【最新統計:2.3%上昇】小中学生の8.8%に発達障害の可能性が

発達障害の可能性がある子についての統計情報が令和4年に更新されました。この調査は10年ごとに実施しており今回で3回目の調査となります。その調査結果について詳しく解説をしていきたいと思います。

統計の情報源について

はじめにここで紹介する統計がどのようなものなのか把握しておきましょう。

  • 調査名称:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について
  • 調査時期:令和4年1月~2月
  • 調査対象:全国の公立の小学校・中学校・高等学校の通常の学級に在籍する児童生徒
  • 回収及び回収率:88,516名分のうち74,919名分の回答が得られ、回収率は84.6%
  • 調査回答者:学級担任などが記入し、特別支援教育コーディネーター、または教頭(副校長)のいずれかによる確認ののち、校長の了解のもとで回答
  • 情報源:文部科学省HP(https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2022/1421569_00005.htm

まずは上記の中でポイントとなる点を2点解説します。

調査対象に特別支援学級や特別支援学校は含まれない

この調査では、特別支援学級や特別支援学校が含まれていないことがわかります。あくまでも「通常の学級に在籍する」という前置きがありますので、その点を理解しておきましょう。支援学級や支援学校に在籍する子どもたちも含めると、更に数字は大きくなる可能性があるという認識をしておくと良いでしょう。

回答者は基本的には担任の先生

学級担任が記入が基本となっているため、先生の判断によってかなりばらつきが出る可能性があります。先生は医師ではないため、正確な診断はできないでしょう。日々の生活や学習成果などを鑑みて判断をされることでしょう。ただし、どうしても人間の感情も含まれてしまう可能性があります。調査人数がかなり多いので、そういったことも含め平均化され統計として意味のある数字であることは間違いないと思いますが、この統計の数字が100%正しいということでもない点は理解しておきましょう。

主な調査結果

それでは主な調査結果について確認をしていきましょう。今回は小中学校の統計データに絞り紹介をさせて頂きます。

8.8%が発達障害の傾向!?

「学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒数の割合は推定8.8%となっています。

この統計では「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動で著しい困難を示す」としていることから、知的障害は含まれていません。学習面又は行動面でという点を紐解くと、それが発達障害のこととほぼ同義になっていることがわかります。

  • 学習面で著しい困難を示すとは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」の一つあるいは複数で著しい困難を示す場合を指す
  • 行動面で著しい困難を示すとは、「不注意」「多動性-衝動性」「対人関係やこだわりなど」について一つか複数で問題を著しく示す場合を指す

つまり学習面は「学習障害(LD)」のことを指しており、行動面は「ADHD」「自閉スペクトラム症」を指していることになります。そのことから、この統計結果を簡潔な表現にまとめると「8.8%の子どもが発達障害の傾向がみられる」ということになります。

この統計は10年前にも実施されていますが、その時にも同じ質問がされていますが、、その時の数字は「6.5%」でした。つまり、10年間で2.3%上昇していることがわかります。但し、だからと言って本当に発達障害が増えたのかどうかは何とも言えません。10年前だとまだ発達障害についての認知は低かったと言えるでしょう。最近では発達障害に関する書籍や資格、情報が出まわるようになったので、それに照らし合わせ先生方も「あの子もそうかも」とピックアップしていると思われます。そのため理解が広がったが故の上昇と言えるかもしれません。

学習面での困難が最多!

「学習面、書く行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒数の割合は以下の通りです。

  • A=学習面で著しい困難を示す:推定6.5%
  • B=「不注意」「多動性-衝動性」の問題を著しく示す:推定4.0%
  • C=「対人関係やこだわりなど」の問題を著しく示す:推定1.7%

こちらを見ると学習面での困難が最も多くなりました。つまり学習障害(LD)の傾向がみられる子が多くなっているということでしょう。

10年前の統計データと比較しても、3つすべての項目で今回の調査の方がパーセンテージが上昇しています。

男女比では男子が女子の2倍以上!

「学習面、書く行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒数の男女別集計は以下の通りです。

  • 男子:推計12.1%
  • 女子:推計5.4%

さらに細かく見ていきます。

  • A=学習面で著しい困難を示す:男子8.3%:女子4.5%(男子が女子の1.84倍)
  • B=「不注意」「多動性-衝動性」の問題を著しく示す:男子6.6%:女子1.4%(男子が女子の4.71倍)
  • C=「対人関係やこだわりなど」の問題を著しく示す:男子2.7%:女子0.7%(男子が女子の3.86倍)

特にBとCの調査で男子の方が女子よりもかなり多いということがわかります。BとCで該当するのは、ADHDと自閉スペクトラム症です。これだけのデータで全てを物語ることはできませんが、数字の開きが大きいのは確かなので、一つの傾向としては認められるものではないかと思います。

支援が必要と判断されていない子が70.6%

上記の調査で、「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた推定8.8%の児童が支援を必要と判断されているか?という調査では、なんと70.6%が「必要と判断されていない」となっています。これは担任の先生が必要と判断していないということなのか、担任・学年主任・支援員・教頭・校長などの総合的な判断でそうしているのか明確ではありません。

ただ明確に言えるのは「担任の先生が、学習又は行動面で著しい困難を示していると判断した児童の70.6%は、特別な支援は必要ないと判断されている。つまり明確な対策は取られていない」ということです。このしわ寄せはどこに行くのでしょう。困難を示している児童も苦しんでいるかもしれません。また他の児童も影響を受けているかもしれません。どのような対応をとるのか、難しい部分ではありますが対策が必要であることは間違いないでしょう。

統計を見て感じたこと

他にもたくさんの統計情報が乗っているので、気になる方は文部科学省のHPよりご確認ください。

私はこの統計を見て「認知がかなり広がってきた」ことを感じました。それと同時に「先生方の負担もかなりのものだろう」と感じます。発達障害に関する知識でいえば保護者の方が、先生よりもあるというケースは多そうです。当協会の児童発達支援士を受講される先生方も沢山おり、認知は拡がっていると思いますが、もともと発達障害に関する専門家ということではない先生方からすると大変なのは間違いありません。

支援が必要だと判断した場合には、個別の教育支援計画を作成する必要も出てくるでしょう。それも担任の先生と支援員の方と協力しながら作成していくでしょう。当然保護者への面談も必要になるでしょうから、先生の負担が大きいことは明確です。

学校側の支援体制も以前に比べれば整ってきていると思います。支援員が常駐していたり、通級クラスが増えたり。ただこれはこれで先生方との連携が難しいという話も聞きます。すぐに全てが改善し良い方向に行くものではないでしょう。試行錯誤をしながら変更に変更を重ねて形が出来るものです。

その意味で言えば、保護者や先生方の発達障害への理解が広がったことが「支援の始まり」だったのです。更に認知を拡げていくことで、より皆が過ごしやすい学校になっていくと信じています。

私たちの合言葉は「理解は支援の第一歩」

すべてはここから始まるのです。

【まとめ】小中学生の8.8%に発達障害の可能性が

いかがだったでしょうか。

このような統計情報を見ることで、気づきを得られたのではないでしょうか。

苦しむ保護者や子どもがいる限り、私どもの活動は変わりません。理解を広めていく。それが普通になれば偏見やいじめはなくなります。

共に支援の輪を拡げていきましょう!

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