令和5年の自殺統計からみる発達障がい者の二次障害に潜む危険性

今回は令和6年3月29日に厚生労働省自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課が公表した「令和5年中における自殺の状況」という統計データをもとに、発達障がい者の二次障害に潜む危険性について紹介をさせて頂きます。センセーショナルな内容となりますが、子育てをされている方には是非目を通していただきたい内容となっておりますので、是非最後までご覧ください。

統計データについて

今回利用する統計データは下記となります。

こちらのデータはインターネット上で閲覧することができますので、詳細を確認されたい方は是非上記リンクよりご確認ください。

自殺者数の前年比較

自殺者数の前年比較に関する要点は以下の通りです。

○ 令和5年の自殺者数は21,837人であり、前年から44人減少した。
○ 男性は116人増加、女性は160人減少したが、20歳代以下の若者においては、男性は減少し、女性は大きく増加した。
○ 職業別にみると、有職者(282人増)は増加し、学生・生徒等(44人減)及び無職者(309人減)は減少した。
○ 学生・生徒等のうち小中高生の自殺者数は前年と同水準の513人であり、男子生徒が34人減少した一方で、女子生徒は33人増加した。
○ 原因・動機別にみると、最も増加したのは経済・生活問題(484件増)であり、最も減少したのは健康問題(371件減)であった。

まず年間の自殺者数は21,837人だったということがわかります。この数字は前年とほぼ変わっていません。もう少し付け加えるとここ5年ほどは2万名ちょっとという水準を維持しています。それ以前は3万名程が平均値となっていることから、平成10年~平成27年ころと比較すると1万人ほど減っていることになります。

年代別の自殺者数を見てみましょう。

  • 20歳未満:810人
  • 20-29歳:2,521人
  • 30-39歳:2,587人
  • 40-49歳:3,625人
  • 50-59歳:4,194人
  • 60-69歳:2,798人
  • 70-79歳:2,901人
  • 80歳以上:2,370人
  • 不詳:31名

このようになっており、40-59歳辺りが最も自殺者数が多いということがわかります。一方で20歳未満は810名であり、全体の割合から見ると少ない印象です。

自殺の原因・動機

次に自殺の原因や動機を見ていきましょう。

  • 家庭問題:4,708人
  • 健康問題:12,403人
  • 経済・生活問題:5,181人
  • 勤務問題:2,875人
  • 交際問題:877人
  • 学校問題:524人
  • その他:1,776人
  • 不詳:2,388人

このようになっています。注目すべきは「健康問題」です。圧倒的に数が多いのですが、具体的にどのような健康問題を苦にして自殺された方が多いのか確認します。

  • 病気の悩み(悪性新生物):597人
  • 病気の悩み(てんかん):59人
  • 病気の悩み(その他の身体疾患):2,821人
  • 病気の悩み・影響(うつ病):4,377人
  • 病気の悩み・影響(統合失調症):1,042人
  • 病気の悩み・影響(アルコール依存症):204人
  • 病気の悩み・影響(薬物乱用):45人
  • 病気の悩み・影響(摂食障害):50人
  • 病気の悩み・影響(その他精神疾患):1,816人
  • 身体障害の悩み:596人
  • 認知機能低下の悩み:267人
  • その他:529人

ここで注目していただきたいのは、黄色くマークした項目です。これらは発達障がい者の二次障害としてあげられるものです。発達障がい者は、他者から理解されないことが多かったり、叱責されることが多くなることで自己肯定感が低下しやすいと言われます。また脳の報酬系の影響も関係するケースがあり、自己肯定感が高まりにくいという課題があります。

その結果、精神疾患や依存症を併発することがあります。このように発達障害を起因として起こる二次的な障害を二次障害と言います。

健康問題を苦に自殺された方の、約60%が精神疾患や依存症に苦しんでいたということがわかります。このことは発達障がい者を持つ保護者は認識しておく必要があるでしょう。いたずらに恐怖心をあおるつもりは一切ありませんが、このような現実があることを認識し、精神疾患や依存症といった二次障害に繋がらないように、早期から対応をしていく必要があるでしょう。

小中高生の自殺数は513人

次に、小中高生の自殺に絞って紹介をします。令和5年の小中高生の自殺者数は513名でした。前年比-1人とほぼかわらなかったという数字です。

下記グラフをご覧ください。

いかがでしょう。令和に入ってから明らかに「急増」しているとみていいのではないでしょうか。平成はおおよそ300人前後で推移していたものが、令和に入り一気に増えています。具体的な原因はわかりませんが、令和というと「新型コロナウイルス」が蔓延し、皆が自粛していた時期と重なります。芸能人の自殺もこの時期に多くあったように記憶しています。コロナが落ち着きを見せてきた時に、ロシアとウクライナの戦争、国内の物価高などと暗くなってしまうニュースも多くありました。これらが関係しているかはわかりませんが、小中高生の自殺者数が明らかに増えている現状を危惧しています。

性別ごとの小中高生の自殺者数

最後に性別後の小中高生の自殺者数の推移を見ていきましょう。下記グラフを御覧ください。

こちらのグラフを見ると、気づくことがあるでしょう。それは令和に入ってから「女性」の自殺者数が急増していることです。特に高校生の女性の数字が跳ね上がっているのです。こちらもどのような因果があるのかハッキリしません。このような傾向が今後数年続くのか、それとも自殺者数が減少に転じていくのか。現状はどうなるか全くわかりませんが、こういった数字を定期的に追っていくことで、取るべき対策を見出すことができるかもしれません。

【まとめ】令和5年の自殺統計からみる発達障がい者の二次障害に潜む危険性

いかがだったでしょうか。この統計では発達障がい者との直接的な関係はしめされていませんが、発達障がい者の二次障害と、自殺の原因・動機を照らし合わせると合致する部分が少なからずあります。

私ども協会が発足した理由の一つに「自殺をなくす」というものがあります。当然0にすることは相当に難しいことです。が、そこを目指していかなければいけません。そのために「理解は真の第一歩」という合言葉のもと、発達障がい児の支援に力を入れてまいりました。理解者が増えてきていることは間違いないでしょう。しかし、まだまだです。

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