第十八回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告

3月8日に開催された意見交換会の実施報告をさせて頂きます。今回もとても有意義な時間となりました。皆様ありがとうございました。ここで紹介している内容が皆様のお役に立てば幸いです。

意見交換会議事録

ここからは今回の意見交換会の質疑応答時に、実際にお話のあった内容をご紹介していきます。お客様の言葉をほぼそのままの表現で紹介させていただきます。(個人情報保護のため一部表現を変えている箇所がございます)

質問者

自分の子どもが発達障害と診断されて、親が精神的にまいってしまう。その点について、自分も落ち込んだけど、受け入れることができた等のエピソードがあればお聞きしたいです。

回答者様:元々私がパニック障害を持っていまして、メンタルが弱いほうです。それで、子どもの障害についてお医者さんから言われた時は、分かっててもショックでその時に気持ち的に距離を感じてしまいました。本当は支えてあげなければいけないのに、どういう風に接していいか分からずにおろおろしてしまい辛かった時期もありました。

ですが、自分の子どもはすごい笑う子で、ADHDと自閉症のハイブリットだとお医者様から言われましたが、すごい良い性格をしており、いつも笑顔で落ち込む時はすごい落ち込みますが、毎日楽しそうに暮らしている様子を見ているとそれでも大丈夫なんだ。と子どもから応援してもらえる、大丈夫だよ、そのままでいいんだよとメッセージとして受け取れて、こちらも前向きに接することができるようになりました。

ですので、その子を見てあげて良い所にたくさん気付くまでの時間が必要だなと思いました。


質問者

書字障害について、漢字の良い覚え方などがありましたら知りたいです。

回答者様:漢字の覚え方についてですが、漢字のように1つの記号に対していくつもの音が割り当てられている文字と、ひらがなカタカナのように1つの記号に対して1つの音が割り当てられている物では、覚える時に脳の使う場所が違います。

それで、漢字だけがどうしても覚えられないという場合、何故覚えられないのかという理由がいくつか考えられるのですが、1つは目で見るより音で覚えるほうが得意な子という場合があります。この場合は、「ミチムラ式漢字カード」や学研から出ている「歌で覚える漢字カード」のように音で漢字を覚えていく方法が多少有効になります。

もう1つ、協調性運動障害などがあって指先の感覚が鈍い子の場合は、手続き記憶という指で漢字を覚えるのがどうしても苦手な場合があります。そういう子の場合は、鉛筆でノートに文字を書くのではなく、「触るグリフ」という教材が開発されており、少しボコボコした文字を指で感じながら覚える。このように指に感覚を感じながら覚えるというのが、ノートに字を何回も書くよりは有効な場合があります。

もう1つ、知機能の問題で立体的に物が見えすぎる立体視が得意な子は、得意を伸ばしたほうが良いと言われています。また、1つ有効かもしれないと言われている方法があります。マスが4色に色分けされたノートを低学年のうちから使い、漢字を定着させていくという方法があります。


質問者

これからひらがなやカタカナを習得する年齢なのですが、書かせようと思ったら集中できないことがあり、簡単な文字は書けるのですが「あ」の文字など少し複雑になると難しく感じています。どうやって習得されたのかよかったらお聞きしたいです。

回答者様:私の場合は、読み書き支援の本などにひらがなが書けない子向けの支援方法などが書いてあるのですが、文字と音がつながり辛い場合が多く、文字に音をつなげることに脳のワーキングメモリを使っている状態で書いたり読んだりすると、考えることに対して脳を使う余裕が無くなってしまうことがあります。ひらがなカタカナはディスレクシアの子でも、ほぼ完璧に習得できるとも言われています。筑波の宇野先生が書かれている書籍などがおすすめです。


質問者

科目の得意不得意に大きな違いがあり、理科は100点満点が取れても国語だと20点30点ということがあります。これはもうほっといたほうが良いのでしょうか。理科だとディスカバリーチャンネルなども見るくらい興味にかなり偏りがあります。もし何か知見などお持ちの方がいましたら、教えていただきたいです。

回答者様:私は運動を通じて30年ほどスポーツを教える仕事をしているのですが、その中で私立のお受験の方もやっています。私が受け入れてる子ども達の過半数がグレーゾーンです。

私は問題点だと思うのですが、障害であるとか、IQであるとか、勉強であるとかここの偏りは持たないで欲しいと思っています。何故かと言うと、私が受け入れてる子どもは3歳から12歳の子がいらっしゃるのですが、その中の幼児や低学年の子は自己表現がまだできません。

その子たちに向けて何をしているかというと、とにかく誉めています。あなたはこれをやりなさいなどは一切言わずに、とにかく笑顔で誉めてできないことに関しては後ろから支えてあげて、1回できなかったことができるようになったら誉める。それでまた前向きになるので、勉強も同じだと思います。IQや勉強面は後からついてくると思っているので、まずは非認知能力の靴を揃えたりするなどの身近な所からやっていかないといけないと思います。

先日、お子さんの授業参観に行かせていただく機会があり、実際に学校に行ってどういう状況でどのような環境で勉強をしているのかという点を見ないと、子どもが置かれている環境や考えていることなど、ご両親が思っている以上に子どもの環境を知らないとこうしなさいと言うべきではないと思います。なので私も単にスポーツを教えるのではなく、必ず家庭の方とコミュニケーションを取って、こういうことができました。とお伝えしています。ここで決して悪いことは言わずに良かったことを伝えて、子どもが疲弊しないようにしています。

低学年のうちからできるに越したことはないですが、とにかく誉めていくことから始めれば伸びていくのではないかと思います。


質問者

皆さんの中で、発達障害の子のために塾の運営や発達に良い遊びや運動のことなどをやられている方が多くて、私自身も私の得意なことで差別はなく、誰でも参加できるような楽しめるような何かをやりたいと思っています。

そこで、始める時にどうしたらいいのか、実際にやられている方はどのように始めていったのか、支援をする時にどのようなことに気を付けているのかなどお聞きしたいです。

回答者様:明確な答えにつながるかは分からないのですが、私は個人で塾をしています。始めるにあたり、我が子にASDと軽度知的障害があり私は元々受容していました。ですが、受容されていない親御さんもおられます。発達障害をお持ちのお子さんのための知識を深めようというイベントがあって、受容されていない親御さんに薦めていいものなのかと思っていました。このことを仕事仲間と話していて、イベントのタイトルがあまり良くないよねという話になり、あからさまな物は受容されていない人は嫌います。もちろん発達障害を持っていることは悪いことではないですし、言い出したら誰にでもありえることでもあります。ですが、まだそういう感覚を持ちえない人がたくさんいるのが現状ですし、伝え方を発達障害を持っていても大丈夫ではなくて、皆が違う個性を持っているのは当たり前なので様々な個性に対応できるように私も学んでいる最中ですという形にしています。私の教室では、個々の違いを受け止めて楽しめる人になってほしいとチラシなどに書いて募集しています。どうしても上手くいかないこともありますが、なんとかやっています。また、先程じっとしていられないというお話があったんですが、たまごを置いても割れないという座布団があるのですが、これを試してみた所、ななめに座るようなお子さんでも真っ直ぐ座れるようになりました。

回答者様:始めるにあたり気を付けることとしては、健常児と比べるというのも良くないのです。できないことがあっても、それ以外にできることはたくさんあったりします。私が関わってきた子に関して言えば、アルミホイルで好きな物を作る才能がある子がいたりと、こういう能力を見出すことが大切かなと思います。全てができないのではなく、できることを見つけてあげましょう。何ができて、何が難しいのか見極めてできることは誉めてあげるのが良いと思っています。できないことを誉めると大人でもそうだと思いますが、モチベーションが上がると思うので子どもも誉めてあげましょう。じっと座るのが難しい場合は、ちょっとでも座れたことを誉めるのもいいのかなと思います。

回答者様:座れないことに対して対処法が2点あるのでご紹介させていただきます。娘の療育現場でも行われているのですが、必ず足がつく椅子に座って足の下にクッションなどを置いてあげます。もう1つは椅子の前の脚2つの間にゴムをかけることで子どもの足をはじいたり、クッションを踏むという動作で衝動的な動作を落ち着けて、足は多少ぶらぶらしていても座っていることができることを目標として行っています。

回答者様:次男がASDでADHDが多少あるように見られています。そんなにじっとしていられない訳ではないのですが、本当に興味のないことは一切しないのがASDの特性でもあります。ピアノに行かせてもらってるのですが、目的は社会との関わりを持たせたいからです。子どもは今不登校になってしまったので、学校じゃなくてもいいので月に1回でも2回でも他の大人に会う、本当は子どものほうがいいのですが無理する必要もないので、そこに行って先生と話せれば十分だと思っています。ですが、やっぱりピアノ教室に行ったらピアノ弾いてほしいという気持ちは分かるため、K様が先生として自信を持って線引きをされると良いと思います。私はこういうスタンスでやっています。子どもは楽しいと思わないとピアノは上達するわけもないと思います。私の子どもを例にすると、音符を理解したり色塗りをしたりワークをしたりと、全然ピアノは弾いていないのですが理解した音符はピアノのここだよと教えると、ちょっと弾いてみようかなとなったので本当にスモールステップで進めています。それが嫌だったら、すみませんが私では対応できませんでも構わないと思います。それで子どもが幸せになるとは限らないので、そのスタンスを大事にするのが良いのではないかと思います。

【まとめ】第十八回 児童発達支援士 意見交換会の実施報告

今回も貴重なお話をありがとうございました。

今回は具体的な疑問そして、それに対する回答がありました。皆様の経験の高さを感じる会となりました。また学習塾や習い事をやられている方も多く、いつもとは少し違った観点から話がすすめられたのではないでしょうか。このように様々な職種の方が集まることができるのが、この意見交換会の良さだと感じています。

これからも毎月行いますので、よろしくお願いいたします。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

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