前置きとして「ほめる」のは絶対にダメ
学校でも職場でも「ほめる」の間違った使い方で多いのはなんと言ってもこれでしょう。注意したいことや、叱りたいことがあるときに、それを和らげようとして「叱る」前の前置詞のように使っている「ほめる」言葉です。「〇〇さんのこういうところはいいんだけど、〇〇を直してくれたらもっといいのに」みたいな使い方です。このような使い方は、子どもには全く通用しないどころか悪影響しかありません。
コントロールしたい感丸出しの「ほめる」は絶対にダメ
次によくあるのが、子どもをコントロールするために使われる「ほめる」です。大人になると相手をコントロールするために「ほめる」言葉を多用します。サービス業に従事している方たちの常とう手段です。「とてもお似合いですね」「今日の髪型とても素敵ですね」「本当におきれいですね」等々、それこそ挙げたらきりがありません。物を買わされるだけならまだしも騙されてしまうかもしれません。コロナが流行しても夜の街を徘徊している男性方は特に気を付けた方がいいかもしれません。甘い言葉の向こうには大きな罠が待っているものです。
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「ほめられる」と気持ちいい!?
ほめられて悪い気はしませんよね。それどころか気持ちよくなってしまいます。ほめられると脳内ではどのような変化が起きているかというと、ドーパミンという快楽物質が分泌されています。
ほめられる⇒ドーパミンが脳内に分泌⇒気持ちよくなる⇒またほめられたいと考える⇒ また頑張ろうと思う
また頑張ろうと思えるならいんじゃない、と安易に捉えてはいけません。先に述べた例で考えると、「また頑張ろう」は「また買おう」や、「また行こう」になります。これで人は簡単にコントロールされてしまうのです。
自己肯定感が下がる理由とは
先に挙げた二つの「ほめる」は、その場はごまかせても後で必ず子ども達に気づかれてしまいます。他者の言葉で行動を左右されていることに気づいた子ども達は、自主性や主体性を失い、その結果自己重要感を下げてしまいうことになるのです。しかし、本当に怖いのはそこではありません。安易に使うほめ言葉は、まるで麻薬のように子ども達を蝕み続けるのです。その正体とはいったい何でしょう。
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承認欲求という副産物の恐ろしさ
「ほめられる」⇒「行動する」を繰り返しているうちに、
「ほめられない」⇒「やらない」という行動パターンが習慣化されます。
先生や親が見ている時に行動すればほめられるけど、見ていないときに行動してもほめられることはないので行動しなくなります。これを繰り返すとどうなるか、
「人が見ていないからやらない」
「人が見ていないから悪いこともできる」
というように変化していきます。「塾に行かなければ勉強できない」というのも、この「ほめる」教育の副産物なのかもしれません。
過度の承認欲求の向こう側に
承認欲求が過度に強くなると、暴力、自傷行為、自殺といった大きな問題を引き起こすようになります。頑張っても競争に負けてしまい、ほめられなくなると次は「叱られること」を始めるのです。ほめられなくて、無視されるくらいなら「叱られる方がまし」、と考えるようになるからです。自傷行為は「私を見て」「私をかまって」「私を心配して」という承認欲求の一つの現れと言えます。先に「ほめる」ことを「麻薬のようなもの」と言った理由がわかっていただけたと思います。
結論:過剰な”ほめる”教育が子どもの自己肯定感を低下させる!?
「ほめる」でもなく「叱る」でもない。それらは育児や教育にとって全く無関係です。ほとんどの親や教育者が今の風潮や教育ビジネスに翻弄されています。まずは自らが子どもたちにとって何が大切なのかを真剣に考える時ではないでしょうか。第13回となる次回は「保護者必見!子どもの主体性を伸ばす日常の工夫とは」というテーマでお話しする予定です。