで理由を決めることはできません。

例えば、

  • 活動内容が難しい
  • 説明が分からない
  • 待ち時間が長い
  • 人前で行うことが不安
  • 周囲の刺激が負担
  • 何度も指摘されることが嫌
  • その活動の必要性を感じていない

など、さまざまな可能性があります。

だからこそ、

「なぜ嫌がったのか」

をすぐに決めるのではなく、

「どの場面から参加しにくくなったのか」

を振り返ることが重要です。

>小学生向けSSTの活動例|小集団での進め方と難易度の調整

声かけを「できなかった指摘」から「次のヒント」に変える

例えば、SSTで相手の話を待つ練習をしていて、子どもが途中で話してしまったとします。

そのとき、

「話しちゃダメだよ」
「また待てなかったね」

という言葉だけでは、次にどうすればよいのか分かりにくいことがあります。

それよりも、

「今は○○さんが話す番だね。終わったら次はあなたの番だよ」

と、次に何をすればよいのかが分かる言葉に変えます。

あるいは、言葉だけで難しい場合は、

  • 「話す人」のカードを置く
  • 順番を見えるようにする
  • ボールを持っている人が話す

といった方法も考えられます。

声かけだけで解決しようとせず、活動自体を分かりやすくすることも大切です。

うまくいかないときは「本人」ではなく「条件」も見る

SSTが進まないと、

「集中力がない」
「やる気がない」
「コミュニケーションが苦手だから」

というように、本人の特性だけに理由を求めてしまうことがあります。

しかし、見直せるものは本人だけではありません。

  • 課題の難易度
  • 説明方法
  • 支援者の声かけ
  • 活動時間
  • 人数
  • 待ち時間
  • 周囲の刺激
  • 活動の目的

など、支援する側が変えられる条件もたくさんあります。

文部科学省の自立活動でも、児童生徒一人ひとりの障害の状態や発達段階などを把握したうえで、指導目標・内容を設定する考え方が示されています。

「できないことをどう直すか」だけでなく、

「どうすれば参加しやすくなるか」

という視点を持つことが重要です。

SSTを見直すときの簡単な振り返り例

活動がうまくいかなかったときは、次のように振り返ってみてもよいでしょう。

実施前

  • 今日の活動の目的は何だったか
  • 本人に目的は伝わっていたか
  • 難易度は適切だったか

実施中

  • どの場面までは参加できていたか
  • どこから負担が大きくなったか
  • 支援者はどのような声かけをしたか
  • 周囲の環境に気になることはなかったか

実施後

  • できたことは何だったか
  • 次回減らせることはないか
  • 見本や視覚的な手がかりを増やした方がよいか
  • 同じ活動を続ける必要があるか

「できた・できなかった」だけを記録するよりも、

どのような条件なら取り組みやすかったのか

を残しておくと、次の支援へつなげやすくなります。

それでも続けにくい場合は、活動そのものを変えてよい

難易度や時間を調整しても、本人がなかなか参加できないことがあります。

その場合には、

「この活動を何とか成功させる」

ことだけにこだわらず、別の活動を検討してもよいでしょう。

同じスキルを練習する方法は、一つとは限りません。

例えば人前で自己紹介をすることに大きな負担を感じるのであれば、

最初は支援者と一対一で行う、

カードを見ながら行う、

本人が話す項目を減らす、

といった方法も考えられます。

それでも合わなければ、現在の目標自体を見直すこともあります。

教材を最後まで実施することより、本人に必要な支援を考えることを優先する。

これはSSTを実践するうえで忘れたくない視点です。

まとめ|SSTがうまくいかないときは「続け方」を変えてみる

SSTを実践していて、

「嫌がる」
「続かない」
「教材どおりにならない」

ということがあっても、それだけでSSTそのものが合わないと判断する必要はありません。

まずは、

  1. 難しすぎないか
  2. 簡単すぎないか
  3. 指摘が多くなっていないか
  4. 本人に活動の目的が伝わっているか
  5. 時間が長すぎないか
  6. その日の状態や環境に負担がないか

などを確認してみてください。

そのうえで、

  • 短くする
  • 簡単にする
  • 一度に求めることを減らす
  • 見本に戻る
  • 声かけを変える
  • 別の活動にする
  • 一度休む

といった調整ができます。

SSTの目的は、子どもを教材どおりに動かすことではありません。

子どもの様子を見ながら、その子にとって取り組みやすい方法を探していくことが大切です。

私たち一般社団法人人間力認定協会の「SSTスペシャリスト」では、SSTの基本的な考え方だけでなく、30種類の実践ワークや実践動画を通して、実際の活動の進め方について学べるようにしています。

「SSTについて学んだけれど、実際にどう進めればよいのか分からない」

「子どもの様子に合わせて活動を調整する考え方を学びたい」

という方は、SSTスペシャリストの講座内容も参考にしていただければと思います。

SSTスペシャリスト公式サイトはこちら

参考資料

  • 厚生労働省「発達障害者支援法」
  • 文部科学省「特別支援学校学習指導要領 自立活動」
  • 一般社団法人 人間力認定協会『SSTスペシャリスト公式テキスト 第2版』
  • 一般社団法人 人間力認定協会「SSTスペシャリスト受講後アンケート」
一般社団法人 人間力認定協会 代表理事 井上智之

執筆者

一般社団法人 人間力認定協会 代表理事
井上 智之

【プロフィール】
一般社団法人 人間力認定協会 代表理事の井上 智之。30年にわたる教室運営を通して、多くの子ども・保護者・教育関係者と向き合う。比較や不安、教育現場の課題を目の当たりにし、一般社団法人 人間力認定協会を設立。現在は発達障害の療育・支援法の研究開発と情報発信に取り組み、「理解は支援の第一歩」を理念に、一人ひとりに合った支援と社会理解の普及を目指している。また、当協会では発達支援や心理に関する知識を体系的に学べる「児童発達支援士」「メンタルヘルス支援士」などの資格講座を提供しており、これまでに延べ5万名以上の方が受講している。

最新情報をチェックしよう!