2021年11月6日に5回目となる意見交換会を実施いたしました。今回の記事では意見交換会報告として議題に上がったお話をいくつかご紹介いたします。
≪過去の意見交換会記事≫
>第四回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
>第三回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
>第二回 意見交換会の実施報告 発達障害支援の輪を拡げよう!
>第一回 児童発達支援士を受講された方との意見交換会実施報告
当協会の意見交換会の特徴
私どもは、毎月児童発達支援士を受講されている方、発達障害コミュニケーションサポーターを受講されている方を対象に「意見交換会」を行っています。
よくあるセミナーとは全く形式や目的が異なります。意見交換会というくらいですから、こちらが一方的にお話しするのではなく、支援士同士の話し合いといったイメージとなります。といってもただのフリートークにしてしまうと、盛り上がる時とそうではない時、話せる人と話せない人という不平等感が発生してしまうため、アナウンサーの坂本さんに進行をお願いしております。規律がありながらも、自由に感じたことを話せる場、承認される空気が醸成された場となっているため、毎回とても中身の濃い会となっています。
ただし、このような形式で行っているため、1回にご参加いただける最大人数は20名としています。当協会より招待メールをランダムで送らせていただいており、招待メールを受け取った方の中から希望者20名が参加するという形となっています。児童発達支援士と発達障害コミュニケーションサポーターを合わせるとすでに7000名を越える方が受講いただいておりますので、当選確率はかなり低いことがわかるでしょう。
また意見交換会は、水曜日開催と土曜日開催としています。それぞれ集まる方に下記のような特徴があります。
- 水曜開催=主婦・育児を終え独立した方or独立を考えている方
- 土曜開催=保育士・教員・療育施設等の教育関係者
ある程度、集まる方の特徴が重なるため、更に中身が濃くリアリティのあるお話が出来ているのが特徴です。自分と全く関係ないような話が続くという事が少ないので、皆さんの満足度も総じて高くなっています。
私どもが意見交換会を実施する理由
意見交換会を実施する理由にはいくつかありますが、大きなものは下記の2つです。
- 理解が支援の第一歩であるため
- 支援士の心のよりどころになるため
ひとつめの理解が支援の第一歩という考え方は、当協会の理念でもあります。「発達障がい児を大きく変えようとするよりも、発達障がい児を取り巻く環境を変えることがより重要である」この考えのもと活動しています。そのためより多くの方に、より多くの理解をして頂きたい。これが一つの理由です。
もう一つの理由は、支援士のケアのためです。支援士も一人の人間です。落ち込んだり、元気が無くなったりすることもあります。でも、目の前には発達障がい児がいる。そうなると自分のケアは後にして、目の前の子どものケアに集中することとなります。このような状況が続くと、支援士のパワーが落ち、適切な支援を施せなくなります。すると子どもたちは苦しむことになっていくでしょう。こうして悪循環が始まるのです。
支援士が意見交換会に参加することで、思いのたけを吐き出す、共感してもらえる、承認してもらうことで心のパワーを補ってもらいたい。それが子どもへの支援にもプラスに働くはずです。好循環の始まりのきっかけの場になれば幸いです。
今回の意見交換会の学び
前置きが少し長くなってしまいました。失礼しました。ここからは今回の意見交換会での学びをお伝えします。あまり長くなってもいけませんので2つだけに絞りご紹介します。
(保育士の立場)保護者に伝える際にどう伝えるのがよいのか?
これは保育士をされている方から出たお話です。園での様子を保護者にどのように伝えれば良いのか。どのように言えば保護者を傷つけずに伝えることができるのか。という議題でした。これに対し保育士をされている他の2名の方にお答えいただいたのですが、絶対的な「こういう対応が正解!」というものはないというのがお二人共通のお答えでした。発達障害であることをすでに受け入れられている保護者なのか、そうでない方なのか、それともグレーゾーンの状態なのかということでも対応は変わります。さらには保護者の性格的な部分も当然関与してきます。
そのため明確な答えを出そうにも出しようはなく、それこそ模索していくことが何より重要だと考えます。逆に「これが答え!」としてしまう方が危うさがあると言えます。
私も過去3万人以上の子どもたちを見てきて、保護者とも沢山お話をしてきました。その中でとても重要だと感じることは伝える側も「当事者意識を持つ」ことだと感じます。もう少し違う表現をすると、保護者であるお母様お父様と同じような意識をもってお話をするべきだという事です。
その意識を忘れ、あくまでも外部の人間として、第三者としての意見を言われると、どのような内容であってもそこに感情のずれが生じてしまうものではないでしょうか。しかし話の内容はどうであれ、同じ目線で同じ立場で話をしてくれると、心はホッとするはずです。支援をするという行為はこういうことだと考えます。
そしてこのような行為を子どもたちも求めているのではないでしょうか?お母さんお父さんに正論を言われるのではなく、同じ目線で楽しんでくれる、わかってくれるという姿勢を欲している子どもは多いでしょう。この行為は、子どもを一人の人間として認める行為であり、尊敬する行為でもあります。保護者や支援士のこの姿勢が子どもの自己肯定感を育てていくのです。
想像以上に沢山ある「あいまいな表現」
これはアスペルガーの特性を持つ娘様をお持ちの方から出たお話です。アスペルガーの特性として「あいまいな表現」が苦手というものがあります。娘様もその特性があったようです。一般的なあいまいな表現というと下記のような言葉を思い浮かべるのではないでしょうか?
- あれ、これ、それ
- ちょっとだけ
- もう少し
- もっと
このような言葉。当然これらはあいまいな表現なのですが、実は想像している以上に他にもあいまいな表現があります。この方のお話で出た表現がこちら。
「人前では裸になってはいけないよ」
このような言葉を幼い子に投げかけることもあるでしょう。この言葉のどこがあいまいか分かりますか。「人前」という表現ですね。道路で人がいるところが「人前」という事は理解できても、温泉でたくさんの人がいる時に裸になることも「人前」じゃないの?と疑問に感じてしまうのです。また、テレビコマーシャルなどで赤ちゃんが裸で映っているシーンはOKなのに、芸人さんなどが裸になることは当然NGとなる。こういった部分があいまいと感じ、理解が出来ないのです。
あと学校のテストでもこのようなことがあったそうです。理科のテストで「○○を外で行った場合にどうなるでしょう?」という問題が出題された時に「外」という事に対してあいまいさを感じてしまい問題が解けなかったという事があったそうです。「外」といっても、天気の良い日の校庭なのか、雨の日の校庭なのか、はたまた体育館裏の日陰のことなのか。こういった部分が理解できない。そうなると当然テストの結果も良い点数にはなりずらくなってしまいます。でもこれは頭の良しあしとは全く別の問題でもあるわけです。
このように、保護者や支援士が思っている「あいまい」と、当事者が感じている「あいまい」には差があるということがよくわかりました。まずは「差がある」ということを理解することが非常に重要です。この記事をもし学校の先生が見てくれていたら、テストでの表現方法を変えてくれるかもしれませんね。その輪が広がることを強く願います。
少し余談ですが、この娘さんに、ひとつひとつその都度説明を繰り返していった結果、現在では一般的な「あいまい」に対して理解が出来るようになったという事です。理解できないことがあったとしても質問するスキルが身に付いたことで、対処ができるようになったと言います。素晴らしいですね!発達障害を治すのではなく、対処法をしっかりと身に付けさせ、将来自立していけるように支援をされて来たことが伝わってきます。
【まとめ】第五回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
これで今回の意見交換会の実施報告は終わりとなります。
来月の予定は決まり次第、招待メールを随時発送させていただきます。メールを受け取った方は是非ご参加ください。きっと沢山の学びや気づきがあることでしょう。ひとりで抱え込まないで、仲間と共有することできっと心が楽になります。
皆様と意見交換できる日を楽しみにしております。最後までご覧いただきましてありがとうございました。