今回は当協会と関連のある方から直接伺ったお話となります。発達に関心のある皆様にとっては有益な情報になると判断し共有をさせて頂きます。プライバシーを守る観点から一部、頂いたお話を少し編集してご紹介いたします。ただしリアルな情報であることに違いありませんので是非ともご覧ください。
お話を伺った方の基本情報
今回お話を伺ったのは、3歳の男の子を育てるご両親です。兄弟がお二人いて5人家族のご家庭。検診に引っかかったというのは、この3歳の男の子(以後:A君とする)です。
3歳0カ月時点でA君が出来ていたこと、出来ていなかったことは以下の通りです。
出来ていたこと
- 昼間のオムツは取れていた
- 発音ははっきりとはしないものの「パパ」「ママ」「いたい」「ねむい」などは話せていた
- 目線を合わせることは可能
- これといった感覚過敏もなかった
- 感情の共有も出来ていた(笑う、怒る、悲しむ等)
- 待つ、順番を守ることも出来ていた
- ペンで線やいびつな丸を書くことは出来ていた
- スプーンとフォークの利用は出来ていた
- 話を聞いて理解をすることはできる(コップ持ってきてなど)
出来ていなかったこと
- 2語文は話すことができない
- 一音一音すべて正確に発音することはできない
- 夜間のオムツ
- 箸はまだ使えなかった
- 数字の理解は出来ていない
以上が3歳時点のA君の様子です。
ここまで確認して、皆様はどう感じるでしょうか?自閉スペクトラム症、ADHD、LD、言語障害などの特徴や診断目安を頭に入れたうえで、これらを見ると自分なりの見解が見えてくるかもしれません。私もこのお話を伺った時には、ひとつずつどの障害に該当するのかを検討しながら聴いておりました。ただ私どもは医師ではありませんので、あくまでも自分の認識が現在の医療とどのようなずれがあるのかを把握しておきたかったので、このような話の聞き方をしていました。私は決して「絶対障害ではないですよ」や「障害の可能性が高いですね」などとは言っておりません。お話に同調し耳を傾けていたまでです。
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自治体実施の3歳児検診
A君の3歳児検診は、A君とお母様で行かれたとのことです。お父様は発達障害に関する知識をお持ちの方ですが、お母様はあまり詳しくは知らないというご家庭でした。お子様のイベント事はお母様が担当されることが多いようで、3歳児検診もお母様がいかれたようです。3歳児検診は市区町村が行っているもので、近くの福祉施設で行われたと言います。一般的な身体測定や検査、問診などを通して、成長具合を判断されます。
結果は、「発語の発達に問題がありますので、大きな病院に受診してください。病院は○○病院なので、ご自身で電話をして予約を必ずするようにお願いします」と言われたという事です。この時のお母さまの表現をそのままご紹介します。
「担当の方が凄く冷たい言い方だったのですごくショックを受けました。大きな病院に行けと言われたので何かしら問題があるんだ。。。と自分の中で確定させてしまってへこみました」
担当の方がどうということに関しては、それぞれ感じ方がありますし、ショックを受ける内容をその方から聞かされたので、どうしても悪く見えてしまうのは仕方がありません。しかし、大きな病院に行ってください。といわれると、やはり怖い思いをしてしまいますよね。ドラマや映画の見過ぎかもしれませんが、大きな病院を促される=大きな病や障害があると判断してしまいがちです。
これが3歳児検診の結果となります。
受診後の両親の気持ちの揺れ動き
受診後、お母様は旦那様に3歳児検診の結果を伝えたと言います。この時のお二人のお気持ちや考えも聞けましたのでご紹介します。
お父様の気持ち
正直妻から報告を受けた後も、何ら問題ないだろうと考えていました。3歳で診断がされる可能性があるとすれば、自閉スペクトラム症かADHDか言語障害です。言語障害以外に関してはA君が該当する項目はほとんど見当たらないので、そこは気にしていませんでした。残る言語障害に関しても、確かに発語はゆっくり目だとは思っていますが、半年前より発音できる言葉が増えましたし、話をしようという意欲も高い。だとすれば、障害と判断し無理なトレーニングなどをしてマイナスイメージを持たせるのではなく、自然とゆっくり身に付けていってくれればいいと思っていました。
お母様の気持ち
やはり心配でしたしショックを受けました。旦那に相談したら「気にする必要はないよ」とあっけらかんとしてました。それが安心に繋がればいいのですが、やはり内心は心配だったというのが正直なところです。ただだからといって、何かができるわけでもないのでその後は案外普通の日常を過ごしていました。幼稚園に行きはじめてからも、先生に発語や園での様子で何か言われることはなかったので、あまり気にせずに日常生活を送っていたと思います。ただ、大きな病院での検査日が近づくにつれ、また嫌な感覚を心に抱いていたように思います。時間を先延ばしして、検査を永遠にしたくないな。。。と思っていました。
お父様とお母様で捉え方が大きく異なっていることがわかります。私どもの受講者の皆様と話をしていても「旦那は全然理解していない」「旦那や祖父母から考えすぎだと言われる」というお言葉をよく耳にします。特に今回のケースの場合、お父様には発達障害に関する知識があったため余計に冷静にものごとを見ることができたということもあるかもしれません。しかし捉え方が自分とは異なり、そこに苦しみや悩みを抱えてしまうという方は多くいますので、もしあなたがそういった状況だったとしてもあまり悲観なさらずに「そのようなものか・・」という程度に済ませておいた方がよいかもしれませんね。当然共感を示してくれた方が心は落ち着くかもしれませんが、それを期待しすぎてショックを受けてしまってはいけません。
市内の大きな病院で受診
3歳児検診から半年ほどたった日に大きな病院(以後:B病院とする)で検査することになったようです。3歳児検診が終わってからすぐに予約の電話を入れたようですが、既に数カ月先まで予約がとれずに6カ月後になったと言います。そのためB病院で検査を受けたのはA君が3歳6カ月になったタイミングでした。この時は、お母様の都合がどうしてもあわず、お父様がA君と一緒にB病院に行ったと言います。
病院に行く前夜、お父様とお母様はお話をされたようですが、この6カ月間での成長を見ていたため、あまり心配はしていなかったようです。発語に関しては、完ぺきとは言えないものの発生できる音が増えてきました。また2語文もいくつか話せるようになってきたたため、日常生活での意思疎通はかなりできるようになってきました。夜のおむつもとれるようになり、子ども自身もお兄さんになってきたという自覚が出てきたようです。
B病院についたお父様とA君。受診前に身体測定だけ行い、いざ先生のもとへ。男性の先生が一人椅子に座り、丸い椅子が2つあったので、それぞれ着席。医師は挨拶をしたのち「名前は言えるかな?」といい子どもに聞くが、照れもありうまく言えず。その時お父様は少し焦ったと言いますが、先生は子どもの様子を理解し、子どもへの質問からお父様への質問に切り替え、気になる点や検診後の成長度合いなどについて問診を行ったと言います。子どもと医師の目が合うようになったり、笑顔になったことをきっかけに医師は子どもに「何歳かいえるかな?」ときき、A君が「3歳」と答えられたと言います。その後も「好きな食べ物は?」「何が好きかな?」「色ってわかる?」などの質問を無理のない範囲でしたようです。
その質問に対して、全て明確に答えられたわけではなかったようですが、子どもの様子を柔らかな表情で医師は観察していたようです。
その後は、お父様に対して問診が続いたと言います。お父様が医師から聞かれた内容は以下の通り。
- 3歳児検診後、新たにできるようになったことはありますか?
- ご兄弟は?ご兄弟と遊びますか?
- 何をして遊ぶことが好きですか?
- 絵本は読んだりしますか?
- 幼稚園には通えていますか?
- 幼稚園で友達と遊んだりしていますか?
- 幼稚園の先生に何か言われていることはありますか?
- 何か過敏に反応することはありますか?
- 2語文や3語文は出てきましたか?
- 他に何か気になっていることはありますか?
このようなものだったと言います。医師の意図としてはやはり自閉スペクトラム症の可能性を追求していたのでしょう。3歳という年齢であることを考えると、LDの診断はしにくいものです。ADHDも判断するにはまだ早い。それに、A君が座っている様子や大人同士が話をしている時の様子を見て、ADHDの傾向があるかどうかは多少なりとも判断できるでしょう。座っていられる、待っていられることを見た医師は、ADHDも現状気にする必要はないと判断し、自閉スペクトラム症の可能性をみるために、感覚過敏や友達のこと、遊びのことを聞いたのでしょう。(あくまでも私の推測です)
これらの質問が終わると検査は終了となったと言います。
お父様は検査というくらいだからもっといろいろなテストなどもやると思っていたようで、あっけなかったなーという印象だったそうです。
医師からは「現状特に気になる点はないですね。発語に関しては、成長が早い方とは言えませんが、この6カ月で2語文が出るようになったことを考えると、心配する必要はないかと思います。念のため4歳になるタイミングでもう一度確認をしておくという程度で良いと思います。幼稚園にもいかれているので、言葉の学校なども現状行く必要はないと思いますが、そこは任意ですのでもしご希望であればこちらの用紙に書いてある施設にお問い合わせくださいね」
このように言われて終わったと言います。恐らく、医師としても問題はないと判断したため、問診だけで終わらせたのではないかと思います。医師として気になる部分があった場合は、追加の検査があった可能性もあるでしょう。
検査終了後のお父様、お母様のお気持ちも聞けましたので最後にご紹介します。
お父様のお気持ち
まぁ、一安心という感じですね。いくら大丈夫だろうと思っていても気にはなっていましたから。
お母様のお気持ち
物凄くホッとしました。とっても心配していたので。ただ同じような気持ちになっている保護者の方も大勢いらっしゃると思うと、同じ親として胸が苦しいです。心配になる気持ちは本当によくわかるので。未だに3歳児検診で言われた時の心境を思い出しますし。
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追記:4歳児の検診結果
医師に言われた通り、4歳になった時に、同じ病院にて検診を受けてきたようです。
ただ3歳6カ月からの半年でかなり、言葉にも成長がみられていたため、ご両親の中では全く不安はなかったと言います。幼稚園の面談でも特に言われることはなかったようなので、確認程度の気持ちで病院に向かったと言います。
病院では半年前と同じような形で、問診を受けたと言います。全て完璧に答えられたわけではなかったようですが、先生と子どもの間で、問題なく会話が成立しすぐに問診が終了したようです。医師からは次のように言われたという事です。
「お子様くらいの活舌でも、気にされる方は言葉の教室に行かれる方もいらっしゃいますし、全く気にせずそのような教室にはいかない方もいます。なので、私としてもその判断は保護者様の意向次第で良いと思います。半年前からの進歩を見ると順調と言えますので、これで定期的な検診は終わりで大丈夫ですよ。活舌をよくするトレーニングは自宅でも出来ることが色々とあるので時間を見て試してみてください」
このような形で終了したと言います。
追記:4歳半になった頃の様子
4歳からの半年ほどで、更に成長が見られ、ほぼ問題なく会話ができるようになったということです。
活舌は良いとは言えませんが、ほぼ聞き取れるような発音のためあまり気にしていないようです。
活舌に関しては「1音1音の発音は出来るが、言葉の塊になった時にうまくいかないことがある」と言います。例えば「に」と1音発することはできるようですが、「にらめっこ」といおうとすると「ひらめっこ」と聞こえてしまうと。舌の動きがまだまだ柔軟ではないからこうなっているのではないかとお話しされていました。
「らりるれろ」などの舌をあごの上に付ける音の発音は出来ないわけではないが苦手だと言います。それでも、日常生活には困らなくなったということで保護者様は大変安心されたようです。
【まとめ】3歳児検診で発語がひっかかり病院に行ったお話
いかがだったでしょうか。今回は3歳児検診で発語がひっかかり大きな病院で検査するという体験をされた方の実体験をご紹介しました。
その時々のご両親の気持ちもお聞きすることができたので、私どもとしても非常に勉強になりました。
ただここで紹介されたものが、全国で同じように行われているかどうかはわかりませんのでご注意くださいね。恐らく年齢、特性の出方などによっても方法論は異なってくると思われます。そのため今回のエピソードは様々なケースがあるうちの一つのケースという認識でお願いいたします。
今後も発達に関する様々な情報を配信していきたいと思います。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。