発達障がい者が注意すべき精神疾患(うつ病・不安障害・強迫性障害)とは

今回は、発達障がい者が注意すべき精神疾患について紹介します。なぜこのテーマを紹介するのかといいますと、発達障がい者と精神疾患は切っても切れない関係があるからです。発達障がい者への支援を行う時に、精神疾患に繋げないようにすることは非常に大切になります。一緒に学んでいきましょう。

発達障害と精神疾患の関係性とは

発達障害は脳の障害であり、完全に治すという考え方はあまり一般的ではありません。折り合いをつけて、対処をしていくということが重要だと考えられています。ただこの分野の研究は現在も進められている段階なので、医学がさらに進歩していった場合は、完全に治すという考え方が出てくる可能性はあります。しかし、現段階では前述した通り、対処法を身に付けていくことが求められているのです。

そのことを頭に入れたうえで、この先を読み進めてください。

発達障がい者の本当の困りごとは、発達障害の特性そのものではなく、その特性がもたらす様々なトラブルです。例えば、自閉スペクトラム症の「空気を読めない」という特性自体が問題であるというよりも、空気を読めないがために人が嫌がる言葉を口にしてしまい、交友関係が築けない。この点が問題なのです。交友関係が築けないことで、不登校になったり、引きこもりになったり。遂にはうつっぽくなったり。このような負の連鎖が発生します。これが「発達障害の二次障害」なのです。

二次障害という障害はありません。あくまでも、発達障害の特性を起因として、二次的な症状(障害)が出ることを二次障害と言います。発達障がい者を支援する場合は、二次障害に繋げないようにすることが非常に重要です。

その為に出来ることは、自己肯定感を高めることが重要です。ここでは簡単な説明に留めますが、自己肯定感を高めるためには「成功体験」が必要です。一般的に発達障がい者は、その特性がゆえに、他者から叱責を受けるケースが多くなります。そうなると自己肯定感は低下します。そのため、相手の特性を理解した上で支援を行い、成功体験を積み上げていけるよう工夫をしてくのです。そのために「社会生活技能訓練(ソーシャルスキルトレーニング)」を行ったり「スモールステップ」という心理学テクニックを利用していきます。

ただし、対策をとっても二次障害に繋がってしまうケースは残念ながらあるでしょう。その時に支援者が慌てたり、苦悩したり、落ち込んでしまうと、支援者までもが精神疾患になってしまう可能性も出てきます。非常に苦しい状況であることが想像できるでしょう。

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二次障害で気を付けるべき精神疾患

それでは発達障害の二次障害としてよく挙げられる項目を紹介します。ここに挙げたもの以外の疾患になる可能性もありますので、参考程度に留めてください。ここでは「内在化障害」と「外在化障害」に分けて紹介します。

二次障害:内在化障害

  • 不登校
  • 引きこもり
  • うつ病
  • 適応障害
  • 不安障害(パニック症・広場恐怖症など)
  • 強迫性障害
  • アルコール依存症
  • 薬物依存症
  • 自律神経失調症

二次障害:外在化障害

  • 暴力
  • 暴言
  • 常にイライラしている
  • 反抗挑発性障害
  • 情緒不安定
  • 自傷行為
  • 他者への敵意や攻撃性
  • 家出など

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発達障がい者の二次障害の危険性

このように、様々な症状が二次障害として現れることがあります。様々な研究で、発達障害と精神疾患の併存率について報告が上がっています。それらの報告を簡単な表現でまとめると「発達障がい者の精神疾患、依存症の併存率は一般水準と比較して高い」ことがわかっています。ある調査では「不安症(43~84%)、うつ病(2~30%)、強迫症(37%)、注意欠如多動症(59%)、反抗挑発症(7%)、チック症(8~10%)、てんかん(5~49%)、睡眠障害(52~73%)などを併存する確率が高い」と報告しています。【参考資料1】

更に、私どもの協会で行っている「受講者へのアンケート」でも、「発達障害だった子供が自死した」「自傷行為を繰り返している」「自殺未遂をはかった」などの回答が複数見られています。当方のアンケートは統計として扱うには、データが少ないかもしれませんが、実際にあった事例として参考にすべきだと考えます。

自殺や自傷行為などの行為の多くは、中学生以上で発生しています。【参考資料2】高校、大学、社会人になるにつれ、求められることや責任も大きくなっていくでしょう。その時に、発達障害の特性が起因となり、悩みを抱えてメンタルに不調をきたせば、二次障害に繋がっていく。そして誰にも相談できず、自傷行為をしたり自殺未遂をしてしまう。このようなケースがレアなケースではなく、普通に発生しているのです。

二次障害を未然に防ぐため、精神疾患の徴候にいち早く気づくため、適切な支援をするため、深刻な状況を回避するために精神疾患について確認をしていきましょう。

【参考資料1】Levy SE, Mandell DS, Schultz RT:Autism. Lancet 374:1627‒1638, 2009
【参考資料2】令和5年中における自殺の状況|厚生労働省自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課

うつ病の特徴と症状

うつ病は多くの方がご存じのことでしょう。うつ病は、気分障害の1つといわれています。うつ病とよく似ている精神疾患として「躁うつ」という言葉があります。現在では躁うつのことを双極症と呼んだりしますが、明確に違いがあるのでその点を先に紹介します。

うつ病は、暗く落ち込んだうつ状態のみが症状であるのに対し、躁うつ(双極症)は、暗く落ち込んだうつ状態に加え、気分が高揚して開放的になったりする躁状態も現れる疾患となります。

うつ病の特徴や症状としては以下のようなものがあります。

  • 悲しい気分が続いている
  • 憂うつな気分が続いている
  • 沈んだ気分が続いている
  • 疲れやすい
  • 元気が出ない
  • 何事にも意欲がわかない
  • だるい感じがある
  • 集中力の低下
  • 寝つきが悪い
  • 寝てもすぐに目が覚めてしまう
  • 人と会うのがおっくうになる

これらは症状のすべてではなく一部となります。ただし、見ていくとなんとなく傾向がわかり「うつ病ってだいたいこういう症状がでるのか」とわかっていただけたことでしょう。

たったこれだけの事でも、知っていると知らないでは大きな差があります。上記のような特徴を知っていれば、自身に変化があった時や身近な方に変化があった時に「もしかして・・」と思い注意深くなることができるでしょう。当然医者ではありませんから、診断を下すことは絶対にNGですが、「少なくともメンタルが不調気味」ということはわかり、何かしらの対策が取れるはずです。

外部リンク
うつ病やPTSDなどの代表的な精神疾患(精神障害)の特性やきっかけって何?

不安障害(広場恐怖症・パニック症)の特徴と症状

不安障害の中には、広場恐怖症やパニック症、場面緘黙などがあります。その中でも、ニュースなどでも耳にすることが多い「広場恐怖症」と「パニック症」について紹介をします。

広場恐怖症の特徴と症状

広場恐怖症とは、逃げることが困難で助けが得られないかもしれない状況や場所にいる時に、強い恐怖や不安を抱く状態の事を言います。「広場」と名前がついていますが、閉所恐怖症なども「広場恐怖症」だと言えます。広場恐怖症は下記のような状況で発生することがあります。

  • 公共交通機関(バス・電車・飛行機)
  • 劇場
  • 映画館
  • 病院
  • 人込み
  • 車の渋滞

上記のようなケースを苦手としていたり、その状況になると強い恐怖や不安に襲われてしまいます。そのような状況に遭遇すると動悸や発汗、息苦しさ、吐き気、めまい、頭痛、胃痛、腹痛、瞼の痙攣、赤面などの症状が現れます。

パニック症の特徴と症状

パニック症とは、強い苦痛や不安、恐怖などが突然現れて短時間で治まる発作のことをいいます。芸能人が「パニック症を公表」などといったニュースも目にしたことがあるかもしれません。パニック症の有病率は1~3%程度だと言われているので、そこまで珍しい病気というわけではありません。高齢者よりは若者に発症しやすいとも言われています。パニック症の症状は下記のようなものがあります。

  • 動悸がする
  • 心拍数があがる
  • 身震いや震えが起こる
  • 息切れがある
  • めまいやふらつきがある
  • どうかなってしまうのではなかと恐怖を覚える
  • 死ぬのではないかと恐怖を覚える
  • 身体の一部がしびれたりする

パニック症は、パニック発作が起こった時に上記のような症状が現れます。何かしらの強いストレスを受けたことを起因として発症することがあると言われています。

外部リンク
不安障害 こころの病気について知る|厚生労働省

強迫性障害の特徴と症状

強迫性障害は、自分の意志に反して強い不安感や不快感といった強迫観念を持ち、それを打ち消すための強迫行為を繰り返す精神疾患です。「強迫」というと他者に対して何か強迫まがいのことをしているようですが、そうではありません。自分の中に「●●やらなければ!」という強迫的な考えや思いが浮かび、誰かに脅迫されているかの如くその行為をしてしまうことです。強迫観念と強迫行為がセットになっているのも特徴です。どのような事例があるか紹介します。

  • 戸締りしたかな?(強迫観念)➡一度家に帰って確認する(強迫行為)
  • ストーブけしたかな?(強迫観念)➡一度家に帰って確認する(強迫行為)
  • 手にばい菌がついてる気がする(強迫観念)➡何度も手を洗う(強迫行為)
  • 強盗が来るもしれない(強迫観念)➡必要以上の対策を講じる(強迫行為)

このようなケースとなります。今回は皆様に理解していただきやすいように、かなり簡略化して紹介をしました。心配性な人が強迫症になるケースも多いといいますので、心配性な人のイメージを思い浮かべることで、強迫症がどのようなものかもイメージがつくかもしれません。

上記だけ見ると、それほどたいしたことではないのでは?と思われるかもしれません。しかし、実際には社会生活が出来なくなるほどに「強迫観念と強迫行為」が強くなるのです。仕事をしていても、戸締りが気になって、何度も家に戻ってしまうことがあります。こうなると社会生活に不都合が出てくることでしょう。そのため、症状によっては入院をして治療することもある病なのです。

メンタルヘルス支援士が求められる理由

ここまで代表的な精神疾患について確認をしてきました。

ただし、ここで紹介した情報はほんの一部であり、これだけでは支援を行うには不十分です。そのため、メンタルケアや心理についての学びを更に深めていくことが求められます。難しく感じるかもしれませんが、メンタルケアや心理の勉強をすることで、次のようなメリットがあります。

  • 良好な人間関係を構築しやすくなります
  • 自身のメンタルヘルスを向上させることができます
  • ポジティブな考え方ができるようになります
  • 自身や近親者の精神疾患を未然に防ぐことができます
  • 悩んでいる方や苦しんでいる方に適切な支援を行うことができます
  • ビジネスの場面で、成果をあげられるようになります
  • 子育てに関する悩みやストレスが軽減します
  • 子どものいじめ、引きこもり、不登校を減らすことに貢献できます
  • 自身や子どもの自己肯定感を高めることができる
  • 発達障がい者のよき理解者になることができます
  • 発達障がい者の対人関係や業務関係のトラブルを未然に防ぐことができます

こちらをご覧頂くと分かるように、日常的にスキルを活かすことができるのです。当協会が2025年3月より認定開始する「メンタルヘルス支援士」資格では、メンタルケアやカウンセリングの基礎知識を習得できるようになっています。極力専門用語を使わないように配慮したり、ボリュームも適度に抑えており2,3カ月の履修で合格できるようにしています。

精神疾患を「自分とは関係のない世界」と捉えず、身近に起こるかもしれない問題として捉えて行動に移せると良いですね。精神疾患は早期発見・早期治療が重要だと言われていますから、その心配がないタイミングで知識を身に付けておくことは非常に価値があると言えるでしょう。

メンタルヘルス支援士の詳細ページは現在作成中です。本ブログサイトまたは協会公式サイトで随時紹介してまいります。

もちろん他の団体が認定する資格でも良い学びが得られますので、そちらも検討してみてください。

外部リンク
心理カウンセラーになるには? メンタルケアに関する資格と取得方法

【まとめ】発達障がい者が注意すべき精神疾患(うつ病・不安障害・強迫性障害)とは

以上となります。

今回は発達障がい者と精神疾患につて詳しく紹介しました。さらに詳しく知りたいという方は是非共に学び、理解を深めていきましょう。

合言葉は「理解は支援の第一歩」です!

最後までご覧頂きありがとうございました。

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