文部科学省の2022年調査では、通常の学級に在籍する公立小中学生のうち、学級担任等が「知的発達に遅れはないものの、学習面または行動面で著しい困難を示す」と回答した児童生徒の推定割合は8.8%でした。
この8.8%は、医師が発達障害と診断した子どもの割合ではありません。調査の質問項目に対する担任等の回答をもとにした推定値であり、文部科学省も「発達障害のある児童生徒の割合を示すものではない」と注意しています。
8.8%は何を示す数字なのか
調査対象は、通常の学級に在籍する児童生徒です。担任等が、学習面または行動面の質問項目に回答し、その結果から著しい困難を示すと考えられる児童生徒の割合を推定しました。
したがって、8.8%という数字から「小中学生の8.8%が発達障害である」「8.8%が診断を必要としている」と結論づけることはできません。一方で、診断の有無にかかわらず、通常の学級に学習や行動上の困難を抱える子どもがいることを前提に、授業や環境を考える必要性を示す資料です。
2012年の6.5%から2.3ポイント上昇
同種の2012年調査では推定値が6.5%、2022年調査では8.8%でした。差は2.3ポイントです。ただし、この差だけで「発達障害そのものが10年間で増えた」とは断定できません。
調査対象、回収状況、学校現場の理解、困難への気づき方など複数の要因が結果に影響します。文部科学大臣の会見でも、増加理由の特定は困難であり、教員や保護者の特別支援教育への理解が進み、以前は見過ごされていた困難に目を向けやすくなった可能性が示されています。
「増加の理由を特定することはですね、やはりちょっと困難なのかな」
文部科学大臣記者会見(2022年12月13日、原文)
どのような「困難」を調べたのか
調査は大きく、学習面と行動面の困難を確認しています。
- 学習面:聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する
- 行動面:不注意、多動性・衝動性、対人関係やこだわり等
これらの困難は、発達障害だけでなく、学習環境、言語、心理状態、体調などさまざまな要因でも現れます。質問項目への該当だけで診断はできません。
支援につながっていない子どもがいる
2022年調査では、学習面または行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒のうち、校内委員会で「現在、特別な教育的支援が必要」と判断されていた割合は28.7%でした。見方を変えると、担任等が困難を把握していても、校内の組織的な判断や支援につながっていない場合があります。
これは、すべての子に同じ支援制度が必要という意味ではありません。まずは日常の困りごとを具体的に把握し、本人・保護者と学校が対話しながら、座席、指示の出し方、教材、休憩、評価方法などを検討することが重要です。
家庭と学校でできること
- 「できない」ではなく状況を記録する:いつ、どの課題で、どのように困るかを具体化します。
- 得意な方法を探す:口頭より図、長い課題より小分けなど、理解しやすい方法を試します。
- 本人の話を聞く:大人から見える行動だけでなく、本人が何を難しく感じているかを確認します。
- 学校内で共有する:担任だけに任せず、特別支援教育コーディネーターや校内委員会につなぎます。
- 必要に応じて外部へ相談する:自治体の教育・発達相談、医療機関、福祉サービスなどと連携します。
統計を見るときに避けたい誤解
- 8.8%を「発達障害の診断率」と表現する
- 2012年との差だけで、発達障害が増えた原因を断定する
- 該当する子どもを一つのタイプとして扱う
- 支援を診断のある子だけに限定する
まとめ
8.8%は、発達障害の診断率ではなく、通常の学級で学習面または行動面に著しい困難を示すと担任等が回答した児童生徒の推定割合です。数字の大きさを強調するだけでなく、目の前の子どもの困りごとを具体的に捉え、必要な支援につなげるために活用することが大切です。
発達障害と子どもへの関わりを体系的に学びたい方は、児童発達支援士の公式案内もご覧ください。
出典
情報確認日:2026年9月30日
