職場のストレスを相談できないとき|心理職に相談できる人は1.1%です

「つらいなら、誰かに相談したほうがいい」とはよく言われます。ところが、いざ相談しようとすると、誰に、という一歩目で止まります。

上司に言えば評価に響く気がする。同僚には愚痴に聞こえそうで言いにくい。カウンセリングは、どこに申し込むのかも分からない。そうしているうちに、相談することそのものが面倒になっていきます。

この記事では、働いている人が実際に誰に相談しているのかを、厚生労働省の2つの調査から示します。相談できていないのは、あなたの性格の問題ではありません。そもそも、専門家に相談できている人はほとんどいません。

たとえば、次のことが分かります。

  • 職場でストレスを相談できる相手は上司63.8%・同僚62.5%。公認心理師などの心理職は1.1%
  • 「相談できる人がいない」と答えた労働者は3.6%。ただしこの設問が聞いているのは、相談相手がいるかどうかだけです
  • 「相談したいが誰にも相談できないでいる」人は約250万人。この人たちは、こころの状態が重い割合が全体の2.2倍あります
  • 当協会の受講者146人のうち86人(58.9%)が「身近に精神疾患または症状がある方がいる」ことを理由に学びに来ています

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相談できる相手は、上司と同僚と家族です|心理職は1.1%

仕事のストレスを相談できる相手の内訳と公認心理師等の心理職1.1%

厚生労働省が毎年おこなっている「労働安全衛生調査(実態調査)」に、仕事のストレスを相談できる相手を尋ねた設問があります。令和7年の結果は次のとおりです。

相談できる相手令和7年令和6年
家族・友人74.8%68.6%
上司63.8%65.7%
同僚62.5%62.8%
人事労務担当者10.7%8.3%
産業医7.1%5.3%
地域のかかりつけ医・主治医4.7%4.1%
保健師又は看護師2.7%3.1%
外部機関のカウンセラー等2.5%2.2%
公認心理師等の心理職1.1%0.8%

出典:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」第18表。分母は「相談できる人がいる」と答えた労働者です。複数回答のため、合計は100%になりません。調査の詳細は、記事末の「本記事で紹介している情報について」に記載しています。

いちばん多いのは家族・友人で74.8%です。職場の中では上司63.8%、同僚62.5%と続きます。

問題はその下です。産業医は7.1%、公認心理師などの心理職は1.1%。100人のうち1人です。

1.1%は「専門家が足りない」という話ではありません

この数字は、心理職の人数が少ないという意味だけではありません。働いている人が、専門家にたどり着く経路をそもそも持っていないということです。

ですから、「カウンセリングに行けばいいのに行けない自分」を責める必要はありません。行っていないほうが、圧倒的に多数派です。実際にストレスの話を聞いているのは、資格を持った専門家ではなく、家族・友人・上司・同僚です。

なお産業医も心理職も、前年(5.3%・0.8%)よりは増えています。

職場のストレスはどこに相談する?|4問で窓口を案内します

「相談できる人がいない」は3.6%です|ただし、聞かれているのは有無だけです

同じ調査で、「仕事や職業生活に関するストレスを相談できる人がいる」と答えた労働者は94.8%でした。「いない」は3.6%、残りは不詳です。

この数字だけを見ると、相談できない人はごく少数に見えます。ですが、この設問が聞いているのは「相談できる人がいるかどうか」であって、「実際に相談できているかどうか」ではありません。

相手がいることと、話せることは別です。上司はいる。同僚もいる。それでも言えない、という状態は、この設問では「いる」に分類されます。

別の調査では、相談できずにいる人が約250万人います

厚生労働省の「国民生活基礎調査」には、悩みやストレスがある人に実際の相談状況を尋ねた設問があります。令和4年の調査で、悩みやストレスがあると答えたのは約4,676万人。そのうち次の人数が、相談できていないと答えています。

  • 相談したいが誰にも相談できないでいる:約250万人
  • 相談したいがどこに相談したらよいかわからない:約167万人

この2つは足し算できません。複数回答の設問なので、両方に答えた人が含まれます。「合計で約417万人」という書き方は誤りになるため、当協会では別々の数字として扱っています。

相談できていないのは、少数の例外ではありません。

相談できていない人ほど、こころの状態が重い傾向があります

同じ調査には、K6という指標が同時に載っています。過去30日間の気分や行動について6つの質問に答え、点数が高いほど心理的な負担が大きいとされる尺度です。一般に10点以上が中等度以上の目安とされています。

公表されているのは実数だけです。そこで当協会が、相談状況ごとに「10点以上の人の割合」を算出しました。

悩みやストレスの相談状況10点以上総数との比
総数(悩みやストレスがある人)17.6%1.00倍
相談する必要はないので誰にも相談していない13.3%0.75倍
家族に相談している16.1%0.91倍
友人・知人に相談している16.1%0.91倍
職場の上司・学校の先生に相談している16.2%0.92倍
病院・診療所の医師に相談している24.5%1.39倍
公的な機関の相談窓口を利用している27.8%1.58倍
民間の相談窓口を利用している32.1%1.82倍
相談したいがどこに相談したらよいかわからない36.6%2.07倍
相談したいが誰にも相談できないでいる38.6%2.19倍

出典:厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査(詳細集計)」第114表をもとに、割合と倍率は当協会が算出しました。厚生労働省が公表しているのは人数です。

「相談したいが誰にも相談できないでいる」人は38.6%家族に相談できている人(16.1%)の2.4倍にあたります。

この表を、因果関係として読まないでください

これは同じ時点で測った相関であって、因果関係ではありません。「相談すればこころの状態がよくなる」とは、この表からは言えません。つらいから相談したい、けれどつらすぎて相談する気力がない——という逆向きの関係もありえます。

もうひとつ、誤読しやすいところがあります。公的な相談窓口27.8%、民間の相談窓口32.1%、病院・診療所の医師24.5%は、いずれも総数より高い数字です。これを「窓口に相談しても改善しない」と読むのは誤りです。

状態が重い人ほど、専門の窓口や医療にたどり着いていると読むのが自然です。家族や友人で足りているうちは、窓口までは行きません。この表が示しているのは、窓口の効果ではなく、どの段階の人がどこにいるかです。

言えるのはここまでです。相談できていない人ほど、こころの状態が重い傾向がある。それ以上でも、それ以下でもありません。

燃え尽き症候群の対処法|4問で次に行く場所が分かります

制度は用意されています。使われていないだけです

相談先がないわけではありません。法律で用意されているものが、いくつもあります。ただ、使われている割合がとても低いのが実情です。

労働安全衛生調査には、こんな数字もあります。1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった労働者のうち、76.7%が医師による面接指導を受けていません。80時間超は、申し出れば医師の面接指導を受けられる水準です。それでも、4人に3人は受けていません。

使えるものを、順番に挙げておきます。

  • ストレスチェック:労働者が50人以上の事業場は年1回の実施が義務です。高ストレスと判定されたら医師の面接指導を申し出ることができ、申し出を理由に不利益な取り扱いをすることは禁止されています
  • 産業医・保健師:50人以上の事業場には産業医がいます。人事を通さずに直接申し込める場合もあります
  • 社内の相談窓口・人事労務担当者:相談できる相手として挙げた人は10.7%。少ないですが、窓口としては存在します
  • 総合労働相談コーナー:各都道府県の労働局にあり、無料・予約不要で、勤務先を通さずに相談できます
  • こころの耳:厚生労働省の働く人向けポータル。電話・SNS・メールの窓口があります

ここで大事なのは順番です。職場の中に相談できる相手がいないと感じているなら、社内から始めなくてかまいません。総合労働相談コーナーやこころの耳は、勤務先に知られずに使えます。相談は、いちばん近い人から始めなければならないものではありません。

なお、相談できないまま消耗が続いているときは、いまの状態を確かめる目安があります。

燃え尽き症候群のチェックリスト|バーンアウト診断テスト

あなたの話を聞いている人も、聞き方を習ってはいません

心理職に相談できている労働者が1.1%だとすると、実際に話を聞いているのは身近な人です。専門の訓練を受けていないまま、聞く側に立っていることになります。

当協会の資格に申し込んだ146人に受講の動機を尋ねたところ、最も多かったのは86人(58.9%)の「身近に精神疾患または症状がある方がいる(過去にいた)から」でした。45人(30.8%)は「自身に精神疾患または症状がある(過去にあった)から」を挙げています。

専門家として学びに来た人たちではなく、すでに聞く側に立ち、聞き方が分からないまま来た人たちです。

受講後のアンケートに、こんな回答があります。

前任校でASDと思われる同僚がいて、自分がカサンドラ症候群のような症状が出たことがあります。ずっと無視され続けて嫌な思いをしましたが、周りの理解してくれる同僚に助けられました。話を聴く、共感する、は大事な支援だと思います。

30代の方の回答です。「周りの理解してくれる同僚に助けられました」——先ほどの表の同僚62.5%に、この方は入っています。

ただし相談しても、答えが返るとは限りません。

愛着障害によって生じている担当幼児の行動に対して、適切な支援をしたかったのですが、関係者から納得のいくアドバイスを得ることができず悩みました。職員間でも、共通理解が難しい現実があります。

60代以上の方の回答です。相手はいて、相談もしています。それでも「納得のいくアドバイスを得ることができず」という状態が残ります。

「相談できる人がいる94.8%」は、この状態を拾いません。

聞く側にも、相談先は足りていません

メンタルヘルス支援士として活動中に発生する悩みや迷い、そういったことを共有し合えたりする場があったり、質問出来たりするといいなぁと思います。

40代の方の回答です。総合評価は「普通」で、当協会への要望として書かれたものです。

別の方も同じことを書いています。

今、メンタルヘルス支援士を受講している方々やすでに、メンタルヘルス支援士を取得された方々とどんなことでも良いので、zoomでお話できればうれしいです。

30代の方の回答です。総合評価は「満足」。求められているのは助言ではなく、同じ立場の人と話せる場のほうです。

聞く側に回ると、今度はその人自身の相談先が要ります。ここは資格を出す側の課題として受け止めています。

⚠ この146人に「ストレスを相談できたか」を尋ねた設問はありません。示せるのは「どんな理由で学びに来たか」だけです。また受講者のデータと厚生労働省の調査は母集団も取得方法も違うため、同じ表には並べていません。

メンタルヘルス支援士について

ここまで、相談できる相手の内訳と、相談できていない人の状態、聞く側に立つ146人のデータをご紹介しました。

こうした理解を深めることと合わせて、医療・福祉・教育の現場で働く方や、部下を持つ方の間でも、メンタルヘルスへの理解を深めるための学びが広がっています。

当協会が認定する「メンタルヘルス支援士」は、精神疾患の基礎知識、大人の発達障害、認知行動療法、傾聴を中心としたカウンセリングの基本姿勢などを体系的に学べる民間資格です。支える側が自分の状態を保つための考え方も扱っています。2026年には「日本の資格・検定AWARDS 2026」の総合アクセス数部門で第2位に選ばれました。

資格の有無が支援の基準になるものではありませんし、取れば診断ができるようになるわけでもありません。相談を受ける専門家になるための資格でもありません。すでに身近な人の話を聞いている方が、聞き方の土台を持つための選択肢の一つとして知っていただけたらと思います。何が学べて何が学べないのかは別の記事で整理しています。

メンタルヘルス支援士の詳細について

Q&A|職場のストレスの相談に関するよくある質問

Q1:相談できる人がいません。どこから始めればいいですか?

勤務先の外から始めてかまいません。各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーは無料・予約不要で、勤務先を通さずに相談できます。厚生労働省の「こころの耳」には電話・SNS・メールの窓口があります。身近な人から順に相談しなければならない決まりはありません。

Q2:上司に相談したら、評価が下がりませんか?

ストレスチェックで高ストレスと判定され、医師の面接指導を申し出た場合、その申し出を理由に不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。一方で、日常の相談すべてに同じ保護があるわけではありません。不安がある場合は、社内ではなく総合労働相談コーナーなど外部の窓口を使う選択肢があります。

Q3:産業医やストレスチェックは、誰でも使えるのですか?

労働者が50人以上の事業場には、産業医の選任とストレスチェックの年1回の実施が義務づけられています。50人未満の事業場では努力義務のため、置かれていないことがあります。勤務先に産業医がいるかどうかは、就業規則や衛生委員会の掲示で確認できます。

Q4:カウンセリングを受けたほうがいいのでしょうか?

受けてはいけない理由はありませんが、受けていないことを問題だと考える必要もありません。公認心理師などの心理職を相談相手として挙げた労働者は1.1%です。眠れない、食べられない、休日に回復しないという状態が続いているなら、カウンセリングより先に医療機関の受診をご検討ください。

Q5:家族や友人に話すのは、相談になりますか?

なります。相談できる相手として最も多く挙げられているのは家族・友人(74.8%)です。ただし、職場で起きていることの解決までは、家族や友人には持ち込めません。気持ちの部分は家族や友人に、勤務条件やハラスメントの部分は職場の窓口や労働局に、と分けて使うのが現実的です。

まとめ|相談できていないのは、少数派ではありません

職場のストレスを相談するときの順番と使える窓口の整理
論点この記事で確認したこと
誰に相談しているか家族・友人74.8%、上司63.8%、同僚62.5%。公認心理師等の心理職は1.1%
「相談できる人がいる」94.8%この設問が聞いているのは相手がいるかどうかだけ。相談できているかは別
相談できずにいる人「誰にも相談できないでいる」約250万人、「どこに相談したらよいかわからない」約167万人。複数回答のため足し算はできない
こころの状態との関係相談できていない人は10点以上が38.6%(総数の2.19倍)。相関であって因果ではない
制度の使われ方80時間超の残業があった労働者の76.7%が医師の面接指導を受けていない
始める順番社内から始めなくてよい。総合労働相談コーナー・こころの耳は勤務先を通さずに使える

相談できていない状態は、めずらしいことではありません。

相談先がないのではなく、たどり着く経路が知られていないだけという部分が、かなりあります。使えるものは無料で用意されています。いちばん近い人に言えないなら、遠いところから始めてかまいません。

本記事で紹介している情報について

この記事で使っている情報の出どころを、まとめて記載します。

項目内容
相談できる相手の内訳厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」第17表・第18表・第20表。分母は「相談できる人がいる」と答えた労働者(複数回答)
表の項目名について原典の長い名称を短縮した箇所があります(例:「事業場が契約した外部機関のカウンセラー、「こころの耳電話相談等」の相談窓口」→「外部機関のカウンセラー等」)
相談状況とこころの状態厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査(詳細集計)」第114表。公表されているのは人数で、割合と倍率は当協会が算出しました
権威の帰属元の数値は厚生労働省の公表資料によります。当協会は引用者であり、厚生労働省の監修・認定・推奨を受けたものではありません
この記事の限界相談状況とK6の関係は同じ時点で測った相関であり、因果関係ではありません。「相談すればこころの状態がよくなる」とは言えません
K6について心理的な負担を測るスクリーニングの尺度です。診断ではなく、10点以上が病気という意味でもありません
調査年の違い労働安全衛生調査は令和7年、国民生活基礎調査の詳細集計は令和4年です。年次が異なるため、2つの調査の数字を直接比較していません
受講者のデータメンタルヘルス支援士 受講前アンケート(有効回答146件・2025年2月27日〜2026年7月25日)
受講者の声メンタルヘルス支援士 受講後アンケート(有効回答248件・2025年3月8日〜2026年8月20日)。自由記述欄・体験談欄からそのまま転載しています
回答者について回答者は当協会の資格に申し込んだ方に限られます。「ストレスを相談できたか」を尋ねた設問はありません

【注意事項】

この記事で紹介している内容は、厚生労働省の公表資料および当協会が収集したアンケートの一部をもとにまとめています。本記事は診断・治療・法的な判断を目的としたものではありません。心身の状態や必要な対応は一人ひとり異なり、一律の正解はありません。不調が続く場合は、早めに医師・産業医・お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。「消えてしまいたい」という気持ちが出てきたときは、様子を見ずに、すぐ下記の窓口か医療機関にご連絡ください。

参考・相談先

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