【受講者インタビュー】診断そのものよりも子どもの特性を理解することが大切

当協会が認定する資格、児童発達支援士もしくは発達障害コミュニケーションサポーターを受講された方にご協力いただいている受講者インタビュー。今回は自閉スペクトラム症の特性を持つお子様を育てられている保護者様をご紹介します。

インタビューを受けてくださったIさんのご紹介

Iさんの息子様は4歳の時に自閉スペクトラム症と診断されたとのこと。現在は20歳となり、16年間障害と向き合ってこられたお母様です。どのような思いを抱きながら子育てをしてきたのかが大変よく伝わってくると思います。是非ご覧ください。

Iさんへのインタビュー

児童発達支援士を受講するきっかけ

私は、自閉症スペクトラム特性がある成人した息子をもつ一人の母親という立場で、貴協会の3講座を受講いたしました。

我が家は息子がひとりの三人家族です。その息子は、4歳の時に自閉症スペクトラム(発達障害)と診断されました。それから約16年間、これまで一貫して【息子のメンタルを守ること】と【息子が自立した大人になること】を長期的な子育ての目標にして育ててきました。

これまで悲喜こもごも、本当にいろいろありましたが、現在息子は大学生になり、日々充実した毎日を過ごせるまでに成長し、私自身もこれからの人生について考える余裕がでてきました。

息子を育てるためにこれまでものすごく頑張ってきたことを、経験としてブログに書いたり、今悩んでいるお母さんたちにシェアするような仕事もしてみたいなぁ、と漠然とした思いがわいてきました。

そんな私の気持ちに対し、息子も「成人式の頃を境にやっと発達障害だという自己受容ができてきた。息子がASDだと公表しても良いよ。お母さんもやりたいことをやってみて」と、私の気持ちを後押ししてくれるようになりました。

これから残りの人生は、これまで母親として頑張ってきた経験を活かしたことを仕事にしていきたい。でもどうすれば良いかなぁ…と考えながらインターネットで情報収集をしているときに、児童発達支援士のサイトにたどりつきました。

講座の内容や人間力認定協会の理念など隅々までチェックし、良さそうだなと思いました。この講座でこれまでの子育て経験から身につけた知識に偏りや間違いがないかの確認、自分の知識に抜けや漏れがないか体系立てて復習もできそうだと思えました。しかも資格を取ることで自信がつくかもというのも大きな動機となり、貴協会の3つの講座を受講することにした次第です。

いざ学び始めてみると、テキストの内容にことごとく共感しました。自分が信念として大切に思ってきたことがすべてテキストに書かれていて、自分の子育ては方向性として大きく間違ってはなかったようだと安心もできました。また、なんとなく理解していたつもりであいまいだったことも学び直す機会にもなり、より知識が深まりました。

こうして児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーター、SSTスペシャリストという3つの資格を無事に取得することができました。

発達障がい児支援をしていて最も大変だと感じることは

2006年、当時4歳だった息子が自閉症スペクトラムと診断された当時は、駐在家族としてドイツで暮らしていました。

日本からドイツへの引っ越しという環境の激変が息子にとっては壮絶なストレスとなり、息子は自閉症の特徴とされるありとあらゆる問題行動を表出、大パニックを起こしてしまいました。

ドイツの小児科医の診察では日本語での検査ができないため、緊急帰国し日本の医療機関で診察、自閉症スペクトラムと診断されるに至りました。私は、悲嘆にくれる暇もないまま、医師や心理士からこれからどう育てていけばよいかの具体的なアドバイスを受けて再びドイツへもどり、日本人学校に通わせ周囲の人たちに助けてもらいながら手探りで息子を育ててきました。

海外生活はドイツからイギリスへと引っ越しを重ね、通算で7年5か月にわたりました。その間、日本へは年に一度だけ、1か月程度一時帰国するのみ。一時帰国中には日本の病院で言語療法と発達検査を受け、経過観察と相談をしてまた海外へ戻る、という暮らしの中で試行錯誤しながら息子を育てました。

息子は日本の幼稚園からドイツに渡り、ドイツの幼稚園から日本人学校へ転園。その後小学1年生から5年生までをイギリスで過ごし、5年生の冬に日本に帰国するまで、何度も転校を繰り返す生活をさせてしまいました。環境の変化に弱い息子にとても辛い思いをさせました。しかも帰国後は思春期にさしかかるタイミングだったため、日本の学校へ適応させることにも大変苦労をしました。

私自身も、発達障がい児を海外育てる二重苦が辛すぎて、メンタルを病んだ時期もありました。夫を海外に残し、母子で帰国しようかと迷ったこともありました。でも考えた末に、父親も一緒に家族三人で頑張る道を選びました。海外で暮らすという道を選んだ私たち家族ですから、息子のために自己責任で生き抜くしかない、という覚悟を決め、心と体を立て直して頑張りました。

実家を頼れない、夫は出張で留守が多い、言葉の通じない外国で発達障がい児のワンオペ育児。私が倒れてしまったら家庭が崩壊するという恐怖が常にありました。ですから、自分自身の心身の健康をおろそかにしてはいけない、私自身が幸せに心豊かに生きることも忘れないようにと、日々の暮らしのなかでほんの少しの時間でも自分自身とむきあう時間を取り、心身のバランスをとることも心掛けました。

こうして思い出しながら書いているだけでも胸が苦しくなるくらい辛い思い出です。でも、そんな苦労を乗り越えてきた今、家族が笑顔で暮らす人生につながりました。あの頃、頑張って本当によかったなと思います。

発達障害に関する知識を習得し何か変わりましたか

前述のとおり、息子が幼稚園年少時代から小学校5年生までを駐在家族として海外で暮らしました。そのため、息子は日本での療育を受ける機会がないまま、私の自己責任での育児で育ててきました。

当時は、現在のように発達障がい児の子育てについて体系立てて学べる講座などもありませんでしたので、日本から取り寄せた発達障害関連の書籍やインターネットで検索し見つけた学術論文などを参考に、独学でTEACCHI、ABA、SST、感覚統合、認知行動療法など、自閉症児の子育てに関する情報や効果的と言われていた療育方法などを勉強しました。中には怪しげなセラピーなどもありましたが、何もかも妄信的に信じるのではなく、冷静に見極めながら自分が良いと判断したものを取り入れ試行錯誤してきました。

あれから10余年を経て、今回、人間力認定協会の3つの講座で学びなおしてみると、私が試行錯誤しながら実践し、息子に効果があったと感じたことがたくさんテキストに書かれていました。これまでの努力してきた自分の子育ての方向性が、大きく間違ってはいなかったとようだと再認識し、心から安心できました。

しかも、テキストはとても分かりやすく簡潔にまとまっていて感動しました。貴協会で学び直しができて本当によかったです。

ご自身と似た境遇で悩んでいる方に何かアドバイスはありますか?

お子さんに最も近い存在である親御さん、とくにお母さんが心身すこやかに前向きな気持ちで子育てができるような環境づくりが大切だと、自分自身の経験から強く思っています。お子さんのためにと完璧主義になって常に全力で頑張っていると、お母さんがつぶれてしまいます。

ひとりで抱え込まず、周囲の助けもかりて乗り切ってくださいね。

そして、お子さんの特性すべてをありのまま受け入れてあげてください。親も子も、無理しすぎない。ボチボチと長距離マラソンのつもりで焦らず、着々と進んでいけば、きっと幸せな未来につながります。そして、まじめで一生懸命なお母さんほど、お子さんのためにと一生懸命になってしまいがちなので、意識的にお母さんご自身の人生も大切に、幸せであるように意識して暮らしていただきたいなと強く思います。

発達障がい児の支援を行う上で大切だと感じていることは

親御さんも、周囲の人も、発達障害という言葉にこだわりすぎないようにしてほしいです。診断そのものより重要なのは、お子さんは何が得意で何が苦手かを知ること。得意なことは伸ばしてあげて、困っていることに適切に対応してあげることだと思います。お子さんの特性を理解し、どうすれば幸せで充実した毎日を過ごすことができるのか、前向きに考えていくことが大切だと思います。

発達障害の診断がついても、グレーゾーンでも、ありのままのお子さんを受容してあげてください。そのうえで、得意なことを伸ばし、困っていることを適切にフォローしてあげて、長い時間軸のなかでじっくりと育ててあげてください。また、お母さんが自分を責めて孤独に苦しんでいるケースがとても多いと思います。周囲の方は、お母さんの日々の努力をねぎらう言葉がけなど、メンタル面でのケアをしっかりとしてあげてほしいな、と思います。

【まとめ】診断そのものよりも子どもの特性を理解することが大切

海外でのワンオペ子育てと聴くだけで、想像できないほどの大変さがあったのだろうと感じます。最初に「私はこうするんだ」という強い意思決定があったことが、その後の行動力に繋がって至ったものと思います。お子様も自身の障害を受け入れることができたということを知れただけでも本当に嬉しかったことでしょう。これからも是非沢山の情報発信をしていってほしいですね。

発達障がい児の中学校時代、高校時代という部分はまだあまり細かな情報が出てきません。どのような悩みがあり、どう対処していくのが良いか。指針となるものを受講者の皆様と見出して行けたらと思います。

ご協力いただき有難うございました。

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