発達障がい児の癇癪・パニック、どう対応する?~ASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちの事例から学ぶ~

「うちの子、一度スイッチが入ると手がつけられないくらい癇癪を起こすんです…」
「突然パニックになって泣き叫ぶけど、理由がわからなくて…」

子育て中、特に発達障害の特性を持つお子さん、中でもASD(自閉スペクトラム症)と診断された、あるいはその傾向があるお子さんを育てる保護者の方々から、このようなお悩みをよく耳にします。癇癪やパニックはお子さん自身も辛いものですが、目の当たりにするご家族や支援者にとっても、どう対応すれば良いのか途方に暮れてしまう大きな課題の一つです。

しかし、癇癪やパニックには何らかの「きっかけ」や「理由」が隠されています。そして、その対応には子どもの特性を理解した上で、根気強く向き合うことが求められます。

この記事では、受講者より実際に寄せられた発達障害のあるお子さんたちの癇癪・パニック事例と、それに対する周囲の大人たちの具体的な対応策をご紹介しながら、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんたちへの理解を深め、より良い関わり方のヒントを探っていきます。

なぜ癇癪・パニックは起こるのか?ASD(自閉スペクトラム症)の特性との関連

ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんたちが癇癪やパニックを起こしやすい背景には、その特性が大きく関わっています。

  • 感覚の過敏さ・鈍麻さ: 特定の音、光、匂い、触覚などに過敏に反応したり、逆に気づきにくかったりします。エアコンの作動音や、特定の素材の服がダメということも。

  • こだわりの強さ・変化への苦手意識: いつもと同じ手順や環境を好み、急な変更や想定外の出来事に対して強い不安を感じやすい傾向があります。

  • コミュニケーションの困難: 自分の気持ちや要求を言葉でうまく伝えられなかったり、相手の言葉の意図を正確に理解することが難しかったりします。

  • 感情のコントロールの難しさ: 不快な感情や興奮を自分でうまく処理したり、落ち着かせたりすることが苦手な場合があります。

  • 見通しの立たなさへの不安: これから何が起こるのか、いつ終わるのかなどが分からない状況に強いストレスを感じます。

これらの特性が複雑に絡み合い、お子さんにとって耐え難い状況になったとき、癇癪やパニックという形でSOSとして現れるのです。

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【事例紹介】癇癪・パニックのリアルと対応のヒント

それでは、実際に寄せられた事例を見ていきましょう。一つひとつの事例から、具体的な対応の糸口が見つかるかもしれません。

ケース1:エアコンの蓋が開いていないとパニック!~こだわりと視覚支援~

(状況説明)エアコンの風が出る蓋が空いていないと、部屋に入れずパニックになり泣いて、エアコンを使わない季節が大変。エアコンの音に怖がるケースはよくあるが、逆パターンに遭遇したのは初めてだった。

(対応方法)自宅ではエアコンの蓋を稼動してなくても開けっ放しにしておけば入れるので開けっぱなしで対応していると聞いたが、毎回出来る環境に連れて行く事はこの先難しいので、絵カードに「暑い」「寒い」「○」の3種類をエアコンの送風口に貼り、環境に応じて使う家電であることを示した。

(子供の反応)最初は絵カードを不思議そうに見ていたが、寒い時と暑い時にしか、エアコンの風は出ない事を説明すると納得して部屋に入れるようになった。

この事例は、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんに見られる「特定の状態へのこだわり」が顕著に現れたケースです。「エアコンの蓋が開いている状態」がその子にとっての安心できる部屋の条件だったのでしょう。しかし、常にその状態を保つのは現実的ではありません。

ここでの素晴らしい対応は、絵カードという視覚的な支援を用いたことです。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの多くは、言葉だけの説明よりも視覚的な情報の方が理解しやすい傾向があります。「暑い」「寒い」といった具体的な状況とエアコンの稼働を結びつけ、「使わない時は蓋が閉まっているのが普通」であることを示すことで、お子さんは「なぜ蓋が閉まっているのか」という理由を理解し、納得することができました。根気強い説明と、本人が理解できる方法での情報提供が功を奏した好例です。

ケース2:感情が爆発!公共の場での癇癪とクールダウン

(状況説明)感情のコントロールが出来ないことから癇癪につながった。大きな声で叫んだり、ものすごい勢いで泣き出したりした。寝転んでしまった。

(対応方法)公共の場で叫ばれるとまわりの目が確かに気になるが、身の危険やまわりへの迷惑がない限りは 冷静に対応した。まわりへ迷惑になる場面では 叫んでも大丈夫な場所まで頑張って連れて行ってからスルーしながらクールダウンできるまで見守った。クールダウンしてから振り返りをしてお互いに話しながら1つずつ心の引っ掛かりを落としていった。

(子供の反応)叫んでも大丈夫な場所に連れてくと やはりこちらに相手をしてもらってると思うのかクールダウンまでの時間がかかった。それでも動じずに冷静に対応することで時間はかかっても落ち着くことができた。癇癪おこした内容に否定の声掛けはせず、反対に同情して気持ちを落ち着かせた。すると徐々に本人が平常に戻りました。そして最後は信用してるよと声掛けしている

感情のコントロールの難しさは、発達障害のあるお子さんによく見られる課題です。公共の場での癇癪は、保護者の方にとって精神的な負担も大きいものです。

この事例で注目すべきは、保護者の冷静かつ一貫した対応です。まず、身の危険がない限りは冷静に見守り、周囲への迷惑が懸念される場合は安全な場所へ移動させています。これは、お子さんが安心して感情を出し切れる環境を作ると同時に、二次的なトラブルを防ぐためにも非常に重要です。

そして、「スルーしながらクールダウンできるまで見守った」という部分。癇癪の最中にあれこれ言っても、お子さんの耳には届きにくいものです。まずはクールダウンを優先し、落ち着いてから「振り返り」をすることで、お子さん自身も自分の感情や行動を客観視する機会を得られます。

さらに、「否定の声掛けはせず、反対に同情して気持ちを落ち着かせた」という対応は、お子さんの感情に寄り添う姿勢を示しており、安心感と信頼関係を育む上で非常に効果的です。「あなたの気持ちはわかるよ」というメッセージが伝わることで、お子さんは受け入れられていると感じ、落ち着きを取り戻しやすくなります。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、自分の気持ちを理解してもらえたと感じることで、安心することが多いのです。

ケース3:思い通りにならない!リハビリ中の癇癪と自己対処

(状況説明)自宅でのリハビリ中、思い通りにならず癇癪を起こして母親に叱られた

(対応方法)母親は子どもに言い聞かせていたが、セラピストの私はあえて無反応をした

(子供の反応)自分で別部屋に行ってクールダウンして戻ってきた時には落ち着いて次のリハビリに取り組めた

この事例では、セラピストの「無反応」という対応が、結果的に子ども自身の力によるクールダウンを促しました。母親が叱ったり言い聞かせたりする中で、セラピストが異なるアプローチを取ったことで、子どもは感情的な刺激から離れ、自分で落ち着く方法を見つけることができたのかもしれません。

ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの中には、感情が高ぶっている時に周囲から過度な注目を浴びたり、言葉で説得されたりすることが、かえって混乱を招く場合があります。時には、そっと見守り自分で気持ちを整理する時間と空間を与えることが有効な場合もあることを示唆しています。ただし、これは安全が確保されていること、そしてその子に合った方法であることの見極めが重要です。

ケース4:伝わらない苦しさからのパニックと、その子に合った鎮静法

(状況説明)思いが伝わらない、集中力がないので、いきなり話しかけられた言葉がショックだった

(対応方法)息子は、ほっぺを叩いて声掛けをすると落ち着いたので、パニックで泣いてる時はそれで。衝動的に手当り次第、口に入れる時もあり、その時は馬乗りになり、声掛けしながら掻き出したり。

(子供の反応)対応が私だと割とスムーズに落ち着きます。パニックは青年期になると大分落ち着いて来たので、今は後者の方が気になるかなと。

コミュニケーションの困難は、ASD(自閉スペクトラム症)の中心的特性の一つです。自分の思いをうまく伝えられない、相手の意図を誤解してしまう、予期せぬ声かけに驚いてしまうなど、日常の些細な出来事がパニックの引き金になることがあります。

この事例では、「ほっぺを叩いて声掛けをする」という、その子特有の落ち着かせ方を見つけています。これは感覚的な刺激が、その子の混乱した状態をリセットするのに役立っているのかもしれません。また、「対応が私だと割とスムーズに落ち着きます」という記述からは、特定の人との安心できる関係性がパニックからの回復を助けていることがうかがえます。

その子にとって何が心地よい刺激で、何が不快な刺激なのかを理解し、その子に合った鎮静法を見つけ出すことは、パニック対応において非常に重要です。

ケース5:学校でのストレスと家庭での受容的対応

(状況説明)学校で嫌なことがあったりいじめられて帰ってくると帰宅後必ず荒い言葉づかいや、ランドセルを投げたり癇癪が強く出ます。

(対応方法)息子がどんなに荒ぶっていてもいつも通りに『おかえり~』と明るく声をかけランドセルを投げた事や荒い言葉づかいには触れず、いつも通りにオヤツを用意して、とにかくいつも通りに過ごしてあげます。我が家ではどうしたの?何があったの?ランドセル投げちゃダメでしょ!などの声かけはしません。もちろん投げつけられたランドセルを戻す事もしません。

(子供の反応)黙っておやつを食べるうちにモヤモヤした気持ちが落ち着き興奮が落ち着くと何があったのか自分で話してくれる事が多いです。夕飯の後、宿題や時間割をする際ランドセルがいつもの場所に無いと『はっ!』と思い出して恥ずかしそうにランドセルを投げた事を自分なりに心の中で反省している様です。

学校という集団生活の場は、発達障害のあるお子さんにとって多くのストレス要因を抱えています。この事例のお子さんは、学校でのフラストレーションを家庭で爆発させてしまうタイプです。

ここでの保護者の対応は、まさに「安全基地」としての家庭の役割を体現しています。荒れた行動に対して叱ったり問いただしたりせず、まずは「いつも通り」接することで、お子さんに「ここは安心して感情を出せる場所だ」というメッセージを送っています。

ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、自分の感情を言葉で整理して表現するのが苦手な場合があります。無理に聞き出そうとせず、まずは気持ちが落ち着くのを待ち、本人が話せるタイミングで話せるように促す姿勢が、結果的に子ども自身の内省と自己開示に繋がっています。「ランドセルがない」ことに気づいて反省する様子は、子ども自身が自分の行動を振り返り、社会的なルールを理解しようとしている成長の表れと言えるでしょう。

ケース6:YouTubeの視聴時間と見通し、そして根気

(状況説明)ずっと観たいYouTube。視聴時間の約束は30分。近視もあるため、それを理解してもらった上で本人もその時間で良いと言って観るが、時間が来ると「(時間がくるのが)早い!」「もっと観たい」と暴言を交えてあたってくる。

(対応方法)目のことを話し、別のことに意識を向けさせるよう声掛け。その際優しい口調を心掛ける。どうしても駄目な時は「今観ているのでおしまいにしてみよう」と提案。

(子供の反応)時間をオーバーすることもあるが、段々と自分から終了する姿勢が見えてきた。何度も同じことを伝え、繰り返し繰り返しだが、きっとそういう積み重ねや忍耐が必要だと感じている。

楽しみな活動から切り替えることは、多くの子どもにとって難しいものですが、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの場合は特に、見通しの立たなさやこだわりの強さから、より強い抵抗を示すことがあります。

この事例では事前に「30分」という約束をしていますが、時間になった時の切り替えが課題です。対応としては、

  1. 理由の再確認(目のこと)

  2. 代替案の提示や意識の転換(別のことへの声かけ)

  3. 優しい口調(高圧的にならない)

  4. 妥協点や最終通告(「今観ているのでおしまいにしてみよう」)
    を根気強く行っています。

「時間をオーバーすることもあるが、段々と自分から終了する姿勢が見えてきた」という結果は、一朝一夕に得られたものではなく、「何度も同じことを伝え、繰り返し繰り返し」という忍耐強い関わりの賜物です。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんへの支援では、この「繰り返し」と「積み重ね」が非常に重要になります。タイマーを使って残り時間を視覚化するなどの工夫も、さらに有効かもしれません。

ケース7:買ってもらえないパニックと気持ちの代弁

(状況説明)療育園でのキャンプでのこと、サービスエリアでトイレ休憩だけの予定だったのですが、ソフトクリームの看板を見ると買って欲しいのに買ってもらえないということにパニックを起こしました。また、水族館見学後、お土産などは買えないことを伝えるとパニックになりました。

(対応方法)息子の気持ちを理解するような声かけをしました。買って欲しかったんだね、食べたかったんだね、そうだよね、いつもお家の旅行なら買ってるもんね、など。その後に、今日は園のキャンプだからお買い物はできないんだよ。また今度家族のお出かけで買おうね、など。

(子供の反応)しばらくすると落ち着き、「今度は買います、今日は買いません」と言いながら自分に言い聞かせ納得させようとする姿が見られました。

予期せぬ魅力的なもの(ソフトクリーム)や、いつもと違うルール(お土産が買えない)は、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんにとって大きな混乱と欲求不満を引き起こします。

この事例の素晴らしい点は、まずお子さんの気持ちを全面的に受け止め、代弁していることです。「買って欲しかったんだね」「食べたかったんだね」と共感の言葉を伝えることで、お子さんは「自分の気持ちを分かってもらえた」と感じ、安心感を得られます。

その上で、「今日は園のキャンプだからお買い物はできない」という明確な理由とルールを伝え、「また今度家族のお出かけで買おうね」という代替案や将来の見通しを示すことで、お子さんは状況を理解し納得しやすくなります。「今度は買います、今日は買いません」と自分に言い聞かせる姿は、まさに感情をコントロールしようと努力している証です。

ケース8:家に入りたくない癇癪と「潜む欲求」へのアプローチ

(状況説明)外出から変えった時に家に入りたくない。夕方や天候が悪くなったが、家に入りたくなく無い。本人は外で遊びたいが、保護者の判断で家に入れたい。本人の意思に反して家に帰そうとした場合、何度も手を振り切り反発、段階を経て癇癪を起こしていました。

(対応方法)遊びたいという意思による欲求の他に疲れて眠い。喉が乾いている。お腹が空いている。等、本人はその時は遊びたいでいっぱいの欲求の中に本人が気づかない欲求が潜んでいることに気づきました。「あれー?実はその暴れたい気持ち、遊びたいんじゃなくて、お腹が空いているからじゃない?お家に入って、クッキー食べない?もうすぐご飯だけど、今お家に入ったら特別に1枚だけあげるよ!」など、潜む欲求に対してアプローチをしました。そして、落ちついた後に家に帰れたことを褒めてから、遅い時間や天候の悪化により寒くなってからに外で遊ぶと風邪を引くかもしれない。など、家に帰らせたいと思った理由を手を握りながら相談しました。

(子供の反応)潜む欲求が正しい場合「そうかもしれない!」と自ら家に入ります。違う場合には従いませんので、次のアプローチに切り替えます。癇癪が本格化する前だと聞いてくれます。そのうち、理由の方を本人が理解するようになったのか、自ら「風邪ひきたくないからお家に帰る!」と家に帰るようになりました。他の癇癪のシチュエーションでも、繰り返しアプローチしていたら、癇癪が本格化しなくなってきました。

この事例は、子どもの行動の表面的な理由だけでなく、その奥に隠された本当のニーズ(潜む欲求)に気づき、アプローチすることの重要性を示しています。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、自分の体調の変化や生理的な欲求に気づきにくかったり、それを適切に表現できなかったりすることがあります。

「遊びたい」という強い主張の裏に、「お腹が空いた」「疲れた」といった別の要因が隠れている可能性を考慮し、具体的な提案(クッキー)をすることで、子どもの注意をそちらに向けスムーズな場面転換を促しています。

そして、落ち着いた後に「なぜ家に帰る必要があったのか」という理由を丁寧に説明し、相談する形で伝えることで、子ども自身が状況を理解し、納得する力を育んでいます。「風邪ひきたくないから帰る!」という自発的な言葉は、まさにその成果です。このアプローチを繰り返すことで、癇癪の予防にも繋がっています。

ケース9:牛乳パックの失敗からのパニックと成功体験への導き

(状況説明)小学校に入学して間もない頃です。初めての給食で牛乳が飲みきれず、残すことになった息子。牛乳パックの口を開き、食缶に戻さないといけない状況になりました。事前に先生からやり方は教えてもらっていたようですが、苦戦し、力いっぱいパックを開こうとしたら牛乳パックが勢いよく揺れ、周囲に牛乳を撒き散らしてしまったそうです。拭き取りなどは先生も手伝ってくれたようですが、慣れない環境での失敗に息子の心は折れてしまったようです。

(対応方法)帰って来るなり、「もう明日から学校へは行かない。」と泣きじゃくる息子。ネットで検索すると、牛乳パックの空け方を紹介してくれている動画がありました。それを見せ、スクリーンショットして写真付きの手順書を作りました。

(子供の反応)それをファイルに挟んで持って行って、見ながら開けるといいよね、とアドバイスしたところ、「やってみる」と。さらに自宅でも練習しました。その日も飲みきれず、残すことになったようですが、手順書も見ずに上手くパックを開けられたそうです。それから数週間お守りがわりに手順書を持参していましたが、実際には見ることはなかったようです。

新しい環境や作業での失敗は、誰にとっても辛いものですが、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんにとっては、それが大きなパニックや登校拒否に繋がることもあります。見通しの立たないことや、完璧にこなせないことへの不安が強いためです。

この保護者の対応は、まさに問題解決型のアプローチです。

  1. 原因の特定:牛乳パックの処理での失敗。

  2. 具体的な解決策の提示:動画での学習、写真付きの手順書作成(視覚支援)。

  3. 事前の練習:自宅での反復練習によるスキルの習得と自信の付与。

  4. 精神的なサポート:「お守り」としての手順書の持参許可。

これにより、お子さんは「次はできるかもしれない」という見通しと安心感を得て、再び挑戦する意欲を持つことができました。そして、実際に成功体験を得ることで、自信を取り戻し、課題を克服しています。「手順書を見ずにできた」という事実は、スキルが定着した証であり大きな成長です。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんには、このような具体的な手順の視覚化と、スモールステップでの成功体験の積み重ねが非常に有効です。

癇癪・パニック対応に共通する大切なこと

ここまで様々な事例を見てきましたが、発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの癇癪・パニック対応には、いくつかの共通する大切なポイントが見えてきます。

  1. まずは安全確保とクールダウン: 興奮している時は、何を言っても届きにくいものです。まずは本人が落ち着ける安全な環境を確保し、クールダウンを優先しましょう。

  2. 気持ちに寄り添い、共感する: 「嫌だったね」「悲しかったね」と、まずは本人の感情を否定せずに受け止め、共感の言葉を伝えましょう。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、自分の気持ちを理解してもらえたと感じることで安心します。

  3. 視覚的な支援を活用する: 絵カード、写真、手順書、タイマーなど、見て分かりやすい情報は言葉だけの説明よりも理解を助けます。

  4. 見通しを持たせる: これから何が起こるのか、いつ終わるのかなどを具体的に伝えることで、不安を軽減できます。変更がある場合はできるだけ事前に伝えましょう。

  5. 具体的な指示と肯定的な言葉かけ: 「ダメ」ではなく「こうしよう」と、具体的にどうすれば良いかを伝えましょう。できたことは具体的に褒め自信に繋げます。

  6. その子に合った方法を見つける: 落ち着くためのルーティン、安心できる言葉かけ、好きな感覚刺激など、その子特有の「お守り」や対処法を見つけていきましょう。

  7. 根気強く、一貫した対応を心がける: 効果が出るまでに時間がかかることもあります。諦めずに、繰り返し伝え、関わっていくことが大切です。

  8. 原因を記録・分析する: どんな時に癇癪やパニックが起きやすいのか、どんな対応が有効だったのかを記録しておくと、今後の予防や対策に役立ちます。

これらの対応は、ASD(自閉スペクトラム症)の特性である「見通しのつきにくさ」「コミュニケーションの困難さ」「感覚過敏」「こだわりの強さ」などを理解し、それらに配慮した関わり方と言えます。

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専門的な知識を学び、子どものより良い理解者・支援者へ

ここまで様々な事例と対応のヒントをご紹介してきましたが、日々直面するお子さんの行動に、時には戸惑い、自分の対応が正しいのか不安になることもあるかもしれません。事例の中にも、セラピストや学校の先生といった専門家の関わりが見られました。

子どもの発達障害への理解を深め、より適切なサポートを提供するためには、専門的な知識やスキルを学ぶことが大きな助けとなります。子どもの行動の背景にあるメカニズムや、発達段階に応じた具体的な支援方法を知ることで、自信を持って子どもと向き合えるようになるでしょう。

もし、あなたが「もっと子どものことを深く理解したい」「具体的な支援スキルを身につけたい」とお考えなら、専門的な学びの機会を探してみることをお勧めします。

例えば、当協会が認定する「児童発達支援士」資格は、まさにそのようなニーズに応えるものです。児童発達支援士のカリキュラムでは、発達障害の基礎知識はもちろん、ASD(自閉スペクトラム症)を含む様々な特性を持つ子どもたちの心理や行動特性、具体的な支援方法、コミュニケーションの取り方、感覚統合の考え方などを体系的に学ぶことができます。

癇癪やパニックといった行動の背景にある子どもの「本当の気持ち」や「困り感」を理解し、その子に合った適切な関わり方ができるようになることで、お子さんの健やかな発達をより力強くサポートできるようになるはずです。ご興味のある方は、ぜひ一度「児童発達支援士」について調べてみてください。

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【まとめ】発達障がい児の癇癪・パニック、どう対応する?

子どもの癇癪やパニックは、親や支援者にとって大きな挑戦ですが、それは同時に子どもからの「助けてほしい」という切実なSOSでもあります。そのサインを見逃さず、子どもの心に寄り添い理解しようと努めることが、問題解決の第一歩です。

この記事でご紹介した事例や対応のポイントが、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。そして専門的な学びを通じて、より深く子どもの世界を理解し自信を持ってサポートできる方が増えることを心から願っています。

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