この記事では、令和6年度に文部科学省が公表した「いじめに関する統計」について紹介していきます。いじめの件数や実態などについて詳細が明記されておりますので、こちらで見やすくグラフ化しました。保護者の皆様や子どもたちに関わるお仕事をされている皆様の参考になれば幸いです。こういった情報を正確に把握することで、今取るべき行動が見えてくることもありますので、目を背けずに確認していきましょう。
情報元(データソース)は?
- タイトル:令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
- 公表日:令和6年10月31日
- 調査対象:国公私立小・中・高等学校、特別支援学校、都道府県教育委員会、市町村教育委員会
外部リンク
文部科学省:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm
この調査を読み解く前に2つ理解しておくとよいことがあります。
ひとつは小・中・高等学校や教育委員会などを対象に調査しているということです。つまり学校側は把握していないけど、保護者は把握しているいじめや習い事の中で発生しているいじめなどに関しては統計に含まれていません。
そしてもうひとつはあくまでも「認知」されている件数が紹介されている点です。学校側もすべてのいじめをいじめとして認知できているわけではないでしょう。また、ないと信じたいですがいじめを隠蔽しているという可能性もゼロではありません。
つまり、本調査で紹介されている件数よりも実態は多い可能性がかなり高いという事です。言い換えると「いじめの件数はわかっているだけでも○○件はある」といえます。わかっていない部分を含めるとさらに多いということです。そのことを踏まえてご覧頂くと良いでしょう。
いじめの認知件数73万件以上
それでは本題に入っていきたいと思います。
令和5年度に認知された「いじめの件数」は732,568件だったと報告されています。前年度は681,948件だったため、およそ5万件ほど増加していることがわかります。この数字は過去最多となっています。内訳は以下のようになっています。
- 小学校:588,930件
- 中学校:122,703件
- 高等学校:17,611件
- 特別支援学校:3,324件
小学校が一番多く、中学校、高等学校、特別支援学校と続いています。過去の推移もあわせて下図をご覧ください。
(児童発達支援士 第2版 公式マスターブックより引用)
令和2年に一時的に件数が下がっていますが、これは新型コロナウイルス感染症の影響だとされているため、基本的には右肩上がりだという認識で良いでしょう。特に右肩上がりとなっているのは小学校での認知件数であり、中学校、高等学校に関してはそこまで増えているという印象はありません。
増加の背景として文部科学省は以下のような見解をしています。
増加の背景として、いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義やいじめの積極的な認知に対する理解が広がったことや、アンケートや教育相談の充実などによる児童生徒に対する見取りの精緻化、SNS等のネット上のいじめの積極的な認知が進んだことなどが考えられる。
令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要より引用
学年別いじめ認知件数
全体的ないじめ認知件数については把握できたと思いますので、次に学年別のいじめ認知件数について紹介します。こちらはグラフを見て頂くと一目で状況が把握できると思いますので、下図をご覧ください。
(児童発達支援士 第2版 公式マスターブックより引用)
こちらを見ると小学校1年~3年生までの認知件数が多くなっていることがわかります。そこから右肩下がりで減少傾向にあるようです。ただこれはあくまでも認知件数であるため、高学年や中高生のいじめは、陰湿で先生に認知されにくいという可能性もあります。そういった点も頭に入れておくと良いでしょう。
またこれらのいじめについて「解消状況」というものも公表されています。そちらも紹介します。
年度末時点でのいじめの解消状況については、567,710件(77.5%)(前年度525,773件(77.1%))となった。初期段階にいじめを認知し早期対応を行ったことや、学校いじめ対策組織等による組織的な対応を行った結果、いじめが一定数解消できていると考えられる一方、SNS上のいじめなどの見えづらく解消が確認しにくい事案の増加や、安易にいじめを解消したとせず丁寧に取り組んでいる傾向も考えられる。
令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要より引用
77.5%というのは高い数字だと感じました。それと同時に「本当にそんなに解消しているのかな?」とも感じました。加害生徒が解消したとみせかけて、実はまだ裏ではいじめが継続しているというケースもあるかもしれません。ただし、こういった数字が公表されるようになるということは、調査が本格的に行われる土壌が出来ている証拠でもあるので、学校側も懸命に対処、対策していると思われます。
いじめの重大事態について
日本には「いじめ防止対策推進法」があり、その中でいじめの重大事態という枠組みがあります。重大事態について文部科学省より引用して紹介します。
重大事態とは、「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」事態、及び「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認める」事態と定義されている
重大事態には第1号と第2号があり、それぞれ次のような定義となります。
- 第1号:いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき
- 第2号:いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき
これらの発生件数を紹介します。
このような結果となっています。いじめの認知件数との割合を考えると「中学校や高等学校」で重大事態の発生確率が高いことがわかります。逆に言うと小学校での重大事態発生確率は比較的小さいということもできるでしょう。当然、確率が小さくても0ではないのですから、保護者や支援者が留意すべきであることは間違いありません。
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今回紹介したようにいじめは今もなお沢山発生しています。過去最高の認知件数になっている有様です。
この状態で保護者や支援者が出来ることはなんでしょうか?そのことを考えることにも大変意味があると思います。最近では無理に学校にいかせる必要はないという考え方も増えてきており、実際にそういったライフスタイルを選んでいる方もいるでしょう。逆に、無理してでも学校には行って揉まれるべきだと考えている方もいるでしょう。どちらが正しいのかは判断できません。人により違います、環境により違います、時代によっても違います。そこの答えを論じてもあまり意味がないでしょう。
それよりも、大切なのは子どもが苦しんでいることは間違いないわけですから、その苦しみを少しでも軽くしてあげることではないでしょうか。いじめがきっかけとして、うつ病になったりPTSDを発症してしまうこともあるでしょう。それが長期化すると完治するには大変な時間と労力がかかります。私どもは児童発達支援士という資格を認定して沢山の方から貴重な経験談を頂いております。その中でお子様が二次障害になってしまった方に、「二次障害になる前にどうしておけばよかったと思うか?」という質問を投げかけているのですが、ほとんどの方は「あの時無理をさせなければよかった」「もっと真剣に話を聞いてサポートするべきだった」と後悔の弁を述べられています。
精神疾患を患うと、薬の影響もあり体の調子が安定しない日が多くなってしまいます。お子様のそのような姿を見たいと思う保護者はいらっしゃらないでしょう。
今回のいじめの認知件数を受けて、今あなたに出来ることは何か考えてみるきっかけとしてみてください。私どもは発達障害のことを詳しく学べる「児童発達支援士」、メンタルケアについて詳しく学べる「メンタルヘルス支援士」を認定しています。もしご興味があれば是非ご覧ください。
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いかがだったでしょうか。
このように数字を知ることで、現状どういった対策をうつべきなのかを見出すことができます。子どもたちの置かれた環境は狭いため、学校に居場所がなくなってしまった子どもたちは大変つらい思いをしていることでしょう。
そういった子どもたちをサポートしてあげられるのは、保護者や支援者である皆様です。
あなたの一声が子どもの命を救うかもしれません。あなたの一声で子どもがいきる目的を見出すかもしれません。決して大袈裟なことではありません。一人でも理解者がいれば人は強く生きていくことができるでしょう。その一人になりましょう。
私たちは支援の心を持つ方を応援しています。