第六回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告

先日第六回目となる意見交換会を実施いたしましたので、その報告をさせて頂きます。今回もとても充実した会となりました。参加いただいた皆様、ありがとうございました。

≪過去の意見交換会記事≫
>第五回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
>第四回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
>第三回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告
>第二回 意見交換会の実施報告 発達障害支援の輪を拡げよう!
>第一回 児童発達支援士を受講された方との意見交換会実施報告

今回の参加者の特徴

今回は、保育士・教職員の方が約半数、もう残り半数が発達障がい児の保護者となりました。ここまで綺麗に分かれることも珍しいかと思います。しかしそのおかげでとても中身の濃い話し合いとなったと思います。保護者から保育士の方への質問、逆に保育士から保護者への質問が見られ、皆様が日々どのような点に着目されているのか、疑問を感じているのかがわかったのではないでしょうか。

私ども協会の考え方のひとつに「物事の多面性を知る」ことが重要だというものがあります。

これはいじめを防ぐためにも非常に重要な考え方だと捉えています。どういうことかと言いますと、例えば、犬が大好きな子がいたとします。その子からすると「犬なんて大嫌い」という子の考えは理解できないと思うでしょう。それが「あんなに可愛い犬を嫌いだなんて○○さんはおかしい」となり、いじめや差別に繋がっていくのです。しかし、大人になればわかると思いますが、自分が見ている世界はとても狭く、偏見に満ち満ちているのです。コロナ禍なのに外食する人の気持ちがわからない、子どもが小さいのに家において外出するなんておかしい、上司であれば部下の責任を取るのは当たり前だ、今どき家事を女性だけがやるなんて絶対におかしい、このような考えは全て個人の考えであり、絶対的真実とは言えません。この考え方をしていると、回りから仲の良い人や理解者がどんどん減っていくことになるでしょう。

そこで重要なのが「物事の多面性を知る」ことなのです。物事には必ず多面性があります。犬にも、可愛い、癒される、臭い、怖いというように様々な面があるのです。自分の思考とは異なる面を見ることで他者の考え方を理解することができたり、共感することができるようになります。

この意見交換会でも、さまざまな職種や立場、年齢の方が参加されます。そのため自然と「自分とは異なる考え方」の意見を耳にします。そうやって半ば強制的にでも「物事の多面性を知る」ことできっと新たな気づきが得られると思います。今回もそういった気づきがきっとあったことでしょう。

少なくとも私には沢山の気づきと刺激がありました。ありがとうございました。

今回の意見交換会の学び

前置きが少し長くなってしまいました。失礼しました。ここからは今回の意見交換会での学びをお伝えします。あまり長くなってもいけませんので3つだけに絞りご紹介します。

保育園ではどのように発達障がい児ケアを行っているのですか?

この質問は保護者様から、保育園の園長様にされた質問となります。保育園には保育士の資質向上という努力義務があり、その中で発達障害についても触れられているようですが、そこで保育園では具体的にどのようなことをされているのかという質問がありました。この質問をきっかけに、保育士さんの葛藤が垣間見えましたのでその部分をご紹介します。

保育園の園長様はまず、発達障がい児と言っても子どもたちひとりひとり特性や個性が違うので、診断名が欲しいわけではないとハッキリと仰いました。確かにその通りです。定型発達児もそうであるように、子どもたちは十人十色です。そのため診断名があるないが重要ではないという考え方はよくわかります。

しかし、そのうえで保育園が行政から求められていることの多さと現場での現状が乖離していることに苦しんでいるというお話がありました。2歳半の子に関しては、10人で2名の保育士がつくようになっているようですが、その中に外部刺激に過剰に反応する子がいると、輪からずれて一人でどっかに行ってしまう。そうするとその子に1人の先生がついていくことになるため、9人を1人で観なければいけない。しかし残された9人の中にも発達の凸凹があるので、見切れないことがある。これが現状だと。それにもかかわらず、事件や事故を起こさぬよう細心の注意も払わなければいけない。さらには資質向上という努力義務まで課せられていて非常に大変な想いをされているとのことでした。

さらに、保護者の中には発達障害ということを受け入れることが難しい方も多く、その子が園での集団生活がうまくいかないことを園の責任だと思われる方もいらっしゃる。

また発達障害の診断は個別に行われるため、診断はパスでき定型発達と言われた子でも、集団生活になると問題行動が目立つ場合もあります。しかし定型発達と診断を受けているためその後の対応が非常に難しくなる場合があるとのことです。

このように、さまざまな矛盾や苦労があることがわかりました。これらはほんの一例だと思われます。保育士の皆様はこういった苦労と向き合いながら多くの子どもたちのケアをしてくださっていると知ることができました。近年はコロナ禍ということで、さらに大変さが増していることが想像できます。「物事の多面性を知る」ことで、皆さまの言動に優しさや思いやりが増すことを祈ります。

入園面接で抱いた不信感・・・

次のお話は保護者から頂いたお話です。現在年少のお子様を、幼稚園に入る前のプレから入れており、週に3回ほど通園をさせていたようです。何事もなく1年経過し、年少の入園面接にいったところ、面接時の5分間の様子から、別室に呼ばれ「発達が遅れている」と言われたということでした。その時に強い不信感を抱いたとのことです。

この方のお気持ちよくわかります。発達が遅れていると言われたことがショックという事ではなく、1年間プレで通っていて何も言われることがなかったのに、入園面接のたった5分間で疑いをかけるとはどういうこと?!ということです。面接は大人でも緊張します。それが3歳に満たない小さな子が、大人にいろいろ質問されて緊張でパニックになってしまう。そのような事は十分にあり得ることでしょう。もし発達の遅れを危惧するのであっても、別室によび少し子どもの様子が落ち着いた状態で、再度診断をしてくれればよいものの、そういった配慮もなかったという事。

このお話は、保育士の皆様へのメッセージになったことでしょう。保護者がどういう気持ちになるのか。どの部分の対応がまずかったのかがよくわかるケーススタディとなったはずです。

シンガポールで体感した多様性

次のお話はシンガポール在住の方からのお話です。自閉症のお子様が学習教室の看板を興味深げに見ていた所、学習教室の先生に「体験をしていきなよ!」と誘われたそうです。しかし、まだ英語も話せないし、日本語での意志疎通もスムーズではないので、躊躇していたそうですが、その先生の勢いに負け体験をすることになったそうです。しかし少しやり取りをしていた時に先生から

「この子何かあるよね?」

と言われたそうです。そこでお母様は「実は自閉症で・・・」と伝えたところ返ってきた返事は、

「そうか!OK~!」

と。そのまま体験レッスンにお子様は向かったそうです。

この時にお母様は先生から「自閉症の子はうちでは対応できない」と言われることを想像したそうですが、あっけらかんとした「OK~」という対応に驚いたようです。そして障害のことを特別視しない風潮を強く感じ、日本とシンガポールの違いを感じたと言います。シンガポールは多民族国家です。シンガポール人以外にも中国人、日本人、マレー人、インド人など多種多様な人種がいる国です。一方日本は単一民族国家といわれる95%以上が日本人という国です。

シンガポールは多様性が当たり前の国ですが、日本は単一性が当たり前の国。そういった点で発達障がい児に対する対応や考え方が根本的に違うのです。私たちが伝える「理解は支援の第一歩」が通じるのは日本などの単一民族国家だけでしょう。シンガポールでこのようなことを言っても「そんなの当たり前だよ」という話だと思います。

現時点では、日本は多様性の面では遅れていると言わざるを得ません。しかし、シンガポールのように多様性が当たり前の社会になれば、発達障がい児もその保護者ももっと明るく前向きに生活できるということです。そういった意味で課題はありますが、発達障がい児の未来がとても明るく感じるエピソードでもありました。子どもを変えるのではない。子どもをとりまく環境を変えることが重要だと再認識しました。

【まとめ】第六回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告

以上で、今回のまとめ記事を終わりにしたいと思います。

当記事では、実際の意見交換会の内容を個人情報の観点から一部編集し紹介をしております。実際にはもっと具体的なお話があがっており、学ぶ点が更に多くありました。

今後もこのような学びを得られるよう機会を創出してまいりますので、是非皆様もご都合がつきましたらご参加ください。

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