部下のメンタル不調のサイン|他人と比べず、その人の普段と比べる

部下の様子が、少し前と違う。遅刻が増えた、会議で発言しなくなった、報告が上がってこない。気のせいかもしれないし、そうでないかもしれない。その線引きがつかないまま、声をかけそびれてしまう。

この記事は、部下のメンタル不調のサインにどう気づき、気づいたあと何をするかを、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」とその解説パンフレットに沿って整理したものです。当協会が独自に作った基準ではなく、国が示す考え方を上司の立場から読み直しています。

先にお伝えしておきます。この記事に載せているチェックリストは、診断のためのものではありません。印が何個ついたかで判断するものでもありませんし、部下を評価したり監視したりするために使うものでもありません。

お伝えしたいことは1つです。「いつもと違う」は、他の部下と比べて見えるものではなく、その人自身の普段と比べて見えるものです。そしてそこから先——それが病気かどうかを決めることは、上司の仕事ではありません。

目次
メンタルヘルス支援士 公式サイト

「いつもと違う」は、他人ではなくその人の普段と比べる

パンフレットは、なぜ上司が「いつもと違う」と感じるのかを、こう説明しています。

それまでに示してきた行動様式からズレた行動をするからです。

基準になっているのはその人自身の過去です。他の部下でも、平均でもありません。挙げられている例も「それまで遅刻をしたことなどなかった部下が遅刻を繰り返したり」という書き方で、遅刻していることではなく遅刻しなかった人が遅刻するようになったことが手がかりだ、という順序です。

この違いは実務で大きく効きます。

  • 他の部下と比べると、物静かな人の変化が見えません。会話が減っても「もともとそういう人だから」で終わります
  • 成績の高い人の低下も見えません。本人の水準が落ちても、部署の平均を上回るうちは目立ちません
  • 逆に、発言が少ないだけの人を誤って拾います。変化していないのに、平均から外れているという理由だけで

ただし弱点もあります。比較の対象が上司の記憶になるため、普段を知らない相手には使えません。異動してきたばかりの部下、リモート中心で顔を合わせない部下では基準が持てず、無理に推測すれば決めつけになります。日常の短いやり取りは観察のための時間でもある、ということです。

「いつもと違う」部下の様子|厚生労働省の指針に基づく簡易版

「いつもと違う」を勤怠・業務・見た目の3領域に整理した図

パンフレットが挙げている10項目を、記事向けに表現を整えて掲載します。診断のためのものではありません。「その人の普段と比べて」当てはまるかで読んでください。

  • 遅刻・早退・欠勤が、以前より増えている
  • 休むときの連絡がない(無断で休むことがある)
  • 残業や休日出勤が、仕事の量に見合わないほど増えている
  • 仕事の能率が落ちている。考えたり決めたりするのに時間がかかっている
  • 業務の結果が、なかなか出てこない
  • 報告や相談、職場での会話がなくなっている(あるいは、その逆
  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいは、その逆
  • その人らしくない、不自然な言動が目立つ
  • ミスや事故が目立つ
  • 服装が乱れている、衣服が清潔でない

6番目と7番目の「あるいは、その逆」を落とさないでください。減ったときだけでなく増えたとき・急に元気になったときも含まれる、という指摘です。口数が急に増えた、妙に高揚している——落ち込んでいる姿だけを探していると、こちらを見落とします。

数ではなく、ズレの大きさで見る

このリストに合計点や基準個数はありません。当協会が設けていないのではなく、元の資料にもありません。3つ当てはまったから深刻、1つだから大丈夫、という読み方はできません。

むしろ実務では、1つしか当てはまらないが、その1つがその人にとって明らかに異例という場合のほうが重いことが起こります。10年間遅刻のなかった人の1回の無断欠勤がそれです。数ではなくズレの大きさで見てください。

印の数を、本人に伝えない

「7個ついたよ」と本人に見せないでください。伝えられた側は自分は7個ぶん悪いのかと受け取りますが、この10項目にそういう意味はありません。

チェックを付けた紙やファイルを、本人の目に触れる場所や共有フォルダに置くことも避けてください。

なぜ内面ではなく、勤怠と業務なのか

10項目を並べ直すと、あることに気づきます。すべてが「勤怠」「業務」「見た目」に収まっていて、内面に踏み込む項目が1つもありません。

「気分が落ち込んでいる」「興味がわかない」「自分を責めている」といった項目は入っていません。それらが重要でないからではなく、上司の位置からは観察できないからです。

ここが、この10項目の設計思想です。上司に見えるのは外側だけ、という前提から作られている。だから「病気の判断は管理監督者にはできません」という一文と、この10項目は矛盾しません。できることの範囲に合わせて、道具のほうが作られています。内面を推し量ろうとした時点で、上司はこのリストの外に出ます。

声をかける前に、することがある

順番としては①事実を書き留める ②本人に声をかける ③自分以外に相談するの3つです。ただし②より先に③をしても構いません。声のかけ方に迷うくらいなら、先に相談したほうが早い。

①の「事実」は、解釈ではなく起きたことです。「やる気がない」ではなく「今月に入って遅刻が3回。先月まで0回」。この形なら産業医や人事にそのまま伝えられ、推測を混ぜずに済みます。

つなぐ先何を相談するか気をつけること
産業医・保健師など
(事業場内産業保健スタッフ)
「いつもと違う」と感じた具体的な事実。勤怠や業務の記録病名を推測して伝えない。判断は求めてよいが、こちらから答えを用意しない
人事・労務業務量、勤務形態、期限、配置の調整が可能かどうか本人の同意なく健康に関する情報を広げない
地域産業保健センター、
精神保健福祉センターなど
(事業場外資源)
産業医がいない・選任義務のない規模の職場での相談先上司自身が相談してよい。本人を連れていく必要はない
自分の上長抱え込まずに状況を共有する評価や人事の文脈に持ち込まない

上司が一人で抱え込まない

指針が求めているのは、上司が個人的にがんばることではなく、相談に行ける仕組みを職場のなかに用意しておくことです。パンフレットは、管理監督者自身が産業医に相談に行く経路まで含めて「作っておくことが望まれる」と書いています。

相談していいのは部下だけではありません。上司が「どう声をかけたらいいか分からない」と相談に行くことも、想定されている使い方です。

声のかけ方|厚労省が「積極的傾聴法があります」で終えているところ

パンフレットは、部下の話を聴くことが重要だとしたうえで、その方法についてこう書いています。

その方法として、積極的傾聴法があります。人の話を聴く基本となる技法の一つです。

「あります」で終わっています。中身は書かれていません。続くのは、事業者が管理監督者に「部下の話を聴く技術を習得する機会を与えることが重要です」という一文で、技術そのものは研修で学んでくださいという構造です。

ここから先は指針の外側です。聴く技術としてよく知られているのが、アレン・E・アイビイが体系化したマイクロカウンセリング技法です。そのうち、上司が明日から使える部分を紹介します。

かかわり行動|聴く姿勢は、話す前に伝わっている

この技法では、聴く姿勢を相手に示す土台を「かかわり行動」と呼び、4つに整理します。技法というより、これがないと以降の技法が働かない前提条件です。

かかわり行動部下との面談での具体
相手に視線を合わせる画面や書類に目を落としたまま聞かない。ただし、じっと見続けない。相手が話しにくそうなときは、正面より斜めに座る
身体言語に配慮する腕を組まない。体を相手のほうに向ける。うなずきを返す。時計やスマートフォンを見ない
声の質に配慮する速さと大きさを相手に合わせる。沈黙が空いても、先に埋めにいかない
言語的追跡をする相手が話している話題についていく。自分の関心のある話題や、聞きたかった質問に引き戻さない

4つ目の「言語的追跡」が、実務でいちばん崩れます。部下が仕事量の話をしているのに「体調はどうなの」と引き戻す。上司には確かめたいことがあるからです。ですが、戻した瞬間に、相手はその話題をもう出しません。

あわせてよく引かれるのが、アルバート・メラビアンの実験による言語情報7%・聴覚情報38%・視覚情報55%という数字です。これは「話の中身は7%しか大事ではない」という意味ではありません。言葉と態度が食い違ったとき、受け手がどれを手がかりにするかを示したものです。心配していると言いながら画面を見続けているとき伝わるのは後者だ、という話です。

相手が使った言葉を、そのまま使う

部下が「悲しかったです」と言ったときに「つらかったんだね」と返す。よくある返し方ですが、マイクロカウンセリングでは、相手が使った言葉をそのまま返すこと(いいかえ・繰り返し)を基本にします。「悲しかった」と「つらかった」は、話し手にとって同じ言葉ではありません。

言い換えは理解を示す行為ですが、同時に聞き手の解釈を差し込む行為でもあります。話し手が「そう、つらかったんです」と合わせれば、そこから先は聞き手の言葉で進みます。上司と部下の関係では、合わせる力がとくに働きます。

最初は「閉じられた質問」から

自由に答えられる質問を開かれた質問、「はい/いいえ」や短い事実で答えられる質問を閉じられた質問と呼びます。開かれた質問のほうが良いものとして語られがちですが、公式テキストは初対面や関係ができていない段階では、閉じられた質問から入り、様子を見ながら開かれた質問を織り交ぜるという順序を示しています。

上司と部下の面談は、たいていこの段階に当たります。開かれた質問から入ると、部下は何をどこまで話すべきかを自分で決めなければならず、負荷が上がります。「今週は残業がありましたか」から始めて、答えが返ってから広げるほうが進みます。

なお、上司がカウンセラーになる必要はありません。支援する側とされる側が上司と部下のような関係を同時に持っている状態を「二重の関係性」と呼び、対人援助ではこの関係でのカウンセリングは難しいとされています。強いストレスの原因が上司の側にある場合、成果が得られないどころかストレスを増幅させることがあるためです。上司が身につけるとよいのは、カウンセリングそのものではなく聴く姿勢のほうです。

上司ができること・してはいけないことの整理

病名が思い浮かんだときは

10項目を見ていると、「これはうつ病ではないか」という考えが浮かぶことがあります。浮かぶこと自体は止められません。問題は、それを本人に言うかどうかです。

言わないでください。理由は2つあります。1つは判断する立場にないから。もう1つは、外れていても当たっていても、本人の負担になるからです。外れていれば決めつけになり、当たっていれば「上司に気づかれている」という別の心配が加わります。

代わりにできるのは、事実を伝えて専門家につなぐことです。「うつ病かもしれない」ではなく「残業が増えていて、報告も止まっているのが気になっている。産業医と話す機会を作れるけれど、どうかな」。

症状そのものを知りたい場合は、別の記事で18項目を整理しています。この記事の10項目が外から見える変化だけなのに対し、そちらは内面の変化も含めた一覧です。上司が使うのは外から見える範囲までという前提でご覧ください。

うつ病のチェックリスト|職場で気づけるのは外から見える変化だけ

すでに診断書を受け取っている場合は、この記事の範囲を超えます。受け取った直後にすることは別の記事にまとめています。

部下がうつ病と診断されたら|診断書を受け取った直後にすること

病気の判断は、上司の仕事ではありません

この記事でいちばん大事なことを先に書きます。厚生労働省の解説パンフレットには、こうあります。

病気の判断は管理監督者にはできません。これは、産業医もしくはそれにかわる医師の仕事です。

出典:厚生労働省「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」

チェックリストを載せる記事は、たいてい最後に「これは診断ではありません」と書き添えます。この記事もそう書きます。ただ、これはあとから足した注意書きではありません。元になっている指針そのものが、上司には判断できないと明言しています。

では、なぜ気づく必要があるのか。パンフレットは続けて、管理監督者が「いつもと違う」と感じた部下の話を聴き、産業医のところへ行かせる、あるいは管理監督者自身が産業医に相談に行く仕組みを職場に作っておくことが望まれる、と書いています。

つまり上司に求められているのは、判断ではなく、気づいて、つなぐことです。以下は、その気づき方とつなぎ方の話です。

職場のストレスはどこに相談する?|4問で窓口を案内します

同じ立場の人は、どれだけいるのか|146人のデータ

ここからは当協会のデータです。メンタルヘルス支援士に申し込んだ146人に受講前に尋ねた「受講した動機」(複数回答)の集計です。

受講した動機(複数回答)人数割合
身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から86人58.9%
現在の仕事に活かせると思ったから85人58.2%
子育てに活かせると思ったから49人33.6%
自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から45人30.8%
就転職時に活かしたいと思ったから38人26.0%
なんとなく興味があるから24人16.4%
独立、起業時に活かしたいと思ったから13人8.9%
資格取得が趣味だから10人6.8%

1位が「身近に精神疾患または症状がある方がいる」86人(58.9%)、僅差の2位が「現在の仕事に活かせると思ったから」85人(58.2%)でした。資格を探していた人より、目の前に誰かがいて調べ始めた人のほうが多いという並びです。

職種で見ると、医療・福祉業が53人、教育業・学習支援業が30人。両方を選んだ方が3人いるため、対人援助職の実数は80人(54.8%)です。「現在の仕事に活かせる」を選んだ85人のうち65人がこの対人援助職で、残る20人は別の職種(サービス業14人、製造・建築業11人など)でした。

お断りしておきます。146人に「管理職かどうか」を尋ねた設問も、「部下の変化に気づいた経験があるか」を尋ねた設問もありません。示せるのは、どんな立場の人が学びに来ているかだけです。

次に紹介するのは、受講後アンケート248件からの抜粋です。管理職の声として集めたものではなく、回答者の多くは学校や保育、福祉の現場で働く方です。企業の管理職の回答ではないことをお含みおきください。原文のまま掲載し、省略した部分は(前略)(中略)(後略)と記しています。

(前略)周りに関わった大人身内の精神疾患の症状など思い出しながら勉強しました。また、職場にいる気になる方への対応など関わり方を見直す機会となりました。(後略)

40代の方の回答です。総合評価は「大満足」でした。「気になる方」という言い方が、この記事の10項目とほぼ同じ位置にあります。病名でも診断でもなく、気になるという段階。対応が変わったのではなく、関わり方を見直す機会になった、という書き方をされています。

子供相手の仕事なので、共感、受容など仕事で毎日やっています。大人に対してはやったことがないですが、最近担任から相談を受ける事が増えました。傾聴を心がけその後は自分の経験からのアドバイスはしますが、基本担任の先生の悩みに寄り添った答え方をしています。

60代以上の方の回答です。「子ども相手にはできていたが、大人に対してはやったことがない」——部下の相談を受ける立場になった方の実感と近いはずです。経験からのアドバイスもするが「基本は寄り添った答え方」と、自分の中で線を引かれています。

前任校でASDと思われる同僚がいて、自分がカサンドラ症候群のような症状が出たことがあります。ずっと無視され続けて嫌な思いをしましたが、周りの理解してくれる同僚に助けられました。話を聴く、共感する、は大事な支援だと思います。

30代の方の回答です。支える側ではなく、しんどくなった側だったという回答で、助けになったのは制度ではなく「理解してくれる同僚」でした。上司の立場で読むと、職場に理解している人が一人いるかどうかが効く、という話になります。

自分が相談するなら、と思いながら勉強しました。傾聴する方法が大切だと思いました。

40代の方の回答です。「自分が相談するなら」という置き換えは、声のかけ方に迷ったときの確認方法になります。自分が言われて答えられる問いかどうか。「最近どう?」は、たいてい答えられません。

メンタルヘルス支援士として活動中に発生する悩みや迷い、そういったことを共有し合えたりする場があったり、質問出来たりするといいなぁと思います。

40代の方の回答です。総合評価は「普通」で、当協会への要望として書かれたものです。学んだあと、一人で抱えることになるという指摘で、当協会にはまだそうした場がありません。正しい指摘なので、そのまま載せています。そしてこれは、この記事の内容とも重なります。相談を受ける側もまた、相談先を持っていないと続きません。

メンタルヘルス支援士について

ここまで、部下の「いつもと違う」に気づく手がかりと、気づいたあとのつなぎ方、声のかけ方をご紹介してきました。

こうした理解と合わせて、部下を持つ方や人事の担当者、支援の現場で働く方々の間でも、メンタルヘルスを学ぶ動きが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを、体系的に学べる民間資格です。厚生労働省の指針が「積極的傾聴法があります」とだけ書いている部分を、公式テキストの第4章では、かかわり行動の4つと基本的傾聴の連鎖として具体的に解説しています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、資格を取れば診断ができるわけでもありません。日々部下と関わる方が専門的な知識を身につける選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。何が学べて何が学べないのかは、別の記事で整理しています。

メンタルヘルス支援士の内容|学べること・学べないことを受講者248人のデータで

メンタルヘルス支援士の詳細について

Q&A|部下のメンタル不調のサインに関するよくある質問

Q1:チェックリストに多く当てはまったら、部下はメンタル不調ということですか?

いいえ。この10項目は診断のためのものではありません。元の資料にも、何個当てはまれば該当という基準はありません。パンフレット自身が「病気の判断は管理監督者にはできません」と書いています。当てはまった項目は、産業医や人事に伝える具体的な事実として使ってください。

Q2:印の数を本人に伝えてもいいですか?

伝えないでください。数字は、それ自体に意味があるように受け取られますが、この10項目にそうした意味はありません。本人に伝えるとよいのは、数ではなく、気づいた具体的な事実のほうです。

Q3:このチェックの結果を、人事評価や配置の判断に使ってもいいですか?

使わないでください。指針は、心の健康に関する情報を理由とした不利益な取扱いを禁じており、解雇、有期契約の更新拒否、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換や職位の変更などを、事業者が行ってはならない例として挙げています。このチェックリストは気づくための手がかりであって、評価や監視の道具ではありません。

Q4:病気かどうかも分からない段階で、相談してよいのですか?

構いません。判断は求められていないからです。伝えるのは解釈ではなく事実で、「今月に入って遅刻が3回」で足ります。産業医のいない職場では、地域産業保健センターが労働者数50人未満の事業場を対象に無料で応じ、精神保健福祉センターは関係者からの相談も受け付けています。記事末に一覧を置いています。

Q5:「いつもと違う」と感じても確信が持てません。様子を見てもよいですか?

確信を持つ必要はありません。確信は、上司が持つべきものとして想定されていないからです。「いつもと違う気がする」という段階のまま相談して構いません。ただし様子を見ると決めるなら、いつまで見るか何が起きたら相談するかを決めておいてください。期限のない「様子見」は、放置と区別がつかなくなります。

まとめ|他人と比べず、その人の普段と比べる

  • 病気の判断は、上司の仕事ではない。厚生労働省のパンフレットが「病気の判断は管理監督者にはできません。これは、産業医もしくはそれにかわる医師の仕事です」と明記している。上司に求められているのは気づいて、つなぐこと
  • 「いつもと違う」の基準は、その人自身の過去。他の部下や部署の平均と比べると、物静かな人の変化も、成績の高い人の低下も見えない
  • 10項目の6番目と7番目にある「あるいは、その逆」を落とさない。会話が急に増えた、妙に元気になった、も含まれる
  • 10項目はすべて勤怠・業務・見た目で、内面に踏み込んでいない。上司の位置から観察できる範囲に合わせて作られている
  • 気づいたら、解釈ではなく事実を書き留めてから相談する。「やる気がない」ではなく「今月に入って遅刻が3回」
  • 上司が一人で抱え込まない。指針は、管理監督者自身が産業医に相談に行く仕組みまで含めて求めている
  • 指針は「積極的傾聴法があります」で止まっている。その中身はかかわり行動の4つ相手が使った言葉をそのまま使うこと閉じられた質問から入ること
  • 上司はカウンセラーにならなくていい。上司と部下は「二重の関係性」に当たる
  • 病名が浮かんでも本人には言わない。印の数も伝えない。チェックの結果を人事評価や配置に使わない

本記事で紹介している情報について

項目内容
情報の性質チェックリストは、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の解説パンフレットに示された「いつもと違う」部下の様子をもとにした簡易版です。記事向けに表現を整えて掲載しています
権威の帰属チェックリストの内容は厚生労働省の資料に基づくものです。当協会は引用者であり、厚生労働省の監修・認定・推奨を受けたものではありません
原典厚生労働省「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」/「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日 健康保持増進のための指針公示第3号、改正 平成27年11月30日 同第6号)。リンクは記事末の「参考・相談先」に掲載しています
チェックリストの目的診断のためのものではありません。上司が「いつもと違う」に気づくための手がかりです
一次情報の性質一般社団法人 人間力認定協会「メンタルヘルス支援士 受講前アンケート」および「同 受講後アンケート」より抜粋
データ取得者一般社団法人 人間力認定協会
調査期間受講前アンケート:2025年2月27日〜2026年7月25日/受講後アンケート:2025年3月8日〜2026年8月20日
有効回答数受講前146件/受講後248件
設問「性別」「年代」「職種(複数回答)」「受講した動機(複数回答)」「自由にメッセージをお願いします」ほか
分析方法受講動機8分類・職種10分類の単純集計。いずれも複数回答のため、割合の合計は100%を超えます
注意点146人に「管理職かどうか」を尋ねた設問はありません。「部下の変化に気づいた経験」を尋ねた設問もありません。この記事で紹介する受講者の声は、管理職の声として集めたものではありません。示せるのはどんな立場の人が学びに来ているかだけです
一般情報の出典上記の厚生労働省資料。傾聴の技法はアレン・E・アイビイのマイクロカウンセリング技法、および厚生労働省「こころの耳」1 傾聴の基本的態度
注意点本記事は診断・治療を目的としたものではありません。受診の要否についても断定していません

【注意事項】

この記事で紹介しているチェックリストは、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の解説パンフレットに示された「いつもと違う」部下の様子をもとにした簡易版で、記事向けに表現を整えたものです。診断のためのものではなく、セルフ診断や他者の判定に使うことを想定していません。当協会は引用者であり、厚生労働省の監修・認定・推奨を受けたものではありません。

チェックの結果を、人事評価・配置・処遇の判断に用いないでください。指針は、心の健康に関する情報を理由とした不利益な取扱いとして、①解雇すること ②期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと ③退職勧奨を行うこと ④不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換または職位(役職)の変更を命じること ⑤その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること——を、事業者が行ってはならないものとして挙げています。

印の数を本人に伝えないでください。本人や第三者に病名を当てはめて伝えることも避けてください。心の状態や必要な支援は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。本記事は診断・治療を目的としたものではなく、受診の要否を判断するものでもありません。気になる状態が続く場合は、産業医・事業場内産業保健スタッフ、または医師・専門機関・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。当協会は医師による監修を受けていません。

参考・相談先

メンタルヘルス支援士バナー