発達障害(自閉症・ADHD・LD)のセルフ診断テストには限界がある?

今回は発達障害のセルフ診断テストには限界があるというお話をさせて頂きたいと思います。この記事は、子どもが発達障害っぽいと悩んでいる保護者の方に向けたものとなります。

発達障害のセルフ診断テストとは

まず、発達障害のセルフ診断テストとはどのようなものかお伝えいたします。

本ブログサイトでも「ADHD・自閉症診断テスト|子ども発達障害チェックリスト」「学習障害(LD)診断テスト|6歳・7歳・8歳向けチェックリスト」という形で2つの診断テストをご紹介しております。

発達障害かもしれないと思った保護者が、発達障害の特徴をまとめたサイトや書籍を見ながら、子どもが発達障害かどうかを確認することをセルフ診断テストと言います。この行為自体は悪いことだとは考えておりませんので、私どもも記事を出しているのですが、児童発達支援士の受講者の皆様とお話をしていると、稀にセルフ診断テストをしたがために苦しんだり、間違った解釈をして子どもに接してしまったりという弊害が出ていることもあるのだとわかりましたので、今回はそのあたりを紹介させていただきます。

セルフ診断テストの難しい点

それではセルフ診断テストの難しい点をご紹介いたします。難しい点を理解した上で、セルフ診断テストを行うことで、誤った方向にかじを取ることがなくなり、保護者も当事者のお子様も苦しむことが無くなるでしょう。正しい知識、正しい情報が支援の第一歩ということをしっかりと頭に入れておきましょう!

  1. セルフ診断テストの項目が不正確
  2. セルフ診断テストの項目の解釈が誤っている
  3. 感情が入り正確な判断ができない

今回はセルフ診断テストの難しい点を3つにわけてご紹介いたします。

セルフ診断テストの項目が不正確

これは私どもも気を使っている部分ではありますが、セルフ診断テストとインターネットで検索すると無数に記事がヒットするでしょう。最近ではインターネットではなくSNSでセルフ診断テストができるようにしている投稿もあるので、そちらを参考にしている方もいるかと思います。

どちらの場合でも共通する点として、診断テストの項目をどこのソースから持ってきているか?という点です。私ども人間力認定協会では「DSM-5」を参考にしていて、診断テストを作成しています。しかも基本的には、勝手な解釈を入れずにそのまま引用するスタイルをとっております。

しかし、中にはソース元をしるさずに、よくある発達障害の特性をあげつらっているだけの記事も見受けられますし、自身の子どもが発達障害の診断を受けた経験から診断項目を勝手に作成している人もいます。発達障害という言葉で一括りにすることはできますが、その特性は子によって様々です。自閉スペクトラム症だけの症状の子もいれば、ADHDと併発している子もいます。また、発達障害とは異なる知的障害を抱えているケースもあるでしょう。

このように、セルフ診断テストをする時には、まずソース元が明確になっているのかどうか。そしてソース元の表現に勝手な解釈を入れてリストを作っていないかは確認する必要があるでしょう。伝言ゲームのように少しずつ情報がずれていってしまうケースがあることを理解しておきましょう。

また、冒頭でSNSでもセルフ診断テストが最近では多いと書きましたが、こちらも要注意の投稿が多くあります。というのもSNSというものは、「ぱっと見で視聴者をいかに引き付けるかが重要」であります。そのため、Instagramを例にとると、小さな文字でびっちり解説していたり、詳細を書いている投稿は少ないでしょう。

多くの記事が、大きな文字でタイトルが書いてあり、数行の説明がある程度となります。しかしセルフ診断テストのチェックリストの全てを、Instagramの投稿で紹介するというのはかなり大変だと言えるのではないでしょうか。X(旧Twitter)でも同様に、数百文字を全て記載することは難しいため、どうしても短縮して表現したり、解釈を入れて表現することになるでしょう。そのため、SNSで診断テストを行う際には、気軽に行えるメリットはあるものの、本格的な診断テストとしては利用しずらいということを理解しておくと良いと思います。

ただし、SNSで多くの方の目に触れるというのは、きっかけとして悪いことではありません。そのため、そこを入り口にするという認識であればいいのではないでしょうか。

セルフ診断テストの項目の解釈が誤っている

次の難しい点は、セルフ診断テストの項目の解釈が誤っているというものです。

これはソース元が提示しているチェック項目を読み解こうとしたときに起こるエラーと言えるでしょう。DSM-5の診断項目では少し難解な表現があり、医師ではない一般の私たちでは理解しにくい点があったりします。そこを「きっとこういうことだろう」と解釈をした際に誤った方向に行ってしまうと問題となります。間違った解釈をするくらいであれば、その項目は飛ばしておいて他のわかる項目だけでチェックしたほうがまだよいかもしれません。

セルフ診断テストを行ったうえで、病院に行くことを決意された場合には「この項目ってどういう意味なのでしょうか」と医師に相談することも可能です。そのうえで、医師ととともにその項目が該当するのかを見たり、総合的な判断をして頂くことをお勧めします。

感情が入り正確な判断ができない

最後は感情が入り正確な判断ができないということについて紹介です。

実はセルフ診断テストの一番の難しさはここにあるのではないかと考えています。保護者の中には「子育てが大変すぎるから、発達障害と診断されたほうが気持ちが楽になる」という方もいますし、逆に「うちの子に限って発達障害であるわけがない」と思っている方もいます。

そのどちらの気持ちもよくわかりますし、悩んだりすることは保護者として自然なことです。

ただし、その感情を持っている状態でセルフ診断テストを行うとどうでしょう?確認項目に対して正確な判断ができると思いますか?いえ、なかなか難しいものでしょう。どうしても自分の感情が診断結果に含まれてしまうはずです。それが人間というものです。

その点医師の場合は、あくまでも専門家として、第三者として判断を下すことができるため、正確性が当然上がるというわけです。

セルフ診断テストをする時の心構え

以上3つの角度からセルフ診断テストを行う難しさをお伝えしました。

しかし、逆を言えば、上記を理解した上で行うセルフ診断テストには十分意味があると思っていますし、次なる行動へと繋がる可能性が高く、有益だと思います。

一番良くないのは保護者が子どものことで悩みっぱなしになり、冷静な判断や、穏やかな対応が出来なくなってしまうことでしょう。そうならないようにするために、セルフ診断テストをうまく活用していただければよいのではないかと思います。

私どもは、児童発達支援士という資格を認定しており、保護者の心を軽くすること、ホッと安心させることをひとつの目的に活動をしています。人は「知らない」ことに対して不安を抱いたり恐怖を抱きます。しかし、知ることで恐れるものではなかったのか。と気づくことができるようになるのです。大切なお子様のことを理解する一歩としてセルフ診断テストを利用し、その次に発達障害や特性について学ぶ機会を設けてみる。必要であれば医師に相談をしてみる。ひとつずつ段階を踏むことで不安や恐怖は少しずつなくなっていくことでしょう。

セルフ診断テストはあくまでも「次なる行動のためのきっかけづくり」だと思い実施してみてくださいね。

【まとめ】発達障害(自閉症・ADHD・LD)のセルフ診断テストには限界がある?

いかがだったでしょうか。私どもの想いが伝われば幸いです。

なお、ここではDSM-5を利用していると伝えましたが、場合によってはICD10という診断基準を使っているケースもあるでしょう。

セルフ診断テストやチェックリストをうまく活用して、お子様の笑顔やご自身・ご家族の笑顔を増やしていけると良いですね。

理解は支援の第一歩。

今後も共に支援の輪を拡げていきましょう!

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