2026年、文部科学省から、発達障害のある児童生徒等と不登校の関係について、非常に興味深い調査結果が公表されました。
調査に回答した学校における児童生徒全体の不登校率は3.71%。
それに対して、発達障害のある児童生徒等では13.26%でした。
さらに詳しく見ると、通常の学級に在籍し、通級による指導を受けていないものの、発達障害(疑いを含む)に起因する「特別な教育的支援の求めや相談」があった児童生徒では、不登校率が22.76%に達しています。
中学校だけに限ると、この割合は46.08%でした。
数字だけを見ると非常に大きな差です。
しかし今回の調査で本当に重要なのは、「発達障害があるから不登校になる」という単純な話ではありません。
むしろ調査から見えてきたのは、子どもの特性に応じた支援、分かりやすい授業、学校と保護者の連携、ケース会議、合理的配慮についての対話、そして進学時の丁寧な情報の引き継ぎなどが、不登校の未然防止と関連している可能性でした。
今回は、文部科学省が公表した報告書の元データを確認しながら、この調査から何が分かったのかを詳しく整理していきたいと思います。
- 1 今回の調査はどのように行われたのか
- 2 発達障害のある児童生徒等の不登校率は13.26%
- 3 特に高かった「通常学級・通級なし」の子どもたち
- 4 中学生になると不登校率が大きく上昇している
- 5 不登校率との「有意な関連」が確認された6つの支援
- 6 「支援する人を増やす」だけではなく、支援をつなげること
- 7 実際に学校で行われていた具体的な取り組み
- 8 「安心して過ごせる場所」をつくることも大切
- 9 進学時には「困っていること」だけではなく「うまくいった対応」も引き継ぐ
- 10 教職員から「もっと知りたい」という声も上がっている
- 11 発達障害そのものが不登校を生む、と考えないこと
- 12 大切なのは「困ってから支援する」だけではない
- 13 私たち大人が、まず正しく知ることから
今回の調査はどのように行われたのか
今回公表されたのは、文部科学省の令和7年度「発達障害のある幼児児童生徒に対する就学前からの切れ目のない支援体制構築事業」のうち、「特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究」です。
事業は公益社団法人子どもの発達科学研究所が受託し、文部科学省が取りまとめています。
アンケート調査は2025年11月10日から12月31日に行われました。対象は全国の小学校・中学校等1,570校で、432校から回答が得られています。回答率は27.5%でした。
また、アンケートだけではなく、具体的な取り組みを把握するため、小学校10校、中学校8校、教育委員会等5機関の計23機関に対するインタビュー調査も実施されています。
| 調査項目 | 内容 |
|---|---|
| アンケート期間 | 2025年11月10日~12月31日 |
| 対象 | 全国の小学校・中学校等1,570校 |
| 回答校 | 432校 |
| 回答率 | 27.5% |
| インタビュー期間 | 2025年11月17日~2026年1月22日 |
| インタビュー対象 | 小学校10校、中学校8校、教育委員会等5機関 |
| 調査した不登校の状況 | 令和6年度(2024年度) |
ここで一つ注意したいのは、432校は全国すべての学校ではないということです。
文部科学省自身も、地方によって回答数にばらつきがあり、「一部の地方の結果に偏っている可能性があり、注意が必要」としています。
そのため、今回の数値をそのまま「日本全国の発達障害児の不登校率」と解釈することはできません。
発達障害のある児童生徒等の不登校率は13.26%
まず、今回の調査で最も注目されたデータを見てみましょう。
回答した学校に在籍する児童生徒全体では、129,014人のうち4,788人が不登校で、不登校率は3.71%でした。
一方、今回「発達障害のある児童生徒等」として集計された9,641人では、1,278人が不登校となっており、13.26%でした。
| 対象 | 対象人数 | 不登校人数 | 不登校率 |
|---|---|---|---|
| 回答校の児童生徒全体 | 129,014人 | 4,788人 | 3.71% |
| 特別支援学級(自閉症・情緒障害) | 4,563人 | 577人 | 12.65% |
| 通級による指導を受けていた児童生徒 | 2,903人 | 206人 | 7.10% |
| 通常学級・通級なしで、発達障害等に起因する支援の求め・相談があった児童生徒 | 2,175人 | 495人 | 22.76% |
| 上記3区分のいずれかに該当 | 9,641人 | 1,278人 | 13.26% |
児童生徒全体の3.71%に対し、発達障害のある児童生徒等では13.26%ですから、今回の回答校の中で比較すると約3.6倍の割合となります。
ただし、「発達障害のある児童生徒等」という言葉の意味には注意が必要です。
今回の13.26%は、医学的に発達障害と診断された児童生徒だけを集計した数字ではありません。
特別支援学級に在籍する児童生徒、通級による指導を受ける児童生徒に加え、通常学級に在籍しながら、発達障害の疑いを含めて特別な教育的支援について相談等があった児童生徒も含まれています。
そのため、
「発達障害と診断された子どもの13.26%が不登校になる」
という意味ではありません。
ここは今回の調査を見るうえで、とても重要なポイントです。
特に高かった「通常学級・通級なし」の子どもたち
私が今回の調査で特に注目したのが、通常の学級に在籍している子どもたちのデータです。
通常学級に在籍し、通級による指導を受けていない児童生徒のうち、発達障害(疑いを含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった児童生徒は2,175人。
そのうち495人が不登校となっていました。
不登校率は22.76%です。 これは約4.4人に1人に相当します。
ただし、この22.76%についても慎重に解釈する必要があります。
これは、
「通常学級に在籍する発達障害のある子ども全体」
の不登校率ではありません。
すでに何らかの困りごとが表面化し、発達障害等に起因する特別な教育的支援について「求め」や「相談」があった児童生徒が対象です。
言い換えれば、最初から支援ニーズが比較的高い集団を見ている可能性があります。
それでも、この集団で不登校率が非常に高かったことについて、文部科学省は報告書のまとめで、個々のニーズに応じた適切な指導や必要な支援が十分になされていなかった可能性に言及しています。
この部分は、今回の調査を考えるうえで非常に重要だと思います。
中学生になると不登校率が大きく上昇している
さらにデータを小学校と中学校に分けると、大きな違いが見えてきます。
発達障害のある児童生徒等全体では、小学校の不登校率が7.94%だったのに対し、中学校では25.13%でした。
すべての区分で、中学校の不登校率が小学校を大きく上回っています。
| 対象 | 小学校 | 中学校 |
|---|---|---|
| 児童生徒全体 | 2.02% | 6.07% |
| 特別支援学級(自閉症・情緒障害) | 7.03% | 23.31% |
| 通級による指導 | 4.11% | 12.95% |
| 通常学級・通級なし+支援の求め・相談あり | 14.79% | 46.08% |
| 上記3区分のいずれかに該当 | 7.94% | 25.13% |
中でも目を引くのが、通常学級に在籍し、通級を利用していないものの、発達障害等に起因する支援の求めや相談があった中学生です。
536人のうち247人が不登校となっており、不登校率は46.08%でした。ほぼ2人に1人という数字です。
もちろん、これを「通常学級にいる発達障害の中学生の半数が不登校になる」と解釈してはいけません。
対象となっているのは、すでに支援の求めや相談があった536人だからです。
それでも、小学校では14.79%だった同じ区分が、中学校では46.08%となっていることは見過ごせません。
学習内容の難化、人間関係、生活環境、思春期、教科担任制など、中学校ではさまざまな環境変化があります。
今回の調査だけで「なぜ中学校で高くなるのか」という因果関係までは分かりませんが、小学校から中学校へと支援を途切れさせずにつなぐことの重要性を改めて考えさせられるデータです。
不登校率との「有意な関連」が確認された6つの支援
今回の調査が非常に価値のあるものだと感じた理由は、不登校率だけを調べて終わっていないことです。
各学校で行われている20種類の支援策について、その実施状況と発達障害のある児童生徒等の不登校率との関連も分析しています。
分析では、国公私立の違い、学校種、学校規模、発達障害等の児童生徒の割合、要保護・準要保護家庭の割合、日本語指導が必要な児童生徒の割合などの学校背景を統計的に調整しています。
その結果、20項目のうち、次の6項目で不登校率との統計的に有意な関連が確認されました。
| 支援策 | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 |
|---|---|---|---|
| 通常学級の中でできる支援や合理的配慮について組織的に検討する | 0.77 | 0.61~0.98 | 0.03 |
| 特別支援教育の校内委員会やケース会議が十分に機能している | 0.69 | 0.53~0.89 | 0.005 |
| 学校と保護者が連携している | 0.71 | 0.52~0.96 | 0.03 |
| 支援を必要とする児童生徒がいることを前提に、分かりやすい授業づくりを工夫する | 0.75 | 0.58~0.97 | 0.03 |
| 合理的配慮について本人・保護者との建設的な対話を通じて合意形成する | 0.74 | 0.58~0.96 | 0.02 |
| 幼稚園・保育園または小学校から情報を引き継ぐ | 0.67 | 0.49~0.91 | 0.01 |
オッズ比が1を下回っているため、これらの取り組みがより行われている学校ほど、不登校率が低い方向の関連が見られたことになります。
ただし、ここでも大切な注意点があります。
これは、
「この支援を行えば不登校が○%減る」
ことを証明した研究ではありません。
今回の調査は、ある時点における学校の取り組みと不登校率の関連を調べたものです。
例えば「ケース会議が充実したから不登校が減った」という因果関係まで断定することはできません。
それでも、異なる20項目を調べた中で、学校と保護者の連携、ケース会議、合理的配慮の合意形成、分かりやすい授業、情報の引き継ぎなどに統計的な関連が確認されたことには、大きな意味があると思います。
「支援する人を増やす」だけではなく、支援をつなげること
6項目を見ていて私が印象的だったのは、特別な教材や高額な設備の有無ではありませんでした。
「一人の優秀な先生が頑張る」という話でもありません。
学校全体で支援を考える。
ケース会議を機能させる。
保護者と話し合う。
本人とも話し合う。
進学するときに、それまで積み重ねてきた情報を次の学校へ渡す。
つまり、人と人の間で支援をつなぐ仕組みが非常に重要だということです。
文部科学省も報告書のまとめで、通常学級に特別な教育的支援を必要とする児童生徒がいることを前提として、関係機関、専門家、保護者等と連携しながら組織的な支援体制を構築することが重要だとしています。
実際に学校で行われていた具体的な取り組み
今回の報告書には、学校が「不登校の未然防止として効果的だった」と感じた具体的な取り組みも掲載されています。
ここは保護者や支援者にとっても非常に参考になる部分です。
例えば、注意や集中の持続が難しい児童生徒には、座席配置を工夫したり、黒板周辺の掲示物を減らしたり、カーテンの開閉を調整したりして、不要な刺激を減らしていました。
感情のコントロールが難しい場合には、保健室や相談室、クールダウンスペース、一人で集中できる場所などを用意しています。
さらに、教室・座席・学習方法を固定せず本人が選択できるようにする、1日のスケジュールや授業の流れを可視化する、気持ちを言葉で伝えることが難しい子にはカードを用意する、学習課題の量や内容を調整するといった実践も報告されています。
これらは一見すると、小さな工夫かもしれません。
しかし、発達特性のある子どもにとっては、
「頑張ればできる環境」
と、
「頑張り続けなければ過ごせない環境」
には大きな違いがあります。
学校生活の中で毎日少しずつ蓄積する負荷を小さくしていくことは、とても重要なのではないでしょうか。
「安心して過ごせる場所」をつくることも大切
報告書では、保健室、相談室、クールダウンスペース、一人で集中できる場所など、安心できる居場所を用意した事例も紹介されています。
私はこの「居場所」という考え方も重要だと思っています。
学校に行けるか、行けないか。
教室に入れるか、入れないか。
二者択一にしてしまうと、子どもにとって逃げ場がなくなることがあります。
学校の中にも複数の居場所があっていいですし、学校の外にも安心できる場所があってよいと思います。
放課後等デイサービスなどの療育施設も、その一つになり得ます。
もちろん、今回の文部科学省調査は「放課後等デイサービスを利用すると不登校が減る」と示したものではありません。
そこは分けて考える必要があります。
一方で、学校以外にも信頼できる大人がいる、相談できる場所がある、自分の得意なことを認めてもらえる、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などを通して人との関わり方を少しずつ練習できるといった環境は、子どもの生活全体を支えるうえで大切な選択肢だと私は考えています。
進学時には「困っていること」だけではなく「うまくいった対応」も引き継ぐ
今回の報告書で、もう一つ非常に印象に残ったのが進学時の情報共有です。
例えば小学校6年生の担任と、新しく中学1年生を担当する予定の教師が情報交換を行う。
複数の職員で引き継ぐ。
入学前に新しい学校を見学する。
こうした取り組みが紹介されています。
そして引き継ぐ情報についても、
「どのような場面で困りやすいか」
だけではありません。
どのような対応が効果的だったのか、逆に、どのような対応はうまくいかなかったのかまで具体的に伝えることが紹介されています。
これは非常に重要だと思います。
子どもは何年もかけて成長していきます。
その間に家庭では保護者が多くのことを試し、学校でも先生方が工夫し、療育施設でも支援者がさまざまな方法を試します。
そうしてようやく、
「この子には、この伝え方が分かりやすい」
「こういうときは少し待った方がいい」
「予定変更は事前に伝えると安心できる」
といった、その子に合った支援が見つかっていきます。
それが進学や担当者の変更によって一度リセットされ、また一から試行錯誤することになってしまえば、子どもにとっても保護者にとっても大きな負担です。
支援は、その場だけで完結するのではなく、次の支援者へつないでいくことまで含めて支援なのだと改めて感じます。
教職員から「もっと知りたい」という声も上がっている
調査では、発達障害のある児童生徒等を支援するうえで、事前に知っておきたい知識や必要な研修についても学校側に尋ねています。
そこで挙げられたのが、発達障害の基本的な特性だけではありません。
不器用さ、感覚の過敏性・鈍感性など比較的知られていない特性、発達検査の見方、効果的な指導方法、授業づくり、環境整備などについて「具体的に知りたい」という回答がありました。
また、校種をまたいだ教職員研修や、指導助言を受ける機会の充実を求める声もありました。
支援の仕組みを整えることと同時に、実際に子どもと関わる大人が発達特性を理解することも欠かせないのだと思います。
発達障害そのものが不登校を生む、と考えないこと
今回の結果を紹介すると、
「やはり発達障害の子は不登校になりやすいんだ」
と受け取ってしまうかもしれません。
しかし、私はそのような単純な受け止め方はしない方がよいと思います。
文部科学省も報告書で、個々の教育的ニーズに応じた個別対応だけではなく、通常の学級における環境づくりや授業づくりの工夫が、不登校等の二次的な問題の未然防止につながるという視点が重要だとまとめています。
つまり考えるべきなのは、
「発達障害だから学校に行けなくなった」
ではなく、
「その子の特性と環境の間に、どのようなミスマッチがあったのか」
という視点ではないでしょうか。
授業が理解しづらい。
集団生活の刺激が強すぎる。
人との距離感が分からない。
予定変更への不安が強い。
失敗経験が積み重なる。
本人の困りごとが周囲に伝わらない。
必要な配慮が次の学年や学校に引き継がれない。
こうしたものが重なっていけば、学校という場所そのものが大きな負担になってしまうことがあります。
逆に考えれば、周囲の環境や関わり方を変えられる余地があるということでもあります。
大切なのは「困ってから支援する」だけではない
不登校になった子どもへの支援はもちろん重要です。
一方、今回の調査のテーマは「不登校になった後の支援」だけではなく、未然防止です。
今回、有意な関連が確認された内容を見ても、不登校になってから始めるものばかりではありません。
普段から分かりやすい授業をつくること。
普段から保護者と情報共有すること。
普段から子どもの特性を理解すること。
ケース会議を機能させること。
合理的配慮について本人や保護者と話し合うこと。
進学するときには、それまでの支援を丁寧に引き継ぐこと。
こうした積み重ねが重要だということだと思います。
「学校に来られなくなってから、何をするか」だけではなく、
「学校がつらくなりすぎる前に、何ができるか」
という視点が、これからますます大切になるのではないでしょうか。
私たち大人が、まず正しく知ることから
今回の文部科学省の調査を読んで、改めて感じたことがあります。
制度や設備も大切です。
しかし、それを使うのは人です。
保護者、学校の先生、療育施設の支援者など、子どもを取り巻く大人たちが、発達特性を正しく理解し、
「なぜこの子はこうするのだろう」
ではなく、
「この子は今、何に困っているのだろう」
と考えられるようになること。
そこが支援の出発点ではないでしょうか。
私たち一般社団法人人間力認定協会では、発達障害の基礎や子どもへの支援について学ぶ「児童発達支援士」、コミュニケーションに焦点を当てた「発達障害コミュニケーションサポーター」、SSTの基本と実践を学ぶ「SSTスペシャリスト」を認定しています。3資格はいずれも2025年に第2版へ改訂しています。
>児童発達支援士公式サイト
>発達障害コミュニケーションサポーター公式サイト
>SSTスペシャリスト公式サイト
資格を取得すること自体が目的ではありません。
家庭でも、学校でも、療育施設でも、
子どもの行動だけを見るのではなく、その背景を考えられる人を一人でも増やすこと。
それが私たちの資格認定事業の目的です。
また、療育施設を探す保護者が、施設の特徴や支援体制をより分かりやすく比較できるよう、当協会では児童発達支援・放課後等デイサービスを対象とした「CDQ認証」の取り組みも進めています。CDQ認証では、保護者からの評価、情報の透明性、専門性、人材育成・定着といった視点から施設の支援環境を可視化しています。
学校だけですべてを抱える必要はありません。
家庭だけですべてを抱える必要もありません。
学校、家庭、療育、医療、福祉など、それぞれができることを持ち寄り、必要なときには次の支援者へ情報をつないでいく。
今回の文部科学省の調査は、そうした「支援をつなぐこと」の重要性を改めて示した調査なのではないかと感じています。
今回明らかになった13.26%、22.76%、そして中学生の46.08%という数字を、単に衝撃的な数字として消費するのではなく、
その数字の向こう側にいる子どもたちに、大人側から何ができるのか。
そこまで考えるきっかけにしていきたいと思います。
参考資料
本記事で紹介した調査の原資料は、文部科学省「特別支援教育・不登校担当の校内連携体制の在り方に関する調査研究」です。報告書と事例集が文部科学省ウェブサイトで公開されています。
文部科学省・調査研究ページ
