【協会監修】学習障害(LD)診断テスト|6歳・7歳・8歳向けチェックリスト

発達障害というと、自閉スペクトラム症・ADHD・学習障害(LD)という3つをイメージされる方も多いことでしょう。自閉スペクトラム症やADHDに関する情報や資料はかなり多くありますが、学習障害に関する情報は、比較するとあまり多くはありません。しかし、現代では小学生の中に数%の学習障がい児がいると言われています。そこで今回は、6歳、7歳、8歳を目安に確認しておきたいチェックリストについてまとめていきます。

※あくまでも目安としてこのチェックリストをご活用ください。正式な診断は医療機関にてお願いします

協会監修の診断テスト

インターネットで「学習障害 チェックリスト」と検索すると、たくさんの情報が表示され、どれを見たらよいか分からなくなったり、情報を見れば見るほど不安になったりすることでしょう。

現在、日本の病院や保健センターにおいて、発達障害の診断を行う際には、基本的に、DSM-5かICD-10という診断基準を元にしています。発達障害の診断をするためには、さまざまな心理検査を行いますが、最終的に診断基準となるのはこの2つです。診断をするのは医師であり、心理検査の結果の数字だけで決めるわけでもありません。

この記事では、DSM-5のチェックリストを紹介していきます。

DSM-5はアメリカ精神医学会が発表しているものとなり、世界中に普及しています。十分な信頼性があると言えるでしょう。さらに発達障害の資格を認定し、累計3万名以上の受講者がいる当協会が監修した記事となるので、安心してご覧いただけます。

※あくまでも目安としてこのチェックリストをご活用ください。正式な診断は医療機関にてお願いします

外部リンク>アメリカ精神医学会の公式サイト(英語)

学習障害(LD)以外の発達障害である、自閉スペクトラム症やADHDの診断基準については、下記ページにて紹介しておりますので、あわせてご確認ください。

関連記事>ADHD・自閉症診断テスト|子ども発達障害チェックリスト

学習障害(LD)の診断テスト

学習障害とは限局性学習症ともいわれており、英語表記ではLDと表記されています。学習障害の診断基準を見ると特徴が見えてきますので、先に学習障害の診断基準をご紹介していきます。ここで紹介している診断基準は世界的基準であるDSM-5の診断基準です。

【学習障害(LD)の診断テスト】

A. 学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1 つが存在し、少なくとも6カ月間持続していることで明らかになる。

1. 不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例: 単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)

2. 読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例: 文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)

3. 綴字の困難さ(例: 母音や子音を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)

4. 書字表出の困難さ(例: 文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)

5. 数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ

6. 数学的推論の困難さ(例: 定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)

B. 欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17 歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。

C. 学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に重い学業的負荷)

D. 学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または神経疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。

「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル(原著:American Psychiatric Association)」より引用

診断基準を更にわかりやすく

DSM-5による診断基準は、日本の病院でも利用されているものなので信頼性はあるのですが、慣れていないと少しわかりにくい部分もあると思います。そこでここからはDSM-5をよりかみ砕いた表現で解説していきます。

まず学習障害の定義から見ていきましょう。「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すもの」と定義づけられています。

まず大切なのは「知的発達に遅れはない」という事を認識しておきましょう。次に「聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する」の何れかの能力に限って、習得や使用が困難な場合に学習障害と言われるのです。学習障害は限局性学習症ともいわれると冒頭で紹介しましたが、少し意味合いがわかりますね。全ての能力に困難があるのではなく、限られた能力だけに困難が見える。それが学習障害と言われるものです。

これらを大きく分けて3つのタイプにまとめてみます。

  • 読字障害(読みの困難・障害)
  • 書字表出障害(書きの困難・障害)
  • 算数障害(算数、推論の困難・障害)

それぞれディスレキシア(ディスレクシア)、ディスグラフィア、ディスカリキュリアなどといった英語表記もあります。この3つのうちどれか当てはまるかな?と考えると分かりやすいかもしれません。ただし細かな特性は個人差があり、上記3つに綺麗に分けられないケースもあることは認識しておきましょう。

下記のチェックリストを見て頂く、お子様の行動をひとつずつ照らし合わせながらセルフチェックすることができます。

[簡易]6歳、7歳、8歳時点での学習障害診断テスト

※前提として、ここで紹介する傾向が6カ月以上継続して見られているか確認してください※

  • 文字の形が似ていると区別がつかない「わ」と「れ」、「め」「ぬ」など
  • 読み飛ばしが著しく多かったり、スムーズに読めない
  • 読むときに過度に緊張している
  • 文字としての認識は難しいが、音としての認識なら可能
  • 文章を読んでいるときに、どこを読んでいるか分からなくなることが多い
  • 文字を所定の枠内におさめて書くことが難しい
  • 黒板の板書をするのに時間がかかる
  • 文字のバランスをとることが難しい
  • 促音や拗音を正しく理解できていない
  • 数字の認識ができない、数字の規則性が理解できない
  • 他の教科に比べて極端に苦手な教科がある
  • 「+、-、×、÷」の記号が理解できない
  • 繰り上がり、繰り下がりの計算ができない

他にも細かなものはありますが、大まかにはこのくらいのチェックリストで十分傾向が見えてくるでしょう。チェックをする際には、先ほども紹介した3つのタイプを思い出してください。

  • 読字障害(読みの困難・障害)
  • 書字表出障害(書きの困難・障害)
  • 算数障害(算数、推論の困難・障害)

ここに照らし合わせることで、学習障害に該当するものなのかそうではないかがわかると思います。

ただしこちらはあくまで簡易的なものなので、参考程度に留めてください。間違っても自身で勝手に診断を下すことはお勧めしません。

グレーゾーンとは

学習障害(LD)の傾向は認められるものの、診断基準に満たない場合は「グレーゾーン」と言われることがあります。ただしグレーゾーンというのは通称であり、正式な診断名というわけではありません。にもかかわらず「グレーゾーン」という名称によって、子どもの自己肯定感を傷つけてしまうケースがあるため、グレーゾーンという表現を避けるべきという意見もあります。

さらに明確に診断がついていないがために、支援を受けにくいケースもあるため、保護者としても苦しい思いをされることがあるようです。

その為、診断名があるないにかかわらず、子どもの特性に合わせた対応が求められると言えるでしょう。あらわれる特性は学習障害(LD)やADHDなど発達障害の特性の一部が現れるため、発達障害の知識を身に付けておくことで、柔軟に対応ができるようになるでしょう。グレーゾーン特有の特性はこれ!といったものはありません。正しい理解で、適切な支援を行っていきましょう。

学習障がい児の苦悩

セルフチェック診断には難しさがあると言われています。なぜかというと、いわゆる「優等生」であっても、話す部分に学習障害の特性が出ているような場合は、「あの子は本当によくできる優秀な子。でも人見知りで話すのは苦手なのよ」というように、あまり大きな問題に上がってこないことがあるのです。または「国語はすっごい得意なのに、なぜか算数だけは全然だめで」というのも発達障害の特徴が出ていると考えることができるのですが、この程度で病院に行くという事はあまりないでしょう。

そのため自閉スペクトラム症やADHDと比べても、学習障害(LD)と診断されている人は少ないと言えるのです。しかし、だからといって、それで問題ないかと言われればそれは違います。

人によっては診断があった方が楽になる人もいます。少し表現を変えると、その子を取り巻く周りの大人の意識を変えるためにも診断がついた方が良い場合があります。それはどういう時かというと、保護者が勉学に力を入れている場合に多いと言えます。その子が計算することに困難さ(障害)を抱えているのに、根性論で計算ドリルばかりずっと取り組ませてしまっては、その子は苦しくてたまらないでしょう。学習障害の子が計算ができないというのは、障害なので根性論だけでどうにかなるものではありません。私たちに置き換えれば数学者が解いているような難解な問題のドリルを毎日やれと言われているようなもので、やろうと思ってもどうしたらいいか分からない。苦しい。嫌だ!勉強なんて大嫌い!こう思うことでしょう。

なかなか他者に理解されないのが学習障害の特徴のひとつだと感じています。理解されない障害を持っている事は本当につらいことです。「理解は支援の第一歩」これは私ども人間力認定協会の合言葉です。理解をすることが支援の第一歩であるというシンプルな言葉です。理解できないところに、怖さが残り人は差別や偏見をして自分から遠ざけようとします。しかし、自分が一度でもその当事者になり「理解」が進めば、その後差別や偏見はしなくなるでしょう。子どもたちのいじめの構図はまさにこれです。

だからこそ今回学習障害の診断テストを用意しました。今から紹介するものは小学校に上がるタイミングの6歳、7歳、8歳をひとつの目安にしたリストです。学習障害は小学校の勉強が始まるタイミングで、特性が見え始めると言われていますので参考にしてください。

関連記事>自閉スペクトラム症積極奇異型の93%、ADHDの84%がいじめを受けた!?

著名人にも多い読み書き障害(ディスレキシア)

学習障害のひとつである読み書き障害(ディスレキシア)であると、公表している著名人は案外多いものです。以下にその中でも著名な方を列挙します。

  • トム・クルーズ(俳優)
  • オーランド・ブルーム(俳優)
  • キアヌ・リーヴス(俳優)
  • スティーブン・スピルバーグ(映画監督)
  • ジェニファー・アニストン(女優)

このように欧米の方を中心に名前が挙がっています。ここで少し疑問がでてきます。「日本人はいないの?」という事です。ネットで「ディスレキシア 日本人 有名人」と検索してあまり出てきません。これは日本人はディスレキシアを発症しにくいという事ではありません。どちらかというと文化的な問題が大きいと言えます。例えば、欧米に比べ日本ではそこまでディスレキシアについて知られていないという点が挙げられます。発達障害というと真っ先に浮かぶのが「自閉症」と「ADHD」でしょう。この2つはここ数年で一気に広まった印象はあります。しかし学習障害はまだ認知がされているとは言えません。そして学習障害の中のひとつである、ディスレキシアはさらに認知が遅れていると言えるでしょう。そういった背景もあり、日本人の著名人は名前が上がってこないと言えそうです。

そしてもうひとつの可能性として「日本では障害を公表しにくい文化がある」のではないでしょうか。ディスレキシアを公表するとデメリットが多くなってしまう。そのため公表しないという方も多いのかなと考えます。日本は諸外国と違い、単一民族国家です。そのため多様性を認めるという風土がまだまだ未熟だと言われています。実は、障がい者に対する差別意識が日本人は強いとも言われているのです。最近では著名人の方でも、発達障害を公表する方が少しずつ増えてきましたので、この流れは広まって欲しいと願います。

芸能人の倉持由香さんはお子様が発達障害であることを公表しております。その後、倉持さんはお子さんへの理解を深めるために、児童発達支援士を取得されたとYahooニュースで紹介されていました。このように障害を認めたうえで、どのようにすれば子どもが幸せに生きていけるかを学ぶ姿勢が拡がっていくことを切に願っています。

関連記事>グラドル倉持由香、長男が自閉スペクトラム症で、児童発達支援士の資格を取得 ASDの息子との関わり方を勉強…SNSで報告「ホッとした」

支援の第一歩は理解すること

ここまで診断テストを確認してきて、もしかしたら我が子は学習障害かもしれないと思われた方もいらっしゃることでしょう。そうでない方でも、不安はぬぐい切れていない方も多いと思います。そういった場合は、具体的な行動をとったほうが、精神的に安定することがあるので、ここから先の具体的な行動を紹介します。

私ども協会では、支援をする第一歩は「理解すること」だと常に言い続けています。発達障がい児そのものを変えるのではなく、その子を取り巻く環境を変えていくこと。それこそが真の支援だと考えています。何かしらの障害を持っていても、活躍できる社会、いきいきとしていられる社会。それこそが目指すべき場所でしょう。

今皆さんは、この診断テストで特徴を知る第一歩を踏み出しました。次は更に発達障害の知識を身に付けてみてはいかがでしょうか?「最後は営業か!」と思われてしまいそうですが、それでも構いません。人は情報を仕入れることで一定の安心感を得ることができます。

先程も少し紹介しましたが、人は知らないから不安が強くなるのです。子どものころは世の中知らない事ばかりですよね。だから夜暗くなるだけでも不安になり怖くなる。でも大人になるにつれ、暗くても何も起こらないということを知り、怖さが無くなる。そういうものです。

差別や偏見は「知らないから怖い」という本能によって生まれるケースも多くあります。だからこそ今興味を持った皆さんが、障害について知るための行動として学ぶことをお勧めします。当協会の児童発達支援士でなくても構いません。書籍を読み漁るだけでも十分です。どのような方法でもいいので、体系的に知識を取り込んでいきましょう。その輪を拡げることでお子様も、皆様保護者様も安心して毎日を過ごせるようになるのです。小さな一歩。まずはそこからです!

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【協会監修】学習障害(LD)診断テスト|6歳・7歳・8歳向けチェックリスト

学習障害の診断テストはあまり多くありません。ここの記事では世界的基準のDSM-5に照らし合わせてご紹介していますので、一定の信頼感はあるのではないかと考えています。

発達障がい児の特性そのものを「変えよう!」と強く思うと苦しくなるかもしれません。当協会が思う真の支援とは「発達障がい児を取り巻く環境を変えること」だと考えています。環境を変えるためには、多くの人が発達障害のことを知り、理解することが大切です。

理解は支援の第一歩!

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