【受講者インタビュー】大人になって診断された自身の発達障害

児童発達支援士・発達障害コミュニケーションサポーターを受講された方への「受講者インタビュー」第二弾となります。今回は、大人になってご自身の発達障害が発覚したという男性のインタビューをご紹介します。

インタビューを受けて下さった奥田さんのご紹介

今回インタビューを受けて下さったのは、堺市立金岡南中学校にて支援主担・特別支援コーディネーターとしてご活躍されている奥田雅史さんです。奥田さんは児童発達支援士と発達障害コミュニケーションサポーターを取得され、現在も現場で支援活動をされています。

実は奥田さんのことについては、当ブログでも先日ご紹介させていただいております。

詳しくは「発達障害当事者がつづるお勧めブログ」を御覧ください。

それではインタビュー内容をご紹介いたします。

奥田さんへインタビュー

男性へのインタビュー

児童発達支援士を受講するきっかけとなったエピソードを教えてください

私は大阪府の公立中学校教員として,これまで学級担任や学年主任などを行ってきました。また,その中で「人権」を大切に教育を行ってきたつもりでした。教科学習に限らず,道徳や総合・学活においても友人の義足のシッティングバレーボール選手の嵯峨根望さんや発達障害当事者と保護者の立場をお持ちの笹森理絵さんなど多くの講師の方に講演に来ていただいたりと,障がい者理解学習にも力を入れていました。そんな教員生活9年目を迎えたころ,生徒への学習を目的に読んでいた星野仁彦さんの「発達障害に気づかない大人たち」で衝撃を受けました。

私のことがかかれている!と。。。

それから,発達障害の当事者さんの自伝などをいくつか読んでいき,並行してこれまで,生徒のために学習していたものを自分の経験と照らし合わせると,納得する部分がたくさんあり,自分は発達障害当事者だと気づかされました。その後,心療内科を受診し,診断を受け,精神障がい者手帳も交付してもらいました。これが,5年前のことでした。

その後,これまで行っていた学習は,単なる机上の学習に過ぎない,もっと当事者目線でできる,生徒の寄り添った支援をしたいと思い,放送大学で特別支援の勉強をすることにしました。3年前には「特別支援学校教諭免許状」を取得し,昨年度より支援学級担任になり,生徒に寄り添った学習を支えられるよう,取り組んできました。

今年度は,昨年度の取り組みが校内で評価されたのか,支援学級の主担と支援学級在籍の生徒以外の支援も行う特別支援コーディネーターも任せられるようになりました。

しかし,私自身としてはまだまだ行き当たりばったりの指導が多いように感じ,より実践に活かせる勉強をしたいと思ったのが,児童発達支援士,また発達障害コミュニケーションサポーターを受講したきっかけです。

最も辛かった(大変だった)ことは何ですか?

子どもの支援をする上で,直接的に辛かったことはありません。時には,支援がうまくできなかったり,子どもから暴力を受けたりする過去もありましたが,お互いの思いの掛け違いが原因で,私にも原因があると思えるので,子どもの支援で辛いと感じたことはありません。

ただ,子どもの困り感を保護者が受け入れることができていなかったり,受け入れるのに時間がかかったりすることは大変だったことの一つだと思います。特に,中学生になると学校での自分と家庭での自分を使い分ける子どもは少なくありません。そのため,保護者との関係を密にとり,どちらの姿もお子様の姿だと受け止めて,学校と家庭度で一緒にお子様を支えられるように心がけています。

また,子どもに対する合理的配慮を,校内の他の教員や教育委員会,または社会に求めることは現在も大変だと感じる大きなことがらです。現在は特に,校内での評価についての合理的配慮や,公立入試における合理的配慮について,きちんと理解してもらえるように取り組んでいます。私自身が当事者なので,私としては当然なことでも,そうでない人にとっては,それはわがままだと感じられることもわかりますので,こちらからの主張だけでなく,互いの思いや考えを共有し,お互いにとってよりよい方法を探すという視点を大切にして取り組んでいます。

発達障害に関する知識を習得したことで、何か変化はありましたか?

やはり,もっとも大きいのが見通し(推測)を持ちやすくなったことです。これまでの経験からできることもそうですが,ある程度,知識を得たことで,このようなことが困り感に繋がっているのではないかという見通しを持つことができます。これにより,子どもに対してストレスを少なく,求めている支援をすることができるようになったと感じています。見通しを持つことは,当事者である私自身が支援をする上でも,とても助かっていますし,子どもにとっても,このために,このような取り組みをするのだということが分かりやすく,双方にとってうれしい変化だと感じています。

また,保護者の方はお子様の特性についてたくさん学ばれている方が多くいますので,ある程度その知識を共有できると安心していただけることも多いので,これも大きな変化と言えると思います。

ご自身と似た境遇で悩んでいる方に何かアドバイスはありますか?

なかなか発達障害当事者の教員に出会ったことはありません。しかし,この仕事をしている中で,あの先生も特性が強いなと感じることも少なくありません。もちろん,特性が強いだけで,困り感に繋がっていない場合は障害ではないので,問題はないと思います。しかし,中にはその特性がゆえに,しんどくなってしまって病休をとったり,休職してしまったりする先生もいらっしゃるのは事実です。実際に私も2回しんどくなって,病休を取りました。その時に,私は心療内科の先生の助言などもあり,その原因が特性からくるものだと理解でき,また服薬などもしながら乗り越えることができました。

このことから,発達障害についての理解をもっと広げていき,あくまで発達特性はスペクトラム(特徴・特性)で,すべての人に特性があり,それが強いか弱いだけ,また差の大小があるだけだという認識をもってもらいたいと思います。病休や休職などの場合で,原因がわからない方はこの点について,意識するだけで変わるかもしれないと個人的には思っています。

さらに,最近は学生から「発達障害があるけど,教員になっていいのですか。」などの相談も受けたりします。発達障害も個性の一つだと私は考えているので,全く問題ないと応援しています。そして,そのお手本になれるように今は,自分の活動を広く発信することも意識しています。

このように発達障害への認識がもっともっと広まり,多くの当事者の方と繋がれるようにwebpageを作ったり,lineのオープンチャットなども行っていますので,今後ともこれらの活動を続けていきたいと思います。

>>奥田さんが運営するWebpageを見る

発達障がい児の支援を行う上で大切だと感じていることは何ですか?

やはり,寄り添うという気持ちが大切だと思っています。いろいろな学習を進めていくうちに,「これはこれが原因だ」と決めつけてしまうことも少なくありません。特に,私は発達特性からそのように思い込みがちな性格です。しかし,スペクトラムは人それぞれで,似ているところも多いとは思いますが,それぞれ違います。そこを,意識しながらたとえ子どもでも一人の人として「人権」を大切に,一人の人として尊重して,寄り添うということを意識しています。

【まとめ】大人になって診断された自身の発達障害

いかがだったでしょうか?当事者の方からのお話という事で、私どももとても貴重な学びを頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。最近では「大人の発達障害」という言葉をよく耳にするようになりました。耳にする機会が増えた、目にする機会が増えたというのは、支援の手が行き届くためには必ず通る道であり、悪い傾向ではありません。発達障害という言葉をもっともっと認知させていき、正しい理解とリンクさせていくことで、適切な支援の輪が広がっていくことでしょう!

これからも沢山の事例を紹介していきますので、楽しみにしていてください!

このブログが皆様の支援のお役に立つことを心よりお祈り申し上げます。

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