仕事に向かう気力がわかない日が続いて、「燃え尽き症候群かもしれない」と思った。病院に行けば診断してもらえるのか、何科に行けばいいのか、診断書は出るのか。調べても答えがはっきりしないまま止まっている方が多いと思います。
先に答えをお伝えします。「燃え尽き症候群」という診断名はつきません。WHO(世界保健機関)は燃え尽きを医学的な疾患としては分類しておらず、国際疾病分類ICD-11に病気としては置いていないからです。
けれど、診てもらえないという意味ではありません。眠れない、気分が落ち込む、食欲がないといったいま出ている状態のほうが診療の対象になります。診断書が必要な場面もあります。
たとえば、
- 「燃え尽き症候群」という診断名がつかない理由
- 代わりに何が診断の対象になるのか
- 何科に行き、どう伝えればよいか
- 休職や傷病手当金で診断書が必要になる場面
といった内容です。
この記事では、WHOの発表と厚生労働省・全国健康保険協会の資料をもとに、燃え尽き症候群と診断の関係を整理していきます。診断の代わりになるものではありません。
>燃え尽き症候群チェックリスト|厚労省27項目とバーンアウト症状の見方
燃え尽き症候群が気になる方へ
燃え尽きる前に、
心の不調の基礎や、考え方のクセを見直す認知行動療法、リラクゼーションなど、自分を立て直すための知識を基礎から学べて、日々のセルフケアにも活かせる資格です。
燃え尽き症候群という診断名はつきません
2019年5月28日、WHOは燃え尽き症候群(バーンアウト)について、国際疾病分類の第11版(ICD-11)での扱いを発表しました。そこでは、燃え尽きは医学的な疾患としては分類されず、「職業上の現象」として扱われています。
収められているのは、「健康状態に影響を与える要因または保健サービスの利用」を扱う章です。病気そのものではないけれど、人が医療や相談の場を訪れる理由になるものをまとめた章にあたります。
つまり、病名の一覧に「燃え尽き症候群」という名前が載っていないということです。そのため、医療機関で「あなたは燃え尽き症候群です」と診断名がつくことは、基本的にありません。うつ病や適応障害のように、診断の手順が決まっているわけでもありません。
ネットで「燃え尽き症候群の診断基準」と検索すると、いくつもの項目表が出てきます。けれど、日本の公的機関が燃え尽き症候群の診断基準として示している項目表はありません。当てはまった数で決まるものではない、という点は先に知っておいてください。
もう一つ知っておきたいのは、ICD-11に載っていないわけではないという点です。燃え尽きは病気の一覧ではなく、人が医療や相談の場を訪れる理由をまとめた章に置かれています。ICD-10でも同じ区分にありました。「載っていない」のではなく「病気としては置かれていない」という言い方が正確です。
>燃え尽き症候群とは|WHOは病気ではなく仕事の現象としています
診断の対象になるのは今出ている状態です

診断名がつかないことと、受診しても意味がないことは違います。燃え尽きた状態のときに出ている不眠、気分の落ち込み、食欲の低下、頭痛や胃の不調は、それぞれ医療機関で相談できる症状です。
診察では、いつからどんな状態が続いているか、仕事や生活にどんな支障が出ているかを聞いたうえで、医師が判断します。その結果として別の病名がつくこともあれば、病名はつかずに休養や環境の調整を勧められることもあります。どうなるかは人によって違い、ここで先に決めることはできません。
大事なのは、診断名を取りにいくために受診するのではないということです。受診の目的は、いまの状態を確かめて、必要なら休むことや治療につなげることです。診断名がつかなくても、相談した記録が残り、次に相談するときの土台になります。
なお、燃え尽きに特有の検査があるわけではありません。研究の場面で使われるマスラック・バーンアウト尺度(MBI)は、出版元から購入して使う調査用の尺度で、医療機関の診断に使う検査ではありません。
受診するのは心療内科か精神科です
何科に行けばよいか迷ったときは、心療内科や精神科が相談先になります。どちらに行けばよいか決められないときは、かかりつけの内科で相談し、必要なら紹介してもらう方法もあります。
心療内科や精神科は予約が必要なところも多いため、受診の前に電話やウェブで確認しておくと安心です。初診まで日数がかかることもあります。「まだそこまでではない」と感じていても、予約だけ先に取っておくという考え方もあります。
職場に産業医がいる場合は、産業医に相談する方法もあります。常時50人以上の労働者がいる事業場では、産業医を選ぶことが法律で決められています。産業医は診断や治療をする立場ではなく、働き方との関係から話を聞き、必要に応じて仕事の量や配置について会社に意見を伝える立場です。医療機関とあわせて使えます。
予約が取りにくいときは、お住まいの地域の保健所や精神保健福祉センターでも相談できます。どこを受診するか迷う段階から相談できる窓口で、費用はかかりません。働く人向けの窓口としては、厚生労働省の「こころの耳」のSNS相談やメール相談もあります。受診の前に、状態を言葉にする練習として使うこともできます。
伝えるのは呼び名ではなく続いている状態です

受診のときに「燃え尽き症候群だと思います」と伝えると、話がそこで止まってしまうことがあります。燃え尽きは病名ではないので、医師はいま出ている状態を手がかりに判断するからです。
次の3つをメモして持っていくと、短い診察時間でも状態が伝わりやすくなります。
- いつから:気分や体調が変わり始めた時期と、そのころ仕事で起きたこと(異動、担当の変更、人員の減少など)
- どんな状態が続いているか:眠れない、朝起き上がれない、食欲がない、仕事のことを考えると気が重いなど
- 生活にどんな支障が出ているか:遅刻が増えた、家事ができない、休日も動けないなど
仕事の状況を一緒に伝えることには理由があります。燃え尽きはWHOの説明でもうまく対処されてこなかった慢性的な職場のストレスから生じるものとされています。残業の増え方や役割の変化を伝えると、休養や働き方の調整について話が進みやすくなります。
うまく話せなくても大丈夫です。「何から話せばいいか分かりません」と最初に伝えてもかまいません。
休職や傷病手当金では診断書が必要になります
休むことになった場合、診断名は書類の形で必要になります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、第1ステップで主治医の診断書(病気休業診断書)が職場に提出される流れが示されています。
収入の支えになる傷病手当金も同じです。全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内では、支給の対象になるかどうかのうち「仕事に就くことができないこと」の判定は、療養担当者の意見等をもとに、本人の仕事の内容を考慮して判断されるとされています。申請書には医師が記入する欄があります。
ここで書かれる病名は、医師が診察のうえで判断するものです。「燃え尽き症候群」という名前で書かれるとは限りません。書類に別の病名が並ぶことに戸惑う方もいますが、それは状態が軽いという意味でも、思い違いだったという意味でもありません。
休職の制度そのものは法律で決まっているものではなく、勤め先の就業規則で定められています。診断書をもらう前に、就業規則で休職の条件や期間を確かめておくと、医師に伝える内容も整理できます。
診断書の発行には費用がかかることがあります。金額は医療機関によって違うため、必要になった時点で窓口に確認してください。会社に提出する書式が決まっている場合もあるので、先に勤め先に様式を確認してから受診すると、二度手間になりにくくなります。
>休職から復職までの流れ|立場と段階で次にやることを案内します
部下から診断書を受け取ったとき
ここまでは受診する本人の話をしてきましたが、診断書を受け取る側に立つこともあります。上司や人事として書類を見たときに、迷いやすいところを整理しておきます。
まず、そこに書かれている病名は、医師が診察のうえで判断したものです。「燃え尽き症候群」とは書かれませんし、うつ病、適応障害、不安障害など、どの名前になるかは人によって違います。病名の種類で状態の重さを測ることはできません。
次に、職場が判断するのは病名ではなく、働ける状態かどうかと、どんな条件なら働けるかです。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、主治医の判断は日常生活での回復の程度をもとにしていることが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないとされています。主治医の判断と職場の判断は、見ているものが違うということです。
手続きの面では、休職の条件や期間は勤め先の就業規則で決まっています。提出の書式が決まっているなら、受診の前に本人へ様式を渡しておくと、書き直しや再受診の手間を減らせます。傷病手当金の申請書にも医師が記入する欄があります。
病名は本人の健康に関する情報です。本人の同意なく職場の中で広げないことが前提になります。産業医がいる事業場では、産業医を間に入れて仕事の量や配置の話を進める方法があります。
>部下のメンタル不調のサイン|他人と比べず、その人の普段と比べる
受診した方の声を紹介します
当協会のアンケートに寄せられた声を紹介します。燃え尽き症候群について尋ねた調査ではありません。職場の同僚との関係に消耗した方が、受診したときのことを書いた回答です。
鬱になりかけているとのことで、鬱の薬をもらい、二週間に一回心療内科に通いました。
話しを全て聞いて下さることで気持ちはよくなりますが、仕事になると蕁麻疹がでるようになってきた。
ここで伝えられたのは病名ではなく、「鬱になりかけている」という、いま出ている状態についての見立てでした。呼び名がつかないまま、処置と通院の見通しだけが決まっています。
もう一つ読み取れるのは、話を聞いてもらって気持ちが戻っても、仕事の場面では別の症状が出ていたことです。医療機関でできることと、職場の条件を変えることは別だという点が、この一文に表れています。
診断がつかなくてもできることは残ります
受診して「病名はつきません」と言われることもあります。そのときに何も手が残らないわけではありません。燃え尽きの原因は続いた職場のストレスにあるとされているので、対策は職場の条件のほうにもあります。
職場の中では、上司や人事、社内の相談窓口、産業医が相談先になります。仕事の量や配置を変える話につなげやすいのが強みです。職場の中で話しにくいときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)や、働く人向けの電話・SNS相談を使えます。
医療機関に行くことと、働き方の相談をすることは、どちらか一方を選ぶものではありません。体の不調が続くなら医療機関へ、仕事の条件がつらいなら職場の内外の窓口へ。並べて進めてかまいません。
メンタルヘルス支援士について
ここまで、燃え尽き症候群に診断名がつかない理由、診断の対象になるもの、何科に行きどう伝えるか、診断書が必要になる場面をご紹介してきました。
こうした理解を深めることと合わせて、ご家族や職場の同僚、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。
当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。
資格の有無が支援の基準になるものではありませんが、身近な人と日々関わる方が、専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。
Q&A|燃え尽き症候群の診断に関するよくある質問
Q1:燃え尽き症候群は病院で診断してもらえますか?
WHOは燃え尽き症候群を医学的な疾患としては分類していないため、「燃え尽き症候群」という診断名はつきません。ただし、不眠や気分の落ち込みなど、いま出ている状態は診療の対象です。受診して状態を確かめること自体に意味があります。
Q2:燃え尽き症候群の診断基準はありますか?
日本の公的機関が診断基準として示している項目表はありません。ネット上の項目表は自分の状態に気づくきっかけにはなりますが、当てはまった数で決まるものではありません。研究で使われるマスラック・バーンアウト尺度(MBI)も、医療機関の診断に使う検査ではありません。
Q3:何科を受診すればいいですか?
心療内科や精神科が相談先になります。迷うときは、かかりつけの内科で相談して紹介してもらう方法もあります。職場に産業医がいる場合は、働き方との関係から相談できます。予約が必要なところも多いので、受診の前に確認してください。
Q4:診断書は出してもらえますか?
休職や傷病手当金の手続きでは、医師の診断書や意見の記入が必要になります。ただし、そこに書かれる病名は医師が判断するもので、「燃え尽き症候群」と書かれるとは限りません。別の病名になっても、状態が軽いという意味ではありません。
Q5:診断がつかなかったらどうすればいいですか?
病名がつかず、休養や働き方の調整を勧められることもあります。その場合も、相談した記録は残ります。仕事の量や役割については、職場の窓口や職場の外の相談窓口で相談を続けることができます。
まとめ|燃え尽きに診断名はつかないが状態は診てもらえる
- WHOは燃え尽き症候群を疾患として分類しておらず、診断名としてはつきません
- 日本の公的機関が示す診断基準の項目表もありません
- 診断の対象になるのは、不眠や気分の落ち込みなど、いま出ている状態です
- 受診先は心療内科・精神科。いつから何が続いているかを伝えます
- 休職や傷病手当金では診断書が必要で、書かれる病名は医師が判断します
本記事で紹介している情報について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 燃え尽き症候群の位置づけ | World Health Organization「Burn-out an occupational phenomenon: International Classification of Diseases」(2019年5月28日) |
| MBI | Mind Garden, Inc.「Maslach Burnout Inventory」 |
| 診断書と職場復帰の流れ | 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 |
| 傷病手当金 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 |
| 産業医 | 労働安全衛生法第13条・労働安全衛生法施行令第5条 |
| 紹介した声 | 当協会「カサンドラ症候群に関するエピソード調査」(対象は児童発達支援士の受講者/有効回答36件/2022年11月〜2026年8月) |
| 確認日 | 2026年9月18日 |
【注意事項】
この記事は、WHOの発表と厚生労働省・全国健康保険協会の資料をもとにまとめたものです。診断や治療を目的としたものではなく、個別の状態について判断するものでもありません。診断名や診断書の内容は、診察した医師が判断します。心身の不調が続いている場合や、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関や相談窓口にご相談ください。ご自身や周囲の安全に関わる状況では、ためらわず専門の窓口にご連絡ください。


