今回の記事では、当協会の「障害」と「子供」という言葉の表記についてお話をさせて頂きます。これまでも何度も協議してきた点だったのですが、この度方向性が明確になったので、皆様にご報告をさせて頂きます。
障害or障がい、子供or子ども
「障害の害という字を使うのは良くない!」という事は、皆様も一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか?また「子供の供という字は、お供え物という意味があり良くない!」という事もよく耳にするでしょう。実際に保育の現場では「障がい」「子ども」という表記で統一されています。しかし行政はまちまちで自治体によって表現は異なります。また発達障害と診断がくだる際も病院では「障害」という表記が基本となります。
当協会にも受講者から「障害という表記に違和感を感じました」というお声を頂いたことがありました。そこで当協会内でも話し合いを行い表記を統一させることとなりました。どのように統一したのかについては、この後説明させていただきますが、私どもの基本的な考え方を先に紹介をさせて頂きます。
表記を変えることが重要なのではない
障害という文字を障がいとしたところで、支援の輪が拡がるわけではありません。またそれだけで偏見や差別がおさまることもありません。そのことは皆様ご理解いただいていると思いますが、この点を強く意識しておく必要があると思うのです。そうでなければ、過度な「言葉狩り」になりかねません。そして「障害」「子供」という表記を使う会社やサービスを「悪」と捉える風潮になり、そこからそういう団体やサービスに偏見や差別をすることに繋がります。本質が何も変わっていないことがわかりますよね。
また障害の害という字も、子供の供という字も、漢字の持つ語原や意味合いに賛否があり使わないほうがよいという風潮になっているのですが、他の漢字の語源もすべて理解されて利用されているのでしょうか?そうではないでしょう。では何故この害と供という字だけが注目されているのでしょうか?ちょっと不思議ですよね。
ちなみに「児童」という表記は現在はなにも問題視されていませんよね。国も「児童福祉法」「児童手当」「児童館」というように当たり前のように「童」という文字を使っています。当協会の資格名も「児童発達支援士」という名称で「児童」と表記しています。しかしこの「童」という文字の語源をご存じでしょうか?実は前述した「害」や「供」よりも更に残酷な語原があると言われています。(諸説あり)
「童」という漢字の由来は、辛いという「辛」と「目」と重いという「重」の字が組み合わさって出来た会意形成文字になります。「辛」という文字は、入れ墨を入れる為の針から出来た象形文字です。重いという「重」の字は、重い袋を表す象形文字になります。そのことから、目の上に入れ墨をされて重い袋を背負わされた奴隷を意味する「童」という漢字が出来たということです。そこから派生して、未成年者や児童を意味するようになりました。漢字の成り立ちから考えると、今使われている意味とまったくかけ離れた恐ろしい漢字だとも言えるでしょう。
この説が100%正しいかはわかりません。しかし、古文などからこういった解釈をされている方もいるのです。となると、「児童」という表記は気軽に使えるものではないはずなのです。
でも全く問題になっていませんし、議論にもなっていません。そういう意味で漢字の表記をどうするかという事は本質とは異なるという点を理解しておく必要があるでしょう。
また「障がい」と表記をする団体やサービスが全て「良いもの」とも限りません。世論に合わせ表記だけはそのようにしていても、内実はまったく支援の心を持っていない団体も出てくるかもしれません。「○○が正しい」と強く思うことは、盲目になることに繋がりかねないので注意が必要でしょう。
当協会のスタンスは
上記のことをしっかりと念頭に入れたうえで、当協会としても対応を決定いたしいました。
まず「子供」に関しては、全て「子ども」に表記を統一いたします。本質は上記のようなものであっても、「子供」と表記させることで嫌な気持ちになる方がいるのであれば、それは改善するに越したことはないと判断いたしました。せっかく発達支援の勉強をしようと思ったのに、表記が原因で気持ちが削がれてしまうというのは勿体ないことです。私たちの目的は「支援の輪を拡げること」その目的を達成させるために「子ども」という表記に統一しています。
次に「障害」という言葉に関しては、状況によって障害と障がいを使い分けることになりました。
- 障がい=人を指す場合はこちらを使用
- 障害=それ以外はこちらを使用
このような使い分けとなります。わかりやすく言いますと「障害者」「障害児」のように人を直接的に指す場合は「障がい者」「障がい児」という表記にして、それ以外は「障害」という言葉を使うことになります。やはり当事者の保護者は自分の子に「害」という字に嫌悪感があります。その点には配慮をすべきだと判断しました。
しかし、水泳選手の一ノ瀬メイさんがインタビューで答えたこの言葉を皆様も心に刻んで欲しいのです。
私に言わせれば右腕が短いのが障害ではなく、短い右腕で生きていく社会に障害が潜んでいる。障害は本人でなく社会の方なので、ひらがなにして消さないでもらいたい(水泳選手・一ノ瀬メイ)
この一ノ瀬さんの考え方は当協会の考え方と非常に近いものがあります。私たちも発達障がい児に問題があるのではなく、その個性を理解せず受け入れられない社会に問題があると考えています。だからこそ「理解は支援の第一歩」を合言葉にしています。社会の理解が進めば、発達障がい児であっても幸せに暮らすことができるはずなのです。
このようなことから「障害」の「害」の字を完全に消すことはせず残すことにしました。しかし、当事者を指す言葉に「害」を使うと、保護者が不快な思いをされる可能性がある。そういった点を考慮し、「障がい者」「障がい児」という表記と「発達障害」「学習障害」という表記を混在させることにいたしました。
現在発行(2021/11/28)しているテキストは修正を加えたものになります。WEBページも随時修正を行っております。(過去の投稿分は未修正)
私たちが今回、漢字表記を見直した理由は「世論に合わせるため」ではなく、「より多くの方が気持ちよく学習でき、結果支援の輪が拡がるように」という目的です。
【まとめ】当協会の「発達障害」と「子供」という表記について
以上で当協会の「発達障害」と「子供」という表記についてという記事を終わりにします。
私どもとしてはこのように対応をさせて頂きましたが、皆様方や他の団体がどういった表記を使っていたとしても、それを否定するようなことは致しません。考え方は様々です。しかしこのような議論が持ち上がるという事は、発達障害についての認識が広く普及し始めている兆候だと言えますので、悪いことではないでしょう。
発達障害のことを理解してくれる人が増えれば、発達障がい児の未来はより明るく素敵なものになる可能性が高まっていきます!皆で支援の輪を拡げていきましょう!