今回は、児童発達支援士の受講者に限定してい公開している「療育エピソード」サイトから一部を皆様にも共有をさせて頂きたいと思います。
療育エピソードとは
まず療育エピソードというのは、当協会の認定資格(児童発達支援士・発達障害コミュニケーションサポーター・SSTスペシャリスト)いずれかを受講されている方に、これまでの療育に関する経験談や体験談を募ったものになります。テーマはこちらで決めさせていただいており、本日時点で下記のようなテーマにて募集をしてまいりました。
- 療育施設利用に関するエピソード
- 「困った」を乗り越えた成功エピソード
- 通級・特別支援級・特別支援学校に関するエピソード
- ADHD児の投薬に関するエピソード
- カサンドラ症候群に関するエピソード
- 子どもの二次障害に関するエピソード
- 子どもに発達障害であることをどう伝えたのか?
- 小・中・高校・大学の受験時に関する困った経験談
- アンガーマネジメントに関するエピソード
それぞれ多数の投稿を頂き、数百を超えるエピソードを頂戴しております。ただし療育エピソードの専用サイトは受講者専用となっているため、受講されていない方には公開していません。ご了承ください。
今回紹介するテーマ
今回紹介させていただくテーマは「子どもの二次障害に関するエピソード」です。発達障がい児と二次障害は切っても切れない関係と言えるでしょう。発達障がい児を育てる時に、必ず意識すべきキーワードが「二次障害」だとも言えます。二次障害には、うつ病・統合失調症・不安症・摂食症・強迫症などの精神疾患や頭痛やめまい、動機などの身体的な症状もあげられます。
当協会ではこのテーマを重要視しており、2025年3月1日より「メンタルヘルス支援士」資格の認定をスタートすることとなりました。精神疾患を未然に防ぐことや、精神疾患者に適した対応を取るための知識を得ることができます。心理カウンセラーなどにも通じる内容となっておりますので、興味のある方は是非こちらもご検討ください。
それでは、実際に二次障害を経験された方から頂いた貴重な体験談を共有しますので、是非参考にしてください。
発達障がい児の二次障害に関するエピソード
事例1
Q1.発達障害診断名
自閉スペクトラム症・学習障害
Q2.二次障害の原因として思い当たる事柄は?
学校関係(学習)・家族関係
Q3.上記の具体的なエピソードをお教えください
育てにくさが発達障害ゆえんのものであるという自覚が母親の私になく、兄や姉と同じように育つはず、普通に正しく育って欲しいとこちらの関わり方が間違えていた。愛着形成がうまくいかず、本人は低学年のころから辛い思いや生きづらさを抱えていたことを高校生になってから知った。
Q4.どのような二次障害があらわれましたか?
●うつ病、抑うつ(内在化障害)・○暴言(外在化障害)・○自傷(外在化障害)・○その他(外在化障害)
Q5.上記で選択された二次障害について詳細を教えてください
高校進学のため中3で診断を取った。障害の診断がつきうまくいかなかったことが自分のせいではなかったと安堵もし、親の方も子育てのやり直しのように関わり方を改めた。無理しないことを認めると高校でつまづいてしまい、気付いた時には自殺願望と自傷行為が始まっていた。自己肯定感も下がり昼夜逆転、うつ状態にもなるようになった。
Q6.二次障害はどのくらいの期間続きましたか?
自傷行為はなくなったが、18歳ごろから躁鬱の波があり双極性障害と診断されている。自分でコントロールがなかなか出来ず本人はとてもしんどい中で生活している。精神保健手帳も取得し、投薬しながら一般就労しているがなかなかうまくいかないことが多い。
Q7.二次障害になる前に「こうしておけばよかった」と感じていることはありますか?
発達障害については早くから興味もあり多くの情報は持っていた方である。なのに、発達障害が理解されず、一般的、普通であることを強いられるとその歪みが二次障害を産んでしまう、ということを私が知らなかった。我が子の自閉傾向からの凸凹を個性と捉えることもできず、ずっと否定や修正をしてきたことからの娘の二次障害を自覚し、娘との関係を一から築き直しているところ。
事例2
Q1.発達障害診断名
ADHD・学習障害
Q2.二次障害の原因として思い当たる事柄は?
学校関係(友人)・学校関係(先生)・学校関係(学習)
Q3.上記の具体的なエピソードをお教えください
冬季休暇明けに登校行き渋りが始まりました。当時は学童にも通っていて、時期的に寒いし疲れも見えたのかな?くらいにしか感じていなかったのです。しかし、表情がくもり、布団から出てこなくなり、行きたくないし、行かせないでの一点張り。
当時私は、発達障害の知識が低く、甘えん坊の我が子をどうやって学校に行かせようかと必死でした。今思えば、子どもはすでにSOSを出していたんですね。母親の私に対して、爪を立てたり、壁をとにかく蹴っていました。そのうち死にたいという言葉もでるようになり、見知らぬ人が外を歩いているだけでも外を歩けなくなりました。しばらくして保健室登校、職員室登校なら大丈夫だと、登校時間をずらして行くようになりました。上級生や友達からの冷やかしや、先生、学習に追いつかない等、いろんな事が重なって、一生懸命に乗り越えようともがいていたけれどプツっと心も切れてしまったんです。学校には行けるけれど、教室には一歩足を踏み入れられず一年間経ちました。
我が子の場合はチック症状が季節の変わり目に出るようになったり、何故自分は生まれてきたのかを気にする様子も多く、人の目を見ることも会うことも怖くなり、外に出ても誰もいないか確認したり、避けて隠れるように歩いている姿が多くありました。進級して、担任の先生も変わり、突然、教室に入れるようになりました。発達の凸凹があることが検査で発覚し、今は不得意な事には親自身も目を向けず、得意なことだけを伸ばして褒めています。どんなことにもペースを大事にして、人の辛さや痛みを分かってあげられる子になりました。同じ悩みを持つ方にも声をかけてあげられるようになりました。これからも自分のペースで生きてもらいたいと思っています。
Q4.どのような二次障害があらわれましたか?
●不安障害(内在化障害)・●強迫性障害(内在化障害)・●対人恐怖(内在化障害)・●心身症(内在化障害)・●不登校(内在化障害)・○暴力(外在化障害)・○暴言(外在化障害)
Q5.上記で選択された二次障害について詳細を教えてください
上記(Q3)の通りです。
Q6.二次障害はどのくらいの期間続きましたか?
1ヶ月から2ヶ月チックがあったり、否定的な言葉を投げると暴言を吐きますが、生まれてきた理由や死にたいという言葉は発さなくなりました。
Q7.二次障害になる前に「こうしておけばよかった」と感じていることはありますか?
全てを受け止めて何にも言わずに、本人のしたいようにただ見守る事だけすれば良かったです。
事例3
Q1.発達障害診断名
自閉スペクトラム症
Q2.二次障害の原因として思い当たる事柄は?
学校関係(学習)・その他
Q3.上記の具体的なエピソードをお教えください
字を書くのが遅いや勉強がわからないなどは少し感じていたようです。失敗をすごく恐れていました。
Q4.どのような二次障害があらわれましたか?
●不安障害(内在化障害)・●不登校(内在化障害)・○その他(外在化障害)
Q5.上記で選択された二次障害について詳細を教えてください
小3後半から心がモヤモヤし、何度トイレに行っても尿意が消えず、バスや登校が難しくなってきました。4年になり気持ちで頑張っていましたが、心が思うように理解できず癇癪と気の落ち込みで不登校になりました。児童精神科が知能検査と診察を受けて、ASDと軽度知的障害による二次障害と3回目で診断されました。
Q6.二次障害はどのくらいの期間続きましたか?
半年くらい様子をみていましたが、コロナが怖いと不安があり外出も難しくなり、向精神薬を服用しました。1ヶ月ほどになりますが、少しずつ暇やーと言ってますので回復に向かってるのかなとも思います。
Q7.二次障害になる前に「こうしておけばよかった」と感じていることはありますか?
本人が心の病院に行きたいと言ってわかりました。もっと早く気がついてやる事ができたらよかったかなと思います。
事例4
Q1.発達障害診断名
自閉スペクトラム症
Q2.二次障害の原因として思い当たる事柄は?
学校関係(友人)・学校関係(先生)・学校関係(学習)・その他
Q3.上記の具体的なエピソードをお教えください
勉強する意味が分からない。誰も話しかけてくれない。いつも1人。学校の校則が理解できない。
Q4.どのような二次障害があらわれましたか?
●不安障害(内在化障害)・●対人恐怖(内在化障害)・●心身症(内在化障害)・●不登校(内在化障害)・●引きこもり(内在化障害)
Q5.上記で選択された二次障害について詳細を教えてください
起立性調節障害となり、頭痛、腹痛、関節痛、目眩、吐き気、睡眠障害(昼夜逆転等)になり、お風呂は3日に一度、外出は月に1度(数十分~数時間)となり、コンビニや宅急便の人でさえも怖いと言い、家族以外の人間が怖い。過敏症で太陽が眩しい、大きい音や特定の音が辛い、食感が苦手な物が多く、飲み込みが上手く出来ない等あり。
Q6.二次障害はどのくらいの期間続きましたか?
まもなく一年ですが、少し症状が良くなったくらいです。
Q7.二次障害になる前に「こうしておけばよかった」と感じていることはありますか?
登校しぶりの時期に無理矢理学校に行かせず、休ませれば良かった。精神論、正論て責め立てることをしなければ良かった。
【まとめ】療育エピソード|精神疾患(うつ病・不安症など)支援に関する体験談
いかがだったでしょうか。
皆様さまざまな経験をされています。当協会にはすでに4万名以上の受講者がおり、沢山のエピソードを頂いております。これらの体験談は教科書で学ぶものとは違い、具体的なエビデンスを示せるものではないかもしれません。しかし、世に広まっているエビデンスも紐解けば、沢山の症例報告をもとに研究されているものです。つまり、ここで紹介しているエピソードもエビデンスのもとになりえる価値があるという事です。もちろん1個人の体験談なので、たまたまうまくいった事例というケースも有ると思いますが、支援を行っている人の「引き出しの1つ」にすることはできるでしょう。
何が正しいのかではなく、何か可能性はないかと追い求めている方にきっとお役に立てると思い共有させていただきました。
今後とも宜しくお願い致します。